記憶のない僕と、みんなが知ってる俺   作:からあげマヨネーズ

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少し違和感あるかもです


6話

○○が机に向かい、何かを書いている。

 

「やっぱり……思い出せねぇ……」

 

○○は、リンたちと適当観に来てから始まりの主を撃退するまでの、最近起きた出来事を日記帳にまとめていた。

 

「リンと適当観に来て、讃頌会のやつらをどうにかして……」

 

「それから、柚葉やアリスたちと事件を解決して……」

 

そこで、ペンを持つ手が止まる。

 

思い出せない。

 

ほんの少し前の出来事のはずなのに、○○の頭の中では記憶にモヤがかかったようになっていた。

 

「クソッ……!!」

 

苛立ちのまま、○○は握ったペンを日記帳に押しつけ、ぐちゃぐちゃと線を走らせる。

 

「不幸中の幸いなのは……まだ人の名前は覚えられてるってことだな」

 

「このことは、あいつらにはバレないようにしなきゃな……!」

 

そんな時だった。

 

外から足音と話し声が聞こえてくる。

 

どうやら、瞬光が虚狩りとしての初任務を終えて帰ってきたらしい。

 

○○は声をかけようと、何も片付けないまま部屋を出た。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

「ふぅ……よし、今のところ異常なし……」

 

「瞬光、おかえり! 初任務お疲れ様――」

 

初任務を終えて帰ってきた瞬光に労いの言葉をかけていた、その時だった。

 

ふと、部屋の中から不思議な気配を感じる。

 

「なんだ、この気配……?」

 

俺はひとまずみんなを呼んでこようと、部屋の外へ出ようとした。

 

その時、瞬光に呼び止められ、腕を引っ張られる。

 

「しーっ……静かに!」

 

そう言う瞬光の顔は、少し不安そうだった。

 

「もしかして、任務で何かあったのか?」

 

「ううん、任務はちゃんとうまくいったわ。でも、ちょっと変なことが起きてて――」

 

瞬光がそう話していると、ふと青冥剣から女性の声が聞こえてきた。

 

「青冥剣から……声が……?」

 

「えっ、○○にも聞こえるの!? 雅先輩にも聞こえなかったのに……」

 

「『剣を執る心とは』って、はっきり聞こえる」

 

「こんなこと、今まで一度もなかったのよ。青冥剣にまた異変が起きたなら、師匠に見てもらおうと考えてたんだけど……」

 

「でも、すごく気になることを言ってるのに気づいて……!」

 

そう言われて、俺も青冥剣に耳を傾ける。

 

『秘境の奥にて答えを得る……青冥剣の「根源」とは……』

 

「確かに……すごく気になるな……!」

 

「どれくらい信じていいのかもわからないけど……もし本当にそんな『秘境』があって、青冥剣の『根源』を知れるなら……」

 

瞬光は青冥剣を見つめる。

 

「青冥剣の代償をどうにかする方法が見つかるかもしれないな!」

 

そう言うと、瞬光の顔に笑顔が浮かんだ。

 

「うん! みんなが頑張ってくれてたことだけど……ワタシも、自分なりにできることをやってみたいの!」

 

「それじゃあ、師匠はまだいないけど、伝言を残して探しに行くか! その『秘境』ってやつを」

 

「○○、待って!」

 

瞬光が俺を見る。

 

「リンやアキラから聞いたわ。この前の戦いからずっと調子が悪そうで、浮かない顔をしてるって。だから、あなたは外で師匠を待ってて!」

 

「身体は大丈夫だ。それに、青冥剣のことで瞬光一人に行かせるわけにはいかないだろ?」

 

「そんなこと言われたら、断れないじゃない……!」

 

瞬光は少し困ったように笑う。

 

「それじゃあ、身体の調子が悪かったらすぐ言うこと!」

 

「お互いにな!」

 

そうして俺たちはラマニアンホロウへ入り、青冥剣の力を使って『秘境』の中へと入っていった。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

秘境に入った瞬間、妙な閉塞感に襲われる。

 

どうやらここは、剣主以外はそう簡単に出入りできる場所ではないらしい。

 

「瞬光、身体に異常はない?」

 

「ありがと。大丈夫。なんだか不思議なところだけど、進んでみましょ」

 

そう言って、俺たちは『秘境』の中を進んでいく。

 

すると――

 

目の前にホロウが現れた。

 

「『秘境』にもホロウが!」

 

「とりあえず、ぶっ倒そう!!」

 

俺たちは現れたホロウを倒し、さらに先へ進んでいく。

 

やがて、目の前に本堂のような場所が現れた。

 

その奥から、声が聞こえてくる。

 

「ここにワタシたち以外に誰かいるのかな? 行ってみましょ!」

 

そう言って本堂の中へ入っていく。

 

そこで俺たちを待っていたのは――

 

瞬光にとっては見知った人物。

 

そして俺にとっては、見たことがあるような人物だった。

 

「儀降師匠?」

 

「なんでこんなところに……!」

 

「やぁ、瞬光。○○。ここに来たんだね」

 

そこにいた儀降は、穏やかな笑みを浮かべていた。

 

「ここは青冥秘境。いわゆる、剣の世界なんだ」

 

「それと……私は儀降だけど、儀降じゃない」

 

「どういうこと?」

 

「話すと長くなるから割愛するけど……簡単に言えば、元の儀降から切り離された記憶と、剣主だった部分かな」

 

「切り離された部分……?」

 

そう聞かれると、儀降は俺の方を見る。

 

「誰かさんのおかげで、本来なら死んでしまうはずだった私が生き残った。でも、すべてをそのまま復活させられるわけじゃない」

 

「その時に零れ落ちた、記憶のようなものだよ」

 

「悪い……全然、記憶にない……!」

 

「そうかい?」

 

儀降は少しだけ寂しそうに笑う。

 

「それより話を戻そう。この『秘境』には、無数に散らばっている剣のほかに、他とは違う三本の剣がある」

 

「それを集めて私のところに持ってきてくれれば、青冥剣の秘密も明らかになる」

 

「他に何かヒントとかないのか?」

 

「語っても、語り漏らしてしまうものがあるからね」

 

「さあ、まずは行動あるのみだ」

 

儀降にそう言われ、俺と瞬光は秘境内を巡ることになった。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

秘境の中には、潘や福福にそっくりな姿をした者たちもいた。

 

その姿を見て、俺も瞬光も驚かされる。

 

そして――

 

瞬光の兄、葉 釈淵(よう しゃくえん)もいた。

 

もっとも、本人そのものではない。

 

青冥剣の力によって生まれ、その記憶と人格を受け継いだ存在らしい。

 

秘境の中で、瞬光と釈淵は互いの本音を語り合った。

 

長い間二人の間にあったわだかまりも、少しは溶けたのではないかと思う。

 

そして、釈淵との勝負を終え、三本の剣を集めた瞬光の前に――

 

もう一人の瞬光のような姿をした、青冥剣の意思が現れた。

 

「何か出てきた……!」

 

「それこそが、青冥剣が見せようとしていた秘密……」

 

「助けになるといいね」

 

「心の準備はできてる……どんな答えでも受け止めるよ」

 

瞬光と俺は、その意思から話を聞く。

 

話を要約すると――

 

各地に残された多くの剣士たちの意思や記憶に触れ、人々の記憶に残ることで、青冥剣の代償を緩和できるらしい。

 

「代償を完全になくすことはできないのか?」

 

俺がそう尋ねると、青冥剣の意思は一言だけ残した。

 

『終結への道は、扉の向こうにある』

 

意味深な言葉を残し、青冥剣の意思は消えてしまった。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

青冥剣の意思から話を聞いた俺たちは、ひとまず秘境を出て適当観へ戻ることにした。

 

帰る途中、瞬光と話し合い、秘境での出来事はあまりにも不可思議だったため、二人だけの秘密にすることにした。

 

「やっと帰ってこれた……!」

 

瞬光が大きく息を吐く。

 

「まるで、不思議な夢を見てたみたい」

 

「おかえり、瞬光!」

 

「うん……! ただいま、○○!」

 

瞬光は笑顔を浮かべる。

 

「ありがとう。またすごい旅が一緒にできたわ」

 

「アナタがいてくれたら、どんなことにだって立ち向かえる勇気が湧いてくるみたい!」

 

そう言って、瞬光は俺に笑いかけた。

 

「でも……結局、代償を抑える明確な方法は見つからなかったな……」

 

「ううん! 大丈夫!」

 

瞬光は首を横に振る。

 

「今回の旅で得られたものは、それ以上のものだから!」

 

「青冥剣の代償は治せるってわかっただけでも、十分よ!」

 

「次に秘境へ行った時は、もっと秘密をしゃべらせるんだから!」

 

そう言って、瞬光はもう一度笑ってみせた。

 

「その時は、絶対あなたも一緒よ! ○○!」

 

「――ああ……! そうだな……!」

 

「約束よ!」

 

そんな話をしていると、奥の方からみんなが出てきて、瞬光を出迎えた。

 

「みんな、ただいま!」

 

「また次の任務が入っちゃうかもしれないけど、今日はみんなでご飯を食べながら、あったことを話したいな!」

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

食事が終わり、俺は自分の部屋へ戻った。

 

今日起きたことを忘れないように、日記帳へ出来事を書き記そうと机に向かう。

 

しかし――

 

棚や引き出しを探しても、日記帳が見つからない。

 

「……あれ?」

 

焦りながら部屋の中を探していると、後ろから声が聞こえた。

 

「お前さん、これを探しているのか?」

 

振り返る。

 

そこには、日記帳を手にした儀玄が立っていた。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

ワタシは金木犀のケーキを持って、笑いながら○○の部屋へ向かっていた。

 

「今日の旅もすごかったな……!」

 

今日出会った人たちのことを思い出しながら、歩いていく。

 

(剣士の意思や記憶のほかに……みんなの記憶に残ることが大事……)

 

「少なくとも、○○はワタシのことを忘れるはずないものね!」

 

○○。

 

あなたが覚えていてくれれば、アタシはいくらだって頑張れる。

 

そんなことを考えているうちに、瞬光は○○の部屋へたどり着いた。

 

ドアの前に立つ。

 

すると、中から話し声が聞こえてきた。

 

(これは……○○と師匠? こんな時間に?)

 

悪いことだとは思いながらも、気になって耳を澄ます。

 

「お前さん……いつからだ?」

 

「いつから記憶がなくなっている?」

 

…………えっ?

 

瞬光の手から、ケーキが落ちた。

 

ぐしゃっ。

 

嫌な音が廊下に響く。

 

それでも、ワタシにはそんなことを気にする余裕なんてなかった。

 

「……っ! 誰だ!?」

 

中から師匠がこちらへ歩いてくる足音が聞こえる。

 

ワタシは足が震えて、動けずにいた。

 

やがて、ドアが開く。

 

「瞬光……! お前さん、なんで……!」

 

師匠がワタシの姿を確認する。

 

「し、師匠……」

 

声が震える。

 

「○○の記憶がなくなってるって……何……?」

 

「……ひとまず、中に入れ」

 

師匠はワタシを部屋の中へ招き入れた。

 

「さて、○○」

 

師匠が○○を見る。

 

「話が途切れてしまったが……説明してもらおう」

 

「そ、そうだよ……○○」

 

ワタシは必死に声を絞り出す。

 

「記憶がなくなってるなんて……じょ、冗談だよね?」

 

嘘であってほしい。

 

そう願うワタシの思いを無視するように――

 

「ああ」

 

○○は答えた。

 

「記憶がなくなってきてる」

 

その言葉を聞いた瞬間。

 

ワタシの目の前が、真っ暗になった……。

 

 

 




もうちょっとだけ続きます!
沢山の方に見てもらってすごくうれしいです

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