学内最下層の弱小野球部に入部したその日、俺――新城勝樹(しんじょうかつき)の視界に、謎のステータスウィンドウが現れた。
**【名門再興システムが起動しました】**
**【メインミッション:3年以内に甲子園優勝】**
**【初期報酬:『解析眼(ランクF)』『能力可視化』】**
(嘘だろ……ネット小説でよく見るやつじゃんこれ)
半信半疑で打席に立つ先輩に視線を向ける。
**【山田 太郎(3年・主将)】**
**【ポジション】捕手/右投右打**
**【ミート】E 【パワー】D 【走力】F 【肩力】C 【守備】E**
**【固有スキル】なし**
**【特記事項】極度の動体視力不足。ただしスイングスピードだけは部内一。**
数値化されたあまりの低スペックに頭を抱えそうになった。県予選一回戦敗退が常連の我が母校・市立西高校。グラウンドはサッカー部と兼用の狭いスペース、部員はギリギリの9名。監督は名ばかりの顧問教師。まさに絵に描いたような「詰み」の状態だ。
「よし、新城! フリー打撃、投げるぞ!」
先輩が声を張り上げる。俺はベンチの隅にあった古びたグラブを握りしめた。
俺自身のステータスも決して高くはない。だが、俺にはこの『解析眼』と、中学時代に独学で叩き込んだピッチング理論がある。
**【新城 勝樹(1年)】**
**【ポジション】投手/右投左打**
**【球速】128km/h**
**【コントロール】C 【スタミナ】D**
**【変化球】スライダー(LV.2)**
**【固有スキル】『精密機械(微)』『解析眼(ランクF)』**
「へたくそなストレートしか投げられませんが、よろしくお願いします」
プレートに足をかけ、ワインドアップに入る。
システムのおかげで、相手打者の「苦手コース」が赤いマーカーとなって視界に浮かび上がっていた。
山田先輩の苦手ゾーン――内角高めのボールゾーンからボール半分入るストライクゾーン。ここなら、どれだけスイングスピードがあろうと詰まる。
――バシィィィン!
快音がグラウンドに響く……はずもなく、先輩のバットは空を斬った。
「な……!? 今の球速、130kmも出てないだろ!? なんで打てねえんだ!?」
「先輩の弱点だからです。構えの段階で右腕の引きが甘く、内角の捌きがワンテンポ遅れています」
「な、なんだと……?」
俺は淡々と改善点を指摘した。ハーメルン的思考で言えば、効率的なレベリング(練習)こそが弱小校からの成り上がりの絶対条件だ。無駄な根性論は一切排除する。
「山田先輩。俺の言う通りにフォームを修正すれば、あと1か月で打率は1割上がります。そして――」
俺は集まってきた部員たちを見回した。全員、目は死んでいない。ただ、正しい勝ち方を知らないだけだ。
「このチームを、甲子園に連れて行きます。文句がある人はいますか?」
一瞬の静寂の後、部員たちから失笑と、それ以上の熱気が漏れ出した。
**【ミッション達成:『チームの信頼を得る』】**
**【報酬:『トレーニング効率2倍(常時発動)』を獲得しました】**
よし、システムログの表示を確認。下準備は整った。
「おいおい新城、一年坊主がデカい口叩くじゃねえか!」
「でもよ……マジで甲子園行けるなら、俺たち何でもやるぜ?」
ニヤリと笑う先輩たち。
俺はポケットから、昨晩作成した「個別の地獄のトレーニングメニュー表」を取り出した。
「では、今日から死ぬ気でついてきてください。まずは――そこの佐藤先輩、あなたの『ドアスイング』から矯正します」
名門私立の elite ども、見てろよ。
データの暴力と効率的な育成で、この雑草高校を頂点まで押し上げてやる。
俺たちの、下剋上野球が始まった。