「では、これよりISの飛行操縦を実践してもらう!織斑、オルコット、アスピス!試しに飛んでみろ。」
今回の授業は実際にISで飛行するという実技のようだ。
「わかりましたわ。」
そう言うと真っ先にIS『ブルー・ティアーズ』を展開。
少し遅れてギリもISを装着した。
「よし!...........あれ?」
どうやら一夏は少し展開に手間取っている様子だ。まだ動かし始めて間もないので当然だが千冬は急かす。
「早くしろ!熟練したIS操縦者は展開まで1秒とかからんぞ!」
急かされた一夏は目を閉じて集中し、ISを呼ぶ。
「来い!白式!」
その言葉に応えるように一夏のIS『白式』は展開された。一夏はひとまず成功したことに喜ぶ。
「よし...飛べ!」
千冬からの指示で、セシリア、ギリ、一夏の順に飛び立った。
「遅い!スペック上の出力は白式が1番上だぞ!」
一夏はまだ飛ぶことのコツを掴んでいないようだった。感覚を探っている最中といったところか。
そんな一夏に、セシリアが近づいてくる。
「イメージは所詮イメージ...自分のやりやすい方法を探す方が建設的でしてよ?」
「だいたい...まだ空を飛ぶ感覚自体曖昧なんだ!どうやって飛んでるんだこれ?」
「その...よろしければ...放課後にわたくしが指導してさしあげますわよ...?」
「はぁ?」
ギリはそんな2人の声を通信で聞いていた。
なんかセシリアの声がめちゃくちゃ甘ったるく感じる。ギリには、一種の気持ちの悪さを感じた。
「その時は2人っきりで...」
「次だ。急降下と完全停止をやってみろ!」
「りょ、了解です!」
急降下からの完全停止...地面スレスレまで急降下してから急停止し、地面へ着地...という流れだ。
「では、お先に」
一番乗りはセシリアだった。
見事に完全停止し、着地してみせた。
「うまいもんだな...よし!俺たちも行こうぜ」
そう言って一夏も急降下を開始。直後にギリも急降下を始めた。
が、地面が近づいてくると、一夏の叫び声が聞こえた。どうやら止まれない様子だ。
「うわぁあぁああぁぁっ!!」
咄嗟に腕をクロスし頭を守るも、そのまま激突...するかと思われたが、ギリがスネークハンドを展開し、白式の足に巻き付けていた。
「ちっ!しゃああああっ!」
少し減速したのを確認したギリは、力任せにスネークハンドを上に振る。ギリは丁度いい感じに地面スレスレで停止した。
が、それでも多少の衝突は免れず、腕と頭部は地面にぶつかっていた。スネークハンドのおかげで埋まらずには済んだが。
そのまま上に投げ出された一夏は背中から地面に激突した。
「一夏っ!?」「織斑くんっ!」
箒と山田先生、千冬が落下地点に近づいていく。
「痛え〜...死ぬかと思った...」
「お前...試合の時は普通に飛んでただろうが...」
「ホント悪いな...サンキューギリ!」
一夏は特にダメージもなくそのまま上半身を起こした。
箒と山田先生は安心して息を吐く。
「馬鹿者!グラウンドにクレーターでも作る気か!」
「すみません...」
「情けないぞ一夏!私が教えてやったことをまだ覚えてな...」
綻んだ顔を引き締めてそう言う箒だが、後ろから走ってきたセシリアにぶつかって遮られてしまった。
そのままセシリアは一夏に駆け寄る。
「大丈夫ですか一夏さん!?お怪我はなくて!?」
「あ...あぁ...って一夏さん!?」
「それは良かったですわ...ああでも、一応保健室で診てもらった方がいいですわね!良ければ、わたくしもご一緒に...」
「不要だ!ISに乗っていて怪我などするわけがないだろう!」
今度はセシリアの言葉に箒が割り込む。
「あら篠ノ之さん?他人を気遣うのは当然のことでしてよ?」
「お前がそれを言うか?この猫かぶりめ...」
「鬼の皮を被っているよりマシですわ!」
『ぐぐぐぐっ!』
もう二人とも喧嘩腰だ。というかセシリアはいつ一夏に惚れたんだ?いくらなんでも豹変しすぎだろ...とギリは思う。
「戻るぞ一夏。」
「あ、ああそうだな...2人とも、先戻ってるからなー!」
と言ったが2人には届いていないようだった。ギリと一夏は一足先にみんなの元へと戻っていくのだった。
放課後になるとギリのところに一夏と女子たちが話しかけてきた。
「今から織斑君のクラス代表就任パーティするんだけど、アスピス君ってここに来る前コックだったんでしょ!?なんか作ってみてくれない?」
なんとセシリアに話しただけのコックの経歴は、既にクラスに広まってしまっていた。どうやら女子たちの情報拡散力を侮っていたようだ。
ちなみにこの時点で4時丁度なので、急いで作れば何かしらは出せるかもしれない。
「断る。食堂の飯でも食えばいいだろう...俺が一夏の為に飯を作ってやる義理などどこにもないんだよ。そもそも、今日いきなり言われてもハイどうぞってお出し出来るやつが、常識的に考えていると思うか?」
「えぇ〜?せっかくだから食べてみたいんだけどなぁ〜...」
「ギリだけにってか?」
笑いながら話す一夏の寒いダジャレ発言に一気にその場の温度が下がった気がした。
先程まで騒がしかったのが嘘のように静寂に包まれた。
「...............................ごめん。」
空気を察した一夏が沈黙の末に謝罪するも、誰も何も答えない。
誰かなんか言えよ...みたいな空気が漂っていた。そんな中ギリが口を開く。
「...材料はあるのか?」
「作ってくれるの!?」
「勘違いするな!あまりにもこいつが哀れだから作ってやるってだけだ!それにな、一夏以外の分まで作るのは俺の手に余るんだ!他のやつの分は作らんからな!...で、材料はあるのか?」
「いやぁ〜...私は持ってないなぁ...」
「私も...」
「お菓子ならいっぱいあるよ!ぎりりん!」
「ぎりりん...?」
布仏本音...クラスメイトの一人がそう言ってこちらを見ている。ギリは一夏がいっちーなどと呼ばれていることは知っていたが、ぎりりんはネーミングセンスが壊滅的だと感じた。
そして、そのやけにでかい服の袖を振ると、とんでもない量のお菓子が出てきた。ぎりりんと呼ばれた記憶など一瞬で吹っ飛んでしまう程の量だ。
こいつはISの武装の量子化技術を自身の制服に施しているんじゃないかとすら思った。
しかもその様子に誰もツッコまない。
「流石にお菓子から作るのは...」
「いや、チョコレートなんかも結構あるようだな。味の似通っていそうなものを全て貰っていくぞ!」
ギリはそう言うと返事を聞かずにチョコを集めて出ていってしまった。
「あ!行っちゃった...どこに集合なのか教えてないんだけど...」
「ああ、それなら俺が連絡入れとくよ。」
そう言って一夏は携帯を取り出して連絡を入れた。
返事は来ないが、すぐに既読が着いたので出来上がったら持ってくるだろう。
「ギリはチョコ集めて何作る気なんだろうな?」
「溶かして型に流し込むんじゃない?アレンジとかはするだろうけど...」
「結構な量持ってってた気がするんだが...」
ギリはチョコケーキを作ろうとしていた。
パーティが始まるのは2時間後。まあ多少はオーバーしてもいいだろう。
チョコを溶かし、バターやら卵やらを混ぜてガトーショコラ的なケーキを作成し、生クリームとチョコを混ぜてそれをトッピングする形にする予定だ。最短で食べれるようになるまでに時間はかかるだろう。
より美味く食べたいならもっと時間をかける必要があるが、今回は時間がないということで、ギリは割り切った。
ちなみに生クリームは元々、生クリームパスタを作ろうと思ってギリが用意していたものである。さらにトッピングする際の絞り袋は、器用にラップで代用するようだ。
「織斑君!クラス代表決定おめでとう!」
『おめでとう〜!!』
パーティの開始を告げるクラッカーが鳴る。
なお、ギリはまだギリギリでケーキを完成させていない。
「なんで俺がクラス代表なんかになってしまったんだ...」
「仕方ありませんわ。私たちに勝利したアスピスさんは辞退してしまいましたし...それに、わたくしもあなたがたには大人気なく怒ってしまいましたから...反省の意を込めて、先に自薦を取り消させていただきましたの!」
「いやぁ〜セシリアわかってるねぇ〜!」
「せっかく男子がいるんだから、持ち上げないとねー!」
「人気者だな...一夏?」
言葉とは裏腹に箒からは圧が放たれている。
「そう見えるか?」
「ふんっ!」
「なんでそんなに機嫌悪いんだよ...」
と、ここで一夏はかなり遅れてセシリアへの違和感を感じる。
「てか、セシリア...俺は『一夏さん』なのにギリは『アスピスさん』のままなのか?このクラス、ギリのことギリって呼ぶやつ俺しかいないよな〜」
「そ、それはその...」
会話していると、突然カメラのシャッター音が響く。
「はいはーい!新聞部でーす!セシリアちゃんも一緒に写真いいかな?」
「二人で...ですの?」
「注目の専用気持ちだからね〜!どうももう1人は姿が見えないけど...握手とかしてるといいかもね〜!」
「そうですか...!もちろん、撮った写真は頂けますわよね?」
「そりゃもっちろん!じゃあ立って立って!」
セシリアは誰がどう見てもかなり喜んだ様子で立ち上がる。一夏も立ち上がり、ふたりは握手する。
ぎこちない笑顔を浮かべる一夏に、「緊張しないで〜」と一声掛けられたあと、写真が撮られる。
「それじゃ、撮るよ〜!はーい!」
シャッター音がなる瞬間、なんと大量のクラスメイトが写真に入り込んできた。箒に至ってはセシリアと一夏の間に割り込むように写っている。
なんというスピードだろうか。一瞬の出来事だというのに、そこ写真には一切のブレもなかった。
「なぜ全員入ってますの!?」
「まあまあまあ...」
「セシリアだけ抜け駆けはないでしょ〜?」
一夏はそんなみんなの様子を苦笑いを浮かべながら見ていた。
要件は終わりかと思ったが、新聞部の人が質問をしてきた。
「2人目の男性IS操縦者のギリ君は、ここにはいないの?あなたたちのクラスのはずだけど?」
「ああ、あいつなら今部屋で料理作ってくれてますよ。」
「料理?」
「はい。なんでも元々コックをやってたそうで、そのままみんなに押し切られて...って感じです。」
「へぇ〜、じゃあ今部屋にいるの?」
「ええ、多分。」
「じゃあ場所だけ聞かせてもらってもいいかな?」
「はい、ギリの部屋は...」
「やっと完成したか...」
ギリはようやく完成したケーキを見てほっと息をつく。
本当はもっと時間をかけて焼いたケーキを冷ましたかったのだが、時間がなかったから仕方ない。
そろそろエプロンを脱いで運ぼうかと考えていると、誰かがドアをノックしてきた。
「あの〜、すいません。」
「誰だ?俺に何の用だ?」
「少しだけ聞きたいことがあって...入れて貰えますか?」
「鍵なら開いている。勝手に入ってこい。」
「では...失礼しま〜す!」
そこで新聞部の彼女が見たものは、綺麗に生クリームチョコでデコレートされたチョコケーキと、その横で腕を組んで立っているエプロン姿のギリだった。
この素晴らしい絵面を撮らずして写真部をなのれようか?
彼女はとんでもないスピードで、一切のブレなく写真を撮った。
「な、何故撮るっ!今すぐ消せっ!」
「失礼しました!!」
「なっ...待て!おい!ちっ...!」
思わずガッツポーズをとる彼女だったが、すぐさま逃げ出してしまった。
追いかけることもできなかったため、もうさっさとケーキを持っていこうとエプロンを脱いでケーキを抱えていくギリであった。
「ん?あいつって...確か2人目の...」
寮の廊下を歩いていた転校生、凰鈴音は、ケーキを抱えて早歩きでどこかへ向かうギリを目撃した。
「何やってんだろ...あれ...」
ギリは食堂へ着くやいなやドン!と一夏の目の前にケーキを置く。
しっかりと大きいホールケーキだ。
「さあ、惜しみ無く賞賛しろっ!」
「いやいやこの量一人で食い切れねえよ!?」
「誰がひとりで食えと言ったよ...不本意だが布仏が出したチョコがあまりにも多かったんでな。余りがないように作ったらそうなったんだ。」
女子たちからは歓喜の声が上がる。
「やったー!」
「私たちも食べていいんだよね!?」
「ああ。流石に全員分はないだろうがな。食うと言うなら勝手にしろ!」
「お手並み拝見させてもらいます!」
「案外優しいんだね、ありがとうアスピス君!」
「うるさい!不本意だと言ったはずだ!あくまでお前たちはついでなんだよ!感謝するなら大量のチョコを出した布仏にするんだな!」
「あれってツンデレ?」
「ツンデレよ!ええ間違いないわ!」
「なんかちょっと可愛い...」
そんな会話を横目に一夏はケーキを口に運んだ。
「...うまっ!?これ思ったより美味いぞギリ!」
「思ったよりとはなんだ!俺が作ったのだから当然だろう!」
「く...悔しいですが、わたくしもこれには完敗ですわ...」
「私もだ...コックというのは伊達ではないということか...」
何故か悔しがるセシリアと箒は無視し、少しはギリも楽しんでその時間を過ごしたのだった。
なおこの件がきっかけで、ギリは裏で『ツンデレ料理長』などと呼ばれるようになってしまったのだった...
意図的にツンデレを出そうとするとめっちゃ違和感を覚える...
結構ギリキャラ崩壊してませんか?
料理に関しては知識ゼロなのに無理やり出したので間違いがあるかと思われます。