記憶のない僕と、みんなが知ってる俺   作:からあげマヨネーズ

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4話

ふと気づくと、協会のような建物にいた。

 

辺りを見回していると、前から声が聞こえた。

 

「あっ! やっぱり居た!」

 

声のした方向を向くと、三人の子供がいる。

 

見たことがないはずなのに、ひどく懐かしさを覚える。

 

紫がかった髪をした少女が、ピンク髪の少女に話しかける。

 

「また、一番でしたね。私も教わりたいです」

 

「ふん! こういうのは才能ある人がやらなきゃ!」

 

そう話していると、男の子が口を開く。

 

「そうやって大したことないって顔してるけど、プレッシャー感じちゃってるじゃん」

 

「むっ!」

 

「俺も××も知ってるから、無理すんなよ!」

 

「病弱な君には言われたくないよ!」

 

「二人とも落ち着いてください」

 

まあまあ、と紫がかった髪をした女の子が二人をなだめる。

 

そんなやり取りを見ていると、なぜか胸が苦しくなる……。

 

距離を取ろうと一歩後ろに下がろうとすると、体が後ろに傾く。

 

落ちると思った瞬間――

 

――目が覚めた。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

「うわっ!!」

 

ベッドから飛び起きた。

 

「はぁ……はぁ……。なんだ、あの夢……」

 

さっきまで見ていた夢を思い出すたびに、左胸が痛むような気がした。

 

「顔、洗ってこよ……」

 

僕はよく分からない寂しさを覚えながら、部屋を出た。

 

「おはよう、○○」

 

「○○、おはよー!」

 

「リン、アキラ、おはよう!」

 

僕は一階に降りて、二人にあいさつした。

 

「○○、大丈夫かい? なんだか顔色が優れないようだけど……」

 

「ほんとだ! ○○大丈夫? 体調悪いの?」

 

そう言って、二人が心配そうに顔を覗き込んでくる。

 

「いや……最近、夢見が悪くて……」

 

「うーん? やっぱりホロウに入ったから、どうかしちゃったのかな?」

 

リンが腕を組んで考え込んでいる。

 

ふと、アキラが思い出したように話し始める。

 

「そういえば○○、師匠が記憶喪失や身体の件で、一度来てほしいと言っていたよ」

 

「師匠が?」

 

「師匠のところに行くなら、その時に聞いてみなよ!」

 

「確かに……。ちょっと準備してくるよ」

 

僕は自分の部屋に戻り、荷物をまとめた。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

新エリー都 スロノス区

 

衛非地区 適当観

 

「ふぅ……やっと着いた……」

 

ここは『適当観(てきとうかん)』。

 

雲嶽山(うんがくさん)といわれる歴史ある宗派の一門が、この地区に構えた拠点だ。

 

そして、僕の目的地でもある。

 

「誰かいるかな?」

 

僕は門をくぐって中に入る。

 

辺りを見渡していると、声を掛けられた。

 

「あ! お弟子くん! お久しぶりです!」

 

福姐さん!!(ふーねえさん)

 

この人は、橘 福福(ちー ふーふー)さん。

 

小柄でかわいらしい見た目をしているけど、今の雲嶽山では宗主に次ぐ最古参で、かなりの実力者らしい。

 

ちなみに茶ネコのような見た目をしているけど、トラのシリオンで、間違えられるとよく訂正している。

 

「お久しぶりです!!」

 

「身体の方は、もう大丈夫なんですか!?」

 

福姐さんが心配そうに僕に聞いてくる。

 

「はい! 今はもう全然大丈夫です!」

 

「それならよかっ――」

 

「おお! お弟子くんじゃないか!」

 

福姐さんの声を遮って、僕に声を掛けてくれたのは、パンダのシリオンの――

 

潘 引壺(ぱん いんふー)さん。

 

僕たちの兄弟子で、ここ適当観の台所を担当してくれている。

 

「潘さんもお久しぶりです!」

 

「ああ! 久しぶり! 元気そうでよかった」

 

そう言って、気分よく笑ってくれる。

 

「ところで師匠は……?」

 

「来たか、○○」

 

「師匠!」

 

この人は、雲嶽山の十三代宗主、儀玄(いーしぇん)さん。

 

僕たちは師匠と呼んでいる。

 

なんでも、虚狩りに並ぶほどの実力者と言われている。

 

それだけじゃなく、占いや風水など、いろんなことに精通しているらしい。

 

「なんか身体の件で呼ばれたんですけど」

 

「ああ、少しお前さんの身体で確かめたいことがあってな。荷物を置いたら、私の部屋に来い」

 

「わかりました!」

 

僕は福姐さんに案内してもらい、荷物を置いた後、道着に着替える。

 

「わぁ~! 相変わらず様になってますねぇ~!」

 

そう言って、福姐さんが褒めてくれる。

 

「ありがとうございます!」

 

「それじゃ~! お師匠さまの部屋に行きましょ~!」

 

僕は福姐さんの後ろをついていき、師匠のところへ向かう。

 

「ここがお師匠さまの部屋ですよ! お師匠さま~! お弟子くんを連れてきましたよ~!」

 

そう声を掛けると、扉の向こうから声が聞こえた。

 

「ご苦労、○○。入って来い」

 

福姐さんにお礼を言って、僕は師匠の部屋に入る。

 

「失礼します!」

 

師匠の部屋はきちんと片付いていて、巻物や書類らしきものが置いてあった。

 

「○○、改めてよく来たな。身体の方はどうだ?」

 

「身体の方は問題ないですよ! ただ――」

 

僕は師匠に、最近の夢見の悪さを話した。

 

それを聞いた師匠は「そうか」と言って、顎に手を当てて何やら考え込んでいる。

 

しばらく考え込んだ後、師匠は口を開く。

 

「よし、まずはお前さんの氣の流れを見る。○○、脱げ」

 

「……はい?」

 

今、この人「脱げ」って言った?

 

「こ、ここでですか!?」

 

「ここ以外にどこがある?」

 

そう言った後、不思議そうな顔をしていた師匠が、何かに気づいたような顔になる。

 

「――あぁ、脱ぐのは上だけでいい。こんなところでお前さんを引っぺがして何になる、阿呆。上を脱いだら、そこに横になれ」

 

「なんだ、そうですよね。びっくりした……!」

 

僕は上の道着とシャツを脱いで、横になる。

 

「それじゃあ、始めるぞ」

 

そう言って、師匠は僕の身体に触れていく。

 

なんだか温かいような、こそばゆいような……。

 

「これは何をやってるんですか?」

 

そう聞くと、師匠は少し悩んだ顔をして、

 

「あー、あれだ。氣の流れをこう、いい感じにする感じだ」

 

「なんか! 説明適当すぎません!?」

 

「皆さんやってますから」

 

「なんで敬語なんですか!?!?」

 

そんなやり取りをしながら、師匠は徐々に力を強めていく。

 

師匠は僕の胸の傷を見ながら、僕に問いかける。

 

「○○、この胸の傷は痛むか?」

 

聞いてくる師匠の顔は、どこか心配しているようだった。

 

「生活してる分には特にないですよ。でも最近、夢を見て起きた時に痛いような気もします」

 

それを聞くと、師匠は胸の前で印を組み、何やら唱えている。

 

その術符を僕の胸辺りに貼ると、すっと消えていった。

 

「師匠、今のは……?」

 

「なに、お前さんの氣が乱れていたからな。少し楽にしておいた。どうだ?」

 

確かに、胸のあたりが少し軽くなったような気もする。

 

「師匠、ありがとうございます!」

 

僕は服を着ながら、礼を言う。

 

「弟子を助けるのも、師匠の務めだからな」

 

「さすが師匠ですね! 頼りになる~!」

 

そう言って喜んでいる僕を見て、師匠は優しく微笑む。

 

「○○、お前さんは、本当にかわいいやつだな」

 

「かわいい……? かわいいは違くないですか!? 確かに師匠より身長は低いかもしれないですけど!!」

 

僕は怒っていますと言わんばかりに、胸の前で腕を組む。

 

その光景が、儀玄には昔の○○と重なって見えた。

 

「お前さんは本当に、本当に変わらないな……!」

 

そう言って、儀玄は昔を思い出す。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

お前さんと『再会した』のは、私が福福と雲嶽山を立て直している時だったか。

 

山を下り占いや人助けをしていた時に、路地裏で倒れていた○○を拾ったのが最初だったな。

 

福福と一緒に本山まで運んだんだ。

 

目を覚ましたお前さんは、腹が減ったと腹の虫を大きく鳴らしてな。

 

折角食事を出してやったというのに、これが好き、これが嫌いと好き嫌いばかりで、しまいには福福に、

 

「好き嫌いすると大きくなりませんよ!」

 

なんて言われて……。

 

お前さんは、回復するまで手伝いをする条件で、雲嶽山に居させて欲しいと頭を下げたな。

 

入門はしていないが、他の者に示しがつかないと、私のことを師匠とも呼んでくれた。

 

それに……○○、お前は私が昔会ったことがあるかと聞いた時、「会ったことがない」と言ったな。

 

それは間違いだ。

 

あの日、旧都陥落の日、私――いや、『私達は』お前さんに返しきれない貸しが出来たんだ。

 

たとえ、お前さんが忘れてしまったとしても、私は絶対に忘れることはないだろう。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

「師匠?」

 

○○が私の顔を覗き込む。

 

「大丈夫ですか?」

 

「ああ、すまない。昔を思い出していた……!」

 

「福姐さんが呼んでましたよ! なんでも、ご飯の準備が出来たとか!」

 

そう言って、○○は私の手を取る。

 

「……っ!」

 

こんなことで、年甲斐にもなく顔が熱くなる。

 

○○と並んで、テーブルの方に歩いていく。

 

「あ! ようやく来ましたね! あったかいご飯が冷めちゃいますよ!」

 

「師匠、行きましょう!!」

 

「ふっ……そうだな」

 

私は○○と卓の方へ歩いて行った。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

食事が終わり、儀玄は自室に戻る。

 

ちょうどその時、電話が鳴る。

 

「私だ」

 

「儀玄、そっちはどう?」

 

「姉様! ……コホン、こちらは問題ない。姉様の方こそ、体は大丈夫なのか?」

 

「今日は調子が良いの!」

 

そう話すのは、儀降(いーしゃん)

 

先代の雲嶽山の宗主で、儀玄の姉である。

 

旧都陥落の際に死にかけたが、一命を取り留めている。

 

その代わり、左手と右足が思うように動かなくなり、五感のいくつかが弱まってしまった。

 

宗主を引退し、今は雲嶽山本山に居る。

 

「そうか……! それで? 世間話だけをしに来たわけじゃないだろう?」

 

「なんでもお見通しだね。……彼、○○のことでメイフラワーから連絡があったの」

 

「メイフラワーから?」

 

「今から資料を送るね。儀玄、○○がどんな子でも傍に居てあげてね」

 

「姉様に言われなくても、もとよりそのつもりだ」

 

「そう言ってくれると思った! じゃあ切るね! バイバイ!」

 

「ああ、またな」

 

そう言って電話を切り、送られてきた資料に目を通した。

 

「……っ! これは……!」

 

儀玄は息をのんだ。

 

「……○○、お前さんは何者なんだ……?」

 

資料には、百年前の手術のカルテ画像があり、そこに○○の名前が記録されていた。




儀降生存ルートでやってみました!
どうして生きてるかはのちのち設定お出ししたいと思ってます!
感想、評価頂けると嬉しいです!
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