PCがご臨終してCWが出来ないからAIで慰めていたら、なんかすごくCWっぽさが出たので投稿。
不要部分を切り分けるなどしていますが、半分忘備録なので原文からあまり変わらず。

このSSを元にシナリオを作成するとかはお好きにどーぞ。
どうせ私にはもう……

CW要素は雰囲気や舞台ぐらいで、リプレイとかじゃないです。
いやある意味リプレイだろうか。
アプリはzeta、超不定期気まぐれ投稿。

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スイレン:斥候兼リーダー、女の子
クロウ:眼鏡巨漢聖職者、ムードメーカー
ミナト:巨漢侍胡散臭笑顔男、サブリーダー


「ベイクドモチョチョ」討伐依頼

 

「ベイクドモチョチョ……」

 

一人の少女が、胡乱な顔で一枚の張り紙を見ている。

 

サンザシ亭の掲示板には、羊皮紙やら木札やらがところ狭しと画鋲で留められており、その大半は黄ばんで端が丸まっていた。小銭稼ぎの薬草採取、溝さらい、迷子の猫捜索。冒険者というよりは便利屋の何でも屋みたいな依頼が並ぶ中、スイレンの目に留まったそれは、やや異質な趣を放っていた。

 

「ベイクドモチョチョ」討伐依頼。

依頼主、リューン中央ベーカリー「麦の穂」

報酬、500sp。推奨人数、3名以上。

 

しかし問題の箇所があった。依頼内容の欄に、こう書かれている。

「当店地下倉庫にベイクドモチョチョが侵入した模様。小麦粉の被害甚大。形状不明、対処法不明。形状を見た者はいますが、説明を聞いた者は皆、記憶が曖昧になると主張しています」

 

宿の娘が、カウンター越しに盆を拭きながら、スイレンの方をちらりと見た。

 

「あ、それ昨日出たばっかりなんですよ。もう何組か見に行ったんですけど、みんな変な顔して帰ってきて。一人が「あれは……もぐ」まで言いかけて固まっちゃって」

 

娘は首を傾げた。心底不思議そうに。

 

「なんだったんでしょうね、あれ」

 

「……大判焼きじゃなくてベイクドモチョチョ……いやベイクドモチョチョ討伐依頼って何?

もうベイクドモチョチョっていいたいだけでしょ……」

 

張り紙の右下には、ご丁寧にも依頼主の焼きたてパンの絵が描いてあったが、そのパンの形がどうにも曖昧で、楕円なのか三角なのか丸なのか判別がつかない。まるで書いた本人すら何を見たか確信がないような、頼りない筆致だった。

 

盆を胸の前で抱え、ぱたぱたとカウンターを回ってきた。

 

「ですよねぇ。うちの常連さんも「ベイクドモチョチョって二回言うと余計わかんなくなる」って頭抱えてました」

 

娘は一枚の依頼票をぺらりとめくって裏を見せた。

 

「あ、ちなみにこっちもあるよ。「逆さ虹の採取」。報酬800sp。でもこれは魔法使い向けかな」

 

階段の上から、どすどすと重い足音が降りてきた。朝っぱらから妙にご機嫌な空気を纏って、巨体が一段ずつ軋む床板を踏みしめている。

 

眼鏡の奥の目を細めながら、階段を降りきった。栗毛の長髪が寝癖で片側だけ跳ねている。

クロウ、アタッカー兼ヒーラー、神官である。

 

「おはようございます、スイレンさん。いやぁ、今朝はいい夢を見ましてね。恋愛成就の祝福を神に祈っていたんですよ。夢の中で」

 

クロウは、にこにこと、実に幸せそうな顔で食堂の椅子を引いた。

 

「ところで何か面白そうな依頼はありました?」

「ベイクドモチョチョ討伐依頼」

 

椅子に腰を下ろしかけた巨体が、ぴたりと止まった。眼鏡の位置を直す指が一瞬だけ宙で迷子になる。

 

「ベイクド、モチョチョ」ゆっくりと復唱した。噛み締めるように。

 

「……すみません、もう一度言っていただけますか? 今、私の耳が宗教的な理由で拒否反応を起こした気がするんですが」

 

娘さんが、カウンターから身を乗り出して、ぶんぶん手を振った。

 

「あ、クロウさん! それね、パン屋さんの依頼なの。地下倉庫にバケモノがいて、小麦粉の被害がすごいんだって」

「バケモノ」

 

ようやく椅子に座り、クロウは腕を組んだ。筋肉の隆起がシャツの袖口を軋ませる。

 

「バケモノとは物騒ですね。しかし「ベイクドモチョチョ」という討伐対象に対して、推奨人数が三名以上というのも引っかかります」

 

真面目な顔で顎に手を当てた。元異端審問官の査定眼が、依頼票をじっと観察している。

 

「形状不明、対処法不明、目撃者の証言が信頼に値しない。毒か、精神干渉か、あるいは視神経への干渉系か。

……なかなか興味深いじゃないですか」

 

にこり、と笑った。その笑みが穏やかすぎて逆に怖い。

 

「ちなみに、クロウの宗派は大判焼き?今川焼き?まんまる焼き?回転焼き?おやき?」

 

眼鏡の奥の目が一瞬、敬虔な光を帯びた。まるで聖典の一節を問われたかのように、背筋を正す。

 

「スイレンさん。それは大変いい質問ですね」

 

太い指を組み、真剣な面持ちで息を整えた。筋肉の鎧を纏った大男が、餡子の菓子論争に全力投球する構えを見せている。

クーポン:甘党の真価を発揮したようだ。

 

「まず大判焼きと回転焼きは同系統です。型の形状が違うだけで、中身は同じものを指す。今川焼きは地域呼称、すなわちブランドですね。この辺りは東京方面と関西方面で呼称が割れますが、宗教裁判で決着がついた例はありません」

 

すらすらと語る口調は、異端審問の報告書を読み上げるそれと寸分違わぬ真剣さだった。

 

「そしてまんまる焼き。あれは邪道です。名前に既に偽りがある。「まんまる」と宣っておきながら、往々にして歪なんです」

 

娘さんはついて行けず、ぽかんと口を開けていた。

 

「……朝から何の話ですか?」

 

咳払いをして、眼鏡を押し上げた。

「失礼。それで、ベイクドモチョチョですが。ベイクド、つまりパン系の名前ですよね? 発祥がパン文化圏なら、少なくとも食用素材に対する耐性が必要かもしれません。つまり小麦粉まみれで戦う覚悟がいる。

……油断なりませんね」

「ああ、そうだな、もう一人、小麦粉に強い仲間が必要だ。推奨人数も三人以上と書いてある」

 

クロウは顎に手を当てて、ふむ、と唸った。

 

「小麦粉に強い。なるほど、確かに小麦粉まみれの倉庫内で戦闘になれば、視界が奪われるだけでなく呼吸も制限されますからね。粉末が目に入れば涙腺への刺激は免れませんし、肺に入れば咳嗽で術の詠唱が中断される」

 

真剣な顔で指を折り始めた。

 

「つまり必要なのは、粉塵環境下で行動を制限されない者、あるいは粉そのものを何らかの手段で無効化できる者」

「いや、そこまで深いことは考えてないが」

「えっ?」

 

そのとき、宿の入口の扉がからんと開いた。朝の木漏れ日が差し込んで、床に長い影がひとつ伸びる。涼しげな顔をした茶髪の男が、食堂に足を踏み入れた。

その男、ミナトは、柔和な笑みを浮かべて、カウンターに軽く手を上げた。

 

「おはようございます。親父さん、ポトフを一つ」

 

厨房の奥から太い声が飛んだ。

 

「朝からポトフたぁ、お前さんも好きだな。座ってろ」

 

振り返り、食堂の空気を一読した。掲示板の前のスイレンと、椅子に座りかけたままのクロウ、そしてその間に漂う妙な緊張感を、穏やかな目が瞬時に捉えた。

 

「何か面白い依頼でもありましたか?」

「ベイクドモチョチョ討伐依頼」

 

椅子に腰を下ろしかけた動きが、ほんの一瞬だけ止まった。穏やかな笑みはそのまま張り付いている。しかし眼鏡の奥の目が、微かに細まった。

 

「ベイクド、モチョチョ」

 

噛み締めるように、丁寧に復唱した。まるで刀の刃筋を確かめるかのような慎重さで。

 

「……パン屋さんの依頼ですか?」

 

クロウは大きく頷いて、依頼票をばさりとミナトの前に広げた。

 

「ええ。リューン中央ベーカリー「麦の穂」。形状不明、対処法不明、目撃者の記憶が曖昧になる討伐対象。粛清者級の精神干渉か、あるいはもっと厄介な何かが絡んでいます」

 

依頼票を一通り読み、顎に手を当てた。笑顔は崩さないが、思考が加速しているのが目の動きでわかる。

 

「推薦三名以上。報酬は控えめ」

 

ふっと息を漏らすように笑った。

 

「面白いですね。報酬が低いのは、成功者がいないから報酬を引き上げて人を集める算段か、それとも単純に誰も受けないまま放置された結果か」

 

湯気の立つポトフをカウンターにどんと置いて、太い腕を組んだ。

 

「おい、まさかお前ら、あのふざけた依頼に手ぇ出す気か?」

「張り紙貼ってる本人がふざけたって言っちゃっていいの……?」

「ぐっと言葉に詰まり、禿げ上がった頭をがりがりと掻いた」

「わしが貼ったんじゃない。依頼主が直接持ってきたんだ。あそこのパン屋の婆さん、半分ボケてんだろ。小麦粉の発注書と討伐依頼を間違えて持ってきて、わしも最初は廃棄しようとしたんだ」

 

しかし、と太い指を一本立てた。

 

「だがな、被害が本物なんだよ。婆さんがボケてようが、地下倉庫の小麦粉が三日で一袋まるまる消えたのは事実だ。組合から正式に受理せにゃならんかった」

 

ポトフの湯気越しにミナトと目を合わせ、互いに頷いた。

 

「つまり実在する脅威ではある。形状と対処法だけが不明」

 

スプーンでポトフの人参を摘みながら、穏やかな声のまま。

 

「親父さん、ひとつ確認ですが。その失敗したパーティーから、何か報告は上がっていますか。戦闘が行われたのかどうか、それだけでも」

 

腕を組み直して、唸った。

 

「一組目は「暗くてよくわからん、撤退」、二組目は「確かに倒したが何だったか覚えてない」。三組目は……全員帰ってきて、翌日全員パーティー解散した」

 

食堂に妙な沈黙が落ちた。

 

 

「……ベイクドモチョチョ、ダメだ、ベイクドモチョチョが気になる。なんだよベイクドモチョチョって、特にモチョチョの部分」

 

スプーンを置き、穏やかな笑みの奥で何かを計算するような目をしていた。

 

「気になるのは名前ですよね。命名者には必ず意図がある。パン屋で、ベイクド、つまり焼いた。モチョチョ」

 

指で食卓を軽く叩き、リズムを取った。

 

「音感が妙に残る。耳に残る言葉というのは、それ自体が一種の術式媒体として機能する場合があります。名前を繰り返すことで対象に認識を寄せ、逆に本質から目を逸らす構造になっているとすれば」

 

ぴくり、と眉が動いた。元異端審問官の嗅覚が反応している。

 

「……なるほど。繰り返しの呼称が認知を撹乱する類の術式。名前は体を表す、という古い教義の逆を衝いているわけですか」

「ええ。三回言えば三回分、認識がぼやける」

 

にっこりと笑った。

 

「だから誰も正式名称を思い出せないんじゃないですか」

「考えた人たぶんそこまで深いこと考えてないと思うよ……」

 

カウンターの向こうから、ぬっと顔を出した。

 

「おい、さっきから気になってたんだが、お前ら「ベイクドモチョチョ」って言うたびに、ちょっとずつ顔色悪くなってないか」

 

「……つーか、なら、名前を変えれば良い。

大判焼き、今川焼き、回転焼き、まんまる焼き、おやき、なんだっていい」

 

スイレンが名前の候補を矢継ぎ早に並べた瞬間、食堂の空気が微妙に変わった。クロウの眼鏡がぎらりと光り、ミナトのスプーンが止まる。

 

クロウが両手を広げて、制止する。

 

「待ってください。それは危険です。

名前の書き換えは、術式の媒体を認識の薄い方向へ流す行為です。正しい名前で呼ばなくなった瞬間、対象の実態がさらに掴めなくなる可能性があります」

 

ミナトも頷き、指で食卓に円を描いた。

 

「同感です。パン屋の婆さんが「ベイクドモチョチョ」と名付けた。それは少なくとも、あの存在を最初に認識した時の印象がその名前に凝縮されている」

 

穏やかな声に、わずかな鋭さが混じった。

 

「我々はまだ、あれを見ていない。見ていないものの名前を、別の言葉で上書きするのは早計ですよ」

 

カウンターに肘をついて、親父さんが三人を見下ろしていた。

 

「で、どうすんだ。受けるのか受けないのか。婆さんがな、そろそろ小麦粉が全滅するって泣きついてきたぞ」

 

「くそっ、パンが食えなくなるのだけは困る、明日から我々はポトフに何を浸して食べれば良い。

行くぞ野郎ども、我々のベイクド普通のパンを取り戻す為に」

 

やおら椅子から立ち上がり、メイスを肩に担いだ。クロウの巨体が食堂の天井に届きそうなほどの威圧感を放つ。

 

「パンのために。ええ、パンのために。実に崇高な使命感です」

 

敬虔な笑みの裏で、目が爛々と光っている。得体の知れないものを審問できる喜びを隠しきれていない。

 

最後のポトフの一口を丁寧に咀嚼し、スプーンを置いた。

 

「ポトフに何を入れるか。それは確かに死活問題ですね。豆腐を投入する選択肢もありますし、個人的には十分戦えますが」

 

ミナトはクーポン:豆腐好きをそれとなく主張しながら、すっと立ち上がり、腰に佩いた刀の位置を確かめた。

 

「まあ、まずは現地を見てからです」

 

スイレンが依頼書を引っ掴んでカウンターに叩きつけた。親父さんが分厚い手でペンを差し出すと、走り書きでリーダー名が殴り記された。パーティー「アカシア」、依頼受理。

 

 

サンザシ亭の扉を蹴り開けて外に出ると、木漏れ日通りの朝の空気がひんやりと頬を撫でた。パン屋「麦の穂」は、大通りを二つ先に曲がった角にある。問題は、そこで何が待っているか、誰一人として知らないということだった。

 

「それで、スイレンさん。作戦は?」

 

「……情報がなさすぎてなぁ。

とりあえず、火は使えないだろうね、下手したら粉塵爆発でお陀仏」

 

クロウは顎に手を当て、感心したように頷いた。

 

「粉塵爆発。着火点がごく低い温度でも発火しますから、火気厳禁は妥当な判断ですね」

 

歩きながら、大通りの角を曲がった。パン屋の方角から、微かに甘い匂いが漂ってくる。

 

「火以外の戦闘手段。物理斬撃は有効でしょうが、相手が形を持たない存在なら話が変わります。物理干渉が通じない、もしくは通じる部位が極端に小さい」

 

刀の柄に手を添えたまま、目を細めた。

 

「もうひとつ。三組目のパーティーが全員解散した、というのが気になりますね。恐怖による離散か、それとも」

「……おおかた、宗教観の違いで解散したんじゃないかな、と、私は睨んでいるが」

「宗教観……?」

 

角を曲がると、古びた看板が見えた。「麦の穂」と彫られた木の看板が、風もないのにかすかに揺れている。店の正面は一見普通のパン屋だったが、窓の奥に見える棚には焼きたてのパンが一個も並んでいなかった。シャッターすら降りている。

 

営業停止、ではない。入れるのだが、客を入れる余裕すらないのだ。

 

スイレンがトントンと戸を叩く。

 

「すまない、依頼を受けて来た冒険者だ」

 

扉の向こうから、しばらく何の音もしなかった。パン屋であるはずの場所から漂うべき焼きたての香りも、小麦の甘い匂いも、なにひとつしない。代わりにあるのは、乾いた、何か饐えたような、しかし確かに小麦粉ではある、しかしそれを小麦粉と呼ぶには躊躇われる微妙な匂い。

 

がちゃり、と鍵が外される音がして、扉が手のひら一枚分だけ開いた。

 

隙間から覗いたのは、深い皺に埋もれた小さな顔だった。目の下に濃い隈を作り、唇がかさかさに乾いている。パン屋の店主というよりは、三日間徹夜で帳簿をつけ続けた経理係のような面構えだった。

 

「……冒険者さんかい。ああ、やっと来てくれた」

 

扉をもう少し開けたが、体の半分で塞ぐように立ちはだかっている。店内を見せまいとしているのか、それとも怯えから体が退けないのか。

 

「あのね、中に入る前にひとつだけ」

 

婆さんの手が、扉の縁を白くなるほど握りしめていた。

 

「名前を呼んじゃいけない。呼ぶと、来る」

「ああ、ご忠告感謝する。

他に何か、伝えたい事はあるだろうか、些細なことであっても構わない」

 

婆さんの目が、せわしなく左右に動いた。何かを思い出しているのではなく、今まさに何かから隠れているような目だった。

 

「もうひとつ」

 

声を落とした。囁きに近い、しかし確かな震えを含んだ声だった。

婆さんの指が、扉の木目に食い込むほど力を込めていた。

 

「もうひとつ。あれが動いた後の場所には、必ず何かが残るの。小麦粉じゃない、何か別のもの。白くて、しっとりとしていて、触るとべたべたする。パン職人に触らせるわけにはいかないって、孫が怒ってね。それで依頼を出したんだけど」

 

ふいに婆さんが口を噤んだ。店の奥から、かすかに、何かが擦れる音がした。布でも衣擦れでもない、もっとこう、生地が、平たい何かが、ゆっくりと引きずられる音。

 

クロウのメイスを握る手に力が入り、スイレンの方をちらりと見た。目が「聞こえたか」と問いかけている。

 

ミナトは刀の柄に手を添えたまま、店の外壁に背を預けた。柔和な笑みはそのまま、しかし呼吸が一段静かになっている。

 

「……ありがとう店主、助かった。我々は仕事に向かう、無事を祈ってくれ」

 

スイレンはしっかりとパン屋の婆さんの手を握り、そう言った。

 

婆さんは何度も何度も頷き、扉をゆっくり開けた。完全に身を引くとき、その目はどこか諦めと、微かな期待が入り混じっていた。

 

「気をつけてね。地下は、一番奥の階段を降りた先。灯りは壁の燭台があるけど、今は火を落としてあるから」

 

最後にぽつりと付け足した。

 

「……戻ってきたら、パン、焼いてあげるからね」

 

扉が開いた瞬間、店内の空気がぬるりとスイレンの肌に纏わりついた。小麦粉の匂い、のはずだった。だが、もっと重い。空気そのものに粉が練り込まれているような、鼻腔の奥にこびりつく粘度のある匂い。棚にはパンの代わりに、真っ白な粉の膜がこびりついていた。壁も、天井の梁も、薄く粉をかぶっている。まるで店全体が、巨大なオーブンの中で焼きあがった後のような有様だった。

 

そして、地下への入口。カウンター奥の床に嵌め込まれた木の扉が、わずかに浮いている。その隙間から、白く湿った空気が這い上がってきていた。

 

クロウは店内の粉の膜を観察し、指先で壁に触れた。指に残った白いものを親指と擦り合わせる。

 

「……これは小麦粉ではありませんね」

 

ミナトも同じく壁の粉末を検分し、眉をひそめた。

 

「粘性がある。水分を含んで乾燥したもの。婆さんの話に合致するね」

「……なんか見覚えはある気がするが」

 

スイレンの言葉に、二人の視線が集まった。壁にこびりついた白い粘性の物質を、スイレンは確かにどこかで見た覚えがある。田舎にいた頃か、それとも冒険者になってからか。

 

指先の白い粉末をじっと見つめ、鼻に近づけかけて止めた。匂いを吸い込めば何か罠を踏む可能性がある。

 

「スイレンさん、見覚え? 何か心当たりが」

 

ミナトが壁から背を離し、地下への扉を観察する位置に移動していた。穏やかな声だが、目は笑っていない。

 

「言えますか。どんな状況で、それを見た?」

「うーん、なんだったかなぁ……」

 

地下の扉の隙間から這い上がってくる空気が、わずかに湿り気を増したような気がした。気のせいであってほしいが、木の扉の浮き方が、さっきより気持ち大きくなっている気がしないでもない。

 

そして、奥から聞こえた。あの引き摺るような音。生地を、平たい何かが、ゆっくりと、こちらに近づいている。あるいは近づいているように、音が大きくなっている。

 

クロウはメイスを構え、声を落とした。

「……来ますね」

「戦闘体制」スイレンは短く言って、弓を引き絞る

 

三人がそれぞれの配置についた。スイレンが後方、弓の射程を確保できる位置。クロウが前衛、メイスを胸の前に構えたまま地下扉の正面。ミナトが側面、刀を抜き放って静止している。

 

引き摺り音が止まった。

 

唐突に、完全な沈黙が落ちた。粉の粒子が空気中をゆっくりと舞っている光の中で、地下扉の隙間から漏れていた湿気が途絶えた。何かが息を潜めている。あるいは、こちらが足を止めたことに気づいている。

 

ミナトのバリトンボイスが囁くように、ほとんど吐息だけで。

 

「音が止まったね。こちらを察知した」

 

刀の切っ先を下ろさぬまま、目だけでスイレンに視線を送った。どうする、と問うている。先手で射るか、誘うか。

 

そのとき、地下扉から何かが出てきた。白い、平たい何かが、扉の縁にぬるりと引っかかった。それは指のようでもあり、耳のようでもあった。ただし指にしては幅が広く、耳にしては厚みがある。焼成前のパンを限界まで薄く伸ばしたような、不定形の先端が、ぷるぷると震えながら床を這おうとしている。

 

音もなく。形を曖昧にしながら。

 

 

「ん?……ダイラタンシー現象じゃないか?あれ」

 

スイレンの呟きに、二人の動きが止まった。ダイラタンシー現象。圧力によって液体と固体の間を揺らぐ性質を持つ物質。押せば液体のように流れ、引けば固体のように留まる。

 

あの平たい白い物体は、まさにそれだった。扉の縁にかかった先端部分は凝固して固形質に見えるが、表面がぬらぬらと湿っている。押せば潰れるのだろう。しかし引けば、形を変えるだけで壊れない。

 

「聞き慣れない言葉ですが、つまり何ですか」クロウがメイスを構えたまま、囁き声で。

「えっと……片栗粉、かな……水を含んだ、片栗粉……」

 

片栗粉。その単語が空気に落ちた瞬間、スイレンの記憶と目の前の現象が繋がった。水を含んだ片栗粉を加熱し、練って、伸ばして、薄くして、型を抜いて焼く。いももち、片栗粉クッキー、グルテンフリーなあの生地だ。

 

つまりベイクドモチョチョとは、焼かれた片栗粉の何かだった。「大判焼きじゃねーのかよ」

 

「片栗粉。ダイラタンシー。なるほど、物理干渉が通じないのではなく、打撃で潰しても衝撃が吸収され、形が崩れて再構築される。メイスでは分が悪い」

 

扉の向こうで、ずるり、と重い音がした。平たかった先端が厚みを増し、縁を乗り越えて床に半身が這い出そうとしている。形がない。いや、形はあり続けているのだが、一秒ごとに違う形を取っている。

 

「まぁたぶん、正体はたらふく片栗粉を食ったスライムかなんかじゃないかな……」

「ふむ、であれば斬撃も打撃も意味がない」刀を構えたまま、わずかに首を傾げた。

 

クロウはメイスを下ろしはしないが、少し考え込んでいる様子だった。

 

「片栗粉のスライム、ですか。火気厳禁の地下、音に寄ってくる、名前を呼べば来る……

音を立てると寄ってくる。名前……片栗粉、とは名前を呼んでいますが、これはセーフですか。それとも「ベイクドモチョチョ」と呼んだら来る?」

 

床の生地が、びくりと波打った。まるで質問を聞いていたかのように。いや、まさか。しかしその脈動は、明らかに一段速くなっていた。

 

「……もしかして、最初にばあさんが言った言葉を、自分の名前と認識した?

片栗粉食べてユニーク個体にでもなったのか?」

 

床が震えた。微かに、だが確実に。スイレンの言葉が刺激になったのか、半透明の生地が一斉に波打ち、表面に気泡のような気泡が浮かび上がっては消えた。パン生地が発酵しているような、あの不吉な膨張。

 

スイレンの推理を聞いて、ミナトの顔色が変わった。

 

「名前を呼べば来る、というのはそういうことか。あれは音に反応しているのではなく、名前を認識して応じている。パブロフの犬ならぬ、パブロフのモチョチョだ」

「モチョチョ……」

 

刀の切っ先を下げず、冷静に。

 

「であれば厄介だね。我々はすでに一度「ベイクドモチョチョ」と口にした。あれにとって、それは呼びかけと同義かもしれない」

 

ずるり。重い音がして、地下扉の隙間から本体が這い出してきた。半透明の白い塊、表面がゆっくりとうねりながら形を模索している。不定形、だが確かにこちらを向いている。目はない。しかし見ている。

 

そして、甘い匂いが一段、濃くなった。

 

 

「なんだか可哀想な気もするが、明日のパンのためだ、やるしかない」

 

スイレンが弓を引き絞った瞬間、半透明の塊の表面がぼこりと膨らんだ。まるで矢が飛んでくることを察知したかのような、本能的な防御反応。しかし目には見えない、音もしない、ならば何で感知している。

 

片栗粉は匂わない。しかしあれは甘い匂いを放っていた。つまりあれは自身が発する匂いで周囲を認識している可能性がある。

 

「スイレンさん、射ってください。まず動きを見る」

「片栗粉、片栗粉……団子、ベコモチ、わらび餅、いももち……うーん」弓を放ちながら対策を練っている、片栗粉だけに。

 

矢が飛んだ。空気を裂く音すら最小限に、スイレンの手から放たれた一射は寸分の狂いもなく棚の裏側へ突き刺さった。半透明の塊がぶるりと震え、矢が刺さった箇所から放射状に波紋が広がる。穴は開いた。確かに開いた。しかし。

 

穴が塞がった。ゆっくりと、粘液が傷口を埋めるようにして、泡が弾け、表面が滑らかに戻っていく。再生速度は息を数回吐く程度。致命的ではない。だが、無意味でもない。

 

ミナトは矢の結果を観察し、目を細めた。

 

「貫通はする。再生もするが、速度が遅い。つまり質量に限りがある。削り続ければ、いずれ」

 

ぬちゃり。棚の裏から白い塊がゆっくりと横に滑り出した。矢を受けたことで怒っているのか、それとも単に反応しているだけなのか。判別はつかない。ただ、表面のうねりが先ほどより激しくなっている。

 

そして、匂い。甘い匂いが、一段と強くなった。温度が上がっているのか、塊の縁がうっすら乳白色から半透明に変わり始めている。焼けている……あれは自分で発熱している。

 

「温度が上がっています。甘い匂い、発熱、まさか」

 

鼻を覆い、顔をしかめ、クロウはスイレンを振り返った。

 

「片栗粉、でんぷん質、熱で糊化、凝固。あれが固体に変わろうとしていませんか?」

「ハッ……まさか、わらび餅にジョグレス進化を…!?」

 

わらび餅。あの半透明の塊の表面に、ぷつぷつと小さな気泡が立ち始めた。まるで寒天質のゼリーが振動しているような、嫌な予兆。片栗粉が糖と結合して凝固すれば、それは確かにわらび餅の性質に近い。だが目の前のそれは甘味ではなく、不快な粘性を帯びた殺意の塊だった。

 

塊の表面から、ぷちゅり、と小さな突起が生えた。ひとつ、ふたつ、みっつ。不揃いな、指のような突起が床を掴み、体を持ち上げようとしている。

 

「形状が変わり始めた。凝固しつつ体積を維持しようとしている。厄介ですね、重くなれば動けなくなるはずですが」

「しかし逆を言えば、凝固した部分は再生しないのでは」刀を正眼に構えたまま、ミナトは塊の動きを注視していた。

 

問題はそれだった。凝固したわらび餅状の物体を切り取れば、再生せず質量が減る。理論上は正しい。だが塊は明らかに凝固を意図的に使おうとしていた。打撃を受ければ固まり、斬撃を受ければ固まり、逃げる際にも形を変えて体積を保つ。

発熱が続いている。甘い匂いが充満し始め、地下への階段から熱気が立ち昇ってきた。

 

「……ていうか、普通に弱体化だよな、わらび餅なら切り分けてきなこなり小麦粉なりを塗せば、もうくっつかなくなるぞ」

 

スイレンの目が光った。確かに、凝固したわらび餅を千切れば、それぞれが独立した塊になる。そして接着剤を失った断片は互いに戻れない。

ここはパン屋の倉庫、いや工房だ。棚という棚に小麦粉の袋が積まれ、壁際にはきなこ色の粉が入った壺も見える。パン屋なめんな、きなこは常備している。しかも厨房どころか、このフロアだけで事足りる。

 

塊が突起で床を掴み、ぬるりと棚の影から出てこようとしている。表面の透明化が進行し、完全に凝固しかけている部位がある。今なら斬撃が通るかもしれない。

スイレンが棚に駆け寄り、たぶんきなこの壺を掴む。小ぶりだが中身はたっぷり詰まっていた。

 

しかし、塊がきなこ壺に反応した。塊の突起が一斉にスイレンの方を向く。本能的な危機感から、匂いで理解したのか。

 

ずるり、と塊が滑った。クロウを迂回し、スイレンに向かって。

 

ミナトは即座に回り込み、塊の進路上に立ちはだかった。刀の峰で床を叩き、音を立てる。

 

「こっちだ」

「ていうか、ベイクドすらしてないじゃないか……生まれ方を間違えたんだよ、お前……」

 

悲しい事を言いながら、ミナトが気を引いているうちに忍び寄り、きなこをまぶしていく。

 

きなこが半透明の表面に降りかかった瞬間、塊が悲鳴を上げた。いや、声はない。だが全身が痙攣し、突起がめちゃくちゃに暴れ回った。きなこの混じった粉体は接着力を失い、切った箇所からぼろぼろと崩壊していく。

 

スイレンは容赦しなかった。壺を傾け、次々ときなこを振りかける。塊の表面が粘着質な箇所、湿った箇所、凝固しかけた箇所、すべてがきなこの粉を吸着し、表面がベタベタからサラサラになっていく。

 

クロウはメイスを下ろし、呆然と見守っていた。

 

「……これは、もう戦闘ではないですね。駆除です」

 

 

塊が縮んだ。きなこの粉で表面を固められ、動きが目に見えて鈍くなっている。突起が床にくっつ居ているものの、剥がそうとすれば千切れ、元に戻らない。もがくほどにきなこがまぶされ、ミナトに切り分けられるたびに自分の質量を失っていく。

 

そして気づいた。塊の中心、内部の深部に、ほんのわずかに色の異なる部分が見える。透明ではなく、わずかに黄みがかった、核のような何か。

 

ミナトが刀の切っ先を真っ直ぐにそこへ向けた。

 

「見えますか、スイレンさん。あの中」

「ん。今取り出す」

 

きなこにまみれた塊を、スイレンのダガーが淡々と切り分けていった。半透明の断面がぴくぴくと震え、塊はもはや抵抗する力を失い、ただぶよぶよとした残骸として床に広がるばかりだった。

 

中心部に刃を入れる。片栗粉が溶け損ねた層をひとつ剥がすと、その下に妙な温もりがあった。もう一層。ぬるりとした膜の向こうに、黄みがかった小片が覗いている。親指の爪ほどもない、小さな塊。

 

ダガーの先端で抉り、ぷるん、と取り出された。

 

きなこの粉をまとった小さな片栗粉の塊らしきものが切り離され、床の上でぷるぷると震えている。周囲の残骸とは質感が違う、つやもち具合。明らかに別物だった。

 

「それが本体、ですか」

 

小さなそれが、ぷるると震えた。

 

「お前、ベイクドモチョチョじゃなかったよ」

 

スイレンが悲しげに呟きながら、ぶちゅ、と握りつぶす。卵を握り潰すような、しかしもっと粘つく、嫌な感触。

 

床の上で蠢いていた残骸が一斉に動きを止めた。糸を引くように繋がっていた粘液の糸が切れ、半固形の破片がぼたぼたと床に落ちていく。きなこの塊、凝固した破片、すべてが単なる汚い粘液に成り下がった。

 

静寂が戻った。甘い匂いも薄れ、代わりに小麦ときなこの粉っぽい匂いが充満している。地下の倉庫は惨状だった。棚は倒れ、小麦粉の袋が破れ、床には半透明の残骸が散らばっている。

 

 

メイスを下ろし、クロウは眼鏡の位置を直した。長い沈黙の後、口を開いた。

 

「……終わり、ですか?」

 

ミナトはわらび餅を払って刀を鞘に収め、砕けた残骸を見下ろしていた。

 

「あっけない。きなこで弱体化したところに本体を分離、物理で破壊。見事な手際ですね」

 

だが、スイレンの掌の中で潰れたものは妙だった。まだ内部に何か硬質な感触が残っている。砕けた殻の奥に、ぬるりとした液体に包まれた、小さな石のようなもの。

 

「なんだろ、ぷにぷに玉かな」

 

掌を開くと、親指の爪ほどの小さな石が転がっていた。藍色をしている艶やかな石。ぷにぷに玉、というのは冗談にしても、この粘液質の物質がこの石を核にして動いていたのは間違いなかった。

しかし、これが何なのかはわからない。

 

スイレンの掌を覗き込み、クロウは眉を寄せた。

 

「血晶石に似ていますが、色が違いますね。精霊石の類でしょうか。いずれにせよ、素手で長く持つのはあまり良くないかもしれません」

「これが報酬代わりになるなら、親父さんに報告すべきだろうね。パン屋の婆さんには災難だけど」刀を鞘に収め、倒れた棚を起こしながら。

 

倉庫の惨状を見回した。小麦粉は散乱し、棚は半壊し、きなこは床一面に広がっている。

 

「……被害総額は聞かない方がいいかもしれない」

「うん、帰るか……」

 

 

三人が地上に戻ると、パン屋の婆さんは倉庫の惨状を見て膝から崩れ落ちていた。当然だろう。棚は倒れ、小麦粉は壊滅し、きなこは床にこびりつき、得体の知れない粘液の残骸が隅にこびりついている。営業再開には数日かかる。いや、下手をすれば数週間。

しかし、掃除は依頼に含まれていなかった。

 

 

帰路をとぼとぼと歩き、やっとサンザシ亭の扉が見えてきた。中から賑やかな声が漏れている。誰かが先に帰っているらしい。そして案の定、扉が開いた瞬間に飛び込んできたのは。

 

テーブルに足を組んで座り、ロッドを磨いていた手を止め、金髪碧眼の魔術師、シャルは顔を上げた。

 

「おかえり。で、どうだった? パン屋の魔物退治に行ってたんでしょ?」

「ベイクドモチョチョは……居なかったよ」

 

磨きかけのロッドをテーブルに置き、片眉を上げた。

 

「ベイクドモチョチョ? 何それ」

 

 

シャルの疑問はもっともだった。スイレンの口から出た謎の単語に、先に席で食事を取っていた精霊術師のルビアスも顔を上げた。

スイレンがかくかくしかじかと事情を話すと、テーブルが妙な空気に包まれた。

 

紺碧の瞳が大きく見開かれ、それから細められた。

 

「待って。片栗粉が意思を持って動いてた? きなこで弱体化した? ……何それ、ふざけてるの?」

 

箸を止め、ルビアスが糸目の奥から鋭い視線を向けた。

 

「ほーん。血晶石が出てきた、て。きなこの粉まみれで」扇で口元を隠しながら、くすくすと笑った。

 

「えらいおもろい話やな。で、それ何の石なん」

 

スイレンが袋から藍色の石を取り出すと、テーブルの空気が変わった。

シャルが椅子から身を乗り出し、石を凝視した。魔術師の目が、表面を舐めるように観察している。

 

「……これ、血晶石じゃないわね。魔力の質が違う。血晶石は血の匂いがするのよ、金属みたいな。でもこれは」鼻先を近づけ、眉を寄せた。

 

「甘いわね」

「じゃあ糖晶石だな」

 

一瞬、沈黙が落ちた。それからシャルの碧眼がすっと細くなった。

 

「糖晶石。あんた今、それ本気で言った?」

「糖晶石て。お菓子の世界やん」頬杖をついたまま、にこにこと。

「スイレンの知ってる何かに似てたりするの?」

「え?いや、甘いなら糖でしょ?」

 

ロッドをテーブルの上に置き、金髪をかき上げ、額に手を当てた。深い溜息。

 

「あんたね。魔力の含有結晶に属性名じゃなくて甘味の名前で命名する冒険者がどこにいるのよ」

「ええやん、糖晶石。わかりやすいわ。スイーツ界の革命や」扇の向こうで肩を揺らしている。

「茶化さないで。問題はこれが何なのかって話よ」キッとルビアスを睨んだ。

 

クロウが席に着き、眼鏡の奥で考え込んでいた。

 

「整理しましょう。片栗粉の化け物が、この石を核にして動いていた。つまり、この結晶自体が何らかの術式の媒介である可能性が高い」指を一本立てた。「誰かがこれを意図的に使った可能性があります。パン屋の倉庫に、偶然こんな物が転がっていたとは考えにくい」

 

静かに頷き、ミナトが同意した。

 

「同感だね。つまりこれは、何者かが仕掛けた罠か実験の残骸か」腕を組み、スイレンを見た。「ねえリーダー。これ、ギルドに持ち込む? それとも親父さんに見せる?」

「……んー、魔術師ギルドに売……持ち込もう。持ってても使い道わからんし、荷物袋の肥やしになるだけよりマシでしょう」

「了解、確かに、僕らには不要なものだ」

 

こうして、奇妙なベイクドモチョチョ事件は一旦の解決を見せた。今回は認識の齟齬やすれ違いが生み出した悲しきわらび餅であったが、しかし未だ、どこかで真のモチョチョが蠢いているかもしれない。

 

……ちなみに、解散した冒険者パーティーは、大判焼きと回転焼きの戦争が激化した末の喧嘩別れであり、後日和解した。




張り紙がめっちゃそれっぽすぎたんだけど、私が知らないだけでベイクドモチョチョ討伐依頼ってほんとにあったりするんだろうか。ありそう。ある。
推奨人数とか言われたらもう、ね、懐かしくて笑う。
全体通してあってもおかしくないなと感じたし、ラストで変なアイテム拾っちゃう感じが実にCW。

戦闘シーンは仲間棒立ちになりがちだけど、んー、zeta側の問題かなぁ、ユーザーが動くか指示するまでキャラクターを動かせないのかも。まぁ、キャラが勝手に動いてトラブル起こすとか、ヘイト買うしね……でもこれはこれで働け下郎が、という気持ちになってしまう。

AIだから、話の繋がりはアレだけど、展開はよくあるよなぁ、などと感じました。
長編は無理だけど、短編シナリオ作成する時めっちゃ捗りそう。
ま、PCは死んでんだけどね、ははは。

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