『着せ恋』だと思った? 残念『呪術廻戦』でした!(32話から書き直します) 作:自分のことを五条新菜と信じている(文字数
恋愛モノってむずくね?(素朴な感想)
あと、ボツ案第三十二話の内容を要約したようなのを第三十一話の最後にくっつけてます。読んでも読まなくても大勢に影響なし。とりあえず高速移動の練習したよ、ってだけ。
週が明けた月曜、体育で妙な体験をした。
授業内容はサッカー。一通り、パスやドリブル練習のあとにミニゲームが始まり、味方から回ってきたボールに何気なく足を出す。すると、吸い付くようにボールが収まった。触れた感触は確かにあったのに、弾かれることなく勢いだけが綺麗に消える。
そのまま前へ運ぼうとドリブルをする。相手が進路を塞いだところで、足を止めるまでもなく自分でも意味が分からないくらいに綺麗なターン。その後、急激な減速、からのトップスピードですぐに別の相手を抜き去り、ディフェンスの股抜き。そして、ゴールキーパーをヒールリフトでかわしてゴール。
急な方向転換にも身体は流れず、ボールも足元からほとんど離れなかった。昔見たスーパープレイ集みたいな動きだった。
それからも似たようなことが何度かあった。どれも特別なことをしようとしたわけじゃない。ただ、思い描いたとおりに身体が動く。いや、むしろ思い描いていた以上に動いていた。
自分の身体なのは間違いない。それなのに、今まで知っていたものとはまるで別物のような感覚。
結局、その感覚が妙に面白くて、授業が終わるまで夢中になってボールを追いかけていた。
◆
放課後、文化祭の出し物の準備をクラスメイトに任せ、鞄をまとめて海凛さんと二人で教室を出る。
駅へ向かう道すがら、今日の授業や文化祭のことなど、他愛のない会話をした。話題はあちこちへ飛んでいき、俺もそのたびについ口を挟んでしまう。
電車に乗ってからも会話は途切れず、気づけば池袋に着いていた。
駅から少し歩いて店に入ると、棚にずらりと生地が並ぶ。売り場に顔馴染みの店員の姿を見つけ、挨拶を交わしてそのまま持参した三面図やメモを見せて白いスーツに使う生地について相談した。仕立てたい形や求める質感を伝えると、いくつかの候補を店員が挙げてくれる。
一口に白と言っても種類は多い。色味がよくても少し柔らかすぎたり、形は綺麗に出せそうでも光沢が強すぎたり。それぞれの特徴を教えてもらいながら、厚みや張りを確かめていく。
海凛さんも隣でスマートフォンの衣装画像と見比べ、色味や雰囲気について意見を聞かせてくれた。
最後は二人で納得できる生地を選び、残りの材料も買い揃えていく。海凛さんは候補が決まるたびに嬉しそうに笑い、次の売り場へ向かうとその隣に並んだ。
そんなことを繰り返しているうちに、思っていた以上に時間が過ぎていた。
ほんの十日あまり前、渋谷では次の瞬間に誰かを失うかもしれなかった。それが今は、ジャケットに合うボタンを選ぶのに二人して頭を悩ませている。何でもないことのはずなのに、それがひどく嬉しかった。
◆
必要なものが一通り揃い、レジで会計を済ませる。思いのほか大きくなった荷物は、海凛さんと分けて持つことになった。
店を出る頃には、外もすっかり夕方の色になっていた。
すぐに駅に向かうのも惜しくて、俺たちは少しだけ遠回りをすることにした。
行き交う人々の間を、二人で肩を並べて歩く。
海凛さんは買い物を終えても楽しそうだった。さっき選んだ生地で衣装がどう仕上がるか、実際に着たらどんな感じになるか。そんな話をしていたかと思えば、文化祭当日のミスコンへと話題が移り、気づけば次にどんなコスプレをしてみたいかの話まで始まっていた。
ひとつ話し終える頃にはもう次のことを考えていて、思いついたことを嬉しそうに聞かせてくれる。俺が何か意見を返すと、今度はそちらにも興味を示して、また話が広がっていく。
今日の買い物でもそうだった。生地を選んでいる間は一緒になって真剣に悩み、いいものが見つかればぱっと表情を明るくする。俺が素材の特徴や仕立て方について説明している時も、興味深そうに耳を傾けてくれた。
そんな海凛さんを見ていると、俺まで楽しくなってしまう。
思えば、最初に衣装を頼まれた時からそうだった。
初めて作った衣装。初めての撮影。その後も新しい衣装を作るたびに、一緒にいろいろな場所へ出かけて、たくさんの時間を過ごしてきた。
もちろん、衣装を作ること自体が楽しかった。昔からものを作るのは好きだったし、海凛さんのおかげでこれまで知らなかった世界にも随分と触れることができた。
けれど、振り返ってみると、思い浮かぶのは作った衣装のことばかりじゃない。
完成した衣装を見て喜んでくれた顔。撮影中、夢中になってポーズを取る姿。好きな作品について語る時の弾んだ声。何か面白いことを見つけると、真っ先にこちらへ振り返る、その仕草。
ひとつ思い出すと、また別のことが浮かんでくる。
いつの間に、こんなに増えたんだろう。
そんなことを考えながら歩いていると、人の流れに遮られて、少しだけ距離が空いた。海凛さんは数歩先でこちらを振り返り、俺が追いつくまで歩調を緩めてくれた。
そして隣に戻ると、何事もなかったように話の続きを始める。
それが、なんだか嬉しかった。
これまでも何度となく繰り返してきた時間だった。好きな作品の話をして、衣装を作って、一緒に撮影へ出かける。
そして今、海凛さんは当たり前のように、その先のことまで話してくれている。
文化祭が終わったら、次は何を作ろうか。どこへ撮影に行こうか。また二人で生地を選び、出来上がった衣装を着てもらって、写真を撮って。そうやって、これからも一緒にいろいろなことができる。
その光景が、ごく自然に思い浮かんだ。
この先も、こうして彼女と一緒にいられたら。
ふと海凛さんを見ると、ちょうどこちらへ顔を向けたところだった。目が合い、彼女が笑う。
俺も笑い返した。
「……俺、海凛さんが好きです」
「……え……?」
「……あ」
海凛さんの足が止まった。話し声が途切れ、僅かに開いたままの口から小さな声が漏れた。俺を見つめる目が、少しずつ大きくなっている。
そして、俺自身も遅れて自分の言葉に驚いた。
今日だって、衣装の材料を買いに来ただけだった。告白することなんて考えてもいない、ありふれた放課後。気負うことのないいつもの時間だと思っていた。
それなのに、目が合って、彼女が笑って、その声を聞いて──気づけば、口にしていた。照れ隠しも余計な飾りもない、ありのままの気持ちだった。
でも、溢したそれに後悔はなかった。むしろ、不思議なくらいにしっくりきている。
呆然としたまま一拍置いて、はっと海凛さんの肩が跳ねた。
「ご、ごじょー君!? い、今の……っ!」
何か言おうとして、言葉を詰まらせた。
買い物袋の持ち手をぎゅっと握る。頬がみるみる赤くなり、口元には耐えきれず笑みがこぼれていた。
「それってあたしのこと……そういう意味で好きってこと、だよね!?」
「……改めて聞かれると照れくさいですけど、『はい、そうです』」
「っ、やば……! え、マジで……!?」
海凛さんは俯きかけたかと思えば、すぐに顔を上げた。落ち着かない様子で何度も口を開いては閉じる。もう何を言えばいいのか分からないみたいだった。
そんな表情を見ていると、俺まで頬が熱くなってくる。
このまま返事を待っていてもいい。けれど、あんなふうに飛び出した言葉だけで終わらせるのは、何となく違う気がした。
「あの……俺」
改めて口にしようとする。でも、どうしてかさっきと違って妙にむず痒い。
俺は買い物袋を持ち直し、一度視線を落としてから海凛さんの顔を見た。
「俺は、海凛さんのことが好きです。なのでその……俺と、付き合いませんか?」
「──っ、うん!!」
返事は、ほとんど食い気味だった。
「うん、もちろん! あたしも、ごじょー君のことずっと好きだった!!」
「うわっ……!?」
言い終わるが早いか、海凛さんが勢いよくこちらへ飛び込んできた。
思わず声が出た。驚きはしたけど、身体は反射的に動き、華奢なその身体を受け止める。
互いの買い物袋が大きく揺れる。海凛さんはそんなことは気にも留めず、俺の背中に腕を回して胸元にぎゅっと抱きついてきた。
「嬉しい……! めっちゃ嬉しい! え、やばっ、どうしよ! 幸せすぎるんですけど〜!!」
「あ、あのちょっと落ち着いてください……! 俺が言うのも何ですけど、ここではいろいろとマズイというか……!」
「え〜、ヤダ!」
「『ヤダ』じゃないんですって……!」
海凛さんは少しも離れようとしなかった。
周りの人も微笑ましいものを見るような、敵意が籠っているような、そんな感じでこちらを振り返っている。
海凛さんは顔を埋めたまま、くすくすと笑っていた。俺もつられて笑うと、さらに身体を寄せてきた。
しばらくして、海凛さんが顔を上げた。頬はまだ赤く、目尻には少しだけ涙が滲んでいる。
「……ごじょー君、ほんとにあたしでいいの?」
「もちろんです」
「へへっ、そっかぁ……!」
海凛さんは何度か瞬きをして、また顔を綻ばせた。
「やば……ほんと嬉しい……!」
そう言って、もう一度俺の胸に顔を埋める。
俺も背中に回した腕に、少しだけ力を込めた。
「……ありがとうございます」
「えっ、なんでお礼!? てか、こっちこそありがとなんだけど! てか、びっくりしたぁ……! 普通に買い物してたじゃん!」
「俺も、こんなふうに言うとは思ってませんでした」
「なにそれ! あははっ!」
海凛さんは笑いながら少し身体を離し、俺の肩を軽く叩いた。俺も背中に回していた腕を緩める。
目が合うと、海凛さんは何か言いかけて、また笑った。
その笑い声に、ぱち、ぱち、ぱち、とゆっくりとした拍手が重なった。
「へ?」
「は?」
海凛さんが不思議そうに目を丸くした。俺も思わず首を傾げる。俺たちの笑い声が途切れたあとも、手を叩く音は続いていた。
すぐ、背後からだった。
拍手が止み、何事かと振り向くより先に、男の声が掛かった。まるで知り合いにでも挨拶するような、場違いなほど気安い声だった。
「やあ」
とりあえずここまでで第一部ってことで。
ボツルートの想定小ネタ
・宿儺内包により、死滅回游回避(次話に関連)
・宿儺内包により、空想置換により魂を切り分ける解が可能に→死滅回游プレイヤー候補の死滅回游参加前の分離のために全国行脚(いぬやしきのパパみたいな感じ)
・何百年経っても死なない五条人形店の老人、という都市伝説。あのじいちゃん平成から生きてるらしいぜ?
・宿儺致死量の純愛を浴び、絆されツンデレルート(若菜の孫とか嫌々ながら面倒見そうな感じ)