□王都アルテア 【
「ふぅ、やっぱりデンドロの日光は綺麗ね。リアルじゃ見れないものだし」
私はごく一般的な<マスター>であるアオイ・ヒュウガ、今日は王都にある小さな公園のベンチで日光浴をしながら《ファイアートーチ》の魔法で小さな火球を創り出して弄んでいた。
この魔法は火球を自分の周辺に発生させて主に松明の様に周囲を照らすのが目的の火属性魔法なのだが、火であるので当然触れればダメージがあるので私の<エンブリオ>【日天鎧皮 カルナ】に光熱ダメージ蓄積を行う為に使っている。
「【カルナ】の《日天吸畜》には自分のMPで発動した火属性魔法を自分にぶつけるのが一番手っ取り早くエネルギーをチャージ出来るけど、街中で攻撃魔法をブッパする訳にもいかないから。ダメージ量は低いけど《ファイアートーチ》を自分に当て続けるのが街中でのチャージ方法になるのよね」
まあ人前だと街中で火属性魔法を使うだけで騎士とかに職質されそうだからこうして郊外に人気がない公園にいる訳だけど。フィールドなら自分ごと火属性魔法でモンスターを焼くのでも良いけど、それも場所を選ぶしね。
ただ【カルナ】唯一のスキル《日天吸畜》は蓄積した光熱エネルギーをMP・SPの代替として使えるんだけど、それ故にMPとSPのステータス補正は最低値だから自前のMPだと魔法をポンポン使える訳じゃないのがネック。
「蓄積したエネルギーを消費した強力な火属性魔法を使えて、尚且つ光熱ダメージによる自滅もない【紅蓮術師】は【カルナ】と相性はいいんだけどね。ただステータス補正が物理寄りだから物理型ジョブを入れるのもアリか。MPは理論上幾らでも確保出来るし「なーに黄昏とるん?」ひゃわぁ!?」
ちょっとジョブビルドを考えていた所でいきなり首筋に冷たい物が押し付けられて思わず変な声が出てしまうも、咄嗟に飛び退きながら声が掛けられた方向を見ると、そこには黒髪黒目で教会の法衣の様な衣服を着た外見だけなら美女と言える人物が両手にキンキンに冷えた飲み物を持って立っていた。
「いやーかわいい声やったねアオイちゃん。一回待ち合わせ中の相手にやってみたかったんや〜」
「別に待ち合わせてはないでしょうが」
飲み物の片方をこっちに差し出しながらニヤニヤ笑ってるコイツの名前は扶桑月夜、宗教団体<月世の会>の教祖であり不本意ながら私はリアルで<月世の会>と関わりがあるので面識があるのだ。
まあ私が関わりあるのは“医療法人”としての<月世の会>の方で、両親がそこに所属している医療従事者で私も少しだけそこの手伝いをしたりしているのだが、医療法人も宗教法人も扶桑一族が運営していて“根本的な目的”は同じなので繋がりが強い。
「まあ喉が渇いたから飲み物は貰っておくわね」
「毎度あり〜。そこの売店で売ってたヤツやけど」
「結構美味しいわよ、それとアオイも久しぶり」
「ああカグヤも来てたのね。……て事は永仕郎も……いたわね」
よく見るともう1人天女の様な服装で同じ飲み物を持ったの女性もおり、彼女は月夜の<エンブリオ>であるTYPE:メイデンの【カグヤ】で、更に周りを見てみると公園の木陰に秘書の月影永仕郎も飲み物片手にこっちをこっそり見守っていた。
ちなみにコイツ等の名前と外見はリアルと全く同じというネットリテラシーのカケラもない有り様だったりする。本物の現実視が出来るデンドロでリアル顔でやるとか頭おかしいんじゃないかしら。
「酷いわぁ、これでも考えがあってこの姿にしとるんよ? それにリアルとの違い言うたらアオイちゃんもそんなに変わらんやん、名前とか」
「名前は確かに本名のもじりだけどアンタ達と違って外見はちゃんと変えてるわよ。髪と目と皮膚の色を黒髪黒目純日本人風に変えて顔や体型も少し弄ったし」
「まあ確かに体型は少し変わっとるな。特に胸部分が盛られ「《ファイアーボール(弱)》」熱っつぁ!?」
失礼な事を言った女狐のデコに極小の火球を叩き込む、ウチのタマのお肌に傷が〜とか抜かしてるけど最近【
ちなみに私の本名は
外見に関しては私は生まれつき白髪赤目で真っ白な肌の日光を浴びるだけで肌が焼け爛れる“重度のアルビノ”なので、黒髪黒目で黄色人種の肌色にするだけでも殆ど別人に見えるし。
「それで一体なんの様なの? いつまでも蹲ってないでさっさと答えなさい」
「いやこれはアオイちゃんが……ハイ、なんでもないです。……んー、別に特に用があった訳や無くてたまたま見かけたから声を掛けたんやけど、強いて言うなら“そっちのお仕事”の進捗確認かなぁ?」
「……<Infinite Dendrogram>が
まずどちらの<月世の会>も終末期医療、回復が見込めない患者に対する精神的・身体的ケアが主目的の宗教団体及び医療法人であり、その一環として“現実から五感を移せるVR技術”の研究もしてる。
そしてウチの両親は特にVR技術の医療転用を研究している医療従事者であり、私もその手伝いとしてVRゲームのプレイをして主にゲーム的な内部情報を調べるアルバイトをしていたりする。
私はアルビノだからまともに外で遊べなくて基本的に趣味が室内での読書かゲームだからこれでも多くのゲームをプレイしていて、その経験から終末期医療に向いている内容のVRゲームの調査を手伝ってる感じ。
「五感を完全に移せるってだけで終末期医療に与える恩恵は絶大でしょうね。少なくとも一ヶ月ぐらいプレイして現実の肉体に異常が出たって話は聞かないから、この辺りのシステム周りは大丈夫じゃないかしら。システム方面は私の専門じゃないけど」
「アオイちゃんの専門はゲームの内容の調査やもんな」
「そうね。……そしてデンドロというゲームが終末期医療に適しているかと言うと、まあ間違いなく<月世の会(宗教)>の『枷に囚われた肉体より離れ、真なる魂の世界に赴く』『自由なる世界で、己の魂の赴くままに自由を謳歌せよ』に完全に当て嵌まるぐらいにはリアルな“
「まあそうやろうね」
この<月世の会(宗教)>の教義も元は生きる事すらも困難な重篤な症状の患者に生きる希望を持って貰おうと言う気晴らしが目的であり、それこそ生きる事に希望を見出せない患者にはそんな教義でも救いになる。
その点から見ると<Infinite Dendrogram>と言うゲームは誰でも特別な力のある<マスター>になれる、多くの終末期医療を受ける患者にとって“リアルよりも遥かに生きやすく自由を謳歌できる世界”であると言えるでしょう。
「私も現実では出来ない“日光の下で思い切り遊び回る”が完全なリアリティの下で出来るからデンドロやってる面もあるしね。もっと病状が酷い人達にとっては理想郷みたいなゲームになるんじゃないかしら。少なくとも終末期医療に齎される恩恵は絶大でしょう」
「せやね、<月世の会>でも此処を『真なる魂の世界』として扱う事になると思うわ。本拠地もこっちに移すかもしれへん」
「私は宗教法人の方には入ってないから何とも言えないけど。……まあ、ゲーム的に言うと余りにも“リアル”であるから現実と比べてデンドロを本当の世界と看做す人も出て来そうなのが懸念点になるけど」
実際、デンドロは現実と全く相違無い五感に人間と同等の思考能力……“心”があるティアンが住む世界であり、現実よりも特別な<マスター>であるこっちの方が良いと思う人は多いでしょうね。
何十年も前から“異世界転生モノ”がそれなりに楽しまれている事から分かる通り、人間は此処ではない別に何処かで再スタート(チート能力付き)に憧れるモノ、私でも外を自由に歩けるこの世界を相当に気に入っている自覚はある。
まあ私は昼間に外に出なければ生活に支障はないし、両親共に医療従事者で理解があって私を愛してくれてるから生活環境に不足はなく、だからこそ私は現実の家族よりデンドロを優先するって事は無くてあくまでデンドロは“面白いゲーム”として扱うけど。
「リアルで生きる事だけでも苦痛な信者が単なる気分転換やメンタルケアの域を超えてこっちを優先する可能性は十分あるでしょうね。……単なるゲームだと割り切れればいいけど、とてもただのゲームとは思えない部分もあるのは事実」
「やっぱアオイちゃんは真面目やね。色んな事を考えとるし」
「このぐらいはアンタも考えてる事でしょうが。……あんまりゲームにのめり込むとサ終した時に辛いかもって将来的な懸念や、後はこっちでメンタルに来る経験をする可能性もある」
まあ将来的な懸念点はあるけどデンドロが終末期医療に齎す恩恵は絶大だから今後は大いに活用される事になるでしょうね。このデンドロ……真なる魂の世界にこそ生きる希望を見出す、或いはそうしなければ生きる事も出来ない程に追い詰められた人は沢山いるもの。
出来ればこの技術を転用して独自の終末期医療用のVRが作れるのが理想だけど、デンドロの開発元に技術協力の要請をしても無しの礫だったって母さんは言ってたから期待薄か。
「となるとこっちで良い感じの医療用環境、デンドロ内部で信徒や患者のフォローが出来る仕組みを作った方が良い、と言うか<月世の会>の本拠をデンドロに持ってくるのはその為でしょうに」
「まあそういう理由もあるにはあるかなぁ。将来的にはクランとして<月世の会>を作ろうと思っとるけど、まだ色々と先立つモノが足りんくて今は下積みの段階やね」
「ゲーム的にはクランを作るのには登録さえすればいいけど、出来ればホームとかは欲しいわよね」
「そうそう、将来的には王国の国教を<月世の会>にして王国トップのクランになってでっかいホームで左団扇や〜」
なんか宗教戦争とかになりそうね。いや<月世の会>自体が宗教法人でデンドロ内でも布教していくとなるとそうなるのか? 政府に危険視されて弾圧されるルートな気もするけど。
「そういう訳で今日はウチと一緒にクエストやで! クランを作るにしてもお金が必要やしな! 今はデンドロを入手出来た信者達で手分けして資金稼ぎしとるけどまるで手が足りへんし」
「まだ手に入ったハードの数が少ないものね。……と言うか自然に私も<月世の会>の一員になる形で話が進んだわね。まあ私も医療方面の手伝いを兼ねてデンドロをプレイする事になるから入らざるを得ないんだけど」
「そう言う事情はなくてもウチがあれこれしてアオイちゃんをクランに入れる予定だったけどな」
「コイツは本当に……。言っとくけどクランに入るのは良いけど私は<月世の会>の教義に従う訳じゃないからね。あくまでデンドロがゲーム兼アルバイト先よ」
まあ月夜の作るクランに入る事自体はそこまで嫌ではない……なんかこっちをめっちゃニヤつきながら見てくる女狐のツラを見てるとクランに入る事を考え直したくなって来たわね。
そんな光景をニコニコしながら見てるカグヤと永仕郎を睨みつつ、私達はクラン設立を目指しての資金稼ぎの為に冒険者ギルドへ割りの良いクエストを探しに行くのであった。
◇
まあそう都合よく高収入なクエストが見つかる訳もなく、とりあえず<サウダ山道>のモンスター討伐系クエストを受けて都合が付いた何人かの<月世の会>関係者<マスター>と共に馬車に乗って山道を進んでいた。
ちなみに今乗っている場所は馬が八本足の機械馬で馬車も機械的なデザインと中世ファンタジーなアルター王国としては珍しいが、そもそもこの馬と馬車は<月世の会(予定)>の<マスター>の<エンブリオ>なのである。
「うーん、やっぱ長距離移動には移動手段は必須やね。ユーナちゃんとリーナちゃんがおって助かったわ」
「ユーナの【スレイプニル】はどんな悪路でも走破出来るからね。私の【パエトーン】も引いてくれるし」
「この子は走ることしか出来ないからリーナちゃんの【パエトーン】がないと戦闘力不足なんだけどね」
馬車の御者を務めている少女が【
その隣に座っている少女は【
それぞれ【スレイプニル】は騎乗時の高い走行能力と悪路走破能力を持ち、【パエトーン】は接続した乗り物の能力を共有して同じ様に走れる特性があり、今は【パエトーン】を輸送形態にして私や月夜を運びながら山道の悪路を【スレイプニル】の力でかなりの速度で走行している。
「まあ愛馬に乗ってフィールドを駆け回るのは楽しいですよ。凄い爽快感があります」
「私の【パエトーン】は自分では動けないのよね。将来的にはユーナが居ない時でも動かせる様にテイムモンスターでも手に入れたい所ね」
「確かにこう外を駆け回ると騎兵も良い気がして来ますね。私もいつか自分の騎獣に乗って走ってみたいと思えてきましたよ」
そんな双子と話している筋肉質な禿頭の男性は【
この3人と私と月夜と永仕郎の合わせて6人が今回のパーティーメンバーになり、既に何体ものモンスターを討伐しているがクエストのターゲットのモンスターがまだ見つかっていないのでフィールドを走り回っている。
「それで今回のクエストのターゲット【グラフティング・トレント】だけど中々見つからないわね。
「目撃情報では王都南側、この<サウダ山道>の森林地帯という話ですが見つかりませんね」
「トレント系は樹木に擬態する能力があるって話を聞いたから隠れてるのかな。月影さんなら探せるかな」
「私も【
その【グラフティング・トレント】を探して森林部周辺を探し回っているのに一向に見つからないので、私達は一旦馬車から降りてより詳しく木々を調べるためぬ徒歩で森林の奥を探す事にした。
流石に馬車の高速移動で獣道もない森の中を突っ切るのは危ないし木々を一個一個見るのも大変だからね。リーナも【パエトーン】を人員輸送用の馬車型から二人乗りの小型
「とりあえず接ぎ木されてる木を見つければ良いんだよね。……接ぎ木されてる木とか今まで見た事ないけど」
「その木の種類とは別の植生の枝が生えてる木とかを見つけて調べれば良いと思うわよ。……あの針葉樹の木に広葉樹の枝が生えてる木とかね。《ファイアーボール》」
そう言いながら私は目に付いた枝の一本が違う木に弱めの火球をぶつけてみると、直後にその木が震えて地面から根を引っこ抜き幹に顔の様な紋様がある動く木のモンスター【グラフティング・ヤングトレント】となって襲い掛かって来た。
例の【グラフティング・トレント】は仕組みとしては樹木オブジェクトに自分の身体の一部を寄生させて、それを自分の分体モンスターへと変化させる性質らしいわね。
『AAAAAAAA!!!』
「くっ、ユノー!」
「ふむ、援護しましょう」
トレントは太めの枝を鞭のようにしならせて襲い掛かって来るが、自身の<エンブリオ>であるユノーを盾と槍に変化させたシジマが枝による打撃を防ぎ、そこに永仕郎が短剣を構えて斬り込んでいく。
どうも【ヤングトレント】という名前通りに戦闘能力は下級モンスターよりやや強い程度の様だが、植物系モンスターは物理的な耐久性に長けている事もあり物理攻撃メインの2人では多少手間取っている。
「それでもさっさと倒すべきかな。私が魔法で……」
「待ってアオイ、私達でやるわ。パエトーン
そう言ったリーナが【パエトーン】後部に搭載していたサブアーム、先程までは荷台付き輸送ユニットを保持していた機械腕を前方に稼働、同時に虚空から二門の大砲型パーツを呼び出してアームに接続する。
事前に聞いた話だとあれば騎乗しているマスター覚えている攻撃魔法スキルを増幅発射するユニットだそうで、大砲部分に備えられたグリップを彼女自身が保持してサブアームの補助によって軽々と砲門を動かして【ヤングトレント】へと向ける。
「2人共離れて! 喰らいなさい《ファイアーボール》セット、ファイア!」
『AAAAAAAA!?』
そうしてシジマと永仕郎が離れた所にリーナの大砲から通常の《ファイアーボール》より数倍以上大きな火球が高速で発射され、外れる事なく【ヤングトレント】へと命中して焼き払った。
「よし! これでクエスト達成……にはならないよね」
「リーナちゃん、アレは【ヤングトレント】って名前だったから……」
「今回のターゲットである【グラフティング・トレント】は亜竜級相当のモンスターだと言う話よ」
「つまりアレは親玉によって生み出された分体の一体って事やな。……それにどうやら“歓迎”の準備は出来とるみたいやね」
月夜がそう言った直後、辺りにあった木々の幾つかが先程と同じ様に地面から根っこを引き抜いて【グラフティング・ヤングトレント】へと変質し、更に森の奥からも【ヤングトレント】が複数体現れて、更にはそれらを引き連れた一回り大きな木もとい【グラフティング・トレント】まで出て来た。
多分、ここらの森一帯が【グラフティング・トレント】の縄張りで多くの木を自分の分体に変えていて、一体でも分体と交戦するとそれを察知して総がかりで襲いかかって来るギミックモンスターって感じかしら。
『『『『『AAAAAAAA!!!』』』』』
「うわー、めっちゃ敵おるわー。超ピンチやー」
「棒読みで何言ってるのかしらコイツ。良いからさっさとやりなさいな、対軍戦闘はアンタの十八番でしょうが」
「うわーんアオイちゃん人使い荒いわー。……カグヤ」
『分かったわ。《月面除算結界》』
月夜が手を振るうとそれに合わせて周囲一帯が“夜”へと変質する。これが<月世の会>教主である扶桑月夜の<エンブリオ>【カグヤ】の固有スキル《月面除算結界》、一定領域内を“夜“に作り変えて範囲内の敵対対象に強力なデバフを付与する恐るべき能力である。
敵対対象の合計レベル次第ではレジストされるらしいが既に第四形態、“<上級エンブリオ>”に進化しているカグヤなら下級モンスター程度であれば全能力を半減以下まで引き下げ、ボスモンスター相手でも数割はステータスを削れるとは本人の弁。
『『『『AAAA……AAA……A……』』』』
「数が多いだけならウチとカグヤのスキルはよく効くわー。それじゃあ後はやっちゃってなー」
「もっと具体的に指示を出しなさいよ。……シジマは悪いけど【グラフティング・トレント】を足止めして。その間に他のメンバーで【ヤングトレント】を殲滅するわ。ユーナとリーナも走り回っていい、数が減ったらシジマの援護に回す」
「「「了解!」」」
ウチの教主様の指示が雑だったので私が分かりやすく指示を出す羽目になったが、それでも重度のデバフが掛けられたトレント達であればこれで十分。
ユーナとリーナは戦車で走り回りながら【ヤングトレント】を轢き潰し、同時に強化された攻撃魔法を叩き込んで敵の数を減らしており、ボスの足止めを頼んだシジマも盾で相手の樹腕を受け流しながら凌げている。
シジマが負ったダメージは月夜が回復魔法で癒しているので戦闘続行には問題なく、そんな月夜を狙うモンスターは永仕郎と私が迅速に排除する事でデバフと回復の支援は維持される。
「広域デバフは雑魚敵戦には本当に有用ね」
「せやろー? もっと褒めてくれてもええんやで?」
「わーすごいすごい(棒読み) ……ちょっと回復途切れているわよ」
「人使いが荒いわ〜。後は結界の維持と合わせてMPがカツカツなんやけど」
まあ強力な広域デバフスキルだから燃費もそこまで良くないみたいね。とりあえず向かって来た【ヤングトレント】に《ヒート・ジャベリン》を叩き込んで焼き払いつつさっさと敵の数を減らしましょう。
そうして暫く戦っていると敵の数が漸く減って来た。【グラフティング・トレント】は自分の身を削って接ぎ木して分体を増やす特性上、分体を作るごとに疲弊するのでそこまで分体の数は多くないと見てたけど当たりだったか。
「残りの【ヤングトレント】はユーナとリーナに任せて私もボスを相手にするわ。……シジマ! 準備は?」
「“印”は刻み終わりました! 起動します!」
『AAAAAAAA!?』
シジマ・イチロウの<エンブリオ>である【ユノー】の特性は引力刻印、槍と盾に触れた場所にそれぞれ別の刻印を刻んでスキルを軌道すると同時に指定した槍と盾の刻印間に引力を発生させられる。
例えば相手の身体と周囲のオブジェクトに印を刻めば身体に刻んだ印がオブジェクトに引き寄せられて動きを阻害出来る、要は変則的な行動妨害系スキルであり今も【グラフティング・トレント】の幹部分に刻まれた印が近くの木に引き寄せられる事で相手の動きが大きく鈍らせている。
「教祖のデバフと合わせれば亜竜クラスであっても一時的に動きを封じるぐらいは出来ます! アオイさん!」
「動きを封じているなら魔法も当てやすいわね。【カルナ】エネルギーをよこしなさい、《パイロ・ブラスター》!」
そこに私は【カルナ】の《日天吸畜》で蓄積されたエネルギーの幾らかをMPとして解放、それを使って【紅蓮術師】の炎を圧縮してビームの様に撃ち出す上級魔法を使用、放たれた熱線は動けない【グラフティング・トレント】を胴部を焼き貫いたのだった。
そしてボスがやられて統率が取れなくなった分体【ヤングトレント】は最早敵ではなく、逃すと成長期して新たな【グラフティング・トレント】になるケースがあると聞いていたのでキチンと全員駆除して戦いは終わったのだった。
「よっしゃ、これでクエストクリアやー! それじゃあ王都で報酬を……」
「その前にやる事があるわ。……流石に森林地帯で火属性魔法を使い過ぎたわね」
「あ、やば」
さて問題、周りが木々ばかりの森林地帯で火属性魔法をブッパすればどうなるでしょうか? 正解は当たりの樹木オブジェクトに火が燃え移って森林火災一歩手前な現状です。
これだから樹木系モンスターを森林内で相手にするのは面倒なのよね。火属性が弱点だけど下手に炎攻撃を使うと周りに燃え広がって自分達の首を絞める。
「あわわ、どうしましょう」
「ちょっと調子に乗って火属性使い過ぎたか。えっと氷属性魔法で温度を下げれば消化できるかな?」
「……いえ、周りの炎は私が処理するわ。《日天収奪》」
そのスキルを使用した私が手を掲げると周囲の木々を燃やしていた炎から光と熱エネルギーが奪われて消化され、そのまま燃えている木に近付いてエネルギーを吸収して消化する事を繰り返す事で周囲一帯の森林火災は消し止められた。
このスキル《日天収奪》は【カルナ】が第四形態に進化した時に習得された《日天吸畜》の派生スキルであり、光・熱エネルギーによるダメージ吸収能力を拡大、自分の中心とした一定範囲内の光・熱エネルギーを吸収して【カルナ】に蓄積するアクティブスキルである。
「アオイちゃんそんなスキルまで持っとったん? そんなスキルあるなら公園で1人火の玉を自分に当て続ける必要ないんちゃう?」
「言ってないからね。……それとこの《日天収奪》はそこまで便利なスキルじゃないもの」
まずアクティブスキルなので相応のMPを消費しなければ使えず、更に周囲の光・熱エネルギー吸収はダメージ判定になる光熱を吸収する能力を拡大してるからなのかダメージになるぐらいのエネルギーまでしか吸えない。エネルギーを吸っても常温以下になり凍結したり可視光が消えて暗闇になる事はない感じ。
だから今の様に周囲に一定以上の熱源や光源がないと消耗するMP以下のエネルギーしか吸収出来ずに収支はマイナスになるので、普通に【カルナ】へエネルギーをチャージするなら自前のMPを使った火属性魔法を自分に撃ち込む方が効率的になる。
「流石にこの為だけに森林火災とかを起こす訳にも行かないから、今みたいに戦いの余波で起きた火災を鎮火するのが主な使い方になるかしらね。修得したばかりのスキルだからもう少し検証は必要でしょうけど」
「ふーん、吸収出来る熱量次第やけど炎や光を使う敵への対抗手段としても使えるんやない?」
「【カルナ】のダメージ吸収の拡大なら吸収出来る熱量にも限度があるだろうから相手と状況次第ね。単に光や熱攻撃を無効化するならパッシブスキルの《日天吸畜》で十分ではあるし」
まあ範囲内のエネルギー吸収なら上手く使えば味方を守る事も出来そうね。まあ吸収出来るエネルギーの取捨選択は出来なかったから味方の光・火属性魔法も吸収してしまうと思うけど。
「とりあえず森で火を使ったなら後始末はしっかりしておくのがマナーよね。放火だけして放置するとか傍迷惑な事はしないわ」
「せやねー、ウチら<月世の会>はクリーンな宗教団体として売り出していく方針やからな」
クリーンな現実逃避型宗教団体(本拠地をVRゲーム内に移動)って側から見るとどう見えるのかしらね。実際にはターミナルケア患者の受け皿だから善良な組織にならないと困るんだけど。
まあ少なくとも<月世の会>本来の理念に基づくクランにはなるとは思うんだけど、月夜自身が結構ふざけるタイプだからなぁ。私も協力はするけどクランの立ち上げと運営は大変になりそうね。
◯アオイ・ヒュウガ
(@_@)<アルビノで日中外に出れない事で磨かれた豊富なゲーム経験を見込まれて室内で出来る仕事として両親からVR技術の試験バイトを勧められた
(@_@)<生まれつきの障害がある事から終末期医療患者側の立ち位置もある程度理解しておりゲーム経験を含めたその意見が参考にされる事も多い
(@_@)<同時に現実から逃避してはいないので宗教団体側と医療法人側の両方の視点を持てる貴重な<月世の会>クランメンバー
(@_@)<【日天鎧皮 カルナ】は人工皮膚型の置換系アームズでスキル《日天吸畜》は自身とその装備品への光・熱エネルギーによるダメージを吸収する
(@_@)<更に蓄積したエネルギーをMP・SPの代わりに使う事が出来るが、一度に吸収出来るダメージ量には上限がある
(@_@)<ただ第四形態現在でも上級奥義程度なら余裕で吸収可能でパッシブなので持続的な低威力の光熱ダメージや高温環境には強い
(@_@)<第二スキル《日天収奪》は《日天吸畜》の効果範囲を拡大するスキルであり吸収出来るダメージ量の上限は同じ
(@_@)<一定範囲内の光熱ダメージを吸収するので範囲内に入った炎攻撃からエネルギーを吸収して効果を弱めるみたいな事も出来る
(@_@)<本人の日光下で活動したい願望がデンドロでは普通に叶ったので光熱の無効化よりも利用するする方向にスキルが発現している
◯ユーナ・シュガー
(@_@)<本名は佐藤結奈、大人しめで真面目な性格で生まれつき双子の妹と共に免疫異常を患い無菌室でしか生活出来ない<月世の会>信者
(@_@)<【迅速駿馬 スレイプニル】はTYPE:チャリオッツ・ガードナーの八本足の機械馬でマスター騎乗時の強化と悪路走破能力を持つ
(@_@)<チャリオッツ混じりなので騎乗状態でないとスキルが機能しない“マスターを乗せて走る”事に特化したガードナー
(@_@)<攻撃手段は突撃か踏み付けぐらいだがが騎乗時強化スキルで同形態の平均的ガードナー以上のステータスとなって敵を轢殺出来る
◯リーナ・シュガー
(@_@)<本名は佐藤利奈、明るく活発な性格で双子の姉と同じ免疫異常を患い普段は姉と2人でゲームをしている<月世の会>信者
(@_@)<【貸用戦車 パエトーン】はTYPE:チャリオッツ・アームズで補助腕で接続した乗り物や乗員の能力を借り受ける
(@_@)<チャリオッツだが他の乗り物に引かれる事が前提で自分で動く事が出来ないが代わりに豊富な兵装を使い分ける事が出来る
(@_@)<双子どちらも“外で走り回りたい”と言うパーソナルから<エンブリオ>が発現しているが自分で走る姉と姉について行きたい妹で別れている
◯扶桑月夜
(@_@)<本編でも大活躍しているみんな大好きキツネーサン
(@_@)<医療法人側のアオイには一般的な信者とは異なる顔を見せている
◯月影永仕郎
(@_@)<アオイと会話しているキツネーサンは楽そうなので魔法を撃たれても邪魔にならないように見てるだけ
◯シジマ・イチロウ
(@_@)<詳しくは原作6・7巻参照
(@_@)<まだ騎獣は手に入れてないので騎兵系統ではなく自分の<エンブリオ>に合わせて【槍士】と【盾士】を取っている段階