「やぁやぁ久し振りだねぇコレオくん! カティお姉さんに会えなくて寂しくなかったかな? おっと、こんな服装をしているがいまは公務ではないから緊張する必要はないよ! あっはっは!」
「どうも。あれからクレイモアの調子は如何でしたか?」
「絶好調さ! ……と、言いたいところなんだけど、普段の襲撃に対しては過剰火力だからねぇ〜。ヨロイムカデの抜け穴はなんとなく? 王族預かり? みたいな雰囲気が強くなって? ま、私たちの出番はほぼほぼ無い状態なのさ」
「王族預かりですか。イヤな予感しかしませんね」
「大々的に宣伝しているワケじゃないけど、ヨロイムカデと接触したことを面白おかしく武勇伝として使っちゃってるみたいだよ。別に私の部下たちには死者が出なかったから気にするほどのことじゃないけれど、また余計なことするんじゃないかってさ〜。防衛都市を任されている領主貴族たちはだいたい苦い顔してるんじゃない?」
面倒なしがらみのせいで察しておじさんとなるしかなかった誰かさんと違い、カティさんは遠慮なく国内事情をコロコロ転がすように語ってくれる。ハーディ王子のご活躍は一緒に見てるから誤魔化す必要がないって判断なのだろうか。
「領主の権限ではどうにもなりませんか」
「領主の権限ではどうにもなりませんねぇ。記録として残されていた脅威は実在した。ならば、いまこそ王族が先頭に立ち国民を護る盾とならねばイカンのだ! なんて言われるとね」
「ん〜。国際社会における発言力の強化、もしくは軍事力の増強に向けた正当性の確保なんてどうでしょう?」
「いいね、実に貴族的な考え方だ。中央政府が動き出す前にフラメル領とホーエンハイム領の間で契約と交流を構築できて良かったと心から感謝しているよ。いざというときは受け入れよろしくね? コレオく〜ん♪」
どっちだろうな〜。
カティさんなら領主貴族の義務と責任って言って最後まで戦いそうな気もするし、領主貴族だからこそ民衆の退避を最後まで安全に完了させるべきだって言って一緒に逃げそうな気もするし。
どちらにせよ、彼女にとって優先すべきは領民であって国家と心中するつもりはないって部分は同じなんだけどね。そりゃ国側が国民のほうを向いていない雰囲気出してんのに、それに付き合う義務なんて無いわな。
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「お久しぶりですコレオ様。正式にお客様としてお出迎えできることを嬉しく思います。本来ならば滞在中の安全についてフラメル領側で配慮するべきなのですが……フフッ、どうやら今回は必要なさそうですね?」
「へぇ。さっきの領主の妹にしては素直な気配してるじゃねぇか。あぁ、勘違いすんなよ? 別にお前の姉貴を悪く言いたいワケじゃねぇ。小僧に向けた態度に嘘も無さそうだったしな」
おぉ〜。
良かった、戦士のプライドがぶつかり合って一触即発の空気になったらどうしようとか思ってたけど。むしろプロフェッショナルとしてお互いの仕事について敬意を払うぐらいの雰囲気!
つまり嫌われてんのは船長個人だけか。それはそれで……悪い人じゃないとは思うんだけど、やったことがなぁ〜。いうて俺を直接ローゼンクロイツ領から連れ出したのはスティーリアさんなんだけど。うん、余計なこと言わんとこ。
「工房にご案内します。我が国の、いえ、我がフラメル領の錬金術士たちもメンテナンスは頑張ってくれていましたが、如何せんコレオ様の技術には遠く及びませんので……あまり、状態のほうは期待なさらないでください」
「それは良かった。大事に保管していました、なんて言われたら落ち込むところだったよ」
「おや、おやおや……。コレオ様は面白いことをおっしゃる。我ら戦闘国家テナクスのパイロットに、使える武器を出し惜しみする理由などありませんよ?」
「それはなにより。それじゃあスティーリアさんのツインライフル、まずは出してもらっていい?」
「わたしは後回しでも構いませんが」
「俺が気になるからダメ。ホレ、諦めてさっさと出しな」
…………。
…………。
道具は使えば使うほど摩耗する。
当たり前のことだ。
だが、その理屈で言うならスティーリアさんのツインライフルはもっと消耗していて良さそうなものなんだが。
パイロット候補生たちの後方支援よりは、さすがに最前線で戦う本職パイロットのほうが戦闘は激しいと思うんだけど。
ふむ?
思ったよりそんなに……っていうか、これ、もしかして誰もメンテしてなくね? 俺の魔力以外で感じるのは、普段使用しているスティーリアさんの残り香みたいなモノだけだな。
「思ったより頑丈だった?」
「想像よりは耐久力にも優れていましたね。わたしとしては嬉しい誤算でしたが。こうしてコレオ様に手入れをしていただけるのですから」
ふーむ?
別にほかの武器だって手抜きをした覚えはないんだけど、なにが違うんだろ? スティーリアさん専用にって意識してクラフトしたのは事実だけど、それで性能までは変わらんよな?
ま、いいか。
スティーリアさんはニコニコ笑ってるし、なんかシェーネスさんもやけに楽しそうにこっち見てるし、錬金術士として恥ずかしい姿を見せないよう丁寧にメンテナンスしましょ。