クレイドル公共ラジオ、アース。あなたの生活に、地上より少し近い声を。このお時間は、カラードランク1のリンクス、オッツダルヴァさんをパーソナリティに、皆様からのメッセージにお答えする――Radio : Correspondanceです。それでは、オッツダルヴァさん、お願いします。
「カラードランク1、オーメル所属のオッツダルヴァだ。ここからのパーソナリティを務める」
Radio : Correspondance
――あなたから届く声に、ランク1が応える時間。
「今夜もクレイドル各地から多数の投稿が届いている。仕事、生活、人間関係、その他。内容は問わないとのことだ」
「では始めよう」
「ラジオネーム、“高貴なる薔薇”さんからのお便りだ」
『最近、品位に欠ける者と同じ戦場に出る機会が増え、少々辟易しております。そういう相手とは、どのように距離を取るべきでしょうか』
「……まず、その名前を匿名と呼ぶのをやめろ」
「戦場で組む相手に品位まで求めるな。必要なのは敵を落とす能力と、こちらの邪魔をしない程度の判断力だ。交友関係を築けと言われているわけでもないだろう」
「気に入らないなら必要な通信だけ残して黙って仕事をしろ。それでも我慢ならないなら、依頼そのものを断れ」
「選択肢があるなら使え」
「次」
「ラジオネーム、“貧乏くじ”さん」
『強い奴と組まされると楽でいいんですが、あんまり強すぎると俺いらなくないですか?』
「必要とされているから依頼が来ている。以上だ」
『あと報酬を上げたいです』
「……続きがあったのか」
「それは雇用主に言え」
「私に言われても報酬は1Cも増えん」
「次だ」
「ラジオネーム、“逆関節愛好会”さん」
『脚部はやはり逆関節が最も美しいと思うのですが、ランク1はどう思いますか』
「質問の体裁を取った布教活動だな」
「次」
「ラジオネーム、“白ポーン”さんからのお便りだ」
『オッツダルヴァさんに水難の相が出ています。くれぐれもお気をつけて。それと、三食食べていますか? ちゃんと寝ていますか? たまには休んでください』
「……貴様は私の母親か?」
「それに、水難だと? ふん、私が沈むとでも」
「食事については問題ない。睡眠も必要量は確保している。休養についても私が判断する」
「……これで満足か」
「次」
「ラジオネーム、“ヨロイモグラだいすき”さんからのお便りだ」
『最近モグちゃんの足腰が非常に元気で、一日に三回脱走しました。可愛いですね』
「貴様はコーナーの趣旨を理解していないのか?」
「日記なら、一人で書いていろ」
「……一日に三回も脱走するなら、可愛いと眺めている前に飼育環境を見直せ」
「可愛いかどうかは知らん」
Radio : Correspondance
あなたの言葉が届く夜。
次の一通は、あなたから。
「……では、ここで一曲」
「本日のリクエストから、Frequencyで『Remember』」
クレイドル公共ラジオ、アース。Radio : Correspondanceをお聴きいただいています
「お送りしたのは、Frequencyで『Remember』だった」
「このあとも引き続き、届いた便りに答えていく」
『ここで、クレイドル公共ラジオ、アースからのお知らせです』
『オーメル・サイエンスは、より安全で快適なクレイドル環境の実現へ』
『空調設備、循環水処理、居住区環境管理から、次世代エネルギー技術まで、あなたが明日も変わらぬ空で暮らせるように。技術で支える、人類の生活圏。オーメル・サイエンス』
『続いて、GAフーズからのお知らせです。忙しい朝にも、栄養のある食事を。新発売、GAフーズ・バランスミール。穀物、野菜、たんぱく質を一食分にまとめ、温め時間はわずか二分。今日は食べた。を、当たり前に。GAフーズ・バランスミール。各居住区の食品販売所にて、本日より発売です』
『午後十一時をお知らせします。クレイドル公共ラジオ、アース。続いて交通情報です』
『現在、クレイドル第三居住ブロックと中央区画を結ぶ高架交通網では、定期整備の影響により一部区間で速度制限を実施しています』
『中央区画方面へ向かう便には、およそ十二分の遅れが発生しています』
『復旧は午後十一時四十分頃を予定しています』
『第二居住ブロック、第四居住ブロック、および環状交通線は平常通り運行しています』
『移動の際は、最新の運行情報をご確認ください』
『以上、クレイドル交通情報でした』
Radio : Correspondance
――あなたから届く声に、ランク1が応える時間。
「戻ったか」
「Radio : Correspondance。後半も引き続き、届いた便りを読んでいく」
「ラジオネーム、“水底からこんにちは”さん」
「…………採用したスタッフは、後で話がある。まだ本文を読んでいない? 名前で十分だ……ふん、まあ、読もうか」
『最近、仕事で大きな失敗をしてしまいました。周囲からはもう気にするなと言われていますが、自分ではなかなか割り切れません。オッツダルヴァさんは、失敗した時どうしますか?』
「原因を確認する。次に、同じことを起こさない方法を考える」
「それだけだ」
「失敗したという事実そのものは消せない。ならば、そこへ余計な意味を足すな」
「自分には能力がない。もう何をしても無駄だ。そういう結論は、失敗したという事実とは別の話だ」
「失敗した。なら、次は変えろ」
「それでもまた失敗したなら、さらに変えろ」
「いつまでも同じ場所へ停滞する必要はない」
「…………」
「次だ。ラジオネーム、“無記名希望”さん」
『戦場以外に、自分の居場所がないような気がします。戦わなくなった時、自分に何が残るのか分かりません』
「知らん。それは私が決めることではない」
「ただし、戦場にしか居場所がないと思っていることと、本当に戦場以外に何もないことは別だ」
「探したことがないだけかもしれない」
「選ぶ余裕がなかっただけかもしれない」
「あるいは、本当に何も見つからないかもしれない」
「だが、それを確かめる前に結論を出すな」
「選べるうちに選んでおけ」
「次」
「ラジオネーム、“ヨロイモグラだいすき”さん」
「……また貴様か」
『モグちゃんは放送が始まる少し前に餌を食べました。今日はまだ脱走していません。偉いですね』
「何故こいつを採用する」
「…………脱走していないなら、それでいい」
「以上だ」
「次」
「ラジオネーム、“白ポーン”さん」
『先ほど食事について問題ないとの回答があり、安心しました。ところで、本日の夕食は何を食べましたか?』
「……貴様」
「これは公開のラジオ番組であって、私の生活監視報告会ではない」
『三食食べているか確認するために必要な質問です』
「便りの中で反論まで完結させるな」
「夕食は摂った。内容まで答える義務はない」
「次回、同じ質問を送ってきても読まんぞ」
Radio : Correspondance
言葉は距離を越え、今日も誰かへ届いていく。
「さて」
「そろそろ今夜の放送も終わりだ」
「最後にもう一曲」
「今夜届いたリクエストの中から」
「……これにする」
「曲名は、Frequencyで『Cosmos』」
「お送りしたのは、Frequencyで『Cosmos』だった」
「今夜も多数の投稿に感謝する」
「採用されなかったものについては、次回以降に回される場合があるらしい」
「ただし、ペットの日記については保証しない」
「それから、“白ポーン”」
「余計な心配をする暇があるなら、自分の仕事をしろ。……三食は食べている。何度も聞くな」
「次回も同じ時間、この周波数で放送する予定だ」
「仕事の相談でも、生活の悩みでも構わない」
「質問があるなら送ってこい」
「カラードランク1、オーメル所属、オッツダルヴァだった」
Radio : Correspondance
――あなたから届く声に、ランク1が応える時間。
『この番組は、オーメル・サイエンスほか各社の提供でお送りしました』
『クレイドル公共ラジオ、アース。あなたの生活に、地上より少し近い声を』
『それでは、また明日』