エレクトリアコード-SHADOW SOLDIERS-   作:boiboi

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第一話「玩具と兵器」

 -Prologue-

 

 2000年代後期……。

 家庭用機として、とある製品が爆発的な普及を果たした。

 自らが「意思」「感情」を持ち、人の形を模して作られた高次元AI搭載モデルを有する小型アンドロイド。

 Electrical Familiar

 通称「エレクトリア」である。

 家庭の家事から、デスクワークにオペレーター、接客から警備、さらには被災地や医療現場などにおける迅速な対応を要する環境下においても、高いパフォーマンスを発揮し、エレクトリアは様々な場面で活用されるようになっている。

 今や、エレクトリアは人々の生活基盤を支えるパートナーとして、無くてはならない存在となっている。

 しかし、エレクトリアの利便性は時に人々の生活を脅かす道具にもなり得た。エレクトリアの万能であるが故の恐ろしさ……それを世界に喧伝するかの如く、1つのニュースが世界を震撼させる。

「エレクトリア開発の第1人者の1人『乾ユウ博士』のエレクトリアによるテロ計画」

 軍事転用を目的として作られていたプロトエレクトリアまで使用されたこの事件は、とあるエレクトリアとそのマスターの活躍により未然に防がれたものの、これが世界に激震を与えるきっかけとなったことは言うまでもあるまい。

 結果として、エレクトリアの販売元である近衛インダストリアルはこの事態を重く受け止め、しばらくの間、エレクトリアの販売を中止を余儀なくされる。

 そして、あの事件から10年の時が流れた。

 近衛インダストリアルは、エレクトリアの条例を強化し、再びエレクトリアの製造…販売ができる状態まで回復する。それと同時に、今後エレクトリアによるテロ行為を引き起こさないよう、新たに近衛インダストリアルが運用する組織を秘密裏に設立する。

 エレクトリアの事件解決を専門とする組織。

『対エレクトリア特殊対策機構』

 そして、エレクトリアやroMのテロ行為への抑止力及び国が表立って動けない際の切り札としてこの組織が運用するエレクトリアのみで構成された特務実働部隊。

 Hexa Obedient Relentless Neutral Electriar Teams

 通称「Hornet」-ホーネット-を結成する。

 これは、影に潜む敵を影の中で叩き、決して表舞台に立つことの無い名も無きエレクトリア達とその司令官、そしてそんな彼らに振り回されることとなる新人オペレーターの物語である。

 

 ◇

 

 第1章「見捨てられた者」

 

「先ほど入った緊急ニュースをお伝えします。都心部はずれの工場施設にてエレクトリアの暴走が発生しました」

 テレビの画面には、ドス黒い煙とともに燃え上がる工場が映し出される。

「この施設は、近衛インダストリアルが管理する工業区画の1つであり、エレクトリア用の武装パーツの生産を行っていたところ、作業にあたっていたエレクトリアが突如暴走したとのことです」

 現地の映像に切り替わる。ニュースキャスターの背景には先ほどの工場が煌々と燃え上がる様子が映っている。工場周辺では無数の消防車と警察車両の赤色灯が辺りを照らし、事態の深刻さを物語っている。

「暴走したエレクトリアは、工場内に立てこもっているとのことです」

 エレクトリアの事件に関するニュースが日本のビル群の裏手にそびえる古びた小屋の窓を淡い光で照らしていた。画面の中で燃え盛る炎が液晶越しに部屋を暖色にし、皮肉にも温かみを感じさせる。

「はぁ…またか」

 淹れたてのコーヒーを啜りながら、呆れた声でその家に住んでいる男がため息をつく。

「最近やけに多いな、この手のニュース」

 彼は独り言をこぼすと再度口にコップを近づけ、苦いコーヒーを啜る。すると、近くの本棚から一人の少女が声をかける。

「マスター、例の依頼者がこちらに向かってきています」

 身長は20センチほど——彼が所持するエレクトリアだ。大人びた顔立ちで顔も非常に整っている。神々しく輝く金色のロングヘアー、鋭い目つきの中にルビーのように赤く反射する瞳を宿している。

 男性は彼女に目線だけ送ると、残りのコーヒーを勢いよく体内に流し込んで机に置く。そして重い腰をゆっくりと上げた。

「分かった。フィオナ、配置につけ」

「了解」

 二人は、手馴れた手つきで身だしなみを整える。黒い服に黒いズボン、黒いブーツにグローブまで全身に黒を採用する徹底ぶり。

 フィオナも同様に全身を黒い装備で固めていた。彼女が装備を着用し終えると、左手の小さなボタンを一回押す。すると、電気が通電するように装備がくすんだ青色に発光する。

「では、お先に」

「あぁ……頼む」

 そういうと、フィオナは即座に外に繋がる壊れた通気口から外へ出ていった。

「よし…行くか」

 男も急いでハンガーラックに掛けられたコートを勢いよく取ってそのまま流れるように袖に腕を通す。ガチャっという不穏な金属音とともにとあるものを2つコートの裏ポケットに仕込ませる。

 ギィィ……

 男は錆付いたドアを開け、夜の街へと駆けて行った。

 男が向かったのは、さっきの小屋から徒歩で10分ほどで到着する細い路地裏。特に穴場の居酒屋がある訳でも無いため、人通りはほとんど無い。

 それ以前に、この路地裏周辺は既にほとんどが空き家となっており、人が住んでいるかどうかさえ怪しい。男は路地裏に入ると突き当たりの曲がり角で身を潜めるように足を止める。

「ふぅ……」

 コートの胸ポケットからタバコの箱を取り出し、飛び出してきた一本のタバコを口にくわえ、そのままライターで火をつける。そうして煙の余韻に浸っていると、男に近づく足音が1つ。

「わ、私だ。この前の依頼の報酬を支払いに来た」

 路地裏に依頼者がどこか緊張した趣でやってきた。男はタバコを最後の最後の数ミリまで堪能し終えた後、足で踏みつけ火種を消す。

「お待ちしておりました」

 男が姿を晒す。依頼者は恐る恐る近づくと、持っていたアタッシュケースを彼に差し出す。

「約束通り、中に500万入っている。確認してくれ」

 男は依頼者から銀色のアタッシュケースを受け取ると、すぐさま内容物を確認する。中には、万札がビッシリと詰まっており、綺麗に整頓されていた。

「きっちり500万入ってるわ」

 男が身に付けていた小型のイヤホンに無線が入る。無線から聞こえてきたのは、彼女の声だった。目視では確認できないが、先回りして監視してくれているのだろう。

「周囲に護衛無し……いつでもどうぞ」

 この言葉を聞き、男は表情ひとつ変えず、瞬きを2回行い、見えない彼女に向けて合図を送る。

「……確かに頂戴しました」

 それを聞いた依頼者は少し口角を上げ、男の手を両手で握る。依頼者は引きつった笑顔で手を震わせている。

「これで邪魔なライバル会社も消せた!わが社も安泰だ!ありがとう!」

 依頼者からこぼれたのは、狂気に満ちた感謝の言葉だった。当然といえば当然だ。正当な取引であれば、こんな路地裏でコソコソする必要もないのだから。

「お待ちください」

 唐突に男から声がかかる。依頼者もまさか向こうから声をかけてくるとは思っていなかったのか、冷や汗を流しながら、再度振り返る。

「な……なんだね」

 男は胸ポケットからとあるものを取り出す。男が取り出したのは、黒い紙で梱包された手紙だった。

「実は…あなた宛てに匿名で手紙を受け取っておりまして……」

「手紙…?」

「依頼主からは手渡し次第、その場で読んでほしい……とのことです」

 依頼者は恐る恐る手紙を受け取ると、その場で封を開ける。中には、2つ折りされた紙が一枚のみ入っていた。その間に、男は胸ポケットからもう1つの仕込みを取り出す準備に入る。依頼者がその紙を取り出し、内容を確認するとそこには不穏な赤い文字でこう書かれていた。

 Your life ends today…「お前の人生は、今日で終わりだ。」

 依頼者の男が、目を見開く。依頼者が勢いよく顔を上げると同時に轟音が1回、人通りの少ない路地裏に響く。

 ダンッ!!

 乾いた1発の銃声。音が鳴りやむと依頼者の眉間に風穴が開いていた。依頼者はまるでスイッチが切れたかのように膝をつくとそのままうつ伏せになるように倒れた。

 男が懐から取り出した銀色の拳銃は、月明かりに照らされ、まだ銃口から煙を出している。

「悪いな……これも仕事なんだ」

 ダンッ!ダンッ!!

 男がそう言い放つと依頼者の後頭部にさらに二発の弾丸を撃ち込む。

 依頼者を仕留めた男は無線で彼女に連絡を取る。

「ターゲット、始末完了。離脱するぞ」

「了解」

 男は彼女との通信を終えると、無線機の電源を切る。

「おっも……」

 床に転げ落ちた死体を目立たない場所へ運び込む。幸いにも近くには人一人入れそうなゴミ箱があり、男はそのゴミ箱に死体を放り込む。

「これで…よし」

 そして、コートのフードを深々とかぶると、監視カメラ等に見つからないように表の通りを避けながら帰路についた。

 足がつくのを避けるため男は元来た道を引き返すのではなく、わざと寄り道をする。細い路地裏を右へ左へと歩き回りながら慎重に歩く。

 そうして彼は、本来10分で帰れるところを30分かけて家に戻った。

 ギィィ!

 錆びたドアを開け、室内に入る。すると突然、玄関近くの固定電話が鳴り響く。今の時代ではほとんど見かけない廃れていた固定電話だが、その日は珍しく電話がかかってきたのだ。男は電話の受話器を取る。

『私だ。ターゲットの始末に成功したようだな。よくやった』

 彼女から飛び出した言葉は男の功績を称えるものだった。男は受話器越しの相手が誰なのかをすぐに察し、少し口角を上げ、軽やかな口調で返答する。

「そりゃどうも」

『相変わらず、淡白な奴だな』

「褒め言葉として受け取っておきます」

 二人は他愛もないジョークを交えつつ会話を続ける。

「しかし、貴方の方から電話とは珍しい」

『意外か?』

 

「えぇ、ところで何かご用で?」

 それを聞いた彼女は、声色を変える。

『お前、しばらくの間休暇を……いや、正確に言えば少し別の仕事をしてもらいたい』

「ほう?また随分唐突な話で」

『ここ最近、エレクトリアによる犯行が増えているのは知っているな?』

「もちろん、ついさっきもニュースで放送してましたからね」

 男は察する。彼女が不意に出す話題じゃない。

「まさか……」

『あぁ、おそらくお前の予想してる通りだ』

「…私にできることは?」

『そういうと思って、事前にこちらで準備させてもらった』

 電話のすぐそばに置かれたコピー機が自動的に起動し、いくつかの書類が印刷され始める。履歴書、証明写真、そして今回の仕事内容が事細かに書かれた紙が男の手元に届く。

 所属。

 対エレクトリア特殊対策機構、司令官。

「対エレクトリア特殊対策機構…?」

『お前にはしばらくここで、とある情報を探ってほしい』

「近衛インダストリアル直属の……こんな組織聞いたことありませんが?」

『近日、正式に配備される特務部隊だ。まだ公には公開されていないがな』

「……追っている情報というのは、もしや」

『あぁ』

「やはり……《ベリアル》ですか」

『……確か、お前とは因縁があったな』

「……」

 ヴィンセントは、机の上に置かれた資料へ視線を落とした。

 そこに記されているのは、名前だけ。

 それ以外の情報は、ほとんど伏せられていた。

 《ベリアル》———最近、裏社会で話題に上がっている謎のエレクトリア。所属不明、目的不明、いつも突然現れては忽然と姿を消す。

『詳しいことはまだ何も分かっていない。ただ、最近になって何度か姿を見せている』

「……そうですか」

『心当たりは?』

「ありませんよ、少なくとも日本ではまだ」

 即答だった。

 だが、ヴィンセントの指は無意識に資料の端を強く握っていた。

『……そうか』

 彼女はそれ以上、追及しなかった。

『お前には、このエレクトリアを追ってもらいたい』

「俺が?」

『あぁ。近日、正式に配備される特務部隊の司令官としてな』

 ヴィンセントは小さく息を吐き考え込む。

『断るか?』

「まさか」

 ヴィンセントは机の上の資料を閉じる。

「面白そうじゃないですか」

『そう言うと思った』

 短い沈黙が流れる。

『ただし、今回の任務では今の名前を使うな』

「……偽名ですか」

『そうだ』

 印刷された履歴書を手に取る。学歴に職歴、全てが偽りの情報。そして新たな名前すらも。

「名前まで用意してあるとは、準備がいい」

『ひっきりなしに依頼が来るお前に毎度名前を考えさせるのは酷だと思ってな』

「ご親切にどうも」

 ヴィンセントは窓の外へ目を向けた。

 サーッという雨音とともに、雨の匂いが僅かに漂い始めている。

『今日からお前の名は…【ヴィンセント】だ』

 

 ◇

 

 第2章「蜂の巣作り」

 

 近衛インダストリアル特別自警統括部 第1会議室

 

 その日、彼女は心底悩んでいた。眠りが浅かったのか、彼女の目元にはクマができており、背筋も猫背寄りで彼女の心配具合が目に見えて伺える。

「はぁ……憂鬱だな」

 柏木は、両手にたくさんの書類を抱え、重い足取りで目の前の会議室に入る。そこには、近衛インダストリアルを代表する人々が集結していた。中央には社長である梶原秀一の姿もあった。物々しい雰囲気を漂わせる中、秀一が口を開く。

「では始めよう。柏木くん。まずは、エレクトリアの売上を聞かせてもらおうか」

「はい、現在エレクトリアは700万体以上を売り上げる大ヒット商品となっています。また、日本のみならず世界各国でエレクトリアを有効活用しようとする運動が活発化しています」

「なるほど、だが、いいことばかりでもないのだろう?」

「はい、エレクトリアが急激に普及した影響で、代替可能な仕事に就いていた人々の失業率が年々増加しています」

 柏木が続ける。

「それに伴い、roMを始めとするエレクトリアに批判的な考えを持つ者たちの犯罪行為が増加しているのも事実です」

 柏木の顔が徐々に曇り始める。

 静まり返る一室。秀一が眉間にしわを寄せる。

「特別自警統括部があるとはいえ、このままエレクトリアを用いた犯罪が増加すれば、対応に遅れが出る危険性もある。そうなれば、ここに多くのメディアが張り付くのも時間の問題だろう」

 秀一が横目に辺りを見渡す。

 (あぁ……もう帰りたい……!)

 手に持った資料がさらに重く感じる。

「乾ユウが画策したテロ行為を再度引き起こすような事態だけは絶対に避けなければならない。そこで、新たに専門の特務部隊の創設が決まったわけだが……いまだに任せられる人材は見つからないのか?」

「は、はい………適性のある人材は探しているのですが、中々……」

 柏木は手元の資料を漁りながら考えを巡らせる。しかしながら、資料に掲載されている人物はすでに審査を終えた者ばかり………………。資料には、「DENIED」と赤文字で不合格の押印がされたものがほとんどだ。

 (あ、この人……)

 あまりの緊張で手が震え、足がすくんで今にも倒れてしまいそうなほど気が動転してしまっている柏木であったが、彼女はふと1つの資料に目が留まる。

 (確か…提出期限ギリギリで送ってきた人……だったわね)

 そこには、美しい白髪と透き通るようなスカイブルーの瞳を宿した凛々しい男性が写っていた。彼の資料には唯一、あの赤い押印がされていなかった。

「で、では…この人はいかがでしょうか……?」

 柏木は、恐る恐る先ほどの押印がされていない資料を秀一に手渡す。

 それを受け取った彼は目を細め、資料を注視する。

「彼は?」

「現在審査途中の人物です。名前は『ヴィンセント…ウェグナー』適合率は…97…8%です。現段階で、彼以上の候補者はいないかと……」

「そうか……」

 秀一は、少しの間沈黙を保ったのち、柏木に対し口をひらく。

「柏木くん。彼にコンタクトを取れるか?」

 堅物なイメージで知られる社長の思わぬ反応に柏木は一瞬驚いたが、すぐさま正気を取り戻し急いで準備に入る。

「は…はい!分かりました……!すぐにコンタクトを取ってみます」

 そう言って、彼女は何度も会釈をしながら足早に会議室を後にする。

「父さん……もう少し吟味したほうが……」

 柏木が部屋を出ると同時に、彰人が心配そうな顔で秀一に問いかける。

「お前の言うことも最もだ…」

「では何故?」

「無論、エレクトリアによる犯罪については、警察や自衛隊にも協力を呼びかけて対処にあたっている……しかし、彼らはまだエレクトリアに対する知識も経験も浅い」

 それを聞いた彰人は顔を曇らせた。当然と言えば当然だ。エレクトリアの開発…製造は現在、近衛インダストリアルがその大半を占めている。それは同時にエレクトリアの危険性を最も理解しているとも言えるのだ。

「エレクトリアの力は、いまだ未知数だ。外部の組織に頼りきりでは……意味が無い」

 秀一が腕を組み、窓の向こうに広がるオフィス街を呆然と見つめる。

「だからこそ必要なのだ…エレクトリアを影で支え、管理し、向き合う……新たな組織が」

 

 ◇

 

 第3章「弾丸は黄昏時とともに……」

 

 会議室を抜けた柏木は、手早く身支度を整え、オフィスビルを飛び出していた。しかし、彼女の顔には怒りが滲み出ていた。

「もう…なんなのよ!」

 遡ること1時間前……。

 彼女は、ヴィンセントに電話での連絡を試みていた。

 しかし電話は繋がらない。時間を開けて何度も電話をかけるものの、帰ってくるのはいつも留守電の機械音声だけ。柏木は怒りをぶつけるかのように受話器を叩きつけるように電話を切る。

「なんで出ないのよ!もう10回以上かけてるのに!」

 柏木はその怒りを意地でも伝えてやろうと身支度を始めた。

「こうなったら、こっちから直接接触してやるわよ!」

 そうして、柏木本人の突発的な考えがきっかけとなり、今に至る。

 柏木は、電車を乗り継ぎながら書類に記載されていた住所に向かって足を運ぶ。肝心の人物の家なのだが、幸運にも都心部に拠点を置く本社の近くに位置しており、交通の便も比較的多い地域であったため、アクセスが容易だったのは不幸中の幸いだ。

 ただ、柏木はあることに少し心配していた。

「多少冷静になって思ったけど……この辺の住所って確か……」

 それは、柏木が電車内で再度確認した住所だ。肝心の人物が暮らしているであろう場所は、お世辞にもあまり治安が良いと呼べる町でない。少なくとも柏木のような真面目に会社で働くような人が足を運ぶような場所では無いことは確かだ。

「怒りのあまり勢いで出てきちゃったけど……大丈夫かな……変な人に絡まれないといいんだけど……」

 柏木も自身の起こした行為を今になって後悔し始めていた。柏木は自身に不安な気持ちを抱えつつも最寄り駅で下車し、目的地に向けて歩き始める。

 

 ◇

 

「あと……少し」

 彼女がスマートフォンを取り出すと、マップアプリのピンに近づいているのがハッキリと分かる。

「あれ……かな?」

 彼女が到着したのは、細い路地裏の奥にひっそりと佇む家であった。建物はコンテナでできた仮設住宅を二階建てに仕立てたような見た目で、周りは高い建物で囲まれ、光が差し込む隙間すらないほど薄暗い。窓は全てプラスチックのブラインドで覆われており、室内の様子は一切確認できない。ドアも錆だらけでおおよそ人が暮らしているとは思えないほどオンボロだ。

「えぇ…随分ボロボロだけど…ほんとに住んでるの……ここ……」

 彼女は不安な表情を浮かべながら、建物の周囲をウロウロしながら確認する。しかし、よくよく観察していると室外機が回っているのに気づく。それにブラインドの隙間から微かに光が漏れているのが確認できる。

「よぉ〜、そこの姉ちゃん」

 柏木が家を調べていると、来た道から3人の男性が突然声をかけてきた。柏木が驚いて振り返る間もなく、リーダー格の男が後ろから彼女を拘束する。

「うぐっ!?」

 振りほどこうともがくが、かなり強く首と腕を拘束されてしまい、非力な彼女では抜け出せない。

「あなた達…!何なの!離しなさい!」

「そんなに暴れるなよ、俺達はroM。あんた近衛の人間だろ?」

 リーダー格の男が名乗る。彼女の訪れた街はエレクトリアが普及して以来、代替可能な仕事に就いていた人々が集まる巣窟と化していた。

 (クソッ…!よりにもよってこんな人達に目をつけられるなんて)

 世の中をより便利にするために生まれたエレクトリアという新たなテクノロジー。

 時代の変化に適応できなかった人々はこの粗悪な環境での暮らしを余儀なくされていた。

 現にroMに所属する構成員の多くは、エレクトリアの台頭によって職を失い、路頭に迷った者ばかりだ。

 彼らにとってこの街は、活動拠点を置くのに持ってこいの場所だ。

「痛い目に遭いたくなきゃ…大人しくしな」

 リーダー格の男が柏木に対して、鋭い眼光を飛ばす。周りの取り巻き2人も薄ら笑いを浮かべながら、ポキポキと腕を鳴らしている。

「アニキ!こいつどうしますか?」

「そうだな……こいつを人質にして近衛の連中に脅しでもかけるか」

 柏木の顔が青ざめる。

 このままでは自分自身の命に関わる………そんな悪寒が全身を巡る。とはいえ、ここで抵抗すればより最悪の結末を迎える気がして動くに動けない。

 (このままじゃ…!)

「とっとと歩け!近衛の犬が!」

「ん゛んっ!」

 腕で口元を抑えられ、言葉はもちろん息をするのも困難になり、反射的に体がもがいてしまう。リーダー格の男が力づくで柏木を連れ去ろうとしたまさに次の瞬間であった。あの錆び付いてボロボロなドアがギィィと耳を塞ぎたくなるような金属音とともに中から1人の男が姿を表す。

「ふぁぁぁ……ねっむ」

 男は大きなあくびをして頭をボリボリと掻いている。身なりはそれなりに整っているものの、寝起きなのも相まって、体は前のめりに曲がり、柏木が今にも拉致されそうな現場を見ても表情ひとつ変えない。

「……ッ!何だ…お前……!」

 リーダー格の男が柏木を抱えたまま足を止める………周りにいた取り巻き2人も目を見開いて足を止めた。

「アニキ……まずいっすよ、これ」

「黙ってろ……!」

 気になった柏木が様子を伺うと彼らから冷や汗が吹き出している。両足はガタガタと震え、今にも膝から崩れ落ちそうなほどに。

 柏木も何故か不思議と呼吸が浅くなる。首を絞められて息がしにくいからではない……おそらく原因はあの男だ。

 (何?この感覚……)

 男からはまるで……凍てつく氷のような恐ろしい殺意のようなものが感じ取れる……肌をつんざくような痛みが自身の命を削るかのように襲ってくる。

 (……ていうかあの人、資料に載ってた)

 美しい白髪に透き通るようなスカイブルーの瞳……間違いなくあの書類に載っていた人物であると彼女は確信する。

 (彼が……ヴィンセント・ウェグナー……)

「クソッ!おい、お前ら!【アレ】を出せ!」

 取り巻きの1人が銀色のアタッシュケースを開けると中から3つの機影が飛び出す。

 (オートエレクトリア!?)

 飛び出した3機のオートエレクトリアが陣形を組んでヴィンセントの前に立ち塞がる。

 見たところ、装備のリミッターが外れている。

 それに装備している武装の多くが違法にカスタマイズされている。

 (マズイ!あれがあの人に当たったら…!)

 リミッターの外れたエレクトリアの攻撃は、人体に外傷を負わせる危険な代物だ。

「へっ!どこのどいつか知らねぇがな」

 3機……そのうちの1機はバックパックに火力の高いグレネードキャノンを装備している。

 1発でも当たれば、命を落としかねない。

「俺達の前に現れたこと……後悔しやがれ!」

 男は内心ビビりながらも、強気に打って出る。偶然とはいえ、目の前で犯行現場を見られたからには、タダで済ます訳にもいかない。

「行け!オートエレクトリア!」

 リーダー格の男が指示を出すと独特な機械音を発しながら、手に持ったアサルトライフルを構え、ヴィンセントに向かって3機が同時に突撃する。

「逃げて!」

 柏木が口の拘束を無理やり解き、大声で訴えかけた。

「やれ、フィオナ」

 次の刹那、ヴィンセントの後方から蒼白の閃光が先頭のオートエレクトリアに直撃する。胴体を撃ち抜かれ風穴が空いたオートエレクトリアは火花を散らしながら木っ端微塵に爆発した。

「攻撃!?一体どこから!?」

 リーダー格の男も含め、柏木自身も何が起こったのかあまりに一瞬の出来事で分からなかった。

 後ろの建物から1機の機影が飛び立つ。ヴィンセントの前に金色に輝く髪とルビーのような瞳を持った1体のエレクトリアが姿を表す。

「エレクトリア!?」

 残った2機のオートエレクトリアが距離を取って身構える。そのうちの1機がグレネードキャノンの砲身を展開し、射撃体勢に移行する。

 ダンッ!ダンッ!ダンッ!

 グレネードキャノンの弾が3発、豪快なマズルフラッシュとともに轟音を響かせ発射される。

「甘い……」

 しかし彼女は、まるでその攻撃を予測していたかの如く、太もものホルスターに格納されていたレーザーハンドガンを目にも留まらぬ速さで引き抜く。

 ビキュン!ビキュン!ビキュン!

 蒼白い閃光が銃口から飛び出すと、高速で飛来するグレネードキャノンの弾丸を見事に撃ち抜く。弾丸は高温のレーザーに焼かれ赤熱化。溶けるように弾丸が形を変え、爆発を引き起こす。

「馬鹿な!?」

 リーダー格の男は驚きを隠せない。グレネードキャノンの弾丸の速度は、優に音速を超えている。目視で捉えることはたとえどれだけ優秀なエレクトリアであっても不可能に近い。

「遅い……!」

 フィオナの猛攻はまだ止まらない。グレネードキャノンの弾丸が引き起こした黒煙に紛れ、オートエレクトリアへ一気に距離を詰める。

「は、早い!?」

 グレネードキャノンを装備したオートエレクトリアの眼前に迫る。

 左手には先ほどのレーザーハンドガン、もう片方にはコンバットナイフを装備している。

 ガァン!

 飛び散る火花、鈍い金属音。

 コンバットナイフが相手の喉元に深く、無慈悲に突き刺さる。次に胴体、刃を振り下ろし切り裂く、最後に首、掻き切るように切り伏せる。

「……撃破」

 目に留まらぬ3連撃。流れるようなナイフ捌きに相手は反撃の暇すら与えられず、無力化される。

「残り1機……」

 残った1機はアサルトライフルを連射するが、銃身がブレて当たる気配が全くない。フィオナはコンバットナイフを逆手に持つと、それを勢いよく投擲する。

「これで……トドメ」

 黒光りする刃は相手の胸元にグサリと突き刺さる。そして相手の懐に潜り込むと刺さったナイフのグリップを持ちながら、顔面に至近距離でレーザーハンドガンを連射する。

 ビキュン!ビキュン!ビキュン!

 相手の顔面には無数の穴が空き、内部の部品を露出させて機能停止する。

「ありえない……こうもあっさりと……」

 フィオナが3機を撃破するのに1分もかかっていない。ましてや彼女には傷どころか服に汚れすら付いていない。

 (すごい…あのエレクトリア…なんて強さなの……)

 あれほど強いエレクトリアは他に類を見ない。大会に出場できるほどの実力………いや、もしくはそれ以上の能力を持っている。

「42秒27……まぁ及第点だな」

 ヴィンセントが腕時計で撃破までの時間を確認していた。

 エレクトリアは使用する装備と積載するAIチップによって大きく性能が変化する。

 あの高い運動性能に演算速度、内部に搭載されたAIチップがどれだけ高性能且つ効率的に組まれているかが伺える。

「お前……一体何者なんだ!」

 リーダー格の男が叫ぶ。しかし、ヴィンセントは答えない。

「動くな…!」

「ひぃ!」

 男に銃口を向けるフィオナ。男とその取り巻き2人は両手を上げる。

「気は済んだか?とっとと失せろ……」

 ヴィンセントの殺気がさらに増す。roMの連中全員が察する。今、一刻も早くこの場を離れなければあの殺気が確実に牙を向いてくる………そんな予感がした。

「い、行くぞお前ら!」

「ちょ!アニキ1人で逃げないでください!」

 彼らは顔を青ざめて情けない声をあげながら柏木を置いて逃げて行ってしまった。

「はぁ……はぁ………」

 緊張が解けた影響か柏木は崩れるように膝をついた。口で素早く息を吸い、息を整えようとする。

「マスター…彼女は」

「分かっている……あんたが、近衛がよこしてきた使いだな?」

 柏木がふと顔をあげると、ヴィンセントがこちらの様子を伺っていた。

「ひとまずこっちへ…すぐに人が集まってくる、急げ」

 男が手を差し伸べる。柏木は不思議と安堵していた。先ほどまで氷のように冷たい殺気を放っていたのに、男から差し伸べられた手にはそれを感じない。むしろ安心できる温もりすら感じられる。

「あ、ありがとうございます」

 彼女の感謝の一言に男は表情ひとつ変えず振り返り、背中越しに手招きをして家の方に足を運ぶ。

 (怖いけど…親切な人ね)

 彼女はそう思った。錆び付いたドアが開かれ、中に入るとコーヒーとタバコの匂いが香る。

「綺麗な部屋じゃなくてすまない」

「いえ…お気になさらず」

 

 辺りにはペットボトルや新聞紙やらがあちこちに散乱している。建物の外見があまりに風化していたので、湿気の強い最安のオンボロアパートの室内には覚悟していた。

「座って待っていてくれ」

「あ、はい」

 柏木は男に導かれるように近くのソファに腰掛ける。男はキッチンに向かうとコーヒーミルを取り出す。ガリガリと豆を削り、細かくなった豆の粉末をフィルターに載せ、お湯を注ぎ、少量のミルクを加える。

「いい匂い……」

 柏木はコーヒーの知識は全く無い。しかし、男の手捌きは素人でも感じ取れるこだわりが随所に現れていた。

「どうぞ」

 男からコーヒーが手渡される。豆の香ばしい匂いが部屋に満ちる。

「どうも…」

 コーヒーカップの熱が柏木の手に温もりを与え、湯気が柏木の眼鏡を曇らせる。

「良ければ、これもどうぞ」

 男の背後から飛び出すフィオナ。手には1本のスティックシュガーとミルク。それを柏木のコーヒーカップの傍に置く。

「彼女は……あなたのエレクトリア?」

「そうだ、名前は《フィオナ》」

「初めまして」

 金色の髪を揺らしながら、フィオナは柏木に向かって小さく頭を下げた。その姿は、先ほどまで三機のオートエレクトリアを一方的に蹂躙したとは到底思えない。

「へぇ……」

 それに、近くでよく観察すると想像以上に緻密に設計されている。ボディは黒と灰色のワントーンのスウィートコルセットにタクティカルベストを装備している。

 太ももには、ベルトで固定されたホルスターにレーザーハンドガンが2丁、左手にはコンデンサシールドを装備し、防御とエネルギー負荷をカバーする工夫が施されている。

 頭部にはV字アンテナ、フェイスマスク、センサーガードを組み合わせて作られた通信機が取り付けられている。柏木は思わず目を丸くした。

「何だ?」

 柏木は目の前にいるヴィンセントと、その隣に佇むフィオナを交互に見つめる。

「あなた……もしかして、《アーキテクト》の才能もあるんですか?」

「あぁ……装備の構想…設計は全て俺が担当している」

「すごい……」

 柏木は言葉を失った。エレクトリアの装備設計を担う――アーキテクト。ヴィンセント・ウェグナー……適合率97.8%。現時点で他の候補者を大きく上回る、対エレクトリア特殊対策機構の最有力候補なだけのことはある。

 しかし、柏木は彼に対して違和感を感じていた。彼の実力は本物だ。アーキテクトとしての才もある。

 でも、それ以上に――。

 柏木が考えに耽っていると、ヴィンセントが口を開いた。

「それで?」

「え?」

「何の用だ」

「あ、そうだった」

 柏木は慌てて持っていた書類を取り出す。

「近衛インダストリアルから事前にご連絡させて頂いていると思いますが……」

「あぁ……概要だけな」

「それなら話が早いです」

 柏木は一度深呼吸をする。そして、手に持っていた書類をヴィンセントへ差し出した。

「この度、近衛インダストリアル特別自警統括部が新たに創設する《対エレクトリア特殊対策機構》及びそこで運用するエレクトリアのみで構成された特務部隊《Hornet》、その司令官として、あなたを迎え入れたいと考えています」

 ヴィンセントは書類を受け取る。ざっと目を通した。ヴィンセントは黙り込んだ。しばらくの沈黙。やがて彼は、手に持っていた書類をテーブルへ置き、コーヒーの残りを一気に飲み干した。

「…柏木」

「…はい」

「お前は…この仕事が何を意味するのか……本当に分かっているのか?」

「え?」

「エレクトリアによる犯罪を止める。それだけなら警察に任せればいい。警察にだってエレクトリアは普及しているはずだ」

 ヴィンセントの声が少し低くなる。

「なのに、近衛の連中はわざわざ特別自警統括部とは別の役割を持つ組織を作ろうとしている………」

「……」

「この仕事は、綺麗事で済まされる仕事じゃない」

 柏木は黙ってヴィンセントを見つめた。

「要は…表には出せない事件を処理するということだ。警察にも、自衛隊にも任せられない仕事を引き受ける……それがこの組織だ。場合によっては、人間を相手にすることもあるだろう」

 その言葉に、柏木の表情が僅かに強張った。ヴィンセントはそれを見逃さなかった。

「それでもやる気か?」

「……はい」

 柏木は答えた。自分でも驚くほど、声は震えていなかった。

「私は……エレクトリアによる事件を減らしたいんです。お願いします!私たちに力を貸してください!」

「……」

 柏木は深々と頭を下げた。ヴィンセントはしばらく黙っていた。彼女の手は強く握りこまれている。やがて、彼は小さく息を吐く。

「……分かった」

「え?」

「その仕事、引き受けよう」

「ほ、本当ですか!?」

「ああ」

 ヴィンセントは立ち上がった。

「ただし、2つ条件がある」

「条件?」

「1つは…フィオナと同等の能力を持つエレクトリアを何機か配備したい。もう1つは…腕利きのアーキテクトをもう1人アサインしてもらいたい。以上だ」

「分かりました」

 柏木は即答した。ヴィンセントは一瞬だけ驚いたような顔をする。

「……即答だな」

「元々小隊単位で運用することを想定していたので、エレクトリアの配備はすぐに準備できると思います。専属のアーキテクトの件については……上層部に確認を取っておきます」

「そうか、ではよろしく頼む」

「では、正式に――」

 その瞬間だった。

 ――ピピピピピッ!!

 けたたましい警報音が室内に響き渡る。

「何?」

 柏木が驚いて端末を取り出す。ヴィンセントの表情が変わった。さっきまでの眠そうな男の顔ではない。あの路地裏で柏木が感じた、凍てつくような殺気。それと同じ目だった。端末の画面に映し出されたのは、近衛インダストリアルの緊急通報だった。

【緊急事態発生】。

【エレクトリア暴走事件】。

【工業区画第七倉庫】。

【従業員27名が施設内に取り残されている模様】。

【暴走個体一機】。

【武装状態、不明】。

 柏木の顔から血の気が引いた。

「これ……」

「早速か……」

「え?」

「お前が言っていた事件解決の仕事だ」

「こんな……いきなり」

 ヴィンセントはフィオナを見る。フィオナも何かを察し準備にかかる。

「行くぞ」

「へっ?」

 柏木が声を上げる。

「私もですか!?」

「当たり前だ。お前は俺のオペレーターなんだろう?」

「いや、まだ正式に決まった訳じゃ……!」

「なら、初仕事だ。フィオナ!」

「はい!」

 ヴィンセントはコートを羽織った。それと同時にフィオナが彼の肩に乗る。タクティカルベストには、いつの間にか大量のマガジンが差し込まれている。

「行くぞ、柏木」

「……!」

 柏木は一瞬だけ戸惑った。しかし、すぐに頷いた。

「はい!」

 

 ◇

 

 工業区画第七倉庫。

 

 数十分後。

 近衛インダストリアルが管理する工業区画。その一角にある巨大な倉庫から、黒煙が立ち上っていた。周囲には警察車両が集まり、赤色灯が夜の街を照らしている。しかし、誰一人として倉庫の中へ入ろうとはしなかった。

「消火活動急げ!まだ作業員がまだ取り残されているぞ!」

 勢いよく噴射される水。周囲からは駆けつけた人でごった返している。

 現場に到着したヴィンセントと柏木は、周囲を確認しながら状況を確認する。

「犯人はエレクトリア一機。武装は不明ですが、施設内の監視カメラがすべて破壊されているため、正確な状況は分かっていません」

「従業員は?」

「おそらく、まだ倉庫内に……」

「死者は?」

「安否確認はまだ……!」

 ヴィンセントは火の手が上がる倉庫を見上げる。

「フィオナ!」

「はい」

「先行して内部に突入しろ。従業員の捜索…救助を最優先だ」

「了解」

「それと、暴走したエレクトリアだが……無力化しろ。破壊はするな」

 フィオナは一瞬だけ沈黙しコクっと頷いて彼の肩から勢いよく飛び出す。柏木は驚く。先ほどまでのフィオナなら、敵を一瞬で破壊してしまうことも可能だっただろう。しかし、ヴィンセントはその指示を出さなかった。

「柏木」

「は、はい!」

「俺とフィオナが中に入る」

「は?」

「お前は無線で援護しろ」

「……私が!?」

「お前以外誰がいるんだよ……」

「いやいやいや!私まだやったこともないんですよ!?」

 柏木の額から冷や汗が吹き出る。当然だ………柏木は今回の任務が初めてだ。柏木はブンブンと手を振る。しかし、ヴィンセントは柏木の反応を無視し、通信端末を投げ渡す。

「俺とフィオナがお前の《目》になる」

「……!」

 突然与えられた責任に、柏木の手が震えた。渡された通信端末が鉛のように重く感じる。

「もし失敗したら……」

「失敗するな」

「そんな無茶な……」

「エレクトリアの犯罪を減らしたいんじゃなかったのか?」

 ヴィンセントが一喝する。彼の言い分は最もだ………………ここで引き下がればエレクトリアの未来を潰しかねない。それに何より、失敗して出世ルートから外されるのは柏木にとってもつらい。気づいたころには、すでに倉庫へ向かって歩き始めるヴィンセントの姿があった。

「ちょ、ちょっと待って!」

 柏木は慌ててヴィンセントを呼び止める。

「……本当に、私で大丈夫なの?」

「……柏木」

「…はい」

「俺はお前を信頼している。だから、お前も俺を信じろ」

 ヴィンセントの蒼白な瞳が柏木を見つめる。不思議な人だ、彼の瞳からはまるで安心しろと訴えかけるような優しい目をしていた。

「スゥー……」

 大きく深呼吸する。胸元に手を当て、瞳を閉じる。

 そして——

「くれぐれもお気を付けて…!」

 柏木は覚悟を決めた。ヴィンセントは微かに笑みを見せ、火の手が上がる倉庫に一切の迷いなく走っていく。柏木も通信端末の電源を入れる。起動するとすぐにヴィンセントの声が聞こえた。

『柏木』

「は、はい!」

『始めるぞ』

「……了解!」

 その瞬間。倉庫の非常扉を思いっきり蹴飛ばした。ヴィンセントが内部へ侵入する。室内は燃え盛る炎によって暖色に輝いている。賢明な消火活動のおかげで徐々に火は消し止められつつあるが、死と隣合わせなのは変わらない。むしろ注意すべきは、一酸化炭素中毒による窒息死だろう。

「急いだほうがよさそうだな。フィオナ状況は?」

『こちらフィオナ。通信状態良好。データを共有します』

 倉庫内部は異様なほど静かだった。散乱した工具。倒れた作業台。床には無数の破損したエレクトリアの部品が転がっている。

『柏木、何か見えるか?』

「……待ってください」

 柏木は先行して突入したフィオナから提供されたデータを確認する。

「……いた!」

『どこだ?』

「東側の通路です! そこに人が集まっています!」

『人数は?』

「……27人! 全員、生存しています!」

『分かった!すぐに向かう!』

 ヴィンセントが走り出す。しかし、その瞬間だった。

 ――ドンッ!!

 倉庫の奥から激しい爆発音が響いた。

「きゃっ!」

 柏木が思わず耳を塞ぐ。

『ヴィンセント!大丈夫!?』

「あぁ………問題ない」

 爆発で服に燃え移った火をヴィンセントは落ち着いて手で叩いて強引に沈下する。

「フィオナ!」

「こっちです!」

 フィオナがヴィンセントと合流する。

「従業員は?」

「この先です。全員、生存を確認しました」

「よし」

 ヴィンセントは安堵する暇もなく走り出した。

 通路の奥へ進むにつれて、炎の勢いが増している。崩れ落ちた資材が道を塞ぎ、天井からは火花を散らしながら配線が垂れ下がっていた。

「柏木、聞こえるか?」

『はい!』

「従業員の位置は?」

『今いる通路をそのまま直進してください! およそ四十メートル先です!』

「了解」

 ヴィンセントとフィオナが足を進める。

 その時だった。

 ガァンッ!!

 前方から激しい金属音が響き渡った。

「……!」

 ヴィンセントが即座に足を止める。

 フィオナもレーザーハンドガンを引き抜いた。

 薄暗い煙の向こう。

 そこに、1つの小さな影が浮かび上がる。

「マスター」

 フィオナが銃口を向ける。

 炎に照らされ、その姿が露わになった。

 一体のエレクトリア。

 作業用と思われる黄色と黒を基調とした簡素なボディ。

 しかし、その姿は見るも無残だった。

 右腕は装甲が剥がれ、内部フレームが露出している。左脚にも大きな損傷があり、立っていることすら困難に見える。

 頭部のセンサーは赤く点滅を繰り返していた。

「こいつが……暴走個体か」

『ヴィンセント!』

 通信越しに柏木の声が響く。

『個体情報を確認しました! 工場所属の作業支援型エレクトリアです!』

「武装は?」

『本来はありません! 非戦闘用です!』

「……非戦闘用?」

 ヴィンセントが眉をひそめる。

 だが次の瞬間。

 エレクトリアが近くに落ちていた鉄板を拾い上げた。

「マスター!」

「来るぞ!」

 エレクトリアが鉄板を勢いよく振り回す。

 フィオナは即座にヴィンセントの前へ飛び出した。

 ガァン!!

 コンデンサシールドと鉄板が激突する。

 火花が飛び散った。

「ッ……!」

 フィオナが僅かに後退する。

「随分な馬鹿力ですね……!」

 エレクトリアは攻撃を止めない。

 再び鉄板を振り上げる。

「フィオナ!」

「はい!」

 ヴィンセントの指示を待たず、フィオナが高速で懐へ潜り込む。

 鉄板が振り下ろされる直前。

 フィオナはエレクトリアの腕を蹴り上げた。

 ガンッ!

 鉄板が床へ転がる。

 続いてレーザーハンドガンを構える。

 銃口がエレクトリアの胸部へ向けられた。

「待て!」

 ヴィンセントの声が飛ぶ。

 フィオナの指が止まる。

「マスター?」

「破壊するなと言ったはずだ」

「ですが、このままでは――」

 エレクトリアが再び襲いかかる。

 フィオナは射撃を止め、相手の拳をかわした。

 そのまま背後へ回り込み、腕を掴む。

「大人しく……してください!」

 エレクトリアが激しく抵抗する。

 フィオナの拘束を振り払い、再び距離を取った。

「……?」

 ヴィンセントはその様子をじっと観察していた。

「どうした?」

『ヴィンセント?』

 柏木が尋ねる。

「妙だ」

『何がですか?』

「あいつ……」

 ヴィンセントは目を細める。

「俺たちを追ってこない」

「……確かに」

 フィオナも気づく。

 エレクトリアは一定以上、こちらへ近づこうとしない。

 先ほどから同じ場所を維持している。

 まるで――。

「何かを守っている?」

 ヴィンセントが小さく呟いた。

 直後。

 ガラガラガラッ!!

 天井付近から大きな音が響く。

 炎によって耐久力を失った資材棚が傾いた。

 その真下には――。

「人がいる!」

 ヴィンセントが叫ぶ。

 倒れている作業員が一人。

 意識を失っているのか、動く様子がない。

 巨大な棚がその作業員へ倒れ込む。

「フィオナ!」

「間に合わ――」

 その瞬間。

 暴走個体が動いた。

「……!」

 損傷した脚を引きずりながら、作業員へ向かって全速力で駆け出す。

 そして――。

 ガァァンッ!!

 落下してきた棚を、両腕で受け止めた。

「なっ……!」

 ヴィンセントが目を見開く。

 小さな身体に、巨大な金属棚の重量がのしかかる。

 ギギギギッ……!

 内部のモーターが悲鳴を上げる。

 すでに損傷していた右腕から火花が飛び散った。

「なぜ……」

 エレクトリアは答えない。

 ただ必死に棚を支え続ける。

 その下では、倒れていた作業員が守られていた。

『ヴィンセント!』

 柏木の声が響く。

『その奥にも反応があります!』

「何?」

 ヴィンセントが視線を向ける。

 瓦礫の奥。

 そこには二十数名の従業員たちが身を寄せ合っていた。

「まさか……」

 柏木も気づいた。

『あのエレクトリア……』

 一瞬の沈黙。

『従業員を……守ってた?』

「……そういうことか」

 ヴィンセントが拳銃を下ろす。

 ようやく全てが繋がった。

 破壊された設備。

 塞がれた通路。

 散乱した資材。

 暴走したエレクトリアが無差別に破壊した跡だと思われていた。

 だが違う。

 火災によって倒れた設備をどかし。

 従業員たちのいる場所へ炎が回らないよう、燃え移りそうな資材を壊して遠ざけてあった。

 そして今もなお――。

 人間を守っている。

「フィオナ!」

「はい!」

「棚を支えろ!」

「了解!」

 フィオナがエレクトリアの隣へ飛び込む。

「手伝います!」

 二人で棚を持ち上げる。

「柏木!」

『はい!』

「救助隊を入れろ! ルートは確保してある!」

『分かりました!』

 ヴィンセントは倒れていた作業員を抱え上げ、安全な場所まで運び出した。

「フィオナ!」

「もう大丈夫です!」

 フィオナが棚を横へ押し倒す。

 ズドォン!!

 巨大な棚が床へ倒れ、大量の埃が舞う。

「……」

 作業用エレクトリアはその場に崩れ落ちた。

「対象、機能低下」

 フィオナがゆっくりと近づく。

 再び銃を構えようとする。

「フィオナ」

「……」

 ヴィンセントが制止する。

「もういい」

 フィオナはレーザーハンドガンをホルスターへ戻した。

 ヴィンセントがエレクトリアの前へ膝をつく。

「聞こえるか?」

 エレクトリアの瞳が微かに光る。

『……マ……スター……』

「マスター?」

 ヴィンセントが眉をひそめる。

 エレクトリアは、先ほど守った作業員へ視線を向けていた。

『マスター……まもる……』

 途切れ途切れの音声。

『みんな……まもる……』

「……」

 ヴィンセントは何も言わなかった。

 やがて奥から救助隊が駆け込んでくる。

「救助隊です!」

「負傷者から運び出せ!」

 従業員たちが次々と救助されていく。

 担架で運ばれていく者。

 仲間に肩を貸されながら歩く者。

 その中の一人が、ヴィンセントたちの方を振り返った。

「その子は……!」

 中年の作業員だった。

 顔や服は煤だらけになっている。

「そのエレクトリアを壊さないでくれ!」

「知っているのか?」

「あぁ……!」

 作業員が息を切らしながら近づいてくる。

「この子が俺たちを助けてくれたんだ!」

「……」

「火災が起きた時、出口が塞がれて……俺たちは逃げられなくなった」

 作業員がエレクトリアを見る。

「この子はずっと瓦礫をどかして、俺たちを安全な場所へ誘導してくれていた」

「じゃあ暴走したっていうのは……」

「違う!」

 作業員が強く否定する。

「突然、こいつが設備を壊し始めたから……最初は俺たちもそう思った」

 作業員は唇を噛む。

「でも違った」

「……」

「火が回らないように、燃えそうな設備を壊していたんだ」

 ヴィンセントは周囲を見渡す。

 破壊された設備。

 散乱した資材。

 すべてに理由があった。

『つまり……』

 柏木が通信越しに呟く。

『外から見れば、暴走して工場を破壊して、そのまま立てこもっているように見えた』

「あぁ」

 ヴィンセントが答える。

「実際は真逆だったってことだ」

 ヴィンセントは倒れているエレクトリアを見る。

「こいつは最初から最後まで、人間を助けようとしていた」

『……』

 柏木は何も言えなかった。

 先ほどまで、自分自身もこのエレクトリアを『犯人』だと思い込んでいた。

 ヴィンセントも同じだ。

 だが――。

 目の前にある事実は違っていた。

「マスター」

 フィオナがエレクトリアを確認する。

「エネルギー残量、三パーセント以下。右腕及び左脚の駆動系が限界です」

「直せるか?」

「適切な設備があれば」

「なら問題ない」

 ヴィンセントが立ち上がる。

「柏木」

『はい』

「近衛に連絡しろ」

『え?』

「暴走個体の確保に成功した」

「……!」

 ヴィンセントは一度言葉を切る。

 そして――。

「ただし、破壊処分は認めない……とな」

 ヴィンセントは少し考えた後、破損したエレクトリアを見つめる。

「このエレクトリアは事件の犯人じゃない」

 ヴィンセントの表情が曇る。

「被害者だ」

『……』

「機体を回収。近衛の施設で保護する」

『ですが、暴走個体として登録されている以上、解析後に処分される可能性が――』

「だったら報告書を書き換えろ」

『えぇ!?』

「『暴走個体』じゃない」

 ヴィンセントは淡々と言い放つ。

「『救助活動中に制御異常を起こしたエレクトリア』だ」

『そんな無茶苦茶な……』

「事実だろ?」

『それは……そうですけど』

「なら問題ない」

『絶対、上から怒られる……』

 柏木の弱々しい声が通信機から聞こえる。

 ヴィンセントは小さく笑う。

「諦めろ」

『そんなぁ……』

 フィオナが僅かに口元を緩めた。

「マスター」

「なんだ?」

「随分と優しいのですね」

「……何の話だ」

「いえ、何でもありません」

「妙なこと言ってないで運ぶぞ」

 ヴィンセントがエレクトリアへ手を伸ばす。

 しかし、その手が触れる直前。

 エレクトリアが僅かに身を引いた。

「……大丈夫だ」

 ヴィンセントが静かに語りかける。

「もう戦う必要はない」

『……』

「お前が守っていた奴らは全員助かった」

 エレクトリアの瞳が僅かに明滅する。

「だから休め」

『みん……な……?』

「あぁ」

 ヴィンセントは後方を見る。

 救助されていく従業員たち。

「全員、生きてる」

『……よかっ……た………………』

 小さな声だった。

 その直後。

 エレクトリアの瞳から光が消えた。

「……!」

 フィオナがすぐに状態を確認する。

「大丈夫です。エネルギー切れによる機能停止です」

「そうか」

 ヴィンセントはエレクトリアを慎重に持ち上げると、フィオナへ預けた。

「連れて帰るぞ」

「了解」

 フィオナが両腕で彼女を抱える。

 その姿は――。

 つい先ほどまで戦っていた相手を運んでいるようには見えなかった。

 

 ◇

 

 数時間後。

 火災は完全に鎮火。

 取り残されていた二十七名の従業員は、全員無事に救助された。

 重傷者もいない。

 そして――。

 暴走したとされていたエレクトリアについても、近衛インダストリアルによって回収された。

 処分ではない。

『保護』という形で。

「……はぁ」

 現場から離れた柏木が、深いため息を吐く。

「疲れた……」

「初仕事にしては上出来じゃないか?」

「誰のせいだと思ってるんですか!」

 柏木が勢いよくヴィンセントを見る。

「いきなりオペレーターやれ! 失敗するな! 俺を信じろ! ですよ!?」

「できただろ?」

「結果論です!」

「結果が全てだ」

「この人……!」

 柏木が額を押さえる。

 その横でフィオナが小さく笑っていた。

「フィオナさんも笑わないでください!」

「申し訳ありません」

 全く申し訳なさそうではない。

 柏木は再び大きく息を吐いた。

 その視線の先。

 回収ケースへ収容されたエレクトリアが、近衛インダストリアルの車両へ運ばれていく。

「……でも」

 柏木が小さく呟く。

「よかった」

 ヴィンセントが横目で見る。

「何が?」

「あの子です」

 柏木は運ばれていくエレクトリアを見つめる。

「壊されなくて」

「……」

「私、最初から犯人だと思い込んでました」

 柏木は視線を落とす。

「暴走したエレクトリアがいて、工場が燃えていて、人が取り残されていて……だから当然、あの子が全部やったんだって」

「普通はそう考える」

「でも……違った」

 柏木は静かに呟く。

「自分がボロボロになってまで、人間を守ってた」

 ヴィンセントは何も答えない。

「エレクトリアって……不思議ですね」

「何がだ?」

「人間が思っている以上に、人間らしいのかもしれません」

 その言葉に、ヴィンセントは僅かに視線を細める。

 そしてフィオナを見る。

「……さあな」

 短い返事だった。

 だが、その言葉とは裏腹に。

 彼の視線はどこか穏やかだった。

「さて」

 ヴィンセントが背を向ける。

「帰るぞ」

「え?」

「任務は終わりだ」

「ちょっと待ってください!」

 柏木が慌てて後を追う。

「報告書!報告書を書かないと!」

「お前に任せる」

「なんでですか!?」

「俺は文章を書くのが苦手なんだ」

「絶っ対嘘!単に面倒なだけですよね!?」

「……フィオナ」

「はい」

「帰るぞ、ついてこい」

「了解」

「ちょっと!逃げないでください!」

 夜の工業区画に柏木の叫び声が響き渡る。

 その日。

 対エレクトリア特殊対策機構が初めて対応した事件は、一体のエレクトリアを破壊することなく幕を閉じた。

 従業員27名。

 死者――ゼロ。

 そして――保護されたエレクトリア、1機。

 こうして、裏社会で「殺し屋」として生きていた男、ヴィンセント・ウェグナー。

 そして、近衛インダストリアルから派遣された新人オペレーター、柏木祐奈。

 二人は後日、今回の初任務を高く評価され、正式に同じ組織へ所属することになった。

 彼らの名は――。

『対エレクトリア特殊対策機構』

 エレクトリアによる犯罪を止めること。時に戦い、時に救い、時に、エレクトリアの抱える「心」と向き合う。それは、決して表舞台に立つことのない者たちの物語。

 そして――。

 ヴィンセントと柏木。

 二人の奇妙な関係が始まった瞬間でもあった。




【二次創作について】

 本作品は、ELECTRIAR LABOが開発・提供するスマートフォン向けゲーム『エレクトリアコード(ElectriarCode)』を原作とした二次創作小説です。

 『エレクトリアコード』に登場する世界観、エレクトリア、近衛インダストリアルなど、原作に基づく設定・要素をお借りし、本作品独自の物語として再構成しています。

 なお、本作品に登場するキャラクター、組織、事件、設定および物語は、作者による独自の創作です。原作には存在しない設定・解釈・展開が含まれます。

 本作品は原作者およびELECTRIAR LABOによる公式作品ではなく、個人によるファン活動として制作した二次創作です。

 原作:
 『エレクトリアコード(ElectriarCode)』
 © 2020 ElectriarLabo

 公式サイト:
 https://elecodelabo.wixsite.com/elecode

 本作品は原作『エレクトリアコード』への敬意と感謝を込めて制作しています。
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