ここでは都市に転移したと思ったら目の前に指令を受けたソラがいた男について語られる 作:ケジメされた人差し指
話の進め方を考えやすかったカリスト主体の前話と比べて、何の接点なかったオリ主とリアンの会話を考えるのがあまりにも難し過ぎて……どうにもならなすぎて……笑いました。内容に収集がついてねぇ、筆者は人差し指を詰めておくように
白いタイルが敷き詰められ、空気が循環して明るかった薬指の廊下とは違い、人差し指の廊下はスチルで見た通りに薄暗くどんよりとしていた。その陰鬱さは都市そのものと言った趣でらしさを感じるな。壁には本棚が埋め込まれるようにしてびっしりと聳え、ぽつぽつと散乱するように黒いカウチソファーが備え付けられているが……誰が使うんだよこんなにあって。
無限に続いていく生活感の無いリビングルームとでも言うべきか。どちらもバックルーム然とした空間ではあるが、薬指の方は展示会場がコンセプトなのねとはなるんだけど、こっちは長居してると何処かしら病んでいきそうな空気で満たされている。なまじっかテレビとかランプみたいな家具とかは置いてあるのに窓がないせいでより閉塞感が強まってるんだろうな。窓ない! 窓ねぇぞ栗原ァ! というかよく考えたらここ本当に
ソラちゃんもそうだが、リアンに至ってはここで30年近く生活してるんだよな……縒り合わせ内でかつての良秀さんは料理する時わざわざ小指エリアに行ってたようだけど、こっち側には台所とかそういうのないのかな。
食事とかは買って来た惣菜とかデリバリーで済ましてんだろうか、都市のスーパーってどんな感じなんだろう。各区がそれぞれ国みたいな文化の違いをしてるもんだから一概に都市の生活水準はこう、とも言い切れない訳だけど。なんとなく電子ケトルで沸かしたお湯で作ったカップラーメンを啜るリアンの姿を想像する。シュールだが様になってる気がする、フォプーン使って食べるんだろうな。お湯を沸かすのを……忘れたみたいだ……
「蜘蛛の巣での生活ってどうなんだ、雰囲気的にあんまり生活感ないけど……ご飯とかどうしてるんだろうと思ってさ」
「え、えっと……ボクもリアンさんも、郵送されてくる出来合いのご飯を温めて食べる事が多いです。べ、便利なんですよね……色んな料理も食べられますし」
「都市にもナッシュ的なやつがあるのか……受取用のポストが近くにある廊下とかがあったり?」
「そ、その通りです! あとは、ボクもリアンさんも指令で出ている時もありますから、い、行き先でそれぞれご飯にしてたりですかね」
他の指達も完全に蜘蛛の巣に引き篭もっているという訳ではないが、指としての身分をしっかり保ったままなのは人差し指親子くらいだろう。人格ストーリー情報だから本人達に完全に適応は出来ないが(何回か言ったから以後省略する)キラなんかは中指としての報復を本家の中指と合同で行い、なんならその実力でキャリーするくらいの働きをしても扱いは『あの』マティアスの子だからと腫れ物に触るようだった。
ルチオなんかは正式な親指として認定されているかもわからないし、薬指親子の方は身体派だから……それに比べると人差し指の代行者として実務もこなしているソラちゃんと神託のリアンは外に出る機会も多いよな。
それからまた歩いて数分……別の空間に繋がるものとは違う、部屋同士の区切りとしてついていた扉を開けた先にリアンはいた。
いやもう普通にいた、ほんっと一般人がそこにいるくらいに、何の違和感もなくいた……それが怖い。カリストなんかは装いと気配からあからさまな程に強大で、正に都市の畏怖の一片って存在感だった。それに反してリアンは目を離せばそこに居るともわからないような希薄さである。
「……おかえりソラ、思っていたよりも時間が掛かったんだな。それに……予想もしていなかった。ここに部外者を連れてくるのはな」
生で、この目で見ると実感させられる……Twitter(断固たる意思)なんかでもよく語られてる事だけど、本当にこれで推定60歳超えなのが信じられないほどの若々しさだ。20後半くらいと言っても通る時は通りそうなくらいのキューティクルとか肌艶とか、なんでヴァレンチーナとかマティアスはしっかり現代時間軸前提の外見なのにリアンだけずっと若いんだよ。
うん、最初に考える事がこれなのは一種の現実逃避でもある。あの、リアンシ……なんでカドゥケウスを握っておられる……? なんでじゃねぇよ子方が部外者で素性も知れねぇ奴連れて来て警戒しない訳ねぇだろ。カリストはアレだから通すにしてもリアンなんか蜘蛛の巣の現場監督みたいなもんなんだから尚更気ぃ張るわ。
「た、ただいま帰りました! てっきりリアンさんにも、連絡が来ているのかと思ってたんですけど……し、指令はこの人を、アンデルセンさんを連れてリ、リアンさんに紹介するように言ってたんですよ」
しかし見た目だけだと人差し指濃度高い空間だなここ。リアンは言わずもがなあののっぺりした濃黒のスーツで、ソラちゃんも白い外套こそ羽織っているものの黒で統一したコーデだ。そんで俺も仕事帰りで、安物のビジネススーツとは言え黒めの格好だから……もしかして俺は人差し指だったのか……?
しっかしどう話を切り出そうかな。ヴァレンチーナとはまたベクトルの違う話しにくさと言うか、あっちがそこかしこに
「アン……そ、うか。それなら俺から言う事は何も無いが……じゃあ、お前に今来ていた指令はこれで『遂行』された訳だな」
「そ、そうですね! 後は……はい、あ、新しい指令も来ないみたいですし」
あのすいませんその事を今確認する必要ありました? いや待てまだソラちゃんの方には交際の指令が残って……解釈の仕方によってはその場限りとか色々言えるよな。つまり今のわしはソラちゃんにとって指令の事だけ考えるなら守る理由は無いって事なんじゃないのか?
「……」
「……」
「あ、あの、お二人ともどうしたんですか?」
能面のような真顔で俺を見つめているリアンと表情筋が硬直しているであろう俺の視線が交錯している。ソラちゃんが居たから耐えられてるけど居なかったら耐えられなかった。他の親方達が感情的なのもあるし、現にカリストは割と考えてる事も予想出来たりしたけど、リアンなんかは何考えてるかわからない。いや、ちょっとだけ予想してる事はあるんだけどもしそうだとしたら口先だけとかじゃなく終わりなので考えても無駄!
「さて、俺はリアン。お前がソラからどんな話を聞かされていて……お前がソラにどんな話をしたのか俺は知らないからな。立ち話もなんだろう、取り敢えずこっちに来て座ってくれ。お互い丸腰なんだから、そう警戒しなくてもいいだろ?」
「わかりました。ソラさん、なんか鞄を置いておけるような場所はあるかな?」
「あ、ボ、ボクが置いてきますよ(さん……?)」
ソラちゃんに持っていた鞄を預けて、リアンが促したソファに座る。黒革でガチガチそうな外見に反して意外と座り心地がいい。蜘蛛の巣が最終的に全員を廃棄する前提のゴミ箱だとしても指の幹部が生活する場所なんだからまぁそれくらいは当然か。と、腰を落ち着けたところで改めてリアンと対面する。
「改めて、アンデルセンです。この度はソラさんに下った指令の対象になったということで……この蜘蛛の巣に出向かせてもらった次第であります」
「……ソラ?」
「え、えっと……ボクが教えた訳じゃなくて、アンデルセンさんは最初からボクが指令で会いに来たことも知っているみたいでして。く、蜘蛛の巣の事も把握してらしたんですよ」
「ほう……それはなんとも、不思議な話だな?」
リアンがソラへ向けている想いというのは、ソラちゃんがリアンに向けている莫大な信頼と比較してしまうと余りにも薄情けだ。マティアスがキ/ラしたのは本人のイかれ倒した倫理観の中、キラへの愛情も確かに持っている……少なくともマティアスはそう思っている中で行われた事であり、自発的に阿頼耶識の剣閃の中に背中を押したリアンのそれとは違う。まぁそれ自身も指令だったと言われるとそれまでかもしれないが、前妻や娘を失えと言われた時ほどの葛藤は無かったと思える。
当然指令であっても生活を共にして、子を作り育んでとした最初の家族と、産まれた時から剣としても丹念に鍛え上げながらも亡き子を重ねていたヨシヒデ……それらに比べれば最近なんか娘って事になった成人女性に思い入れは無い方だろう。ガンガンに懐いてくるのも正味怖いだろうし。
ただそれでもリアンという人間は変な所で人情があって、指令の言いなりに生きてこそいるが指令への疑念も抱いていれば失望もしている。ソラに来た指令がかつて自分に来たそれと類似している事は何となく察しもつくだろう……ならばその末路も。そう同情したリアンがあんな想いをさせられるなら、とソラが俺に入れ込み過ぎる前に『手を打つ』事も考えられなくはない。正に今がそうだろ、カドゥケウス握ったまんまだし何が丸腰やお前。
「カドゥケウス……神託端末機にして貴方の得物。丸腰だという言い方には語弊がありますね。最も、そんな物が無かったとしても貴方が自分をどうこうするなら素手で十分でしょうけど」
個人的には、知らないフリというのはいつかバレるもんだと思っている。ソラちゃんには事情通なの既に話しちゃってるし、身体派への理解がある一般人なんてあり得ないからな。だけど都市エアプなのは事実なんでその辺の不和は産んでしまうだろうから……リアンの時とは状況が違うというのを認識させよう。
まず彼の奥さんは明言こそされていないもののリアン人差し指である事も知らない、一般人であったと考えられる。テキストにもどうして自分がこんな人と結ばれる事が出来たのか、とあるように家族を作れという指令を知らされてもいなかったみたいだからな。その点ソラちゃんは俺が指摘した事もあって声を掛けた理由が指令由来である事も打ち明けている。その上でカドゥケウスの事まで知っていれば、少なくとも指令に巻き込まれただけの一般人とは思えないはずだ。いや実際はそれで合ってはいるんだけども……知識があるのが却って問題になってる気もするなー、いや原作知識無かったらそれはそれでカリストで詰んでたんだけども。
「……驚いたな、それもソラから聞いた訳でも無さそうだ。お前は一体何処の人間なんだろうな?」
「何処にも属していない、ただ1人の人間です。どの指にも、協会にも、翼に……都市にも。と言っても自分には何の力もありません……この蜘蛛の巣の本懐を邪魔する事も、出来る事もないんですよ」
カドゥケウスの事を指摘されたリアンの目が一瞬丸くなり、しかしすぐにまた面を貼り付けたような真顔に戻る。彼我の実力差くらい簡単に把握してしまえるだろうから、俺の言う無力さを疑う事もないだろう……けれどその情報元だけはわからないだろうから、手とかは出さないでいただきたいなぁ。
「外郭からでも来たって言うのか? 外から内に来れるやつは……珍しい」
「そうですね、しかし経緯となると……正直自分でも把握しきれていません。気がついたら都市に転移させられていた、誰がどう意図したものかはわからず、自分の意思ではないとだけ」
犬笛は手に持ったままだが、リアンの頭の中を情報で飽和させて行けているような気はする。ただ……話がどんどん拗れていってるような気がする。第一に疑心とかを晴らさないと行けないのに、第二にあるリアンがソラちゃんにちょっと向けてる心配の解消がお互いにぶつかり合っているんだ。ギリギリと胃が軋み出すのを感じ始めた所で……得心が行ったような表情のソラちゃんが話に入り込んで来た。
「や、やっぱり都市の外から来られていたんですね。お洋服や鞄が、と、都市の製法では無いように見えましたから……」
「気づいていたんだ。目敏いね、流石はソラさんだ」
「あ、あの……さっきからなんでさんづけなんですか? 来るまではちゃんって言ってましたよね?」
「リ、リアンさんがいる手前ちゃんづけは馴れ馴れしさが凄いじゃないか」
「……は。短い間に、随分仲が良くなったみたいだな?」
ソラちゃんよく空気読めないねって言われたりしない? と現代だとここがちょっとズキンとする感じの挙動でソラちゃんが滑り込んで来たが、この状況においてはまじでありがたい。リアン相手はちょっと話しにく過ぎて自分でも着陸地点見失いつつあったけど、このやり取りでちょっとリセット……もといけむに巻けたような気がする。
「そうなんですよ! ア、アンデルセンさんって……なんだかリアンさんにも似てるような人で……」
「俺にか?」
「俺がか?」
「だから、そ、その……確かにアンデルセンさんは不思議な所も多いんですけど、ボクは良い人だと思ってますから、リアンさんとも良くしてくれたらいいなって……思ってます」
思わずリアクションも被る、というかソラちゃん的には褒め言葉なんだろうけどリアンみたいって言われるの殆どちくちく言葉だぞそれ! それはそれとして、憎からず思ってくれているようで嬉しいな。リアンの方も少し馬鹿馬鹿しくなったのか、視線の中にある棘は少し丸まった気もするし……蜘蛛の巣への滞在の事とかこの辺で……
【ピピピピピピピピ】
【ピピピピピピピピ】
「あ」
「おっと」
ヘ、ヘルメス……お前なんて不安になるタイミングで指令を、しかも2人同時に寄越してくれてるんだ。やっぱりお前図書館のあれとは仕組み違うだろ、リアルタイムでどっかから見てないと出来ない愉快犯の所業なんだよ。この電子音に慣れる瞬間はいつまでも無いだろうな……いつ死刑宣告が飛んでくるのかもわからないし。そうして、2人が指令の内容を反芻するのを待つ事数十秒。
「わぁ……」
「……」
ソラちゃんはなんか喜んでるようなリアクションだから悪いものじゃなさそうなんだけど、リアンの顔がやばい事になってるぞソラちゃんは気づかないのかあれ! 何書いてあったの!? ねぇ!?
アンデルセン(仮)
武器をちらつかせるお父さんに怯える可哀想な友達。端末に届く指令の電子音にビビるようになった結果関係ない電子音にもビクッとしだす。後半から自分でも何言ってるかわからなくなり始めていたのでソラにかなり助けられた
ソラ
好きな人と好きな人がお話ししている、ボクも嬉しいです! この状況で1人だけふわふわしている。良かったね。空気がヒエヒエなのは全然わかっていなかった。新しい指令もボクの望みを汲んでくれていてハッピーハッピー
リアン
子方が連れて来た変なやつの対応に困っている可哀想な友達。
俺が となる事をお望みですか。