問題はそのロジックを適用するとゼイドラムがケツドラムになることでしょうか。
もし良い解ケツ策をご存知の方がいらっしゃいましたら、残り少ない今年の日本が平穏無事であることを静かに願っていてください。
ホーエンハイム領の錬金術士たちに遅れること一ヶ月。
夏休み(夏休みではない)の間だけという条件で、フラメル領の後方支援スタッフとして戦列に加わることになった。
カティさんには、借りがある……。
あ、ディアさんとナージェンダはいないよ。
長期休業の間にアルバイトでお小遣い稼ぐって張り切ってたから。
フォルティス王国に四季が無いことを喜ぶべきか嘆くべきか、通年ずっと穏やかな気候は農業にも酪農にも適しているので感謝するべきなんだろうな。
もっとも、美味しく実るには寒暖の差が必要な野菜や果実もあるとのことで、そこは他国の輸入品のほうが高級品として扱われているが。
やっぱりね、前世の地球、というか太陽系とはお作法がちょっと違うんだよね。北が寒くて南が暖かいとかじゃないんもね。全ては魔力の思し召しだから仕方ないね。
うちの国では第一期長期休業期間と呼ばれているが、四季のある国なら日本のように夏休みと呼ぶのだろうか?
ま、呼び方に拘らにゃならんのは書類の上の世界よ。
俺にとって重要なのは、保守点検の契約を履行するための時間が確保できるということと────この世界にも稲作があり、鶏のそぼろと照り焼きの駅弁が食えるということだ!
「醤油職人の皆さんに日頃の感謝の気持ちとして基礎属性石のカラバリ揃えてプレゼントしたら喜んでくれますかね? もちろんギフト全開で混じりっけ無しの高純度のヤツを。宝石としてそれなりの価値になりますよね?」
「頼むからよ〜、そ〜れだけはや〜めてくんねぇ〜? あのインパクトキャノンだっけ。あ〜れでもかなりギリギリのギリでどうにか騒ぎにならないよう抑えて〜んのよ? いくら、ねぇ……リットン氏が隠れ蓑にな〜ってくれてるからって、限度って〜モンもあ〜るワケよぉ……」
「大丈夫ですよヴィッシュおじさん。人間はそう簡単には終わりませんから。それに、選ぶ権利が無かった父様と違っておじさんは好奇心で接触してきたのでしょう? 本音がどうであろうと。だったら地の底の果ての先までとことん付き合っていただきます。まだまだ引き出しは沢山ありますからね」
「……真面目な話をするとよ〜? それはそれで頼もし〜い部分もあ〜んのよ。テナクスの中央政府……正直、会いたくねぇ〜んだけんど、連中がぁ〜な。接触禁止の……あー、すまねぇ〜んだけど、あとは察してもらっちゃってい〜い? ホラ、立場って〜か、話しちゃうほ〜うが無責任なこともあ〜んのよ〜」
「そんな責任感のあるヴィッシュおじさんのために、悪い話ともっと悪い話がありますけど、聞きます?」
「……聞いとこうかな、うん」
「まずひとつめ。インパクトキャノンではアレの装甲は貫けません」
「そ〜れはオレ様もわかって〜んのよ。ロジャーに見せてもらったか〜らね。あんなもの……マジでど〜したもんかね〜」
「ふたつめ。あの欠片は、幼体のモノです。成虫ではありません」
「聞きたくなかった……本気で……」
「疑わないんですね?」
「むしろ疑いたかったって〜の。けれどよ? コレオちゃんはそ〜いう部分では嘘つかないだろって、信用してっか〜らね」
「ついでのみっつめ。と、いうか質問なんですが。既存の武装の改良って、あまり積極的にはされていない感じですか?」
「需要がねぇもん。赤字になるってわ〜かってんのにさ? 時間と予算を注ぎ込もうって酔狂な錬金術士はいねぇ〜のよ。いやぁ、まぁ? 正確にはちぃ〜と事情はあるけんどよ〜お? なんなら学生のほうが遊び心あるんじゃね〜かな〜?」
うーん、危機感が足りないか〜。
お前たち、もしかしてまだ自分たちが死なないと思っているのかね? みたいな出来事がないと武器開発は停滞したままか。
困ったな。結果的に見捨てることになるならまだしも、最初から必要な犠牲って切り捨てるのは好みに合わないぞ? それは領主貴族としても戦場の錬金術士としてもアウトだ。
▲▼▲▼
王族としての公務があるからと別の列車に乗り換えるヴィッシュおじさんを見送りつつ、久し振りのフラメル領である。うむ、相変わらず工場から魔力を含んだ煙がモクモクと立ち上ってますな!
「お待ちしておりました小ホーエンハイム卿。お元気そうでなによりであります。グランマガザン学園都市の制服もお似合いでありますな!」
「お久しぶりです船長。またしばらく厄介になります」
「厄介などと、とんでもない! 先に到着した錬金術士の方々も、それぞれの防衛都市でご活躍いただいております。まぁ、詳細につきましては後ほどご報告を。そして」
「小僧の護衛を務めるシェーネスだ。よろしくなクソ野郎。それ以上その作り笑い向けてきたら殺すぞ」
「はっはっは! 小ホーエンハイム卿は傭兵の皆様に信頼されておりますな! 優秀な傭兵たちに人望があるのは優秀な錬金術士の証明でありましょう。自分としても頼もしい限りであります」
「なんかすみません」
いや、わかってはいるのよ。
気に掛けてた子どもが連れ去られて戦場で働かされてたって言われて、アイツは変わり者だから大丈夫だろって笑って許せる大人のほうが少数派なのはね。ほら、倫理観的に喜ばしいことだもんね?
いやぁ……楽しい出張業務になりそうだナァ……。