TS転生したし病弱系ヒロインになりてぇ!! なった!!! 作:燕目
視点。
基本的にどんな媒体であれ物語というものはある一つの視点を軸として進行される。視点というのは一人称や二人称、三人称等と言われるあれである。
この中からどれか一つが選ばれ、物語は描写されるわけだ。特に図や絵等が少ない、もしくはないような小説などにおいては今誰が喋っているのかがわからないと混乱するため、視点を固定し明確にすることは特に重要である。区切りがあるならまだしも同じ文の中で飛び飛びだと分かりづらいからね。
さて、大抵の物語は主人公による一人称によって進行され、様々な場面が描写される。ヒロインとの出会いや仲を深めるエピソード、告白シーンなんかは主人公に没入するためにも主人公目線で書くほうが書きやすいのだ。
もちろん俺も主人公目線での進行に否はない。分かりやすいし、主人公という人間がどういう存在かを知ることも出来るからだ。
だが、一人称視点にはその視点主が知らないことや見えていないことは描写できないという制限が存在する。そのためどうしても書きづらいところも多い。例えば、主人公の一人称視点で物語を書いている時、当然だが主人公の主観でしかヒロインの心情は描写できない。ヒロインが本当はどう思っているかなど、主人公に分かるわけがないからだ。
しかし、だからこそ良いという時もある。例えば主人公にとっては本当に何気ない当たり前のことで、主人公の視点では日常の一コマとして処理されたイベントがあったとする。しかし、ヒロインにとっては忘れられないような、場合によっては人生を塗り替えるような出来事であったとしよう。一人称視点ではこれを主人公がひいては彼を通して世界を見ている読者や視聴者が知ることはない。だが、それは視点主が変わらなければの話である。
主人公ではなくヒロインに視点を変更し同じイベントを描写することで、そのイベントの情感は高まり主人公にもヒロインにもより強く没入することが出来るようになるのだ!主人公の好感度も盛れるしね!
まあ、要するにだ──ヒロイン視点を挟んでくれるラブコメって良いよね……。病弱系ヒロインがどれだけ主人公に救われていたかを切々と語ってくれる展開とか超好きである。
晴れて千陽君が園城寺家に迎え入れられて早数日。千陽君も千陽と呼ばれることに慣れてくれたようで、お父様やお母様に咲良ちゃん、その他の家の使用人さん達に呼ばれるとしっかりと反応してくれるようになった。千陽と呼ばれると、コテンと首を傾けて自分を呼んだの?と言わんばかりの表情で呼んだ人の傍にテトテトと駆け寄っていく姿はとても愛くるしい。なんだろう子犬っぽいというかね、うん。可愛い。特に千歳ちゃんから呼ばれるとパッと顔を輝かせて、ピューっと風のように一直線で飛んできてくれるのなんかもう撫でまわしたくなる位に超かわいい。まあ、それでも千歳ちゃんの方が可愛いのだが……!
それにしても転生してから常に病弱系ヒロインで満たされる毎日を送れているが、ここ最近はとくに充実していたと思う。やはり、こんなのもうヒロインとして攻略されちゃうしかないじゃんと素直に思える千陽君という存在が現れてくれたことが大きいのだろう。
出会いのシーンとかもうね最高だった。雪が降る中、周囲の声を振り切り、己の身も構わず傷だらけの少年に歩み寄る千歳ちゃん。あれはもうゲームとか漫画とかなら完全に専用の劇半とかが流れてるやつだったよ。絶対、主人公が窮地に追い込まれた時とかに回想で流れて、主人公を奮い立たせる類いの名シーンだったよあれはぁ。
その後もねそれはもう盛り沢山だった。千陽君を家に迎え入れるためにお父様にお願いする時とかも本当に良かった。主人公のために健気に必死に嘆願するヒロインムーブが出来たの本当に最高だった。体を震わせ、脂汗を浮かばせ、お父様に止められながらも必死にお父様に懇願する千歳ちゃんの姿は心のフォルダに永久保存した。あれで通らなかったら血を吐くくらいはするつもりでいたので、思いのほかすんなりとお父様が受け入れてくれたのだけは嬉しくもあり少し残念でもある。
コフッ!とかガフッ!とか言いながら口を押えると、その手には血が……というのは病弱系ヒロインとしては一度はやってみたいムーブだったのだが……。まあ、あんまり安売りしすぎてもアレだし、然るべき時にとっておけたと思うことにしておこう。
ここぞという場面で血を吐いてこその病弱系ヒロインだからね!ちなみに喀血と吐血は出血している器官によって使い分けられているし、出てくる血の色とかも違うので病弱系ヒロイン好きとして正しく理解し、然るべき時は正しく血を吐こうと思う。
──千歳ちゃんの白い肌を汚すようにベッタリと広がる血、そしてそんな状態でも健気に儚げに微笑む千歳ちゃん。まさに病弱系ヒロインの真骨頂の一つともいえる構図、これはもう名シーンが確定していると言えるだろう。楽しみだぁ。千陽君という具体的な相手が出来たことも、より妄想を捗らせてくれる。最高のシチュエーションで血を吐いてみせるからね!その心に一生刻んでね千陽君!!!
加えて千陽君に名前を付けるムーブまで出来たのは僥倖だった。ああいったイベントは師匠や親代わりが担当することが多いので、ヒロインらしいかと言われるとまた違うかもしれない。だが、陽の気による痛みから救い出したという文脈があると、一気にヒロインムーブらしさが増す。苦痛に塗れた世界から救い出してくれた自分と対になる少女から名前まで貰うとか、こんなのもう運命の二人としか言えないだろう。その上、付けた名前は千歳ちゃんから一字貰って千陽である。ちなみにこの名前にしたのは完全に趣味である。良いよね……ちょっと独占欲があるヒロインって……!特に千歳ちゃんみたいな普段は儚げな病弱系ヒロインがそういう顔を見せるのって……!
いやあ、それにしても陰と陽という対になる存在にして、名前までこれである。千歳ちゃんマジメインヒロイン。ゲームのパッケージとかだったら絶対センターでに二人揃って書かれてるやつだこれ……!こんなのもうパケ買い不可避じゃんね!
本当に千陽君には感謝してもしきれない。出会って数日でここまでラブでコメってくれるなんて、流石は千歳ちゃんの対になる存在である。その上まだ子供だからというのもあるのだろうが、まあ可愛い。本当に可愛い。千歳ちゃんに次ぐくらいには可愛い。
もうね、名前を付けた瞬間の顔とかね、凄かった。千歳ちゃんが一足飛びでママになるところだった。まあ、いずれは本当にママになるんだけどね!ただラブってコメる過程も無しにママになるわけにはいかない。結果ではなく過程こそが大切なんだ。これからたくさん思い出作ろうね千陽君!!!多分何回か死にかけたり、血反吐を吐いたり、目の前でぶっ倒れると思うけど──大丈夫。千歳ちゃんは死なないから安心してほしい。千歳ちゃんも千陽君もバッドエンドは似合わないからね!二人で幸せになろうね!!!その前に一生忘れられないことをたくさんしようね。
「千陽~」
「!」
「千歳と千陽は本当に仲良しですね。お前様」
「うむ。まるで実の姉弟のようだな。……」
「大丈夫ですよ。あの二人ならきっと……」
「そうだな。それに何かあったのなら俺達が支えれば良いだけのことだ」
「その通りです。流石はお前様。私がお慕いしているお方ですね」
「うむ……」
「照れておられますか?」
「か、揶揄うな來歳!」
「あらあら、それでは答えを言っているようなものですよ?お前様」
目指せ!お父様とお母様のようなおしどり夫婦!それにしてもこの可愛い主人公はほんと何なんだろうか。というかまだまだ幼い千歳ちゃんと千陽君の絡みは見ていて本当に癒される。この2人が成長してアレヤコレヤをするなんて……。あぁ~ほんと捗るぅ~~~~!!!
いつも拙作を楽しんでいただきありがとうございます。
少しでも楽しんでいただけているのなら本当に嬉しいです。
それとお気に入り2000突破ありがとうございます!1000の時は言い忘れたので……これは言っておきたかった。
お気に入り何て一桁しかないような零細作者だったので本当に夢でも見ているようです。
過分なご評価を賜りまして、本当にありがとうございます。
この夢が解けるのはきっと千歳ちゃんに作者と皆さんが誰一人としてついていけなくなった頃でしょう。
そしてそれは遠い未来ではないような気がします……!