ブルーアーカイブ ―砂塵の角醒ハンター―   作:ガンダムラザーニャ

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アンケートの結果、ミレニアムに行くことになりました。


ミレニアム編
第17話 次の行き先


 

 

 アビドス高等学校を出てから、しばらくの時間が経った。

 

 砂原カナタと炎角は、キヴォトスの街道を並んで歩いていた。

 

「……」

 

「……」

 

 しばらく、二人とも何も言わなかった。

 

 カナタは背負った荷物を確認しながら歩き、炎角は周囲を興味深そうに眺めている。

 

 アビドスを出る。

 

 それ自体は決めていた。

 

 炎角に今のキヴォトスを見せること。

 

 新しい遺跡を探すこと。

 

 そして、自分自身も知らない場所を見て回ること。

 

 それだけは決まっていた。

 

 けれど――。

 

「……で」

 

 カナタが足を止めた。

 

「これから、どこに行こう?」

 

「……」

 

 炎角も足を止める。

 

「決めていなかったのか、御前様」

 

「うん」

 

「行き当たりばったりだな」

 

「……否定できない」

 

 カナタは苦笑した。

 

 アビドスを旅立つことは決めた。

 

 炎角と一緒に旅をすることも決めた。

 

 だが、その先についてはほとんど考えていなかった。

 

「キヴォトスって、学校がいっぱいあるだろ?」

 

「ああ」

 

「アビドスにいると、あんまり実感しないけど……」

 

 カナタは端末を取り出した。

 

 画面にはキヴォトスの地図が表示されている。

 

「学校だけでも数千あるっていうし」

 

「数千……」

 

 炎角が目を細める。

 

「そんなにあるのか」

 

「あるらしいよ」

 

「ならば、全てを見て回るのは難しいな」

 

「たぶん、一生かかる」

 

「……ならば、まず一つ選べ」

 

「それが分からないんだよ」

 

 カナタは頭を抱えた。

 

 遺跡を探す旅なら、行き先を決める方法はいくらでもある。

 

 古い地図を見る。

 

 発掘記録を調べる。

 

 遺跡の情報を集める。

 

 それでも何もなければ、自分の勘で決める。

 

 だが、今回は違う。

 

 目的地そのものを決めていない。

 

「……一回、誰かに聞いてみようかな」

 

「誰にだ?」

 

「それなら、あの人に聞いてみよう」

 

 カナタの頭に、一人の人物が浮かんだ。

 

 アビドスで何度も世話になった人物。

 

 柴関ラーメンの大将だった。

 

* * *

 

「おう、いらっしゃい!」

 

 柴関ラーメン。

 

 爆破事件からの修復を終え、再び店を構えた大将は、屋台越しにカナタを迎えた。

 

「お、カナタじゃねえか」

 

「大将、ちょっと聞きたいことがあるんだけど」

 

「なんだ?」

 

 カナタは屋台の前に座った。

 

 炎角も隣に座る。

 

「これから旅をするなら、どこに行くのがおすすめかな?」

 

「……随分と漠然とした質問だな」

 

「やっぱり?」

 

「旅の目的は?」

 

「遺跡を探したり、いろんな場所を見たり……かな」

 

「なるほどな」

 

 大将は腕を組んだ。

 

 少し考えてから、口を開く。

 

「それなら、ミレニアムなんてどうだ?」

 

「ミレニアム?」

 

「ああ」

 

 カナタが首を傾げる。

 

「科学と技術の学校だ。街も大きいし、珍しい機械や施設も多い」

 

「科学……」

 

 炎角が反応した。

 

「どういう場所だ?」

 

「俺も細かいところまでは知らんがな」

 

 大将は笑う。

 

「ただ、ミレニアムの生徒はこういう店にも来ることがある。話を聞いてると、あそこはとにかく変わった研究や実験をやってるらしい」

 

「へえ……」

 

「お前さん、遺跡とか古いものを探してるんだろ?」

 

「うん」

 

「だったら、あそこには興味を持つ奴もいるんじゃねえか?」

 

「古代遺物に詳しい人がいるかもしれない、ってこと?」

 

「そういうことだ」

 

 カナタは端末の地図を見る。

 

 ミレニアムの位置を確認する。

 

「……行ってみようかな」

 

「おう。いいんじゃねえか?」

 

「炎角は?」

 

「俺は構わん」

 

 炎角は即答した。

 

「この時代のことを知るための旅なのだろう?」

 

「そうだね」

 

「ならば、科学と技術の街というものも見てみたい」

 

「決まりだね」

 

 カナタは立ち上がった。

 

「大将、ありがとう」

 

「おう。旅は腹が減るからな。気をつけろよ」

 

「分かった」

 

「あと――」

 

 大将が炎角を見る。

 

「その兄ちゃんにも、ちゃんと食わせてやれよ」

 

「御前様」

 

「分かってるよ」

 

 炎角は真剣な顔で頷いた。

 

「では、ラーメンを」

 

「今から!?」

 

 カナタの声が屋台に響いた。

 

* * *

 

 それから数日。

 

 二人はミレニアムへ向かう道を進んでいた。

 

 道中、カナタは何度も端末を確認する。

 

「……もうすぐだ」

 

「ミレニアムか」

 

「うん」

 

 そして――。

 

「……見えてきた」

 

 遠くに広がる街並みを見て、カナタは足を止めた。

 

「……すごい」

 

 そこには、アビドスとはまるで違う光景が広がっていた。

 

 大きな建物。

 

 整備された道路。

 

 巨大な研究施設。

 

 街のいたるところに設置された電子機器。

 

 そして、そこを行き交う生徒たち。

 

 端末を操作しながら歩く者。

 

 設計図を抱えて走っていく者。

 

 小型のロボットを連れて歩く者。

 

 空にはドローンが飛び交っている。

 

 建物の一角では、何かの実験をしているのか、白い煙が上がっていた。

 

「これが……ミレニアム……」

 

 炎角も、珍しく言葉を失っていた。

 

「随分と賑やかな場所だな」

 

「うん……」

 

 カナタは街を見渡す。

 

 アビドスとは違う。

 

 あまりにも違う。

 

 アビドスでは、砂と古びた建物が当たり前だった。

 

 学校を維持することそのものに苦労していた。

 

 それに対して、ここには新しいものが溢れている。

 

「同じキヴォトスなのに、こんなに違うんだな……」

 

「御前様」

 

「ん?」

 

「あれは何だ?」

 

 炎角が指を差す。

 

「……分からない」

 

「では、あれは?」

 

「……それも分からない」

 

 炎角はさらに別の機械を指差した。

 

「では、あれは?」

 

「炎角」

 

「何だ?」

 

「俺にも分からないものくらいあるよ」

 

「そうか」

 

 炎角は真面目な顔で頷いた。

 

「ならば、ここは面白そうだ」

 

「……うん」

 

 カナタも笑った。

 

 知らないものがある。

 

 分からないものがある。

 

 だからこそ、調べる価値がある。

 

 それは遺跡を探すときと同じだった。

 

「まずは街を見て回ろう」

 

「賛成だ」

 

 二人はミレニアムの街へ歩き出した。

 

* * *

 

「……これ、何に使うんだろう」

 

「分からん」

 

「こっちは?」

 

「分からん」

 

「じゃあ、これは?」

 

「それも分からん」

 

「……」

 

 歩き始めてからしばらく。

 

 カナタは完全に圧倒されていた。

 

 ミレニアムには、知らないものが多すぎる。

 

 しかも、それらが当たり前のように街の中に存在している。

 

「すごいな……」

 

 カナタは立ち止まり、周囲を見渡した。

 

「ここなら、古いものだけじゃなくて、今の技術についても色々知れそうだ」

 

「遺跡以外にも興味が出てきたか?」

 

「うん」

 

 カナタは少しだけ笑う。

 

「せっかく旅に出たんだから、知らないものは全部見てみたい」

 

 炎角も頷いた。

 

「それでこそ旅だな」

 

 カナタは前を向いた。

 

 ミレニアム。

 

 科学と技術の学園。

 

 ここで何が待っているのかは、まだ分からない。

 

 ただ一つ。

 

 この街には、アビドスでは見たことのないものが溢れている。

 

 古代遺物について詳しい者もいるかもしれない。

 

 オメガホーンやエゴルギアについて、何か分かる者もいるかもしれない。

 

 だが――。

 

 それはまだ、カナタの知らないことだった。

 

 そして彼はまだ知らない。

 

 この街には、未知の技術や古代遺物を研究している生徒たちがいることを。

 

 その中には、いつかオメガホーンや角獣に興味を持つ者も現れることを。

 

「さて……」

 

 カナタが歩き出す。

 

「まずは、どこから見て回ろうかな」

 

「御前様」

 

「ん?」

 

「腹が減った」

 

「……大将のせいだ」

 

「何故だ?」

 

「ラーメン食べてから来ればよかった……」

 

 二人はそんなことを言いながら、ミレニアムの街を歩いていく。

 

 アビドスとは違う、新しい世界。

 

 そこには、まだ知らない出会いが待っている。

 

 砂原カナタと炎角の旅は――。

 

 ようやく、最初の一歩を踏み出したばかりだった。

カナタたちが次に行く場所

  • ミレニアム
  • トリニティ(アリウス)
  • 百鬼夜行
  • ゲヘナ
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