吐き気が込み上げてくる。
何かで膨れ上がった胃が、何かに押し潰されて、ペシャンコになって、熱い何かが舌の付け根まで迫り上がってくる。
顔に冷たい油汗が浮いて、足が崩れてアスファルトに手をつけた。
ぬるい唾を飲み込んで、それでも熱いモノはそこに居座って、堪えきれなくなって、堪えられなくなって
ゲホッ、
ゲホッ、ゲホッ、ゲホッ、ゲポッ
咳の空気に液体が混ざる
ドビチァ
未消化の刻まれた野菜が、黄色の胃液と混ざって汚くなっている。
跳ねた胃液が顔に付いた。
耳が、鼓膜が勝手に震えて、キーンとなって、何もかも遠くから聞こえた。
空気が足りなくなって、喉の奥で胸の辺りがへんな感じに熱くなる
咳をする筋肉が痙攣して、咳ができなくて、鳴り損ないがグッ、ゲッ、って言う。
詰まっているみたいにゆっくりと酸っぱいものが口から垂れてきた。
酸っぱい液体が鼻に逆流してきて、焼けるような感覚とクラクラするような臭いがする。
吐き出しきれなかったものが、喉の奥につっかえている。たぶん、姿勢が悪かったんだろう。
だから、今度は自分で腹を叩く。
どん、どん、どんっ。
ばちゃ、びちゃ、びちゃ
張り詰めていた息を吐くように、色々なモノを吐いた。
今度は液体が中心で、詰まっているモノを取り除くように洗い流していった。
膝の辺りに冷たい液体が触れる。
楽になったから。これはいい吐瀉物だと思う。
滲み出る唾が口に残るものと混ざるから、そいつをペッペッと掃き出す。
無意識下のとある数値がある一定の閾値に膨れ上がったから、立ち上がる。
手を掲げ、思っいっきり息を吸う。
気道に空気が入っていく。酸化の肺に空気が隅々まで行き届いていく。
塞がって占領されていた道が広がっていって、たとえタバコの副流煙でも清々しい気分になれるだろう。というかなる。
口が焼けて鼻が詰まってる。ので、肩鼻を抑えてフンっと強く鼻を吹く。何か出ていった。
大分スッキリした。
世界で一番うまい空気は、多分この時吸うモノだろうと勝手ながら勝手に思う。
白いセーラー服は、溶けかけの朝食と黄色液体がついて乙女の肌にぴっちり張り付く。
今すぐに脱ぎ捨てたいし、切り捨てたい。
「あーあ、やっちまったなぁ、コレは。」
空を見る。
仰ぐというより髪間から覗けるモノをそっと見る。
モノクロというより、空虚というフィルターで灰色一色のこの街で、やはり空だけは色がついて綺麗だ。
遠い所にあるのがとても難点だけど。
鞄は放り投げていたので無事だった。
「ぇーと、何処やったっけ。」
くしゃくしゃの教科書、直したプリント、何度も読んだ雑誌、本、その他諸々のゴミの底
「お、あったあった。」
黒色塗装の細いアルミ缶
こーひー、である。
最近リニューアルしたらしいそいつは、何とプルタブが取ってと成って、蓋を剥ぐ?もぎ取る事ができる。もぎ取れる。唇に傷が付きそうだな。
かしゅっ。こうなんかこう、名称し難いべりべりって音。
腰に手を当て、溢すのもお構いなく流し込む。おじさん。不器用そうな印象通り、不器用なのである。
今度は上半身が濡れていく。
え〜、半分くらい溢れてない?500ミリを買って良かったや。
ぐふぅ。
敏感になった口が刺激されて咳が出るも、肺の方へ抜けていく。
不器用なんだか器用なんだか、どっちなんだか。
いつも、缶の底に溜まる独特の金属の味が、胃液と混ざって良いアクセントになる。
訳ないだろクソ不味い。
コーヒー豆の匂いは、胃液の前では無いも同然だ。
そもそも、缶コーヒーの顧客はそう言うモノを求めるのだろうか?個人的にはエナジードリンクの代替品としてカフェインを求めているヤツが多そうだが
クソマナー違反だけど、お口でクソくちゃくちゃして混ぜ込み、飲み込む。
誰だってクソ美少女のクソ口がクソ臭い方がクソ嫌だろう。
美少女がクソクソ言うのも嫌だろうけどさ、
ふいーっ。っと、思わず銭湯のおっさんらしくなってしまうのも、私に罪はないと思う。
液体を枯らして鞄に放り込む。
こんなんだから汚れるんだよなぁ。
ハンカチで、取り敢えず色々撒き散らさないように拭えるものは拭う。
うん。街中にいたら二度見三度見ポリスメン間違い無しだけど、まあ近場なので問題なし。誰にも出くわさないさ。
そりゃ当たり前の事なんだけど、背中側は綺麗なので鞄を背負う。
うん。めちゃくちゃスッキリした。後はシャワーを浴びれば完璧だ。
できないんだけどさ。
さてさて、じゃあじゃあ、いじめられに行きますか。