ある日獪岳は屋根の上から眼下の通りを監視していた。ただの定期任務のはずだった。そこに上限のの鬼が現れる。

1 / 1
これはとあるスレを参考にして作ったオリジナルの鬼滅の刃二次創作小説です。


漆黒の残響

金色の閃光夜の静寂(しじま)に包まれた街。

鬼殺隊士・獪岳は、屋根の上から眼下の通りを監視していた。ただの定期任務のはずだった。しかし、次の瞬間、世界が一変する。突如として背後に現れたのは、六つの目をぎらつかせ、圧倒的な禍々しさを放つ異形の存在――上弦の壱・黒死牟。

「ほう……『雷の呼吸』の……剣士か……」

その声を耳にした瞬間、獪岳の全身の毛穴が総毛立ち、呼吸すら止まった。今までに遭遇したどんな鬼とも違う。生物としての格が違いすぎる。勝てるわけがない。勝てるわけがない、こんな化け物に……!(跪け。頭を下げろ。プライドなんて捨てて、負けを認めろ。そうすれば命だけは助かる。いつもそうやって生き延びてきただろ……!)

獪岳の膝がガクガクと震え、いつもの「生存戦略」が脳内を支配する。いつもの彼なら、迷わず刀を捨て、平伏して慈悲を乞うていたはずだった。しかし、刀を握る右手に、どうしても力がこもる。(なんでだ……? なんで俺は、刀を捨てられない……!?)

脳裏をよぎったのは、頑固で、不器用で、自分を「後継者」と呼んでくれたあのジジイ――桑島慈悟郎の顔だった。そして、いつも自分の後ろを泣きながらついてまわっていた、あの出来損ないの弟弟子、善逸の情けない泣き声だった。もしここで自分が命を乞い、鬼になれば、あのジジイはどうなる。切腹して死ぬに決まっている。もしここで自分が戦わずに逃げれば、あの泣き虫のカスはどうなる。誰も守れず死ぬに決まっている。いつも自分を「特別だ」と思い込もうとしていた。誰かに認められたくて、一番になりたくて足掻いていた。だが、今ここで跪けば、自分が積み上げてきた「雷の呼吸の継承者」としての誇りすら、完全にドブに捨てることになる。「俺は……俺はカスじゃねぇ……!」獪岳の口から、血がにじむほどの咆哮が漏れた。黒死牟の六つの目が、わずかに細められる。

「命を乞わぬか……。ならば……果てるがよい……」「うるせぇぇえええ! 誰が跪くかよォ!!」踏み込んだ瓦が爆音と共に弾け飛ぶ。獪岳は、己の全存在をかけた最速の踏み込みを放った。

「雷の呼吸・弐ノ型――稲魂(いなだま)!」

「参ノ型――聚蚊成雷(しゅうぶんせいらい)!」

街の夜空に変幻自在の黒き雷撃が走る。しかし、黒死牟は目にも留らぬ速さで神速の抜刀をくり出し、獪岳の技をことごとく叩き落とした。月輪の刃が獪岳の肉体を切り裂く。右腕が、脇腹が、容赦なく肉を削られ、鮮血が夜の街に舞った。「ぐ、あ、あぁぁぁっ!!」圧倒的な実力差。一瞬で満身創痍に追い込まれながらも、獪岳の瞳の炎は消えなかった。壱ノ型が使えなかった。いつも周りから、不完全な継承者だと笑われているような気がしていた。ジジイの期待に応えられず、善逸という足手まといを抱え、それでも、自分なりの「答え」を、この命の終着点で形にしてみせる。

「見ろよジジイ……! これが俺の、俺だけの型だァァァ!!」

全身の血を沸騰させ、獪岳はどっしりと腰を落とし、日輪刀を柄にかけた『居合』の構えをとる。周囲の光が、その刃の周りだけであらゆる色彩を吸い取るように黒く歪んだ。それは、のちに善逸が放つ「火雷神」とまったく同じ、巨大な竜の如き奔流の構え。だが、纏うオーラは黄金ではなく、すべてを呑み込む漆黒の闇。心臓の鼓動が止まり、世界が完全に静止したその瞬間――。

「雷の呼吸・漆ノ型――『黒神(くろいかづち)』!!」

轟ッ!! と世界を引き裂くような地響きすら追いつかない超超音速の居合抜き。放たれた閃光は、見た者すべてが「火雷神」の幻影を見るほどの圧倒的な神速の巨獣の形をしていたが、そのすべてが漆黒――光をねじ伏せ、夜の闇すら塗りつぶす真っ黒な雷光だった。すさまじい摩擦熱で空気が黒い炎を纏い、バリバリと耳をつんざく爆音が遅れて街を揺らす。黒死牟の首元を、その漆黒の神速の居合が文字通り一瞬でかすめ去った。だが、そこまでだった。獪岳の体は、黒死牟の圧倒的な反撃によって、無残にも切り伏せられた。地面に倒れ伏し、薄れゆく意識の中で、獪岳は己の首元に微かなカスリ傷しかつけられなかったことを悟る。(……致命傷にすら、ならねぇかよ……)(クソが……。あとは、任せたぞ……あの、泣き虫の、カスが……)それが、プライドを捨てずに最期まで足掻き抜いた、鬼殺隊士・獪岳の壮絶な最期だった。

そして時が経ち、場所は無限城へ。その遺志(不発弾)は、金色の閃光(火雷神)を纏った弟弟子へと引き継がれる。無限城の歪んだ空間。上弦の壱・黒死牟の圧倒的な力に、我妻善逸は文字通りボロボロにされていた。「これで……最後だ……」善逸は踏み込む。その身を爆発的な雷力へと変え、新しき一撃を放つ。「雷の呼吸・漆ノ型――火雷神(ほのいかづち)!!」まばゆい金色の神速が走り、黒死牟の首を鋭く切り裂いた。しかし、上弦の壱の肉体は頑強だった。首の半分まで刃が食い込んだものの、筋繊維が刀 を噛み、切り落ちはしない。(届か……なかった……)善逸の力が尽き、刀が手から離れそうになったその時だった。

「……!? な、何だ……これは……何が、起きている……!?」

黒死牟の動きが、唐突に、完全に停止した。善逸の『火雷神』がつけた首の傷口。そこから、突如としてあの夜に見た漆黒の稲妻――獪岳の『黒神』がパチパチと狂ったように噴き出したのだ。その黒き雷は驚異的な速度で黒死牟の首から顔面、そして全身へと駆け巡っていく。(再生が……追いつかぬ……!? いや、再生そのものが、この雷に阻害されている……!)

上弦の壱たる己の細胞が、内側から激しく焦がされ、バリバリと硝子が割れるような亀裂が全身に広がっていく。

(この術理……この、体に深く残る『黒き楔』の感覚……身に覚えが、ある……。まさか……あの夜、あの小僧が放った漆黒の居合……『黒神』の傷か……!?)黒死牟の冷徹な思考が、驚愕とともに真実にたどり着く。あの男の技は、それ単体では不発に終わる仕掛け。相手の体内に侵入し、次の強烈な雷撃を呼び込むための、漆黒の導火線。そして今、目の前の少年が放った極大の金色の雷――『火雷神』が、その導火線に最高の形で火をつけた。

(二人の呼吸が……時を超えて、重なったというのか……! あの時に植え付けられた不発弾が、この金色の雷によって……真の、型として……完成した……!!)「何という……執念……! 人間の……分際で……この私を……!!」

内側から肉体が崩壊していく恐怖と屈辱に、黒死牟が初めて激しく絶叫する。ヒビ割れ、ボロボロと崩れゆく首の傷口に、善逸は最後の力を振り絞って刀を押し込んだ。「アニキの、技だぁぁぁぁぁ!!」バリィィィン!! と空間が割れるような音と共に、上弦の壱の首が宙を舞った。漆黒の闇の中…善逸の意識は、冷たい三途の川のほとりにあった。体が動かない。もう、十分頑張った。じいちゃんのところへ行こう。そう思って目を閉じかけた時。「おい、待ちやがれ」聞き覚えのある、ひどく不機嫌で、傲慢な声が響いた。振り返ると、そこには腕を組み、不遜な笑みを浮かべた獪岳が立っていた。全身に傷を負った、あの夜の居合の構えのままの姿で。「アニキ……?」善逸が手を伸ばそうとすると、獪岳はフンと鼻で笑い、その手を激しく叩き落とした。

「テメェと一緒の場所に行くなんて、まっぴらごめんだよ! 誰がテメェなんかと並んで歩くか!」

「でも、 俺もう……」

「うるせぇ! てめぇの型だけじゃ仕留めきれなかったくせに、格好つけてんじゃねぇよ。俺の『黒神』の居合があって初めて勝たせてやったんだろ? 感謝しやがれ、この泥のカスが!」獪岳は善逸の胸を、思い切り後ろへと突き飛ばした。

「テメェはこっちにくんじゃねぇ! カスが!! さっさとあっちへ戻りやがれ!!」「うわっ……!」突き飛ばされた衝撃で、善逸の視界が急速に白く染まっていく。遠ざかる意識の中で、獪岳が背を向け、少しだけ満足そうに、不器用な笑みを浮かべたのが見えた気がした。

「げほっ、ごほっ……!」無限城の瓦礫の上で、善逸は大きく息を吸い込んで目を覚ました。頬を伝う涙は、冷たいはずの戦場の中で、どこか温かかった。




あのスレを見て書いてみたいと思い作りました。初投稿なので下手かもしれませんが許してください。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。