しかし、それがうっかりばれてしまい・・・
※アンチ・ヘイトは念のため。
ある日突然見えるようになった、異形の化け物たち。
もし見えていることがばれたら、どんな目に遭うか分からない。
だから私、ごく普通の女子高生・四谷みこは、そいつらを徹底的に無視することにした。
それなのに、
ヤッパリ
やらかした。油断した。つい気が緩んでしまった。
私は取り返しのつかないミスをしたことに呆然としながら、
見エテルンダネ?
絶望の足音が近づいてくるのを聞いていた。
ある日の下校中、急にトイレに行きたくなった私は、近道しようとして人気のない裏路地を通ることにした。
小走りしていた私は、死角から飛び出してきた人影にぶつかりそうになり、
「あっ、ごめんなさ」
つい謝ってしまった。
その人影が、
…見エテル?
うつろな黒い眼でこちらの顔をぎょろりと睨み、その人影が言葉を発した。
私は見えていることが知られたショックで、いつもみたいに誤魔化すこともできずに、怯えた目で見つめ返してしまった。
…ソッカ
人影は口角をニマァッと上げて、世にもおぞましい笑顔を浮かべた。
ヤッパリ、見エテルンダネ?
ヒッと息を飲んだ私に、更なる絶望が襲ってきた。
突如、至るところの物陰から異形たちが顔を覗かせ、私を見つめながらぞろぞろと姿を現したのだ。
その中には、今までの日常で何度も無視してきた、顔馴染みと言える異形の姿もあった。
…見エテル?
…見エテルノ?
…見エテルンダ?
…フゥン……
…ネエ、モシカシテ、
今マデズット、見エテタノ?
「あ…あぁ……」
気付けば周りを異形たちに囲まれており、逃げ場は無くなっていた。
ここから助かる方法は無いと、頭がハッキリと理解した瞬間
しょろろろろろろろ……
ふっと股間の筋肉が緩み、スカートの中から勢い良く液体が滴り始めた。
じんわりと湿った下着の感触と、太ももを流れていく尿を感じながら、私は一瞬で自分の運命を悟った。
(あぁ、そっか。私、死んじゃうんだ。)
プツンと緊張の糸が切れて、私はぺたんと座り込んだ。
自分で作った足元の水たまりにお尻と太ももがバシャッと浸かることで意識を取り戻す。
その刹那、心の底から死の恐怖が湧き上がってきた。
(い、嫌だ。私、死にたくない。死にたくないぃ!)
慌てて起き上がろうとするが、腕にも足にも力が入らず、とてもじゃないが動ける状態ではなかった。
ゆっくりと近づいてくる異形を前にし、できることはもう何も残っていなかった。
「う、あ……うわああああああああん!」
迫り来る恐怖に為すすべなく、私は両手で目を覆って泣き出してしまった。
お父さん、お母さん、恭介、ごめんね。そんなことを考えていると…
…エット、ゴメン、ダイジョウブ?
「………えっ?」
目の前の異形から予想外の言葉をかけられ、私はきょとんとしたまま顔を上げた。
気付けば、異形たちが心なしか心配そうな表情を浮かべ、私の様子を遠巻きに見ながらザワザワしている。
漏ラシチャッタ
モラサセチャッタ
カワイソウニ
ドウスンダヨオイ
ミンナガ怖ガラセタリスルカラ…
誰ノセイダァ?
オマエラモヤッテタダロ
オマエノカオガ怖イカラジャネ?
カオガパックリ割レテルヤツニ言ワレタクネエ
今日ノミコチャンノパンツハ白!
ヤメナサイ!オクチチャック!
ソイツクチドコロカ上半身ナイゾ
なんか変な言葉も聞こえた気がするけど、異形達からは害意を感じなかった。
「…えっと、殺したりとか、しないの?」
イヤ、別ニ?
オレラノコト見エタカラ、気ニナッタダケ
見エル人ッテ珍シイカラ…
ミコチャンノパンチラモ見エタ!
アンタハダァットレイ!
怖ガラセテゴメンネ
「そう、なんだ。良かった…」
異形達と話しているうちに、私は安心していた。ばれたら大変なことになるとか、考えすぎだったのかな。
そんなことを考えていると、一人の異形が近づいてきた。
……あれ、こんな形の異形さっきいたっk
見エテル?
瞬間、ぞわっと背筋に寒気が走った。
いったいどこから、いつの間に。私を心配してくれた異形達に紛れて、人を襲う気満々の異形が私に忍び寄ってきていた。
イタダキマス
ソイツの口が大きく開く。食べられる、そう思った瞬間。
周りにいた異形達が割り込み、そいつに群がってボコボコにしていた。
何ヤッテンダオマエ!?
テメーハ俺ヲ怒ラセタ
ヨロシイ、ナラバ戦争ダ
ドブカスガァ!
不届き者を大勢でタコ殴りにしている異形達を見て、私は思った。
「早く、見えなくならないかな。」
やっぱり異形なんて、見えないほうが良い。