「こういうとき、持つべきモノは頼れる友だちだな! そうだよね〜、セカンダリの学生が中心になるってんだもの。自動的にお前らも巻き込まれるよね〜」
「どっちかって言えば、むしろ仕事を邪魔される王国軍や傭兵の人たちのが巻き込まれてる側じゃね?」
「少人数のアルバイトじゃなくて、まとまった人数だもんな。せめて邪魔にならないように気をつけようぜ」
壮行式のような派手な見送りは無い。
どれほど裏で動く駆け引きがドス黒くて面倒でも、表向きは職業体験の延長のようなもの。ただ少し、油断していると帰ってこれない可能性があるだけで。
もちろん本物の激戦区に学生を迎え入れるような余裕などあるワケがなく、俺たちが向かう先はほどほどにアリの襲撃が繰り返されている安定した戦場だ。
うん。
やること、内容としては補給拠点のアルバイトとそこまで大きく変わらないなコレ。
学園の事務局のスタッフが書かなきゃいけない書類が増えて、現場の大人の責任が増えただけじゃね?
いや、貴族用のロングコートタイプの軍装を着ているんだ。普段のアルバイトよりは俺にも相応の責任があるだろう。少なくとも一緒にチームを組んでいる友人たちに対しては。
「そういやオレたち、コレオに対して部下としての言葉遣いしたほうがいいのかね?」
「普通に考えるのであればそうなのでしょう。正直なところ、本物の軍人の皆さんの前で軍隊ゴッコなどしたくありませんが」
「一応、やる気のないプライマリの連中を煽るっていう目的もあるんだろ? いいじゃん、コレオ小隊長殿! って皆で敬礼しようぜ」
「小隊長。悪くない響きだ。特に、中隊長や大隊長は上級生の先輩たちがやってくれてるってところがいい。ランスロット様から受けた説明だと、かなり、ちょっと⋯⋯なんか俺だけ最初に戦地入りさせられそうな雰囲気だったし」
「いや、それやったらプライマリどころかセカンダリの生徒の大半のメンツも潰すことになるだろ。どう考えても絶対に逆効果じゃん」
「ついでに学園の先生たちもな。真面目にさ、生徒の成績とか比べながら授業内容考えたりバイト斡旋してたところに、今年からいきなり生徒たちをもっと防衛拠点に送り出しましょう! って命令来てんだから」
冷静にランスロット様とのやり取りを思い出す。
俺を起点にして人の流れをコントロールするとは言っていたが、俺だけを戦地に送り出すとは言ってない。
セカンダリの学生が中心になるとは言ったが、コレオ・ホーエンハイムが中心になるとは言ってない。
未来の指揮官候補として適当だと言われたが、指揮官として行動しろとは言われていない。
キミ傭兵たちにも評判イイよね! と言っただけで、キミ傭兵たちと一緒に戦ってね! とは言ってない。
冷静に思い出した結果。
俺さ⋯⋯ランスロット様のこと、一発ぐらいブン殴っても許されるよな?
でもランスロット様のことだから、話をちゃんと聞いていないキミが自意識過剰だっただけだよ〜ぐらいの煽りは返してきそうだ。スキルツリーのステータス項目にレスバ強化とかねぇの?
▲▼▲▼
背筋を伸ばして!
顎を引いて!
大隊長であるプライマリ六年生パイロットの挨拶に合わせて頭を下げる!
くぅ〜!
改めて、上級生が頼れる先輩っての助かるぅ〜!
こういうのでいいんだよ、こういうので。
いや本当ならさ、中身の年齢で言えば俺が一番しっかりしないといけないのかもしれないけど。
でもね?
この世界では大隊長の女の子のほうが先輩だから。
いまさら精神年齢マウントなんて意味ないだろ。そんなもんがインセクトとの戦闘でなんの役に立つってんだ。
おっと、いかん。
集中を乱すな。
俺が注意されて恥をかくのは大隊長の先輩だぞ?
背筋伸ばして。
唇も引き締めて。
ちゃんと前向いて。
⋯⋯⋯⋯。
⋯⋯⋯⋯。
手短に全体での挨拶が終われば、そのまま小隊に割り当てられた部屋まで案内された。必要最低限のおもてなしが完備されたシンプル特化の寝室だけど、これはこれで味わい深い。
ほんで。
「さて諸君。緊張するな、というのも無理な話だろうけど⋯⋯たぶんそこまで戦力として期待されてないから、真面目に言われたことだけちゃんとやってれば大丈夫だよ。つまりアルバイトのときとほぼ一緒だ」
「しかし小隊長殿、ボクたちは正式に軍隊の一部として」
「集団行動の基本すら教わってない新兵以下のガキに頼らにゃならんほど、王国軍の兵士も傭兵たちも困ってないだろ普通に考えて。⋯⋯なんて、偉そうにしてる俺も冷静さを取り戻すまで余計なこと考えてたんだけどね」
「まぁ、オレらがメンバーに選ばれたのも、2年でFメタル弄れるから一応選びました〜みたいなトコあったしな」
「つまりこのアホの巻き添え100パーってことか。いいね、バイトじゃ経験できない緊張感だけはマジだし」
あくまで学習の機会。
あくまで経験のため。
くそぉ、思い出せば思い出すほどランスロット様は最初からそう言っていた。思い込みの力って怖いな〜メタ視点に頼り過ぎるとこういうことも起きるのか。
でもこの機会を利用して貴族の選別をするって話は本気だろうし、目的が経験値だろうとしてもインセクトと接触するのだからここは本物の戦場なのもマジな話。
なにより学園指定の作業着ではなくフォルティス王国軍で正式に採用されている軍服を渡されている事実。アルバイトのときは半分ぐらい学生だからのお客様扱いだったが、今度はそう甘くないはず。
どこぞの忍者学校みたいに6年生や5年生の先輩たちは問題なさそうだけれど、4年生や3年生あたりはどうなんだろうな〜。
メタ知識で想像するなら2年生のクセに生意気に出しゃばりやがって、みたいなパターンがお決まりだけど〜。それで勝手に舞い上がってたもんな〜俺。
よし。
あれこれ考えてもしゃーない。
最初の業務開始まで、まだ少し時間がある。お祈りと小便だけ済ませておいて、皆で拠点の地図でも見ながら設備の配置でも確認しておくか!