「あっはっは! コレオくんはまだまだ勉強不足だねぇ〜。いいかい? 傭兵は自由と独立を保障されているから傭兵なんだよ。これはね、大陸条約で定められ強制力のある公的なルールだ。彼女たちの無事が約束されることはないが、それ故に、如何なる権力も彼女たちの自由を阻んではならいのさ」
「つまり?」
「自己責任って、いい言葉だよね! 傭兵とのトラブルは領主の権限どころか王族ですら簡単には介入できないから気をつけるんだよ〜」
錬金術士がいればいつでもどこでも武器が調達できる世界なのに、傭兵の扱いがそんな適当でいいのか?
いや、だからこそ法で縛ろうとするだけムダという判断なのかもしれない。下手に抑え込むのではなく敢えて自由を与える逆転の発想だ。
「迷惑ついでにもうひとつ、いいですか?」
「リサイクル屋さんの子どもたちなら遊撃隊から護衛と監視を出してるから心配いらないよ。そもそもアルドルのパイロットたちの目的は子どもたちじゃなくてコレオくんだし」
「そうですか、それなら子どもたちは安全……いやいやいや。なんでそこで俺?」
「んー、そりゃあ、リバースクラフトを使いこなせる錬金術士は喉から手が出るほど欲しいだろうね」
「ゴミを無駄にしない、倹約家な国民性ですか。実に素晴らしいことです。と、いう話でもなさそうですね」
「テナクスと同じようにインセクトの襲撃が多いアルドルだけど、如何せん環境が人間に対して厳しい。私も真実は知らないけれど、国土の大半が砂と岩って話が本当ならそうなんだろう」
「それでも鉱物資源ならいくらでも確保できそうな気がしますが」
「悪いねぇコレオくん、私の専門は外交じゃないから他国の詳しい事情まではわからないよ。あ、でもひとつだけ」
「なんでしょう?」
「彼女たちは“基本的に”正々堂々とした行いを好むから、キミに協力を頼むとしても正規の手段を取るはずだよ」
基本的に。
つまり基本的ではない行動をするパイロットもいないとは言い切れないワケだ。知らない情報は確定させないところがカティさんも貴族っぽいな。
「大丈夫、大丈夫! たぶん彼女たちはコレオくんがフラメル領の錬金術士じゃないってことすら知らないよ。だからゴミ山に頻繁に通って信用を稼いでるんじゃないかな。仮にハズレだとしても、リバースクラフトが使えるならスカウトする価値はあるだろうし」
「カティさん的にはそれでいいんですか? もしかしたら、自分の領地で働いている錬金術士を引き抜かれる形になってしまいますけど」
「アルドルが堕ちたらテナクスも連鎖的に終わるよ。リサイクル屋さんの少年たちが同意の上で出ていくなら止める理由はないねぇ〜」
▲▼▲▼
挨拶して。
スティーリアさんの武器メンテして。
酔い止めお姉さんに魔改造ボルトアクションライフル渡して。
カティさんのクレイモアも手入れして。
フラメル領で使ってるスタンライフルとアイスジャベリンも手入れして。
リサイクル業務を引き継いだ教え子たちの様子もちょこちょこ確認して。
……あっという間に出張期間が終わってしまうな。
いや、良いことだから。
トラブルが無いのは良いことだから。
なんだか知らない国が暗躍してるかも? もしかしたら俺に用事があるかも? と聞かされてまた変なイベントが始まるかと警戒していたよ。
もぉ〜、コレオくんってばチート転生者だからって自意識過剰だぞ☆ なにか行動するたびにトラブル起きて巻き込まれて繰り返してたまるかチクショウめ。
「失礼します小ホーエンハイム卿。まずはこの度の保守点検業務について自分からも感謝を。閣下が残してくださった武器がパイロットたちの助けになっていることは自分も把握しております」
「候補生にとって、人々を護る剣となり盾となり戦うために志願したパイロットたちにとって、活躍の場が増えることはモチベーションの維持に繋がりましたか?」
「えぇ、それはもちろんであります。誰も彼もが理屈だけで動けるのであれば苦労などしなくて済むのでありましょうが、そのような世の中などさぞかし不気味でありましょうな」
「同感です。それで船長、本日はいったいどんな愉快な話を持ってきてしまったんでしょうかね?」
「我がテナクス戦闘国家の中央政府は、ヨロイムカデの脅威を近隣諸国と正しく共有し、その排除のため互いに協力するべきである……という方針で動いております」
「そんな気はしましたけどね。もしかして、犠牲になった騎士の皆さんは貴族出身の方々でしたか?」
「おわかりになりますか?」
「面子が不要とまでは言いませんが、本当に厄介ですよね。俺も振り回している側の自覚ぐらいはあるので強く言えませんが」
自分の家族が犠牲になったのだから、仇討ちに動きたくなる気持ちは理解できる。復讐……とも少し違うような気もするが、俺はどちらかと言えば肯定派だからな。親しい人たちが犠牲になれば、チートスキルの暴力を躊躇わないだろう。確実に。
「自分も家族を悼む気持ちまで否定するつもりはありません。むしろ、存在が確定している脅威に備えることには賛成の立場であります。これでも軍人の端くれですからな、国民の生命と財産は守らねばなりません」
「同意します。しかし、それはそれ、これはこれです。変に都合よく事実をこねくり回されても困るのでハッキリ言っておきますが、俺はハーディ王子を全く信用していません」
「奇遇ですな。自分も閣下と同意見であります。ですが自分はテナクス戦闘国家に所属する軍人でありますので、場合によっては閣下にご協力をお願いする形になるかもしれません」
「次は正規の手続きでお願いしますね?」
「自分としても手段を選べるのであれば、是非ともそう願いたいものですな!」