ふと気づくと、協会のような建物にいた。
辺りを見回していると、前から声が聞こえた。
「あっ! やっぱり居た!」
声のした方向を向くと、三人の子供がいる。
見たことがないはずなのに、ひどく懐かしさを覚える。
紫がかった髪をした少女が、ピンク髪の少女に話しかける。
「また、一番でしたね。私も教わりたいです」
「ふん! こういうのは才能ある人がやらなきゃ!」
そう話していると、男の子が口を開く。
「そうやって大したことないって顔してるけど、プレッシャー感じちゃってるじゃん」
「むっ!」
「俺も××も知ってるから、無理すんなよ!」
「病弱な君には言われたくないよ!」
「二人とも落ち着いてください」
まあまあ、と紫がかった髪をした女の子が二人をなだめる。
そんなやり取りを見ていると、なぜか胸が苦しくなる……。
距離を取ろうと一歩後ろに下がろうとすると、体が後ろに傾く。
落ちると思った瞬間――
――目が覚めた。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「うわっ!!」
ベッドから飛び起きた。
「はぁ……はぁ……。なんだ、あの夢……」
さっきまで見ていた夢を思い出すたびに、左胸が痛むような気がした。
「顔、洗ってこよ……」
僕はよく分からない寂しさを覚えながら、部屋を出た。
「おはよう、○○」
「○○、おはよー!」
「リン、アキラ、おはよう!」
僕は一階に降りて、二人にあいさつした。
「○○、大丈夫かい? なんだか顔色が優れないようだけど……」
「ほんとだ! ○○大丈夫? 体調悪いの?」
そう言って、二人が心配そうに顔を覗き込んでくる。
「いや……最近、夢見が悪くて……」
「うーん? やっぱりホロウに入ったから、どうかしちゃったのかな?」
リンが腕を組んで考え込んでいる。
ふと、アキラが思い出したように話し始める。
「そういえば○○、師匠が記憶喪失や身体の件で、一度来てほしいと言っていたよ」
「師匠が?」
「師匠のところに行くなら、その時に聞いてみなよ!」
「確かに……。ちょっと準備してくるよ」
僕は自分の部屋に戻り、荷物をまとめた。
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新エリー都 スロノス区
衛非地区 適当観
「ふぅ……やっと着いた……」
ここは『
そして、僕の目的地でもある。
「誰かいるかな?」
僕は門をくぐって中に入る。
辺りを見渡していると、声を掛けられた。
「あ! お弟子くん! お久しぶりです!」
「
この人は、
小柄でかわいらしい見た目をしているけど、今の雲嶽山では宗主に次ぐ最古参で、かなりの実力者らしい。
ちなみに茶ネコのような見た目をしているけど、トラのシリオンで、間違えられるとよく訂正している。
「お久しぶりです!!」
「身体の方は、もう大丈夫なんですか!?」
福姐さんが心配そうに僕に聞いてくる。
「はい! 今はもう全然大丈夫です!」
「それならよかっ――」
「おお! お弟子くんじゃないか!」
福姐さんの声を遮って、僕に声を掛けてくれたのは、パンダのシリオンの――
僕たちの兄弟子で、ここ適当観の台所を担当してくれている。
「潘さんもお久しぶりです!」
「ああ! 久しぶり! 元気そうでよかった」
そう言って、気分よく笑ってくれる。
「ところで師匠は……?」
「来たか、○○」
「師匠!」
この人は、雲嶽山の十三代宗主、
僕たちは師匠と呼んでいる。
なんでも、虚狩りに並ぶほどの実力者と言われている。
それだけじゃなく、占いや風水など、いろんなことに精通しているらしい。
「なんか身体の件で呼ばれたんですけど」
「ああ、少しお前さんの身体で確かめたいことがあってな。荷物を置いたら、私の部屋に来い」
「わかりました!」
僕は福姐さんに案内してもらい、荷物を置いた後、道着に着替える。
「わぁ~! 相変わらず様になってますねぇ~!」
そう言って、福姐さんが褒めてくれる。
「ありがとうございます!」
「それじゃ~! お師匠さまの部屋に行きましょ~!」
僕は福姐さんの後ろをついていき、師匠のところへ向かう。
「ここがお師匠さまの部屋ですよ! お師匠さま~! お弟子くんを連れてきましたよ~!」
そう声を掛けると、扉の向こうから声が聞こえた。
「ご苦労、○○。入って来い」
福姐さんにお礼を言って、僕は師匠の部屋に入る。
「失礼します!」
師匠の部屋はきちんと片付いていて、巻物や書類らしきものが置いてあった。
「○○、改めてよく来たな。身体の方はどうだ?」
「身体の方は問題ないですよ! ただ――」
僕は師匠に、最近の夢見の悪さを話した。
それを聞いた師匠は「そうか」と言って、顎に手を当てて何やら考え込んでいる。
しばらく考え込んだ後、師匠は口を開く。
「よし、まずはお前さんの氣の流れを見る。○○、脱げ」
「……はい?」
今、この人「脱げ」って言った?
「こ、ここでですか!?」
「ここ以外にどこがある?」
そう言った後、不思議そうな顔をしていた師匠が、何かに気づいたような顔になる。
「――あぁ、脱ぐのは上だけでいい。こんなところでお前さんを引っぺがして何になる、阿呆。上を脱いだら、そこに横になれ」
「なんだ、そうですよね。びっくりした……!」
僕は上の道着とシャツを脱いで、横になる。
「それじゃあ、始めるぞ」
そう言って、師匠は僕の身体に触れていく。
なんだか温かいような、こそばゆいような……。
「これは何をやってるんですか?」
そう聞くと、師匠は少し悩んだ顔をして、
「あー、あれだ。氣の流れをこう、いい感じにする感じだ」
「なんか! 説明適当すぎません!?」
「皆さんやってますから」
「なんで敬語なんですか!?!?」
そんなやり取りをしながら、師匠は徐々に力を強めていく。
師匠は僕の胸の傷を見ながら、僕に問いかける。
「○○、この胸の傷は痛むか?」
聞いてくる師匠の顔は、どこか心配しているようだった。
「生活してる分には特にないですよ。でも最近、夢を見て起きた時に痛いような気もします」
それを聞くと、師匠は胸の前で印を組み、何やら唱えている。
その術符を僕の胸辺りに貼ると、すっと消えていった。
「師匠、今のは……?」
「なに、お前さんの氣が乱れていたからな。少し楽にしておいた。どうだ?」
確かに、胸のあたりが少し軽くなったような気もする。
「師匠、ありがとうございます!」
僕は服を着ながら、礼を言う。
「弟子を助けるのも、師匠の務めだからな」
「さすが師匠ですね! 頼りになる~!」
そう言って喜んでいる僕を見て、師匠は優しく微笑む。
「○○、お前さんは、本当にかわいいやつだな」
「かわいい……? かわいいは違くないですか!? 確かに師匠より身長は低いかもしれないですけど!!」
僕は怒っていますと言わんばかりに、胸の前で腕を組む。
その光景が、儀玄には昔の○○と重なって見えた。
「お前さんは本当に、本当に変わらないな……!」
そう言って、儀玄は昔を思い出す。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
お前さんと『再会した』のは、私が福福と雲嶽山を立て直している時だったか。
山を下り占いや人助けをしていた時に、路地裏で倒れていた○○を拾ったのが最初だったな。
福福と一緒に本山まで運んだんだ。
目を覚ましたお前さんは、腹が減ったと腹の虫を大きく鳴らしてな。
折角食事を出してやったというのに、これが好き、これが嫌いと好き嫌いばかりで、しまいには福福に、
「好き嫌いすると大きくなりませんよ!」
なんて言われて……。
お前さんは、回復するまで手伝いをする条件で、雲嶽山に居させて欲しいと頭を下げたな。
入門はしていないが、他の者に示しがつかないと、私のことを師匠とも呼んでくれた。
それに……○○、お前は私が昔会ったことがあるかと聞いた時、「会ったことがない」と言ったな。
それは間違いだ。
あの日、旧都陥落の日、私――いや、『私達は』お前さんに返しきれない貸しが出来たんだ。
たとえ、お前さんが忘れてしまったとしても、私は絶対に忘れることはないだろう。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「師匠?」
○○が私の顔を覗き込む。
「大丈夫ですか?」
「ああ、すまない。昔を思い出していた……!」
「福姐さんが呼んでましたよ! なんでも、ご飯の準備が出来たとか!」
そう言って、○○は私の手を取る。
「……っ!」
こんなことで、年甲斐にもなく顔が熱くなる。
○○と並んで、テーブルの方に歩いていく。
「あ! ようやく来ましたね! あったかいご飯が冷めちゃいますよ!」
「師匠、行きましょう!!」
「ふっ……そうだな」
私は○○と卓の方へ歩いて行った。
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食事が終わり、儀玄は自室に戻る。
ちょうどその時、電話が鳴る。
「私だ」
「儀玄、そっちはどう?」
「姉様! ……コホン、こちらは問題ない。姉様の方こそ、体は大丈夫なのか?」
「今日は調子が良いの!」
そう話すのは、
先代の雲嶽山の宗主で、儀玄の姉である。
旧都陥落の際に死にかけたが、一命を取り留めている。
その代わり、左手と右足が思うように動かなくなり、五感のいくつかが弱まってしまった。
宗主を引退し、今は雲嶽山本山に居る。
「そうか……! それで? 世間話だけをしに来たわけじゃないだろう?」
「なんでもお見通しだね。……彼、○○のことでメイフラワーから連絡があったの」
「メイフラワーから?」
「今から資料を送るね。儀玄、○○がどんな子でも傍に居てあげてね」
「姉様に言われなくても、もとよりそのつもりだ」
「そう言ってくれると思った! じゃあ切るね! バイバイ!」
「ああ、またな」
そう言って電話を切り、送られてきた資料に目を通した。
「……っ! これは……!」
儀玄は息をのんだ。
「……○○、お前さんは何者なんだ……?」
資料には、百年前の手術のカルテ画像があり、そこに○○の名前が記録されていた。
儀降生存ルートでやってみました!
どうして生きてるかはのちのち設定お出ししたいと思ってます!
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