死の旋風を纏うIS   作:ブランコ好き

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第1話

「なぜ俺は地球に...?」

 

目覚めたギリは戸惑っていた。木星圏で戦っていたというのに感じる地球の重い重力。明らかに木星の擬似重力ではない。

そもそも自分はなぜ生きている?五体満足どころか傷一つ無い肉体...

自身の状態を把握すればするほど疑問が増していく。

そんなことを考えていると、部屋のドアが開いた。

 

「どうやら目が覚めたようだな。」

 

目を向けるとそこには黒髪の女が立っていた。

 

「誰だ...お前は」

「私は織斑千冬。このIS学園で教師を勤めている。そちらも名乗ってもらおうか?」

 

(IS学園...聞いたことは無いがおそらく地球の学園なのだろう。)

 

「俺はギリ・ガデューカ・アスピスだ。」

「さて、早速だがこちらの質問に答えてもらう。」

「先にこちらからも質問させてもらおうか。

ここは地球だな?いったい俺は何ヶ月眠っていた?」

 

木星圏から地球へミノフスキー・ドライブなしに移動するなら数ヶ月はかかる。俺がここで目覚めたということは数ヶ月眠ったままだったということになる。

 

「何を言っている?まるで宇宙からきたかのようなことを...それに貴様が発見されたのは昨日だ。正確な時間は分からんが、そう長い期間眠っていたわけではあるまい。」

 

話が噛み合わない。だが、地球が無事であるのを見るにおそらくあいつらは『シンヴァツ』の破壊に成功したのだろう。

そう考えているうちに向こうから質問された。

 

「単刀直入に問おう。お前は何者だ?どうやってこの学園に入ってきた?SF映画に出てくるパイロットスーツのようなものを身につけていたが」

「SF映画だと?宇宙で戦っていたんだぞ。パイロットスーツを着用するのは当然だろう。その学園とやらは知らん。お前らが運んできたんじゃないのか。」

「宇宙空間での戦闘だと?そんな馬鹿な話があるか!それにここはIS学園だぞ?わざわざ男を運んでくる馬鹿がどこにいる。」

「その学園とやらは知らんと言っただろう。」

「IS学園を知らんだと?」

 

やはり一向に話が噛み合わない。千冬とギリは有り得ないと思いつつもある仮説を思いつく。

 

「貴様は本当にISを知らないのか?」

「さっきからそう言ってるだろう。」

「...ISというのはな」

 

ギリは千冬のISの説明を黙って聞いていた。

女性にしか扱えないパワードスーツであり、そのせいで女尊男卑の風潮が社会に蔓延ったこと。

篠ノ之束という1人の天才によって生み出されたものであること。

 

「そしてお前のそばに落ちていたこれからもISと同じ反応が検知された。」

 

そういって千冬が見せたのは、蛇が棒に巻きついているかのようなキーホルダーだった。

 

「こんなものには見覚えがない。少なくとも俺の持ち物ではないぞ。」

「こいつは強固なプロテクトが施されていた。状況から鑑みてやはり貴様に動かせる可能性が高い。」

「ISとやらは女にしか扱えないんだろう。」

「例外はある。つい先日、私の弟が動かしたのだからな。」

「俺にそれを動かせと?」

「それもあるが今はまだいい。とりあえずお前が何者なのか確認する方が先だ。さっき宇宙とか言っていたな?気絶するまで何をしていたのか教えてもらおうか。」

 

ギリは念の為ある程度ぼかして話す。

 

「さっきも言ったが、俺は宇宙で戦っていた。もっといえばまMSに乗って木星圏でだがな。」

「MS?そんな兵器は聞いたこともないな。それに木星圏だと?地球からどれだけの距離があると思っているんだ。やはり...お前の話を事実だとするなら、馬鹿げた話だがお前は違う時代、もしくは違う世界からやってきたんだろう。」

「...本当に馬鹿げているが...この状況ではそう考えざるを得ないか...普通ならMSの名前を知らないはずがないからな。」

 

これで一応はギリは自分の置かれた状況を理解した。それこそSF映画のような話だが、どうやら違う世界から来てしまったらしい。最もギリはISという兵器を一切聞いたこともないので、未来か、もしくは全くの別の世界か、ということだろう。

 

「まあいい。これ以上聞いたところで世界が違うと言うなら意味もないだろう。安心しろ。どうせ無理だろうが一応元の世界に戻る方法を探してやる。それより、先程言ったようにお前がこのISを動かせるか試す。起きたばかりで悪いがついてこい。」

 

いったい何に安心しろというのか。

ギリはIS学園のアリーナに連れていかれた。

 

「ここだ。ここでそのISが動かせるか確かめてもらう。」

「どうやって起動するんだこれは」

「まあとりあえず手で触れてみろ」

 

言われるがまま、待機状態とやらのISに手を伸ばす。

それに触れた時、自身の体の周りに装甲や武器が展開された。

ISであるためか、自身の全身を覆った訳ではなかったが、黒い装甲と片腕にある長い武器...ギリはすぐにこれが何の機体か理解した。

 

「こいつはクァバーゼか...」

 

最もスネークハンドも片側しかない量産型の方だが。

ここに来る前に乗っていたのはビギナ・ギナIIだったが関係ないようだ。

 

「やはり起動したな。では少し動かしてみるといい。」

 

ギリは試しにMS戦で行っていたようにスネークハンドにビーム刃を展開し、振り回す。

動かし方はクァバーゼが教えてくれていた。ニュータイプであることも相まってか、ギリは直感的に動かし方を理解した。

次にギリは武装を確認する。頭部にあったメガ粒子砲は胸部に移動していた。さらに、変形機構は失われているが、この状態でもかなり自由に空中を動き回れるようだ。

 

「あれは...まさかビーム兵器なのか...?それにあの動き...」

 

千冬は目の前の光景に驚いていた。世界のどの国でも完成されていないビーム兵器を当然のように搭載する目の前のISと、それを易々と扱う目の前の青年に。

本来ISは知識を学んだ上で飛行だってしっかり訓練から始めなければならないような代物だ。初めての起動で簡単に動かせるものではない。目の前の青年は少し拙い動きではあるものの、空中で前後左右かなりの速度で飛行してみせた。武器の扱いに関してはまるで使い慣れているかのように、迷いがない。

 

それから10分ほど経ち、IS『打鉄』を纏った千冬がアリーナに現れた。

 

「どうやらISの扱いについては理解したようだな。では私と模擬戦をしてもらおうか。どうせIS学園に入学試験には教官との模擬戦があったんだからな」

 

お前は例外だから試験自体も免除だが、と千冬は付け加える。

 

「やはり俺にその学園に通えというのか?」

 

ギリは露骨に嫌そうな目を千冬に向ける。

 

「言っておくが拒否権は無いぞ?戸籍すらないお前はそもそも生活することも難しいからな。それに迂闊に動くと捕まってモルモットかもしれないぞ?」

「ちっ...まあいい。この学園を俺の生活に利用してやる。さっさと始めるぞ!」

 

先に動いたのはギリだった。手持ちのビーム・ガンを呼び出し、打鉄に向けて放つ。

 

「甘いっ!」

 

それを回避した千冬は近接戦を仕掛けようとかなりの速度でこちらに向かってくる。

 

「しゃああああっ!」

 

それに対しギリはスネークハンドで迎撃。

が、千冬はそれを後ろに後退するのではなく、逆に思いっきり加速してビーム刃の部分を回避。

スネークハンドが体に巻き付く前にクァバーゼの懐をとる。

目の前で近接用ブレードを振り下ろそうとする打鉄に対し、ギリは胸部のメガ粒子砲を発射。

 

「ちぃっ!」

 

収束する光が見えた千冬は、直感的に危険だと判断し、咄嗟に横に回避した。

そして発射後の硬直を逃すまいと、千冬は瞬時加速〈イグニッション・ブースト〉を発動。

 

「速いっ!?」

 

突然今まで見せたことの無い驚異的な加速をした打鉄に、ギリは一瞬反応が遅れるものの、後ろに下がり近接用ブレードの攻撃を浅傷に済ませ、同時に至近距離でビーム・ガンを発射し、打鉄に直撃させる。

 

攻防の末両者は距離を取り向き直る

 

「思ったよりやるじゃないか。1時間もせずにこれだけ扱えるようになるとは...」

「当然だ。俺は何だって乗りこなせるからな。」

 

再び両者が構えた時に量産型クァバーゼに異変が起きる。

機体の色は赤く染まり、片腕にしか無かったスネークハンドは両腕についた。かつて死の旋風(デス・ゲイルズ)隊で扱っていた専用のクァバーゼの姿だ。

一次移行(ファーストシフト)による変化である。

 

「いったいどうなってるんだこの世界のISってのは!」

 

武器の量子化だの突然の変身だのにギリは驚きを隠せない。

ビーム兵器すらない世界がなぜこんな技術力を持っているのか...

 

「フィッティングが完了したか...今度はこちらから行くぞ!」

 

千冬はアサルトライフルを撃ちながら接近する。

が、ギリはそれを全て回避し、スネークハンドを振り回す。

一次移行により機体がギリの反応に最適化したことで、先程とは比べ物にならない速度で放たれる2つのそれを、後退して回避する。

 

「厄介だな...これでは近づくのも難しい。」

 

当然だ。クァバーゼは元々近接戦に強いクロスボーンガンダムを倒すために作られた機体。近接戦闘スタイルの千冬とは相性が悪かった。

が、逆に中距離での使用を想定されたスネークハンドしか近接武器のないクァバーゼは至近距離での攻撃に弱い。

懐に入り込んでしまえば受け止める手段がないのだ。

千冬は極限まで集中力をあげ、一発勝負の賭けに出ることにした。

そういつまでも続かない極限集中状態で再び剣を構え突っ込む。予想通りスネークハンドによる攻撃が来るが、そこで瞬時加速をしビーム部分を回避しながら近づく。

 

「だああっ!」

 

そして片方を横からブレードで弾き飛ばし、もう片方が自分に巻き付く前に瞬時加速で回避し、さらに近づく。

 

「ちぃっ!」

 

スネークハンド部分への攻撃にも絶対防御が発動したため、クァバーゼのシールドエネルギーも少なくなる。

ギリは右腕のスネークハンドを解除し、ビーム・ガンを取り出して向かってくる打鉄に向かって撃ち込む。

 

「はぁっ!」

 

それに対しなんと3度目の瞬時加速の連続使用でクァバーゼの横に回り込んで渾身の一撃を叩き込む。

 

「食らえっ!」

「くっ!」

 

ギリも横に回り込んだ打鉄の方に素早く向き直り、至近距離でメガ粒子砲を直撃させる。

両者ともシールドエネルギーが0になり、模擬戦は引き分けとなった。

 

「慣れていないとはいえ、あんな貧弱な武装しかない機体相手に勝ち越せないとは...ちっ!」

「私もあそこで完全に勝負を決めたつもりだった。まさか瞬時加速に反応して、あまつさえ反撃を受けることになるとは思わなかったぞ。」

 

ギリはクァバーゼという自身の専用機を使っておきながら勝てなかったことに苛立ちを見せる。

 

「さて、とりあえずそのISは預からせてもらう。修理も必要だからな。お前にはIS学園へ入学するにあたって、残り1週間でこの参考書を頭に叩き込んでもらう。」

 

そういいながら辞書のように分厚い参考書を持ってきた。

 

「こんなものを1週間で覚えろと?お前はふざけてるのか?」

 

そう言ったギリの頭に参考書が落ちる。

 

「いってぇ!いきなり何しやがる!」

「これから私はお前たちの教師となるんだぞ?目上の人間には敬語を使え!それと、私のことは織斑先生と呼べ!」

 

「ちっ!わかりました!」

 

明らかに不服そうな顔をしながらもギリはそれに従う。

 

「とにかくこの参考書を頭に叩き込め!できないとは言わせん。」

 

そしてそのままギリは自分が過ごすことになる部屋に案内された。

本来は入学後は2人1部屋の寮に住むことになるはずだが、既に各部屋にどの人間が入るかは決まっており、ギリは1人余るため一人部屋で過ごすことになった。

参考書は1週間で意外にもすんなりと理解してしまった。




ISの小説は読んでおらず基本的にアニメのみの知識になってしまいますので、アニメ版を準拠に進めていくことになると思います。
カリストや他のデスゲイルズのメンバーを出すかはまだ未定です。
それとギリのヒロインについても作るかどうかからまだ決まっていません。
設定についても恐らくそこまで理解してないと思いますので、なにかあったら指摘して貰えるとありがたいです。
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