「もうすぐクラス対抗選だねー!」
「そういえば2組のクラス代表が変わったんだって!」
「なんとかって転校生に変わったんだってね?」
一夏のクラス代表パーティの次の日の朝、教室ではそんな会話が繰り広げられていた。
転校生という言葉に一夏は驚く。
「転校生?今の時期に?」
「うん。中国から来たんだって!」
「ふんっ!わたくしの存在を今更ながらに危うんだのかしら?」
「なんで転校生がお前の存在なんか危ぶむんだよ?」
「なんかとはなんですの!?わたくしより強いといっても言動には気をつけていただきたいですわ!」
「どんなやつだろ?強いのかな?」
一夏はその転校生とやらに興味を持ったようだ。
「専用機持ちは1組しかいないから余裕だよー!」
「なんでこんなに1組に集中してんだよ...」
「その情報古いよ!」
ギリが小声でツッコんだ直後に入口から声が響いた。
「2組も専用機持ちがクラス代表になったの!そう簡単にはいかないんだから!」
「鈴?お前鈴か!?」
その人物を見るや一夏は立ち上がった。
知り合いだろうか?まさか一夏周囲の恋愛事情にさらにこいつが加わるんじゃないだろうな...とギリはこの先の展開を考えていた。
「そうよ!中国代表候補生、凰鈴音!今日は宣戦布告に来たってわけっ!」
ビシッ!と指を指しながらそう言う鈴。
「あれが2組の転校生...」
「中国の代表候補生...」
「誰ですの...!?一夏と親しそうに...!」
「ファン・リンイン?なんかよくわからん名前だな。」
「ちょっと!それが初対面の人間に言うセリフなの!?ってあんた、昨日でかいケーキ抱えてた変なやつじゃない!」
「お前も大概な態度じゃねえか!」
「鈴!何カッコつけてんだよ!全然似合わないぞ!」
謎に侮辱し合う2人だったが、一夏が話し出すと止まった。
万遍の笑みを浮かべながら一夏はそう話しかける。
「なっ...なんてこと言うのよあんたは!ってあんたも何よその目は!」
ギリは鈴の後ろから近づいてくる人物に気づき、鈴に哀れみの目を向ける。
直後、鈴の頭に軽い拳骨が落ちた。
「いったぁ...!何すんの!」
すぐに振り返って文句を言おうとする鈴だったが...
「うわっ...」
「もうSHRの時間だぞ!」
「ち...千冬さん...」
「織斑先生と呼べ。さっさと戻れ邪魔だ!」
「すいません...また来るからね一夏!逃げないでよ!」
そう言い残しさっさと戻っていった。
もしかしたらさっきの自分の推測は本当に当たりかもしれない...そう思うギリだったがすぐに頭を切り替えた。
昼休みになると、宣言通りに鈴が来て一夏を食堂に連れていく。その後ろを箒とセシリアがついて行き、ギリも他の女子たちに連れられ、その後ろを歩いていく。
「まさかお前が2組の転校生だとはな〜!連絡くらいくれりゃ良かったのに!」
「そんなことしたらそんなことしたらせっかくの劇的な再会が台無しでしょ?」
仲良さげに話す一夏と鈴を、真後ろからセシリアと箒が睨んでいる。
ちなみにその2人の後ろにはギリが並んでいる。
しばらく話していると鈴が頼んだラーメンが届く。
「相変わらずラーメン好きなんだな。ちょうどまる1年ぶりになるのか...元気してたか?」
「げ、元気にしてたわよ!あんたのほうはもっと怪我病気しなさいよ!」
「どういう希望だよそりゃ...」
一夏の頼んでいた料理も届き、そのまま二人は席へ向かっていった。
そんな様子をセシリアと箒は飽きもせず睨み続けている。
「おい!さっさと取れ!」
「あっ...ああすまない...」「す、すみません...」
料理が届いたのに、まだ睨むのに夢中な2人にギリは声をかけた。
そして自分も料理を受け取り、席に向かう。
箒やセシリア、他の女子と同じ机で食べ始める。
今回ギリが頼んだのはきつねうどんだ。
先日生クリームパスタを作って食べる予定だったが、ケーキに使ってしまったので食べられなかったため、麺類を頼んだ。
写真で自分の知ってるものでないことは想像に易かったが、興味が湧いてきたのだ。
「そういえばアスピス君はなんでクラス代表辞退したの?」
「面倒だっただけだ。戦うだけならまだいいが、クラス長もやらなければならないんだろう?悪いがお断りだ。」
「そうなんだ〜!」
そう返し、早速うどんに口をつけるギリ。
これまた今まで自分が食べてきたものとは方向性が違うものだった。噛みごたえのある麺にダシが効いた汁、噛むと味が一瞬で広がる揚げ...
ギリ好みの味という訳では無いが、結構美味かった。
他の女子たちのほとんどが一夏と鈴の会話に耳を傾けていた。というかもはや体全体をそっちに向けていた。
こいつら食べないのか?
「で、いつ代表候補生になったんだよ?」
「あんたこそニュースで見たときはびっくりしたじゃない!」
「俺だって、まさかこんなことになるとは思ってなかったんだけどなぁ。」
ギリも食事をしながらそこの会話に耳を傾けた。
どうやら市立の多目的ホールが元々受ける予定だった試験の会場だったが、道に迷って歩き回った末にISを見つけ、触れてみたら起動ができたとの事だ。
案内とかなかったのか?試験会場に着いたのに道に迷うなんておかしいだろ...
と、ギリは思った。
「...で、この学園に入学したってわけ。」
「ふーん?変な話ねぇ...」
ここでついにセシリアと箒が立ち上がる。
既に予想できていたギリは全く動じずに箸を進めている。
ふたりは一夏たちのいる机に手を叩きつける。
「一夏!そろそろ説明してもらおうかっ!」
「そうですわ一夏さん!まさかこの方とつっ...付き合ってらっしゃるの!?」
「べっ...別に私は...!」
「そうだよ。俺たちはただの幼馴染だ...ん?何だ?」
「...なんでもないわよっ!」
鈴は一夏の言葉にそっぽを向いてしまった。
「幼馴染...?」
「そういえば、ちょうどお前とは入れ違いで転校してきたんだっけなぁ。篠ノ之箒。前に話したろ?箒はファースト幼馴染、鈴はセカンド幼馴染ってとこだな。」
『なぜおまえが常にNo.2だったか教えてやろう。』
ギリは、セカンド幼馴染などという言葉のせいか、どこぞの下衆総統の声が聞こえたような気がしたが気のせいだろう。
箒はファーストという言葉に嬉しそうに笑みを浮かべる。
一方で鈴も不敵な笑みを浮かべながら箒に話しかける。
「ふーん?はじめまして。これからよろしくね?」
「ああ、こちらこそ。」
箒も不敵な笑みを浮かべながらそう返す。
そこにわざとらしく咳払いをしてセシリアが入ってくる。
「わたくしのことを忘れてもらっては困りますわ。私はセシリア...オルコット。イギリスの代表候補生ですわ。一夏さんとは先日、クラス代表の座を...」
「一夏!そういえばクラス代表になったんだって?」
セシリアは色々と続けて自分のことを説明しているようだが、鈴は聞かずに一夏にしゃべりかける。
「まあ...成り行きでな?」
「良かったらあたしが練習見てあげよっか!」
「お!そりゃ助かる!」
「...ってちょっと!聞いていらっしゃるの!?」
長々と説明を続けていたセシリアが突っかかる。
「ごめん。あたし興味ないから。」
「言ってくれますわね...!」
「一夏に教えるのは私の役目だ!」
「あなたは2組でしょう?敵の施しなど...!」
「あたしは一夏と話してんの。関係ない人たちは引っ込んでてよ...」
随分と険悪な雰囲気だ。視線を向けていないギリにすら伝わった。
「あなたは...!あとから出てきて、何を図々しいことを...!」
「あたしの方が付き合いは長いけどね?」
「それを言うなら私の方が長い!一夏とは共に食事をする間柄だ!」
なんと露骨な会話だろうか。ギリには、自分の好意を隠す気がないようにしか見えない。
「それなら、あたしも一緒だけど?しょっちゅうウチに来て食事してたのよ〜?小学校の時はね〜!」
「どういうことだ一夏っ!そんな話聞いてないぞ!」
「わたくしもですわっ!」
怒りの矛先が一夏へと向く。
「よ...よく鈴の実家の中華料理屋に行ってただけだ...」
その言葉を聞いて二人は安心した様子を見せる。
ギリも食べ終わって四人を見ていた。
一緒に食べていた女子たちも一夏達の会話を聞くのに夢中で全く喋らない。
こいつはこの状況で三人が一夏に向ける感情に気づいていないのか、と内心でツッコんだ。
「親父さん、元気にしてるか?」
「あ...うん...元気だけど...」
ちょうどその時に予鈴が鳴る。
「じゃあ放課後に!一夏、そっちの練習終わったら行くから時間空けといてね!」
そのまま鈴は去っていき、一夏たちもすぐに教室へ戻った。
そして放課後
「なあギリ、今からアリーナでISの訓練するから来ないか?模擬戦とかやろうぜ。」
「お前、箒と二人で訓練してるんじゃなかったか?」
「なんかセシリアが来るみたいだからさ、俺もお前を誘おうかと思ってな。」
ギリはセシリアも来ると聞いて何となく色々察した。
が、模擬戦なら少なくとも訓練中は特に面倒なことも起きないだろう。
「...なら参加させてもらおう。たまには人と実戦形式の訓練も悪くないからな。」
「よし決まりだ!アリーナはもう借りてるから行こうぜ!」
二人はアリーナへと足を運ぶ。
「そういえば、俺の白式の
「スネークハンドはただの武器だ。まああれから出るビーム刃がその一部ではあるがな。」
「ビームって?レーザーとは違うのか?」
「あれは一種の粒子ビームってやつでな。その名の通り粒子が使用されているもので光とはまた違う。」
そう言ってギリは自身の単一仕様能力『ミノフスキー粒子』について説明を始める。
ギリのISの武器は基本的に全てビーム兵器だ。そのビームは『ミノフスキー粒子』という粒子を圧縮させて発射する...という仕組みである。
ギリのIS『クァバーゼ』には、そのミノフスキー粒子を作り出し、武器のエネルギー源として用いたり、周囲に散布したりできるのだ。
ミノフスキー粒子は散布濃度を高めれば通信妨害、ただの誘導兵器なら無効化さえしてしまう恐ろしいものだ。
もっとも、人間サイズのISから散布できるミノフスキー粒子は微々たるものではあるが、狭い戦域ならば濃度を高め、その効果を発揮することが可能だ。
「じゃあお前、その気になればこの学校乗っ取れるってことか!?」
「さすがに難しいだろうが...色々と学校の機能が集中している場所を狙えばできんこともないかもな。」
そのためギリは普段ほとんどミノフスキー粒子を散布せずに戦闘している。特に支障はないどころか、むしろレーダーなどは宇宙世紀よりしっかりと機能するのでギリとしてもそちらがいいのだ。
散布したミノフスキー粒子は本来この世界に存在しないものであるため、ギリがISを解除すればそれと同時に消滅する。
なお、ハイパーセンサーは知覚を強化するものであるためミノフスキー粒子の影響は受けない。
「ビーム兵器の開発なんてどこも成功してないって言ってたよなぁ...なんかよくわかんねえけど凄いんだなそれ。
ってかどこが開発したんだよそんなIS?」
「それは機密事項だ。」
ギリが適当に誤魔化すと、一夏もなら仕方ないか、とそれ以上気にすることもなかった。
そしてアリーナに到着する。
「遅いぞ一夏!」
「待ちくたびれましたわよ!」
「ごめんごめん...ギリのISについて聞いてたからちょっと遅くなったみたいだ。」
「へぇ...アスピスさんのISですか...わたくしも興味がありましてよ?」
「まあそれは後でいいだろう。話すと少し長いからな。」
「ああそうだな。」
早速箒が訓練機のIS『打鉄』を展開する。
「そういえば訓練機の許可取れたんだったな!じゃあ早速今から箒との模擬戦か?」
「お待ちなさい!一夏さんのお相手はこのわたくしでしてよ!?」
そう言ってセシリアも『ブルー・ティアーズ』を展開。
「さあ一夏...始めるぞ!」
「お相手しますわ!一夏さん!」
何故か二人で一夏1人を相手にする流れだ。ギリは一夏の模擬戦相手の立場を取り合うんだろうと思っていたので予想外だった。
「ちょっ...待てよ!ギリも来てくれ!」
「これは一夏さんの指導です!アスピスさんには申し訳ありませんが、少し待っていただきますわ!」
「...だそうだぞ?」
「いや待てって!セシリア1人でも勝てるなわからないのに2対1はきついだろ!連携だって鍛えられるかもしれないし、せめて2対2でやらせてくれ!」
「仕方ありませんわね。」
「ならアスピスも早く展開しろ。」
「言われなくてもわかっている。まったくよ...俺は何を見せられているんだ...」
ため息をつきながら『クァバーゼ』を展開するギリ。
模擬戦は暗くなるまで続いた。
「今日はこの辺りで終わりにしましょう。」
「...来てくれてホント助かったぜギリ...お前がいなかったら俺は今頃死にかけてたかもしれない...」
「ふん!お前はもっと体力をつけろ!」
「同感だ。鍛えてないからそうなるのだ!」
「えぇ?」
ギリと箒の言葉にどこか納得のいかない様子だ。
「一夏さん?また後ほど。」
「俺もそろそろ部屋に戻らせてもらう。」
「ああ、じゃあな。」
そう言ってセシリアとギリはアリーナから去っていった。
「我々も部屋に戻るぞ。」
「悪い...もう少し休ませてもらえるか...?結構体力使っちゃったんだよ。」
「仕方ないやつだな。シャワーは先に使わせてもらうぞ?」
箒は少し笑いながらそう言うと、そのまま部屋に戻っていった。
しばらく休んでから、一夏も部屋の近くに行って箒のシャワーの時間が終わるまで待とうと席に座ると、鈴がスポーツドリンクとタオルを持ってやってきた。
どうやら待っていてくれたらしい。
「やっと二人っきりだね...」
「?...ああそうだな。」
「や...やっぱあたしがいないと寂しかった?」
「そりゃまあ...遊び相手がいなくなるのは寂しかったよ。」
「そうじゃなくて...久しぶりに会った幼馴染なんだからいうことがあるでしょ?」
「?...ああ、そうだ!中学の友達には連絡したか?お前が帰ってきたって知ったらすげえ喜ぶぞ!」
「じゃなくて...」
「あ、悪い。そろそろ部屋に戻るわ。箒もシャワー使い終わった頃だし。」
「ほ...箒...?まさか、あんたあの幼馴染と一緒の部屋で!?」
「ああそうだそ?いやー、箒で助かったよ。幼馴染だからな!これが見ず知らずの相手だったら緊張して寝れなかっただろうからな。」
それを聞くと鈴が俯く。
「ん?どうした?」
「幼馴染だったらいいわけね...?」
「え?」
「だから!幼馴染だったらいいわけね!?」
その頃ギリも汗を流し終えていた。
上がってしばらくすると千冬が部屋に来た。
「2組に転校生が来たという話は聞いているな?これで学園の生徒が偶数になったのでお前の自由な一人部屋生活は終わりだ。」
「それは俺にそいつと同じ部屋で過ごせということか?」
「敬語を使えと言っただろう!...それは違う。お前には一夏の部屋に移ってもらうことになった。さすがに男女同室はまずいからな。
部屋割りを考える必要のできたこのタイミングでついでにそこも変えようというわけだ。」
つまりそれは箒と鈴が同室になることを表す。
既に色々と予想できてしまうが...
(俺の知ったことではないな。)
「わかりました。」
「部屋替えは3日後だ。それまでに荷物をまとめておけ。それと、一夏達にも伝えておけ。私はこれから対抗戦に向けた用意で忙しいからな。」
そう言うと千冬はさっさと戻っていった。
そもそも転校生が来るとわかった時点で伝えておけばいいものを...
ギリも面倒くさいが一夏達に伝えに行こうと、一夏の部屋に向かった。
部屋の前に着くと、何故かあの転校生の怒鳴り声が聞こえてきた。
何となく予想はついたギリはため息をつくが、転校生も部屋割りが決まるので丁度いい。
部屋のドアをノックする。
「一夏、入るぞ。」
「あ、ああ。いいぞ。」
返事が返ってきたのでドアを開けると、やはりそこには転校生がいた。
しかも頬に大きなもみじができた一夏に詰め寄っており、箒は何故か竹刀を手にしている。
「...何の用だ?アスピス。」
「俺とお前ら、そしてそこの転校生もだ。部屋割りが変わるから連絡に来た。」
「もっもしかしてあたしと一夏が同じ部屋に!?」
「違う。それでは異性と一緒に住んでいる今の状況と変わらないだろうが...俺がここの部屋に移ることになったんだよ。お前が今一人でいる部屋にはそこの篠ノ之が移ることになる。」
「はぁっ!?」「何だとっ!」
箒と鈴は同時にショックを受けた。
部屋割りの話が出た時点でこうなる展開は誰でも予想できるはずなのだが。
「じゃ、じゃああたしは一夏と一緒どころか...この箒とかいう人と一緒に暮らさなきゃいけないっていうの!?」
「だからそう言っているだろう。そもそも本来男女が同室なのはおかしいことだろうが...」
その言葉を聞いた箒と鈴は見るからに意気消沈した。
が、その様子を気にも留めずにギリは話を続ける。
「部屋割りが変わるのは3日後だ。篠ノ之はそれまでに荷物をまとめておけよ。」
そう言うとギリは返事を待たずに部屋を後にした。
「と、とりあえず!さっきの話に戻るわ!」
「お、おう...」
「こうしましょう!来週のクラス対抗戦!そこで勝った方が負けた方に何でも言う事を聞かせられる!」
「おおいいぜ?俺が勝ったらきっちり教えてもらうからな!」
「そっちこそ覚悟しなさいよ!」
そう言うと鈴も部屋から出ていった。
「...一夏。」
「何だ?」
「馬に蹴られて死ねっ!」
「えぇ!?」
わけもわからず罵倒される一夏であった。
ミノフスキー粒子については色々と曖昧な認識なので俺の解釈が混じっております。
まあこの作品におけるミノフスキー粒子はこういうものだっていうだけです。が、何かしら間違いがあったら、指摘していただけると幸いです。