『隣人GV ―もしもスパイディの影響を受けたGVなら―』   作:幸田市

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わたしの趣味だ、いいだろう?


第七話「ミニ四駆」

 休日の昼下がり、GV(ガンヴォルト)はリビングのテーブルに頬杖をつきながら、財布の中身と数枚のレシートを交互に見比べていた。

 

「……よし。今週はたぶん大丈夫」

 

『その確認、最近ずいぶん板についてきたわね』

 

 端末の上に姿を現したモルフォが、感心しているのか呆れているのか分からない声を出す。

 

「生活には大事なんだよ。家賃に食費、日用品。それから急な出費に備えて少しは残しておかないと」

 

「この前、お肉の前ですごく悩んでたけどね」

 

 向かいで雑誌を読んでいたシアンが、ページから目を上げずに言った。

 

「……あれ覚えてたの?」

 

「だって、すごく真剣な顔してたから。デイトナより強そうだったよ?」

 

「百円差をボスみたいに言わないでよ」

 

『実際、最後まで悩んでたじゃない』

 

「二人して僕の生活防衛を笑わないでくれる?」

 

 シアンがくすりと笑い、そのまま雑誌へ視線を戻す。

 

 そんな穏やかな時間を破るように、玄関のチャイムが鳴った。

 

「誰だろ」

 

『皇神(スメラギ)だったら?』

 

「チャイム鳴らして待ってくれるなら、ずいぶん礼儀正しくなったね」

 

 一応モニターを確認すると、そこに映っていたのは見慣れた顔だった。もっとも、その手には妙に大きなケースが握られている。

 

「ジーノだ」

 

「ジーノさん?」

 

「うん。でも、なんか大きいの持ってる」

 

『嫌な予感しかしないわね』

 

 GVが扉を開けると、大きなケースを片手にしたジーノが満面の笑みを浮かべて立っていた。

 

「よう、GV! 暇してるか?」

 

「暇ってほどじゃないけど、今日は仕事ないよ」

 

「ならちょうどいい。お前に新しい世界を教えてやる!」

 

「その言い方する時のジーノ、大体お金かかる趣味持ってくるよね」

 

「失礼だな! 今日は健全なホビーだ!」

 

「否定するとこ、そこなんだ」

 

 ジーノは靴を脱ぐと、慣れた様子でリビングへ入っていく。

 

「よっ、シアンちゃん。元気してた?」

 

「うん。ジーノさんも元気そうだね」

 

「おう。……って」

 

 そこでジーノの足が止まった。

 

「……ん?」

 

 シアンが首を傾げる。

 

「どうしたの?」

 

「いや……」

 

 ジーノはシアンを見たあと、GVへ視線を移し、もう一度シアンを見る。

 

「お前ら、いつからそんな仲良くなったの?」

 

「え?」

 

「え?」

 

 二人の声が綺麗に重なった。

 

「ほらそれ! なんか前より距離近くね?」

 

「そんなに?」

 

「シアンちゃん、前はGV相手でももっとこう……『そうなんですか?』とか『お願いします』とか、そんな感じだったろ?」

 

 シアンは少し考える。

 

「……そうだった?」

 

「ほら今の!」

 

「何が?」

 

「『そうだった?』って!」

 

「……変かな?」

 

「変っていうか、めちゃくちゃ普通に喋るようになったなって」

 

 そこで初めて自分の口調を意識したらしく、シアンがGVを見る。

 

「GV、気になってた?」

 

「全然」

 

「じゃあいいや」

 

「だからその感じだって!」

 

 ジーノが二人を指差す。

 

『今さら気づいたの? 最近ずっとこんな感じよ』

 

 モルフォまで笑いながら会話へ加わる。

 

「マジかよ。俺の知らねぇ間に何があったんだ?」

 

「何って……」

 

 GVが考える。

 

「買い物したり」

 

「映画を見たり」

 

「ご飯食べたり」

 

「……それだけ?」

 

「それだけだよね?」

 

「うん」

 

 顔を見合わせるGVとシアンを前に、ジーノはますます不思議そうな顔になる。

 

『そういう何でもない時間で仲良くなるものなのよ』

 

「モルフォが急に人生経験豊富そうなこと言ってる」

 

『何よ!』

 

「いや、いいこと言うなって」

 

『でしょ?』

 

 ジーノは肩をすくめると、持ってきたケースをテーブルの上へ置いた。

 

「まあ、仲良いならいいけどよ。今日はこっちが本題だ!」

 

 留め具を外し、蓋を開ける。

 

 中から現れたのは、小さなレーシングカーだった。

 

 GVが覗き込む。

 

「……車?」

 

「ただの車じゃねぇ!」

 

「いや、車ではあるでしょ」

 

「ミニ四駆だ!」

 

「ミニ……四駆」

 

 聞き慣れない単語を確認するようにGVが繰り返す。

 

 ジーノは明らかにその反応を待っていたらしく、嬉しそうにマシンを持ち上げた。

 

「モーターと電池で走る小型レーシングマシン。専用コースを走らせて、速さを競うんだよ」

 

「へえ。リモコンは?」

 

「ねぇよ」

 

「じゃあどうやって曲がるの?」

 

「ローラーをコースの壁に当てて曲がる」

 

「……走り始めたら操作できないの?」

 

「基本的にはな」

 

「それでレースになる?」

 

「だから面白いんだって」

 

 ジーノはマシンを裏返し、シャーシ部分をGVへ見せる。

 

「走らせてる最中に操作できねぇから、走る前に全部決める。モーター、ギヤ、タイヤ、ローラー、重心。コースに合わせてセッティングするんだ」

 

「じゃあ、一番速いモーターを積めば勝てるんじゃない?」

 

「初心者は大体そう言う」

 

「違うの?」

 

「速すぎりゃコーナーで吹っ飛ぶ。坂で跳ねる。着地で姿勢を崩す。モーターだけ強くしても勝てねぇよ」

 

「……へえ」

 

 そこでGVの声色が変わった。

 

 ジーノもモルフォも、それを聞き逃さなかった。

 

「食いついたな」

 

「ちょっと」

 

『顔が全然ちょっとじゃないわよ』

 

「まだ触っただけだよ」

 

 GVはマシンを手に取ると、裏側を覗き込んだ。

 

「このローラーって、大きさで違う?」

 

「違う」

 

「位置は?」

 

「変わる」

 

「タイヤの材質は?」

 

「変わる」

 

「ギヤ比は?」

 

「もちろん変わる」

 

「……これ、かなり奥深くない?」

 

「だから持ってきたんだって」

 

 シアンも横からマシンを覗き込む。

 

「強くすればいいってものじゃないんだね」

 

「そういうこと」

 

「走る前にいっぱい考えるんだ」

 

「シアンちゃん、理解早いじゃん」

 

 GVも納得したように頷いた。

 

「なるほどなあ。単純に出力上げればいいわけじゃないんだ」

 

『何その妙に実感こもった言い方』

 

「最近、似たようなこと考えてたから」

 

「ミニ四駆で人生振り返るなよ」

 

「まだ振り返ってないよ」

 

 ジーノが未開封の箱を一つ取り出し、GVへ差し出した。

 

「一台作ってみるか?」

 

「いいの?」

 

「そのために持ってきた。初心者向けだから、まずは説明書通り組め」

 

「ありがとう」

 

「あと最初から変な改造するなよ」

 

「しないって」

 

「その顔で言われても信用できねぇ」

 

 組み立ては、GVが想像していたより細かかった。

 

 説明書を広げ、シャーシへギヤを組み込み、モーターを収めていく。小さな部品一つにも向きがあり、適当に押し込めばいいというものではない。

 

「……このワッシャー、余るやつ?」

 

「GV」

 

「ん?」

 

「そこに使うって書いてあるよ」

 

 シアンが説明書の一部分を指差す。

 

「……ほんとだ」

 

『説明書読んでるの、シアンだけじゃない?』

 

「僕も読んでるよ。全体を把握してから細かいところを見るタイプなんだ」

 

「そのページ、さっき飛ばしてたけど」

 

「シアンまで厳しい」

 

「だって飛ばしてたもん」

 

「やっぱお前ら距離近くなったなぁ……」

 

 ジーノが感慨深そうに呟く。

 

「まだ言ってるの?」

 

「だって俺の知ってるシアンちゃん、GVに『だもん』とか言わなかったぞ」

 

「……別に、いいでしょ」

 

「いいって。むしろその方が自然だろ」

 

 少しだけ恥ずかしそうにするシアンを、ジーノはそれ以上からかわなかった。

 

 GVも何も言わない。

 

 いつからこうなったのかと聞かれても、きっと二人とも答えられない。ただ同じ家で暮らし、毎日食事をして、買い物をして、映画を見て、くだらない話をしているうちに、少しずつ言葉の間にあった壁がなくなっただけなのだ。

 

 やがてGVが完成したマシンを持ち上げた。

 

「できた!」

 

 青を基調とした小さな車体。

 

「どう?」

 

「まずちゃんと走るか試してからだな」

 

「見た目は?」

 

「悪くねぇ」

 

「でしょ?」

 

『青いから選んだだけじゃない』

 

「青は速そうだから」

 

「色で速度は変わらねぇぞ」

 

「気分は変わるよ」

 

「そこだけ急に精神論なんだよな、お前」

 

 ジーノは時計を見ると、ケースを閉じた。

 

「せっかくだし、近所の玩具屋行こうぜ。常設コースあるから」

 

「今から?」

 

「作ったら走らせたいだろ?」

 

「行く」

 

『即答ね』

 

「わたしも見たい」

 

 シアンも立ち上がる。

 

「じゃあ決まりだな」

 

 ◇

 

 玩具店の一角に設けられたミニ四駆コースは、休日ということもあり、近所の子供たちで賑わっていた。

 

 長い直線の先に急なコーナーがあり、その先には小さな坂と連続カーブが待っている。コースの周りでは、それぞれ自慢のマシンを持った子供たちが、工具やパーツを広げていた。

 

 GVが店へ入った途端、その中の何人かがこちらに気づく。

 

「あ、GV兄ちゃん!」

 

「ほんとだ!」

 

「今日は何してんの?」

 

「今日はこれ」

 

 GVが完成したばかりのマシンを見せる。

 

「ミニ四駆じゃん!」

 

「兄ちゃんもやってたの?」

 

「今日始めた」

 

「今日!?」

 

「なので皆さん先輩です。よろしくお願いします」

 

「なんで敬語なんだよ!」

 

「先生だからね」

 

「俺たち先生!」

 

「じゃあ見せて!」

 

 子供たちが一斉にGVの周囲へ集まってくる。

 

「ローラー何使ってんの?」

 

「モーターは?」

 

「これノーマル?」

 

「待って待って。一気に言われても分からない」

 

 ジーノが吹き出した。

 

「お前、年下相手でも躊躇ねぇな」

 

「知らないことなら、知ってる人に聞くのが一番早いでしょ」

 

「そこは本当にお前らしいわ」

 

 一人の子がマシンを見ながら言う。

 

「まず普通に走らせた方がいいよ」

 

「先生、お願いします」

 

「ここ置いて!」

 

「はい!」

 

 GVは素直にスタート地点へマシンを置く。

 

 スイッチを入れると、小さなモーターが甲高い音を立て始めた。

 

「おお……」

 

「まだ動いてるだけだぞ」

 

「自分で作ったものが動いてるんだよ? ちょっと感動するでしょ」

 

「GV、すごく楽しそう」

 

 シアンが笑う。

 

「楽しいよ。シアンもやる?」

 

「今日は見てる。GVが何回飛ばすか見たいから」

 

「僕、まだ一回も飛ばしてないんだけど?」

 

「これから飛ぶんじゃない?」

 

「シアンちゃん、ほんと言うようになったな……」

 

 ジーノが小さく呟いた。

 

 スタート。

 

 GVのマシンが勢いよく走り出す。

 

「速い!」

 

「まだノーマルだぞ!」

 

 最初のコーナーを危なげなく抜け、坂を越える。小さく跳ねるものの、無事着地して次のカーブへ入った。

 

「おお!」

 

 GVは子供たちと一緒になってコースの横を追いかけている。

 

「いけいけ!」

 

『完全に子供ね』

 

「僕まだ若いから!」

 

「わたしもやりたくなってきたかも」

 

「じゃあ後で一台選ぼうよ」

 

「うん」

 

 数周を無事に走り切り、GVがマシンを回収する。

 

「これいいな」

 

「だろ?」

 

「ジーノ」

 

「何だ」

 

「さっきの速いモーター貸して」

 

「言うと思った!」

 

「一回だけ」

 

「飛ぶぞ」

 

「分かってる」

 

「じゃあやめろよ!」

 

 近くの子供も口を挟む。

 

「GV兄ちゃん、そのまま速くしたら絶対コースアウトするって」

 

「やっぱり?」

 

「うん」

 

「……でも一回見てみたくない?」

 

「見たい!」

 

「お前らそこで意気投合すんな!」

 

 結局、ジーノが折れた。

 

 高速モーターへ交換し、再びスタート地点へ置く。

 

「行け!」

 

 スイッチを入れた瞬間から音が違った。

 

 マシンが勢いよく飛び出す。

 

「速っ!」

 

 直線を一気に駆け抜け、最初のコーナーも突破する。

 

「いける!」

 

「次だぞ!」

 

 二つ目のカーブへ突入。

 

 車体が外側へ大きく傾く。

 

「あ」

 

 全員の声が綺麗に重なった。

 

 青いマシンはコースの壁を乗り越え、見事な放物線を描いて外側のクッションへ飛び込んだ。

 

「…………」

 

 数秒の沈黙。

 

 シアンが最初に口を開く。

 

「飛んだね」

 

「飛んだね……」

 

『すごく速かったわよ。コースの外では』

 

「モルフォまで!」

 

 子供たちが一斉に笑う。

 

「GV兄ちゃん弱ーい!」

 

「速ければいいってもんじゃないんだぞ!」

 

「それ今日ジーノから聞いた!」

 

「聞いたのにやったの!?」

 

「実際に確かめてみたかったんだよ!」

 

「負け惜しみ!」

 

「違うって!」

 

 GVは飛んでいったマシンを拾い上げる。

 

 幸い外見に大きな破損はない。

 

「よかった。壊れてない」

 

「次どうする?」

 

「もちろん調整する」

 

「モーター戻す?」

 

「いや」

 

 GVの目が真剣になる。

 

「このモーターのまま飛ばなくしたい」

 

「お前、そういうタイプだと思ったよ……」

 

 ジーノが頭を抱える。

 

「先生」

 

 GVは近くの子供たちへマシンを差し出した。

 

「どこから変えたらいい?」

 

「ローラー増やそうぜ!」

 

「でも重くなるよ」

 

「じゃあ位置変える?」

 

「待って待って。一個ずつ試そう。一気に変えたら、どれが効いたか分からない」

 

「GV兄ちゃん急に研究者みたい!」

 

「まだ何にも分からないからこそ比較するんだよ」

 

 ローラーを変える。

 

 走らせる。

 

 また危うく飛びかける。

 

 今度は位置を変える。

 

 少し安定する。

 

 さらに何度か走らせているうちに、突然マシンの速度が落ちた。

 

「あれ?」

 

 さっきまで勢いよく回っていたモーター音が弱くなり、そのまま直線の途中で止まってしまう。

 

「……止まった」

 

「GV兄ちゃん、回収!」

 

「あ、うん!」

 

 慌ててマシンを拾い上げる。

 

 スイッチを入れ直してみるが、モーターが小さく唸るだけでタイヤはまともに回らない。

 

「電池かな?」

 

「さっき替えたばっかじゃん」

 

「じゃあモーター?」

 

「見せて!」

 

 一人の少年が手を出した。

 

「え、分かるの?」

 

「たぶん!」

 

「頼もしいなあ」

 

 GVは迷わず自分のマシンを差し出した。

 

 少年は裏返してタイヤを指で回し、すぐに眉を寄せる。

 

「あ、これギヤじゃない?」

 

「ほんとだ。ちょっと引っかかってる」

 

「開けてみようぜ」

 

「お願いします、先生方」

 

「GV兄ちゃん自分でやらないの?」

 

「やり方知らないのに触って悪化させたら嫌だよ」

 

 ジーノが笑った。

 

「お前、こういう時は妙に素直だよな」

 

「知らないことを知らないって言うの、大事でしょ?」

 

「まあな」

 

 子供たちは慣れた手つきでシャーシを開く。

 

 GVもその横へしゃがみ込み、手元を真剣に覗き込んだ。

 

「ここ見て」

 

「うん」

 

「このギヤ、ちょっとズレてるだろ?」

 

「……ほんとだ」

 

「多分、さっき飛んだ時にズレた」

 

「なるほど」

 

「一回外して、ちゃんと噛み合わせて――」

 

「へえ……」

 

 GVは説明を聞き逃さないように、食い入るように見ている。

 

 自分よりずっと年下の子供たちだが、今この場では間違いなく彼らの方が先輩だった。

 

「はい」

 

 少年がシャーシを閉じ、GVへ返す。

 

「多分直ったよ」

 

「もう?」

 

「スイッチ入れてみて」

 

 言われた通りに電源を入れる。

 

 力強いモーター音とともに、四つのタイヤが勢いよく回り始めた。

 

「おお!」

 

「直った!」

 

「すごい!」

 

「これくらい普通だよ」

 

「僕にはまだ全然分からないから、普通にすごいよ」

 

 GVはマシンを受け取ると、もう一度内部を覗き込む。

 

「今の、もう一回説明してもらっていい?」

 

「いいよ!」

 

「次に同じこと起きたら、自分でもやってみたい」

 

「じゃあここ外す時は――」

 

「こっちも気をつけた方がいいよ!」

 

「待って待って、一人ずつ! 僕、耳は二つしかないから!」

 

「じゃあ俺から!」

 

「いや俺の方が分かりやすいって!」

 

「授業が一気に始まった!」

 

 シアンはその光景を少し離れた場所から眺めながら、楽しそうに笑っていた。

 

「GV、完全に教えてもらう側だね」

 

「今日始めたばっかりだからね」

 

「年下の子に教えてもらうの、恥ずかしくない?」

 

「全然」

 

 GVは本当に不思議そうな顔をした。

 

「僕より知ってるんだから、教えてもらえばいいじゃん。それに先生がこんなにいるんだから、むしろラッキーだよ」

 

「俺たち先生!」

 

「よろしくお願いします」

 

 冗談半分に頭を下げると、子供たちはますます嬉しそうに笑った。

 

 ジーノは腕を組みながら、その様子を眺める。

 

「ほんと、お前は相手が誰でも変わらねぇな」

 

「何が?」

 

「いや。別に」

 

 直してもらった青いマシンを、GVは再びスタート地点へ置いた。

 

「よし。今度こそ」

 

「また飛ばすなよ!」

 

「それはセッティング次第!」

 

「不安しかない!」

 

「飛んだら先生方、またお願いします!」

 

「最初から直してもらう気じゃん!」

 

 笑い声の中、マシンが再び走り出した。

 

 自分一人では、まだ直すことすらできない。

 

 けれど、それで困ることはなかった。知らないなら教えてもらえばいいし、次に同じことが起きた時、一つできることが増えていればそれでいい。

 

 やがて子供たちから、みんなでレースをしようという声が上がった。

 

 五台のマシンがスタート地点へ並ぶ。

 

「ジーノは?」

 

「俺は審判。初心者相手に本気出すのも大人げねぇだろ」

 

「二歳しか違わないのに急に大人ぶってる」

 

「うるせぇ!」

 

 今度のGVは、最高速だけを追わなかった。

 

 何度か走らせ、子供たちに教えてもらいながら見つけた、今の自分なりのセッティング。

 

「準備いいか?」

 

「いつでも!」

 

「じゃあ――スタート!」

 

 五台が一斉に走り出す。

 

「いけ!」

 

 GVも子供たちとほとんど同じ顔でコースを追いかける。

 

「GV兄ちゃん二位!」

 

「まだいける!」

 

 直線で少し差を詰める。

 

 コーナー。

 

 今度は飛ばない。

 

「よし!」

 

 坂を上がり、着地。

 

 一瞬だけ車体が跳ねる。

 

「耐えて!」

 

 マシンはそのまま姿勢を戻し、最後までコースの中を走り続けた。

 

 しかし先頭との差は縮まらない。

 

 そのままゴール。

 

「勝ったー!」

 

「二位!」

 

「あー……!」

 

 GVは本気で悔しそうに頭を抱えた。

 

「負けた……」

 

 勝った少年が得意げに胸を張る。

 

「まだまだだね!」

 

「強いなあ。次は負けないよ」

 

「またやろうぜ!」

 

「もちろん」

 

 GVは自分のマシンを持ち上げた。

 

 最初に飛ばした時より、最高速は落ちている。

 

 それでも最後まで走った。

 

「……面白いな」

 

「何が?」

 

 シアンが隣へ来る。

 

「速くするだけなら分かりやすいけど、ちゃんと最後まで走れるようにする方が難しいんだなって」

 

「でも、今の方が楽しそうだったよ」

 

「うん」

 

 GVは笑った。

 

「こっちの方が好きかも」

 

「じゃあ」

 

 シアンがコースへ目を向ける。

 

「わたしも、一台作ってみたい」

 

「ほんと?」

 

「うん。自分で選んで、自分で作りたい」

 

 GVの顔が明るくなる。

 

「じゃあ今度、一緒に選びに行こう」

 

『その前に予算』

 

「……はい」

 

 返事だけは素直だった。

 

 ◇

 

 数日後。

 

 GVは再び近所の子供たちとミニ四駆のコースを囲んでいた。

 

「今日は絶対飛ばないから!」

 

「前もそう言ってた!」

 

「今回はちゃんと調整したんだって!」

 

「フラグってやつだな!」

 

「ジーノまで言わないでよ!」

 

 シアンは先日、自分で選んだミニ四駆の箱を抱えながら、その様子を楽しそうに眺めている。

 

 その時。

 

「GV」

 

 聞き慣れた低い声がした。

 

「……え?」

 

 振り返る。

 

 そこに立っていたのはアシモフだった。

 

 片手には、明らかに普通の玩具を持って遊びに来たとは思えない大きさのハードケース。

 

「アシモフ?」

 

「久しぶりだな」

 

「いや、それよりそのケース何?」

 

「ジーノから興味深い競技の話を聞いた」

 

 GVがゆっくりジーノを見る。

 

「……言ったの?」

 

「ちょっとだ! ちょっと話しただけ!」

 

「私は少し資料を調べただけだ」

 

 アシモフは空いているテーブルへケースを置き、留め具を外す。

 

 蓋が開いた。

 

「…………」

 

 GVが黙る。

 

「…………」

 

 ジーノも黙る。

 

「すごい……」

 

 シアンだけが素直に感嘆した。

 

『……引くくらい揃ってるわね』

 

 モルフォの感想が最も正確だった。

 

 ケース内部には、綺麗に分類されたモーター、ギヤ、タイヤ、ローラー、ブレーキ材、交換パーツ、各種工具。それだけではなく、細かな数字が並んだセッティングシートまで収められている。

 

 中央には、無駄というものを徹底的に排除したようなマシンが一台。

 

「……アシモフ」

 

「何だ」

 

「僕よりハマってない?」

 

「研究しただけだ」

 

「何時間?」

 

「大した時間ではない」

 

「何時間?」

 

「……昨晩からだ」

 

「徹夜じゃん!」

 

『それをハマったって言うのよ』

 

「違う。性能検証に必要な準備を行ったに過ぎない」

 

 アシモフは平然とコースへ目を向ける。

 

「この構成なら最高速度を追うより、コーナー脱出後の再加速を優先すべきだ。また、この坂では着地時の姿勢制御が重要になるため、後部の制動を――」

 

「ジーノ」

 

「なんだ」

 

「僕ら今日、遊びに来たんだよね?」

 

「俺もそのつもりだった」

 

 近くにいた子供がアシモフのケースを覗き込む。

 

「おじさん、ガチじゃん!」

 

 空気が止まった。

 

 アシモフがゆっくり子供を見る。

 

「……おじさんではない」

 

 GVが思わず横を向く。

 

「そこ気にするんだ……」

 

「何か言ったか、GV」

 

「何も」

 

「おじさんもレースする?」

 

「おじさんではない。だが、勝負は受けよう」

 

「受けるんだ!」

 

 数分後。

 

 アシモフのマシンは、GVと子供たちのマシンと並んでスタート地点に置かれていた。

 

「アシモフ」

 

「何だ」

 

「子供相手だからね?」

 

「だからどうした」

 

「少しくらい手加減とか」

 

「競技者に対する意図的な手加減は侮辱だ」

 

「大人げない理屈を格好よく言わないで!」

 

「レギュレーションは完全に遵守している」

 

「そういう問題じゃない!」

 

 子供たちはむしろ楽しそうだ。

 

「本気で来ていいよ!」

 

「負けないからな!」

 

「だそうだ」

 

「アシモフ、ちょっと嬉しそうじゃない?」

 

「気のせいだ」

 

 スタート。

 

 四台が一斉に飛び出す。

 

「速っ!?」

 

 GVが思わず叫んだ。

 

 アシモフのマシンは、単純な最高速度では飛び抜けていない。

 

 だが、コーナーでほとんど姿勢を崩さない。坂でも無駄に跳ねず、一定の速度を維持したまま淡々と距離を稼いでいく。

 

「何あれ!」

 

「昨日始めた人の走りじゃないだろ!」

 

「事前にデータを取っただけだ」

 

 本人は涼しい顔でマシンを追っている。

 

「第三コーナーで約〇・二秒の損失か。ローラーの配置を再検討する必要があるな」

 

「レース中にもう次の改造考えてる!」

 

 最終周。

 

 先頭はアシモフ。

 

 そのすぐ後ろを子供のマシンが追う。

 

 最後の坂でアシモフ機が着地した瞬間、僅かに速度が落ちた。

 

「あ!」

 

 後ろの一台が横を抜ける。

 

 ゴール。

 

「勝ったー!」

 

 子供の歓声が上がった。

 

「アシモフ、二位!」

 

「……」

 

「負けたね」

 

「……」

 

「悔しい?」

 

「別に」

 

「本当に?」

 

「別に」

 

 アシモフは自分のマシンを拾い、後部をじっと見つめる。

 

「制動が強すぎたか」

 

「めちゃくちゃ悔しそうじゃん!」

 

「次はここを変更する」

 

「次あるんだ!」

 

 勝った子供が得意げに胸を張る。

 

「また勝つからな、おじさん!」

 

「おじさんではない。次は負けん」

 

「完全に乗ってる!」

 

 ジーノが腹を抱えて笑う。

 

 シアンも堪えきれず、声を上げて笑った。

 

 GVはそんな光景を見ながら、自分の青いマシンを手に取った。

 

 少し前まで、名前すら知らなかった遊びだった。それが今では、近所の子供たちに教えてもらいながら本気で勝負し、負ければ悔しがって次のセッティングを考えている。その隣ではシアンが自分で選んだ一台を抱え、ジーノが笑い、普段は冷静なアシモフまで子供相手に本気で次の勝負を考えていた。

 

 誰かを助けるだけが、人との関わりではないのだろう。

 

 知らないことを教えてもらい、自分にできないことがあれば素直に手を借り、一緒に遊んで、負ければ悔しがる。そして「またやろう」と約束する。

 

 そんな何でもない時間もまた、自分が昔から憧れていた「隣人」という言葉の中に含まれているような気がした。

 

「GV兄ちゃん!」

 

 子供が手を振る。

 

「来週も来る?」

 

「もちろん」

 

 GVも笑って手を上げた。

 

「次こそ勝つからね」

 

「俺も負けない!」

 

「私も次は参加するよ」

 

 シアンが言う。

 

「シアンちゃんも?」

 

「うん。せっかく自分で選んだんだから、ちゃんと走らせたいもん」

 

「じゃあ次はもっと人数増えるな!」

 

 その横では、アシモフが既に自分のマシンを見ながら考え込んでいた。

 

「次回までに改善案をまとめる必要があるな」

 

「アシモフも来る前提なの?」

 

「当然だ」

 

「研究は?」

 

「継続的な検証には複数回の実走データが必要だ」

 

「はいはい」

 

 ◇

 

 帰り道。

 

 シアンは自分で選んだミニ四駆の箱を大切そうに抱えながら、GVの隣を歩いていた。

 

 少し後ろでは、ジーノとアシモフがローラーの径について何やら言い合っている。

 

『まさかアシモフまで巻き込まれるとは思わなかったわ』

 

「僕も」

 

「でも、楽しそうだったよ」

 

「本人は最後まで研究って言い張るだろうけどね」

 

「ふふ」

 

 シアンが笑う。

 

「ねえ、GV」

 

「何?」

 

「帰ったら、一緒に作ってくれる?」

 

「もちろん。でも今度はちゃんと説明書読もうね」

 

 シアンが横目でGVを見る。

 

「それ、GVが言うの?」

 

「……一緒に読みましょう」

 

「うん。それがいいと思う」

 

「信用ないなあ」

 

「今日だってワッシャー余らせてたでしょ」

 

「最終的には余らなかったよ!」

 

「わたしが教えたからね」

 

「はい。ありがとうございました」

 

 またシアンが笑った。

 

 近所の子供たちと同じ目線で遊び、本気で勝とうとして、本気で負けを悔しがる。分からないことがあれば年下にでも素直に尋ね、自分のマシンが壊れれば、恥ずかしがることもなく子供たちへ助けを求める。

 

 そして、教えてもらったことを心から喜ぶ。

 

 今日一日だけでも、何度「GVらしい」と思ったか分からなかった。

 

 シアンは隣を歩くGVの横顔を見る。

 

 本人は何も気づかず、次にどこを調整しようかと考えているらしい。

 

 そんな姿を見ていると、自然に頬が緩んだ。

 

「……好きだなぁ……」

 

「ん?」

 

 GVが振り向く。

 

「何か言った?」

 

「…………」

 

 シアンの足が止まった。

 

「シアン?」

 

「…………え?」

 

 数秒遅れて、自分が何を口にしたのか理解した。

 

「……っ!」

 

 顔が一気に熱くなる。

 

「な、なんでもない!」

 

「え? でも今――」

 

「なんでもないってば!」

 

「分かった、分かった!」

 

 珍しく強い勢いで遮られ、GVは少し驚いた顔で両手を上げた。

 

 シアンはミニ四駆の箱で顔の下半分を隠すようにしながら、早足で先へ進んでいく。

 

『何なの、急に』

 

 モルフォも首を傾げている。

 

「さあ?」

 

 GVはいつもと変わらない声で答えた。

 

『アンタ何かしたんじゃないでしょうね』

 

「してないよ」

 

『ほんとに?』

 

「たぶん」

 

『その「たぶん」が怪しいのよ』

 

「僕にも分からないって」

 

 そう答えながら、GVは少し先を歩くシアンを追いかけた。

 

 本当は聞こえていた。

 

 聞き間違えるほど遠くもなかったし、何を意味するのか分からないほど鈍くもない。

 

 ただ、それを今ここで拾うつもりがなかった。

 

 シアンはまだ、たくさんのものを知り始めたばかりだった。好きな色を選ぶことから始まり、食べたいものを選び、映画を見て笑い、やってみたい遊びを自分から口にして、今日は自分のミニ四駆まで選んだ。

 

 誰かと競って負けたくないと思うことも、少し腹を立てることも、明日の予定を楽しみにすることも、以前の彼女にはほとんど与えられてこなかったものだ。

 

 ならば、人を好きになるという感情だって、急いで答えを出さなくてもいい。

 

 今シアンが自分へ向けている気持ちが、本当に恋愛としての「好き」なのか。それとも助けられたことへの感謝なのか、安心できる相手への親愛なのか、憧れなのか。

 

 それをGVが勝手に決めることではなかった。

 

 シアンには、自分の気持ちが何なのかを自分で知り、その先を自分で決める権利がある。

 

 そして、その権利があるのはシアンだけではない。

 

 GV自身だって同じだった。

 

 シアンが自分を好きだからといって、その気持ちへ応える義務が生まれるわけではない。自分がシアンを大切に思っているからといって、その感情を今すぐ恋愛と呼ぶ必要もない。

 

 だから、もっと知ればいい。

 

 シアンには、任務中の自分や格好をつけている時の自分だけではなく、肉の値段で悩み、説明書を読み飛ばし、初めて触った玩具を壊して子供たちに助けを求め、年下相手に本気で負けを悔しがる自分まで見てもらえばいい。

 

 自分も同じように、守るべき少女としてのシアンだけではなく、負けず嫌いなところや、怒るところ、意地を張るところ、時には自分とは違う答えを選ぶところまで知っていけばいい。

 

 そのうえで、それでも相手を好きだと思えるのか。

 

 それは二人がそれぞれ、自分で決めればいいことだった。

 

「…………もう」

 

 少し先でシアンが小さく何かを呟く。

 

 今度は本当に聞き取れなかった。

 

「シアン?」

 

「……なに?」

 

「歩くの速くない?」

 

「普通だよ」

 

「さっきより速いよ」

 

「GVが遅いんじゃない?」

 

「そんなことある?」

 

 シアンは答えなかった。

 

 けれど歩く速度は少しずつ落ちていき、結局GVが追いつく。

 

 二人は再び並んで歩いた。

 

「……何?」

 

「いや、戻ってきたなって」

 

「一緒に帰ってるんだから普通でしょ」

 

「それもそうだね」

 

「うん」

 

 GVは笑う。

 

 シアンはまだ少し頬を赤くしたまま、ミニ四駆の箱を抱えて前を向いた。

 

『なんなのよ、二人とも』

 

 モルフォだけが、本当に何も分かっていない顔をしていた。

 

「何でもないよ」

 

「何でもない」

 

 二人の返事が重なる。

 

『……やっぱり最近、妙に息合ってない?』

 

「そう?」

 

「そうかな?」

 

『ほら、それよ!』

 

 モルフォの声にシアンが笑い、GVもつられるように笑った。

 

 今日は世界を救ったわけでも、皇神(スメラギ)と命懸けで戦ったわけでもない。ただ小さな車を走らせて、近所の子供たちに遊び方を教えてもらい、壊れれば直してもらい、勝った負けたと騒いだだけの一日だった。

 

 けれど、そんな一日だからこそ見えるものもある。

 

 戦場では知ることのできない顔も、大きな決断を迫られている時には気づけない気持ちもある。人を知るというのは、きっとそんな小さなものを何度も積み重ねていくことなのだろう。

 

「GV」

 

「ん?」

 

「帰ったら、最初からちゃんと説明書読んでね」

 

「シアンが読んでくれるんじゃないの?」

 

「自分で作るんだから、GVも一緒に読むの」

 

「はいはい」

 

「『はい』は一回」

 

「……はい」

 

 シアンは満足そうに頷いた。

 

 その横顔を見ながら、GVは今は何も急がなくていいと思った。

 

 シアンにも、自分にも、自分の気持ちを決める権利がある。

 

 なら次の休日も、みんなで小さな車を走らせればいい。その中でまた一つ、今まで知らなかった相手の顔を知ることができれば、今はそれで十分だった。

 

 




## 次回予告

「GVォ! シアンちゃん連れて来い!」

「その言い方やめようか」

 ある休日の朝。

 突然かかってきたのは、以前GV(ガンヴォルト)と激突した爆炎(エクスプロージョン)の能力者――デイトナからの通信だった。

「そういえば、デイトナってどんな人なの?」

「えーっと……口悪くて、短気で、喧嘩強くて」

『それだけ聞くと最悪じゃない』

「でも、ただ暴れてるだけの人でもないんだよ」

 能力者が置かれている環境の厳しさ。

 シアンが皇神(スメラギ)の元にいた方が安全だったのではないかという疑問。

 意外にも、デイトナは彼なりに真剣にシアンのことを考えていた。

 ――途中までは。

「デイトナ、モルフォの大ファンなんだ」

『へえ! 見る目あるじゃない!』

「まだ喜ばない方がいいよ」

 そして。

「『機械に繋がれたシアンちゃんはなッ サイコーに胸キュンなんだよッ!』って」

「…………」

『…………』

「僕もその時、同じ顔した」

 そんなデイトナが、ついにシアン本人へ向き合うことを決意!

「今日は完璧だ」

「何が?」

「全部だ」

「急に不安になってきた」

 待ち合わせ場所で待っていたのは――。

「……すごい花」

「多いよ!」

 巨大な赤い花束!

「わたし、水色の方が好きかも」

「…………」

「ちなみに家に花瓶一個しか――」

「GV! トドメ刺してンじゃねェ!」

 さらにカフェ!

 プレゼント!

 そしてモルフォ談義!

「デイトナはモルフォが好きなの?」

「当たり前だろ」

「じゃあ、わたしのことは?」

「…………」

 そこで初めて、デイトナは気づく。

 自分は歌姫モルフォのことなら知っている。

 けれど。

「オレ、シアンちゃんのこと全然知らねェわ」

 好きな色も。

 好きな食べ物も。

 どんな遊びが好きなのかも。

「だから、これから知る」

 ようやくシアン本人を見ようとしたデイトナが、満を持して放つ一言!

「オレと付き合え」

「そこ飛ぶんだ!?」

「うるせェGV!」

 果たして、デイトナ渾身の大作戦はシアンの心を動かすことができるのか!?

「ごめん」

「…………」

「そういう意味では、デイトナのこと好きじゃない」

「……マジか」

 ――まあ、結果は明白である。

 次回、第八話――

# 「バーン! BURN! デイトナのシアンちゃん大好き大作戦!!」

「でも、友達ならいいよ」

「……友達」

 爆炎の男に訪れた、まさかの新たなスタート。

 そして次なる戦場は――。

「モーターとか変えて速くするんだよ」

「速くすンのか?」

「シアン」

「うん」

「飛ぶね」

「飛ぶだろうね」

「何の話だテメェら!!」

 次回も、グッドラック。
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