「コレオ親方、おひさー。見てみ、粗鉄インゴットの錬成かなり上手くなったと思わない?」
「おー、見た目からしてもう上達したのがわかるな。日々の努力の結晶だな! あと、できれば親方呼びは止めて欲しいんだけど」
「でもオレらにとってはコレオ親方は親方だよ。買い手の、ほら。工場の女将さん。あの人もそう言ってたし」
「女将さんかぁ……そりゃ誰も逆らえんわ……」
これもまた責任の形。
ゴミ山の前に間に合せで建築した作業場は少しだけ広くなり、寝泊まりに使っていた豆腐建築は倍以上に広がり、リサイクル業務に励む子どもたちの数は増え、そして俺は学生なのに親方扱いときたもんだ。
気持ち的になー。得意気になるより気後れするっていうか。でもあんまり強く否定するのも違うじゃん? コヤツらにハンドクラフトの基礎を教えちゃったの俺だし、慕ってくれる相手の気持ちを無碍にするのは人の心無いんか案件だし。
「とりあえず元気そうでなによりだ。なにか、変わったことはあるか?」
「特には……あ、でも、ときどき知らない女の人がインゴット買ってくよ。この街の人じゃない。それぐらいはオレたちだって顔を覚えてるし」
「女の人? パイロットかそれ?」
「うん。展開キーも見せてくれた。イヤリングじゃなくて、腕の上のほう。肘と肩の中間に輪っかがあった。テナクスのパイロットじゃないでしょ?」
「それは、大人たちは?」
「知ってる。トラックスさんとライムさんも来てくれたけど、大丈夫だから心配ないって」
「そうか。まぁ、なんだ。大きなトラブルが無いならそれでいいよ。安全にだけ気をつけてな」
「うん。オレたちもいつか、スタンライフルみたいな武器を作れるようになってみせるから。楽しみにしといて」
▲▼▲▼
「シェーネスさん、さっきの話」
「展開キーがアームレットだって話が本当なら、そりゃ砂丘連合【アルドル】のパイロットだな。ここの連中がムカデを相手にしているように、果ての見えない流砂を越えてやってくるサソリどもの相手を引き受けている国だ」
「正体がわかったところで、錬金術士ではなくパイロットが素材の買い付けにくる理由がわかりませんね。しかもゴミ山でリサイクルをしている子どもから買い取るなんて」
「……いや、たぶん。連中の目的は素材じゃねぇな」
「素材じゃない?」
「なに、心配はいらねぇよ。本当にアルドルのパイロットなら砂と風の神に誓ってバカな真似だけはしねぇさ。そんなことより、だ。お前、そのデカブツ持ち歩いて……どこに向かうつもりだ?」
「ちょっと遊びの約束を果たしに、ちょっとね」
…………。
…………。
冒険者や傭兵といえば酒場が定番の溜まり場だろう。
雑多な建物の寄せ集め感があるフラメル領の街並みにも、西部劇にでも出てきそうな酒場がよく似合っている。違いがあるとすれば文明レベルの差から冷蔵庫や自動販売機が置いてあることかな?
さて、目的の人物は……いたいた。
「やぁやぁ錬金術士くん、国に帰ったって聞いたけど。遊びに来たのかな? それともウチに会いに来てくれたとか?」
「お姉さんに会いに来ました」
「おぉ〜、そりゃ嬉しいコト言ってくれるねぇ!」
「酔い止めの薬を都合してくれたお礼も兼ねて、営業に。ボルトアクションライフル、作ってきましたよ」
「その目立つ荷物の正体はそれだったか〜。そんな律儀な、よくまぁウチとの世間話なんて覚えててくれたよ。言っとくけど、貰えるモンは遠慮なく貰っちゃうよん?」
「正式に依頼された武装ではありませんし、喜んでもらえるならそれだけでも俺としては嬉しいんで大丈夫です」
「あれ? なんかウチ口説かれてる?」
「はい?」
「オッケーオッケー、なんでもないよ錬金術士くん。どれどれ……こりゃまた長い……200、いや、250ぐらい? そんで────ぷっ、あはッ! あははははッ!! ちょ、本当に? 本当にこんな……あははははッ! キミ、最高にイカれてるしイカしてるねぇッ! あはッ! はははッ!!」
あら〜、すっごいウケてる。
もう傭兵だけじゃなく店員さんまで、なんなら通行人まで覗き込んでるんですが?
酔い止めお姉さんが魔力を通す。
コアが反応し始めたところで、ボルトアクションを一発。
バレルに魔力が打ち込まれ、魔法文字が白く輝く。
さらにボルトアクションを一発。
今度は違う部分の魔法文字が赤く輝いた。
さらに一発。
お次は青い光。
「正気を疑うね、このギミックは」
「ボルトアクション毎に貫通弾、延焼弾、氷結弾を切り替えます。バッテリーユニットとマガジンユニットを両方使用しているのでメンテナンス費用は高くつきますが、ならせめて、と通常の錬鉄で弾丸が生成できるよう錬成陣を組みました」
「有効射程の想定は?」
「貫通弾で1500。延焼と氷結は800と半減します」
「ちょっと見積もりが甘いかな? もっと自信持っていいよ。ウチなら2000メートル先のムカデの頭にだって当ててみせるから。ワンショットワンキルでさ」
「お気に召しましたか?」
「控え目にいって最高。名前は? クラフトしながら、錬金術士くんが呼んでたヤツ、教えてよ」
「……それじゃあ、オクスタンカノンとでも」
本家のWモードのように同時発射はできないが、3種類の属性はどれもムカデに有効だと実証できている。
だからこそ営業してみようかと思って持ってきたが、わりとガチめに使う前提で受け取ってくれた感じ? だな。
笑ってネタにしてくれるか、こういうこともできますよ〜って技術アピールぐらいのつもりだったんだけど……喜んでくれたなら、こんなに嬉しいことはない。
少し……多少……だいぶ、目立ってるけど。
特に武器用のコアの存在とか。
でもホラ、いうて既存の技術の寄せ集めだし。それに珍しく属性も使ってないから。
うん。
勝手に武器の受け渡しとかカティさんに怒られるかな……。販売じゃないし、約束を果たしただけだからセーフだと思うんだけど。念のためなにかしら処罰される覚悟だけはしておくかぁ……。
男にはぁ、不利益を被ると知っていてもぉ、やらねばならぬことが! あるのだッ! 作ってるとき楽しかったからヨシッ!
業務連絡というほどのことではないのですが、今週の土曜日は本業も農業も休みなので、そこらへんでママンたちの戦闘シーンを執筆できたらいいな〜と思ってます。