幸育   作:Ruukka

1 / 1
第1話

 女を食い散らかす父親と男を食い物にする母親。

 俺の両親は中々にパンチの効いた人物だった。

 父親との思い出はあんまりない。たまに高い店で一緒に食事をするくらいで、家の中で姿を見たことは一度もないな。まあ不思議なことじゃない。夫婦仲が良くなかったというわけではないが、そもそも夫婦ですらなかったのだから。

 父は政治家。母は高級ソープランドの人。後にキャバ嬢に転身して、現在は経営側に回っている。人を見る目も経営センスもピカイチのようで、ホストクラブなんかも手がけている。ちゃんと儲かっている。

 父は最近も活躍中だ。この前テレビで中身のない話をしていたが、もしかしたら女のことでも考えていたのかもしれない。

 父は以前、中坊だった俺に教えてくれた。

 

『おい光希(みつき)。俺くらい権力と財力があれば、女なんて腐るほど寄ってくるんだ。だからお前も頑張って自分を磨けよ』

 

 政治家になって金を集めれば、好きな女を何人でも囲えるのだと。その話を聞いた時、俺は辟易とした。

 実にろくでもない話だと。こいつぁ人間のクズだ女の敵だと憤りもした。その上で誓った。

 将来、複数の女性を囲うことができるようになったら、父のようにポイ捨てするのはやめようと。囲うなら最後まで愛さなくてはならない。それならオッケーであると、俺の倫理観が言っていた。

 

『稼ぐ方法なんていくらでもあるのよ。キャバやホストは簡単だからやってるだけ。別の事情に手を出してるのは、締め付けが厳しくなった時のためよ。未来のことは分からないんだし、法律が変わって一気に稼げなくなるってこともあるかもしれない。ていうか間違いなくそういう時代が来るわ。だから、リスクヘッジはしておかないと』

 

 母のような人間にもなるまいと思った。キャバ嬢を格安ソープに売り飛ばすような行いはアウトだ。売れないホストを恫喝するのもダメだ。実にろくでもない。いつだったか見た号泣お兄さんはホント可哀想だった。

 

『リスクヘッジって言うなら、俺は(はん)不労所得目指すわ。そんなに頑張らなくても金が入ってくる仕組みを作って、安定の生活を手に入れる』

『それじゃ試しにホストクラブの運営でもしてみる? 卒業までやってみてもいいわよ。一店舗くらい潰れても痛くも痒くもないし』

『やるやる。やってみる』

 

 ついでにホストってやつも経験させてもらった。

 最初のうちは楽しかったが、後になってやるんじゃなかったと後悔したな。嫉妬した先輩にビルから突き落とされかけて、マジで死ぬところだった。お薬やってる人って怖いね。急に見境なくなるんだもん。

 

『おまわりさん、あの人です! ラリってます!』

『君は?』

『このお店のオーナーの息子です。母が家事しないんで呼びに来ました』

 

 そんなわけで、俺は中坊にして早くも夜の世界というやつを知った。

 グレーゾーンとブラックを行ったり来たりする世界は刺激的で、とても勉強になったよ。

 あの経験はきちんと記憶しておこうと思う。

 将来、稼ぐための手段のひとつとして。夢は無難に安定した生活を望む。異性を何人も養うことができれば、とりあえずオッケー。高望みはしない。

 

 

 

 

 何事も目標がないと面白くない。

 高校に入学するにあたって、俺は自分へのミッションを設定した。

 卒業までに、末永く付き合えそうな女子を三人ゲットする。これ最低限。学生時代の彼女って特別感あるし、今しか出来ないって意味で三人は欲しい。

 それが長期目標なわけだが、一年以内にとか数ヶ月以内にとか、そういう中短期目標は保留とした。

 入学した学校がかなり怪しいところだったので、もう少し情報が増えてから考えたいと思ったのだ。

 なにせ入学と同時に新入生全員に10万円のプレゼントだ。もれなく全員に大金が配られたのだが、その時点で普通の学校ではない。超名門であることを考慮しても異常すぎる待遇だ。

 もしかしたら過酷な競走とかが始まるかもしれないし、そうなれば戦略が必要になる。駒が欲しい状況になる可能性もあるので、その場合は女子を何人か囲いこもうと思っている。

 なんで女子限定なのかって? 理由は簡単だ。ハニートラップに興味があるからだよ。一回やってみたいと思ってたんだ、そういうの。

 

 

 

「どうだいライトボーイ。授業が終わったら私と語り合わないか。美しい夕日が見えるスポットを見つけたのだが、本日の予定はいかがかな?」

 

 ゾワッと鳥肌が立った。

 五月上旬の良く晴れた日のこと。

 昼下がりのプールサイドで、俺は女子ではなくムキムキの男子に口説かれていた。どうしてこんなことになってしまったのか、屈強な肉体を持つオールバックに、一緒に夕日を見ようと誘われている。純粋に気色が悪い。

 

「悪い。予定はいっぱいなんだ。ところでライトボーイと呼ぶのをやめろ。ほんとやめて純粋に嫌だ」

「フッ……それなら、夕食をとりながら語り明かすというのはいかがかね?」

 

 いかがかね、と言われても「嫌だ」としか言えない。いくら自信満々な表情で言われてもダメだ。髪をかきあげて白い歯を見せるのをやめろ。

 彼の名は高円寺(こうえんじ)六助(ろくすけ)

 ことあるごとに俺と語り合おうとする、筋肉ムキムキのブーメランパンツだ。ブーメランパンツはプールの時だけだ。なぜに語り合おうとするのかは不明。

 

「夕食は一人でゆっくり食べたいんだ。大体、何を語り明かすっていうんだよ」

「決まっているだろう。王とはどのようにあるべきか、互いの意見をぶつけ合うのだよ」

「高円寺は王様みたいだと思うよ。顔からしてキングだ。そしてキングなら庶民を少しは労わってくれ。少し風邪気味なんだよ」

 

 少し興味をひかれるテーマだが、朝まで語り明かすのは嫌だ。俺はできるだけ悲しいオーラを出しつつ、高円寺の誘いを断った。

 

「そういうことなら仕方がない。しかし、そうなると妙だねぇ。体調が悪い人間に水泳で負けたなど、おかしな話もあるものだ」

 

 高円寺は不敵な笑みを浮かべている。クロールのデットヒートで負けたのを根に持っているようだ。本気でやれっていうからやったのに、そういう態度はどうかと思う。あんまめんどくさいこと言ってると、次から勝負を控えるぞ。

 高円寺との出会いはバスの中だった。

 ヘッドフォンの音漏れがうるさかったから注意して、無視されたから強奪したらバトルになり、入学式に遅刻する羽目になった。バスの中でバトルするわけにはいかなかったので、一度下車してから腕相撲や100m走の勝負をしたのだ。

 

「とにかく語り合わないから、この話はこれで終わりで。授業も終わりだぞ。さっさと着替えようよ」

「ならば、教室に戻った後はカードゲームに興ずるとしよう。新たなトラップカードを手に入れたから、是非とも試してみたくてねぇ」

 

 おい、遊偽王(ゆうぎおう)モンスターデュエルにハマってるんじゃないよ。教えてあげた時は馬鹿にしてたくせに、何ちゃっかり新たなトラップカードとか手に入れてんの。

 

「ちなみに、どんなトラップカードを手に入れたんだよ?」

「全てを闇に葬る一撃、サンダーボルトさ。れっきとしたトラップカードだ。カードの色もそうだし、トラップカードと印字されているからねぇ」

「それトラップカードじゃねーよ。誰かが改造したやつだろ。使ったら反則負けにするからな」

「もちろん想定済みさ。妙に高かったからねぇ」

「わかってて購入して使おうとしてたのか……タチが悪いぞ半裸の王様」

「おや、半裸なのはお互い様だと思うがねぇ」

「うるさいよ胸を張るな怖いから」

 

 教室に戻った後は高円寺とカードゲームをして、普通に授業を受けて放課後になった。

 何か知らんが、日常の中に女子があんまり出てこない。どうしてこうなったと嘆きつつ、このままじゃいかんと危機感を覚えた。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
一言
0文字 一言(任意:500文字まで)
※評価値0,10は一言の入力が必須です。参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

思ってたのと違う世界にようこそされてた(作者:風見鶏)(原作:ようこそ実力至上主義の教室へ)

アライグマに噛まれて死んだ。ラブコメの世界に転生できたと思ったら、白い部屋に閉じ込められた。なんか違くねってなって、絶望した!


総合評価:41/評価:-.--/連載:1話/更新日時:2026年08月31日(月) 00:02 小説情報

ようこそ欲求至上主義の教室へ(作者:hiilagi)(原作:ようこそ実力至上主義の教室へ)

欲求第一の男が行く高度育成高等学校。▼欲求あふれる人間が無感情な親友に感情を教え欲求を持たせる学園生活。


総合評価:21/評価:-.--/連載:2話/更新日時:2026年07月24日(金) 02:13 小説情報

佐倉の従兄弟に転生した(作者:メガラティアス)(原作:ようこそ実力至上主義の教室へ)

▼よう実の世界で佐倉愛里の従兄弟であり、また原作キャラの幼馴染に転生した。▼


総合評価:1396/評価:8.26/連載:12話/更新日時:2026年08月27日(木) 22:41 小説情報

ようこそ鑑定者のいる教室へ(作者:アキラ2002)(原作:ようこそ実力至上主義の教室へ)

ある日高度教育育成学校に登校してた俺に鑑定能力が目覚めた。原因は思い出せない。その能力を駆使して青春を謳歌する話


総合評価:272/評価:6.55/連載:3話/更新日時:2026年05月28日(木) 20:54 小説情報

ようこそ不死鳥の舞う教室へ(作者:Gemini&指示出す人間)(原作:ようこそ実力至上主義の教室へ)

AIでどこまで書けるんやろか、試したい。どうせならこんなん読みたい。そんな感じの手慰みで、ジェミニに書いてもらいます。本文は九割九分九厘ジェミニ産。人間はあらすじ書いて生成、ハーメルンにコピペ、読みながらおかしな部分を削除して投稿します。基本人間は文章書かない方針です。なので、どうしてもおかしな部分が拭えませんがAIだから見逃してください。▼AI無理な人はバ…


総合評価:1011/評価:8.44/連載:27話/更新日時:2026年08月08日(土) 23:00 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>