ブルーアーカイブ ―砂塵の角醒ハンター― 作:ガンダムラザーニャ
便利屋68との戦いの後。
アビドス高等学校では、今回の事件について話し合いが行われていた。
「便利屋68も、ヘルメット団も……どうしてエゴルギアなんて持ってたんだろう?」
カナタがそう口にすると、炎角も腕を組む。
「それが俺にも気になるところだ。エゴルギアは、そこらの武器とは違う。そう簡単に手に入るものではない」
「だったら、調べてみよう」
先生が提案する。
「アビドスは、今回の襲撃と借金に関係するお金の流れを調べる。カナタはエゴルギアがどこから出てきたのかを調べるんだ」
「分かりました」
アヤネも頷く。
「アビドスを狙っている人たちが、どこから資金や武器を調達しているのか。それを調べれば、何か分かるかもしれません」
「俺はエゴルギアを追う」
カナタは腰にあるオメガホーンを見る。
「ヘルメット団や便利屋68が、どうやってあれを手に入れたのか。それを突き止める」
「うへぇ~。二手に分かれるわけだねぇ」
ホシノが欠伸をする。
「でも、その方が早そう」
こうして――。
アビドスとカナタは、それぞれ別の手がかりを追うことになった。
---
数時間後。
カナタと炎角は、ブラックマーケットを歩いていた。
「ここなら、何か知っている奴がいるかもしれないな」
カナタが周囲を見回す。
「だが、気をつけろ」
炎角が低い声で答える。
「ここでは何が売られているか分からん。お前の持つオメガホーンについて知られれば、面倒なことになる」
「分かってる」
二人は人目を避けながら、武器商人や古物商に話を聞いて回った。
しかし――。
「エゴルギア? 知らねぇな」
「角みたいな遺物? さあな」
「古代遺物なら、あっちの店に聞いてみろ」
なかなか情報は集まらない。
それでも諦めずに聞き込みを続けていると――。
「……角みたいな形をした古代遺物?」
一人の古物商が、カナタの言葉に反応した。
「何か知ってるんですか?」
「ああ。最近、そういう代物がいくつか流れてきている」
古物商は声を落とした。
「元は採掘会社が回収したものらしい」
「採掘会社……?」
カナタは足を止める。
「どこの会社ですか?」
古物商は周囲を確認してから、小声で答えた。
「カイザー系の会社だ」
「……カイザー?」
その名前に、カナタの表情が変わる。
「アビドスの借金の……?」
「そこまでは知らねぇよ」
古物商は肩をすくめる。
「ただ、カイザー系の採掘会社が古代遺物を回収して、それがブラックマーケットに流れている。そういう話だ」
「……分かりました。ありがとうございます」
カナタは頭を下げた。
---
その後。
カナタはブラックマーケットの裏側にある資料を調べた。
そして――。
一つの記録を見つける。
そこには、こう記されていた。
回収元:カイザー系採掘会社
回収物:角状遺物
数量:複数
処理:外部売却
輸送先:ブラックマーケット
売却先:非公開
「角状遺物……」
カナタは記録を見つめる。
「これが、エゴルギアなのか?」
炎角が首を横に振る。
「まだ断定はできん」
「だよな」
「だが、可能性は高い」
炎角は記録を見る。
「我が知るエゴルギアは、単なる武器ではない。角獣と繋がるための特別な遺物だ」
カナタは、第7話で手に入れた弾角のエゴルギアと、第9話で見た忍角のエゴルギアを思い出す。
「ヘルメット団の弾角……」
そして――。
「便利屋68の忍角……」
どちらも普通の武器ではなかった。
そして、どちらも角の形をした遺物だった。
「カイザーが採掘して、ブラックマーケットに流している……」
カナタは記録を見つめる。
「そこから誰かが買って、エゴルギアとして使っているのか?」
「おそらくはな」
炎角が答える。
「だが――」
カナタが記録の下を見る。
そこには、肝心の情報がなかった。
売却先:非公開
「誰が買ったのか、分からない……」
「そして、誰がそれをエゴルギアとして利用する方法を知っているのかも分からん」
炎角が呟く。
「カイザーが角状遺物を採掘していることは分かった。だが、それだけではカイザーがエゴルギアを配っているとは言えない」
「……そうだな」
カナタは資料を閉じる。
「でも、少なくともエゴルギアに繋がる最初の手がかりは見つかった」
「その先を追えば、何者かにたどり着けるかもしれんな」
「うん」
二人は、その場を後にした。
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その頃。
アビドスのメンバーと先生も、ブラックマーケットで別の手がかりを追っていた。
「やっぱり、ヘルメット団が使っていた武器の一部も、ブラックマーケットから流れてきたものみたいです」
アヤネが資料を確認する。
「でも、問題はそこじゃない」
先生が資料を見る。
「今回の襲撃で、依頼主はアビドス高等学校を手に入れようとしていた」
「……学校を奪うために、あんな人数まで雇ったのよね」
セリカが拳を握る。
「一体、何が目的なのよ……」
「それを調べるには、まずお金の流れを追う必要がある」
先生が答える。
アヤネが別の資料を開く。
「それと、アビドスの返済金についても気になる記録があります」
「返済金?」
シロコが見る。
「私たちが今まで払ってきたお金?」
「はい」
アヤネは頷く。
「アビドスが支払った返済金は、カイザー側の金融機関を経由して管理されています」
「つまり、私たちが必死に働いて返したお金は、カイザーのところに行ってるってこと?」
セリカの表情が険しくなる。
「そうです」
アヤネが答える。
「ただし――」
資料をめくる。
「そのお金が、そのままヘルメット団に渡ったという記録はありません」
「じゃあ、どういうこと?」
ノノミが尋ねる。
「カイザー側で管理されている資金の一部が、武器の購入や外部組織への支払いに使われている可能性があります」
先生が説明する。
「その中にヘルメット団への資金が含まれている可能性がある、ということだね」
「はい」
セリカは黙り込む。
「……つまり、私たちが返したお金が、回り回って私たちを攻撃するために使われてるかもしれないってこと?」
「まだ可能性の段階だけどね」
先生が答える。
「でも、それを確認するためにも――」
アヤネが一枚の書類を取り出した。
「返済金の受領記録が必要です」
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その後。
アビドスのメンバーと先生は、とある銀行へ向かった。
「ここに、アビドスの返済記録が保管されているんですね?」
ヒフミが不安そうに尋ねる。
「うん」
シロコが答える。
「ここに残っている記録を確認すれば、私たちがどれだけ返済したのか証明できる」
「でも……どうしてヒフミさんが?」
セリカが聞く。
「えっと……成り行きで……」
ヒフミは困ったように笑う。
「私も、こんなところに来ることになるとは思っていませんでした」
「……まあいいけど」
---
銀行の奥。
アビドスのメンバーと先生、そしてヒフミは、目的の記録を探していた。
そして――。
「あった!」
アヤネが声を上げる。
「アビドスの返済記録です!」
そこには、これまでアビドスが支払ってきた金額と日付が記録されていた。
「これがあれば……」
セリカが近づく。
「ちゃんと返済してきたって証明できる!」
しかし、その直後。
シロコが別の書類を見つけた。
「……先生」
「どうした?」
「この記録、処理先が不自然」
「え?」
アヤネが確認する。
「確かに……」
そこには、アビドスから受け取った返済金がカイザー側の資金として処理され、その後、複数の外部取引へ分散されている記録が残っていた。
しかし――。
「これだけじゃ、ヘルメット団への資金だとは断定できません」
アヤネが言う。
「でも、調べる価値はある」
先生が頷く。
「そして、今はもっと大事なものがある」
「受領証明書ですね」
ノノミが答える。
「そう」
先生が頷く。
「もし今後、アビドスの返済記録そのものを否定されたら、私たちが返済したことを証明できなくなる」
「……!」
セリカの顔が強張る。
「じゃあ、これを持っていけば……」
「少なくとも、アビドスが返済してきた証拠になる」
先生が答える。
「でも、お金そのものを持っていく必要はない」
ホシノが頷く。
「そうだねぇ」
「私たちが欲しいのは、お金じゃない」
ホシノは受領証明書を見る。
「ちゃんと返済したっていう証拠だから」
セリカも静かに頷いた。
「……分かった」
アヤネが受領証明書を確保する。
「これだけ持っていきましょう」
こうしてアビドスは、現金には手をつけず、受領証明書と返済記録の写しだけを確保して銀行を後にした。
---
その頃。
カナタと炎角も、アビドスのもとへ戻ってきていた。
「みんな、何か分かった?」
カナタが尋ねる。
「うん。こっちはかなり大変だったよ」
ホシノが苦笑する。
その場にいるヒフミを見て、カナタは首を傾げた。
「……ん?」
見慣れない制服。
アビドスとは違う。
「……なんでトリニティの生徒が、こんなところに?」
カナタが不思議そうに尋ねる。
ヒフミもカナタを見る。
「えっと……あなたは、アビドスの方ですよね?」
「そうだけど……」
カナタは首を傾げる。
そして、銀行の奥から出てきたアビドスのメンバーと、ヒフミを交互に見た。
「……待て」
「?」
「お前ら……」
嫌な予感がした。
「トリニティのお嬢様学校の生徒と一緒に、何してたんだ?」
シロコが淡々と答える。
「銀行強盗」
「…………は?」
カナタの顔が固まった。
「お前ら、トリニティのお嬢様と一緒に銀行強盗したのか!?」
「だから私はお嬢様じゃないです!」
ヒフミが慌てて否定する。
「いや、そこじゃない!」
カナタが頭を抱える。
「なんでお前ら、普通に銀行強盗してるんだよ!?」
「正確には、受領証明書を取りに行っただけだよ」
ホシノが説明する。
「お金も見つけたけど、持っていかなかった」
「……余計に訳が分からない……」
カナタは呆然とする。
その横で、炎角が小さく笑った。
「キヴォトスという場所は、実に騒がしいな」
「笑い事じゃないって……」
カナタはため息をついた。
しかし――。
ふと、懐から取り出した資料を見る。
その表情が変わった。
「……でも、こっちも重要な手がかりだ」
「何が書いてあるの?」
アヤネが尋ねる。
カナタは資料を見せる。
「カイザー系の採掘会社が、角みたいな古代遺物を回収して、ブラックマーケットに売ってたらしい」
「角状遺物……」
セリカも資料を見る。
「それが、弾角とか忍角のエゴルギアってこと?」
「まだ分からない」
カナタは首を振る。
「でも、かなり怪しい」
「つまり……」
先生が資料を見る。
「カイザーの採掘と、エゴルギアの流通が繋がっている可能性がある」
「うん」
カナタは頷く。
「ただ、誰に売ったのかは分からない」
資料の最後。
売却先:非公開
そこだけが空白になっている。
「……」
全員が沈黙する。
カイザー系採掘会社。
ブラックマーケット。
エゴルギア。
そして――。
アビドス高等学校を奪おうとしている依頼主。
まだ、それぞれの線は一本には繋がっていない。
だが――。
二つの手がかりは、確実に同じ闇へ向かっていた。
「……エゴルギアは、どこから来てるんだ?」
カナタは資料を握りしめる。
ブラックマーケットの闇の奥。
そこには、まだ誰も知らない何かが潜んでいた。