「さてまずはベルくん、君は魔法は呪文を詠唱して発動させる物だって知ってるよね?」
「はい、神様」
「通常、呪文は魔法が発現したらステータスに一緒に表示される…フィル君みたいにね、所が君の魔法には速攻魔法という補足以外に表示がない…これは僕の推測だけど、君の魔法は詠唱がいらないのかも」
まぁ明日ダンジョンで試し撃ちてまもしてくるといいさと 笑うヘスティア様に、明日…と残念そうなベル。
「大丈夫、心配しなくても君の魔法は逃げたりしないぜ?」
深夜、こっそりとベルがホームを抜け出して、魔法の試し打ちに言ったことを俺もヘスティア様もまだ知らない。
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朝目が覚めるとベルがソファでシーツに包まって泣いていた、言葉を繋げると…また逃げちゃった、僕のバカ、あの人?怖い夢でも見たのか?
ヘスティア様もそう思ったのか昨日読んだ本のせいだな?とベルが読んでいた本をパラパラめくり、いきなり顔を青ざめさせて俺が読んだ本も乱暴にめくり始める。
ヘスティア様、それ借り物なんですが…。
「…嘘だろ…これ魔導書だ!」
「グリモア?」
ヘスティア様は本をパシリと叩くと説明を始める、グリモア読むだけで資質に応じた魔法が発現する本…言っちゃえば、魔法の強制発現本さ!こんなの2冊もどこで手に入れたんだい?と項垂れた。
「酒場で借りたんです…誰かの忘れ物だから暇ならよんでみたらって…」
「誰かの忘れ物!?」
あちゃー…と頭に手を当てるヘスティア様にベルがどうかしたんですかと尋ねる、俺は本屋でグリモアについて聞いたことがある…こいつはまずい。
「…ベル、いいかよく聞け…グリモアはな1度でも人が読むとそれっきり効果を失う…それゆえ値段はヘファイストスファミリアの1級武器並の値段かそれ以上だ…弁償は絶望的だ…それが2冊も」
今にも気絶しそうだ…とりあえず謝罪には行かなくてはならないが、弁償…出来れば考えたくないのが本音だ。
「…いいかい2人とも、君たちはこの本を読んでいない!そういう事にするんだ…後は僕が何とかする、任せて起きたまえ」
そう言って2冊の本を持ってどこかに行こうとするヘスティア様を必死に止める、証拠隠滅は罪だ!
「駄目ですよ神様!」
「止めるな2人とも!下界には綺麗事じゃすまない事も沢山あるんだ!世界は神よりも気まぐれなんだぞ!」
「「こんな時に名言産まないでください!!」」
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俺とベルは今、豊穣の女主人にて謝罪の真っ只中にある。
知らなかったとはいえ、数億の魔導書を2冊も消費してしまったのだ、しかも他人の忘れ物を!
シル嬢には大変な事になりましたね…と他人事のように言われたが、元を正せばシル嬢も無関係ではない。
しかしミヤさんからは忘れるように言われただけだった、置いていく方が悪いのだと。
さすがにそんな訳にも行かないので、持ち主が現れたらできる限りの事をしたいと伝えて欲しいと言ったが…ミヤさんはとても嫌そうだ、まるで持ち主に心当たりでもあるような…。
そんな訳ないか…
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アーデ嬢との待ち合わせ時間、まだ彼女は来ていないようだ。
「リリ、まだ来てないのかな?」
「近くには来ているんじゃないか?」
噂をすればなんとやら、近くの茂みに大きなバックパックを見つけた、アーデ嬢の物に似ていたので近寄るとアーデ嬢は何やら冒険者と揉めているらしい。
止めに入ろうとすると、いつだったかパルウムの少女を追いかけ回していた冒険者が現れる、もしかして幼女趣味の変態か?
「おまえ、あのガキとつるんでんだろ?なら何もしらないわけじゃねぇよな?…あぁ、とぼけなくていいぜ?お前らも俺に協力しろ…一緒にあいつを嵌めるぞ…」
腸が煮えくり返る、あのいたいけな少女を嵌める?
幼女趣味では無く冒険者間の諍いのようだ、この冒険者もあそこの狸親父もアーデ嬢から何かを奪い取る気なのだ。
その肩棒を担がせようと今、俺たちに接触してきた。
ふざけるな!一冒険者として、男として、そして騎士として見過ごせな…いや…騎士ってなんだ、この間のベルの発言からか変な考えにシフトしてしまった、とにかく答えは。
「「断る!絶対に嫌だね!」」
冒険者の男は舌打ちをしてどこかへ去っていく、アーデ嬢は無事だろうか?ちらりと見ればアーデ嬢はベルのすぐ後ろにいた。
「リリ、いつからそこに?」
「…あの冒険者様となんのお話を?」
「世間話だ、それよりアーデ嬢は大丈夫か?絡まれていたろう?ギルドに変質者として届出を出すなら力になるぞ?」
「…大した事はありませんよ…さっさと行きましょ」
その日の探索はどこか気まずいまま終わってしまった、帰ったらヘスティア様に相談しよう。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「なるほど、話しはわかった、君たちはそのサポーター君を助けたいと…」
「はい、リリはどうやら悪い冒険者に狙われているみたいで…少しの間でも匿ってあげられたら…と」
「…ベルくん、今の君たちの話を聞く限り、彼女はどうもきな臭い…考えてみてくれ、君は本当にナイフを無くしたのかい?冒険者に絡まれていたのもそうだ、彼女は何かを隠している」
ヘスティア様が真剣な面持ちで俺に向き直る、フィルくん…君もベルくんと同じ意見かい?そのサポーター君は本当に信用にたる人物なのかな?と俺たちを心配して、あえて言いづらいことを言ってくれている、その気持ちは嬉しいが…でも。
「神様…」
「ヘスティア様…」
この選択に後悔はない。
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「え?10階層に?」
「はい、今日はそこまで行ってみませんか?お二人の実力なら問題ないかと!」
「でもなぁ…この前もリリの魔剣に助けられたし、それに10階層には…」
そう10階層からは大型のモンスターが出る、オークやインファントドラゴンなどだ、ホブゴブリンなど小型のモンスターも出るし自然の武器庫と呼ばれるランドフォームがそこかしこに生えている。
「お2人なら問題ありません!昨日見せて頂いた魔法だって凄かったですし!11階層まで降りたことのあるリリが保証しますよ!」
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「リリの提案を聞いて下さりありがとうございます」
「うん…まぁ…10階層もいずれ行かなきゃならないしね、いい機会だったかも…ありがとうリリ」
「いえいえ!それじゃ行きましょ!お二人とも」
10階層に到着したが霧が深いうえにランドフォームが思ったより多い、だが処理している暇は無さそうだ。
出現したオークに一瞬怯むベルだったが、これから先オークに手を焼いては他のモンスターなど倒せない。
ベルはナイフを構え直す。
「ベル、撹乱を頼めるか?とどめは任せろ」
「わかった」
ベルが撹乱の為にオークの脇腹を切り裂く、次に俺が足を切り落とし背中をベルのナイフが抉る、痛みにもだえるオークの首を跳ね飛ばして初戦は終了、中々いい連携ではあるまいか。
「ベル様!後ろからもう一体来ます!」
アーデ嬢の忠告で後ろを振り向きざまに魔法を放つベル、しかし火力が足りないようだ…詠唱が無い分威力が落ちるのか。
2発目の魔法でオークは倒れたが、アーデ嬢の姿がない。
彼女はサポーターだ、戦闘能力はあまりないと見ていい…どうする…アーデ嬢を探そうとすると足元におかしな感覚、これはモンスターをおびき寄せるためのアイテム!それも複数個となれば…厄介な。
オークが三体……これなら何とかしのげるだろう
「ベル!アーデ嬢を探しに行け!彼女は非戦闘員だ何かあったらまずい!おそらく上層階だ!戦闘能力の低い彼女が10階層に残るとは考えずらい…おそらく件の冒険者に唆されたか…最悪、俺たちが死んでから武器の回収と言ったところだろう」
「…っ…すぐ戻ってくるから!待ってて」
そう言い残して走り出すベル、さてコチラも兄貴の意地を見せたくてはな!
《水よ!》
水のエンチャント、コレである程度は攻撃をいなして被弾を防げる。
1匹目は真正面から突っ込んで来たので水の防御を利用し魔石をえぐりとる、2匹目は足を切り落とし首を跳ねた。
残り1匹!そう思ったのもつかの間オークがぐしゃりと食われて消えた。
「…運がないな、こんな時にインファントドラゴンとは…」
灰色の鱗の竜種が、悠然とこちらを見下ろす。
本来のインファントドラゴンの体色は緑だったはず…強化種か
「死んでたまるか…俺にはまだ!やる事がある!」
思い浮かべるのは大切な弟、世話の焼ける神、そして記憶にない青髪の少女…
……違う、俺はいや私は知っている彼女の名を、真名を頑なに教えてくれなかったから、私が名前をつけた…彼女の名は!
「ディーネ!私に力を貸してくれ!」
瞬間、世界が切り替わった。
『やっと呼んでくれたね■■■■■!まだちゃんとは会えないけど…繋がりは残ってる、やっちゃえ!■■■■■!私の大好きなあなたならこんなヤツ、けちょんけちょんなんだから!』
青髪の少女、ディーネが笑う私があのモンスターを倒すと信じ、力を貸してくれている…ならば答えよう!
我が名はフィル・クラネル(騎士■■■■■!)
■■■ディーネと契りを交わし、いまは神ヘスティアの眷属!
トカゲ風情が!なにするものぞ!
「くたばれーーー!!!」
凄まじい水圧の刃がインファントドラゴンを一刀両断する。魔石さえも砕け散り、もう後片もない。
俺は仰向けにバタリと倒れ込む、こんな軟弱な器では、彼女の力のほんの一欠片でこのザマだ…だけど…。
「どうだ?ディーネ、お前の英雄はまだまだ捨てたもんじゃないだろう?」
『うん!かっこよかったよ!■■■■■!』
そのまま俺の意識は途切れた…最後の瞬間金髪の少女を見たような気がする。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
目が覚めると、バベルの医務室だった。
看護師に聞けば、とある冒険者が運良く発見しここまで連れてきてくれたらしい。
礼が言いたいから特徴をと聞いても黒いローブの人物としか分からなかった。
看護部屋の扉が乱暴に開く、そこから現れたのは今にも泣きそうなベルだった、後ろにはアーデ嬢も一緒だ。
「良かった無事に合流出来たんだな。」
「兄さん!人の事より今は自分のことを心配してよ!」
すまんすまんとベルをなだめているとアーデ嬢ガ頭を下げる。
「この度は、本当に申し訳ありませんでした…リリのせいでこんな大怪我を…」
「気にするな…とは言わない、だが君を恨んだり憎んだり…そういった感情は無いんだ、君も無事で良かった、コレは俺の本心からの言葉だリリルカ・アーデ」
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あの騒動から数週間、
1人の少女が噴水の前に座っている、まるで誰かを待っているような…そんなことはありえないと思いながらも、希望を捨て切れなかったのだ。
そんな彼女に歩み寄る2人の冒険者
「サポーターさんサポーターさん、冒険者を探していませんか?」
「…えっ…どうして…」
「困惑しているのか?だが、今の状況は簡単だぞ?サポーターの力を借りたい半人前の冒険者2人が自分たちを売り込みに来ているんだ。」
「また僕たちと一緒にダンジョンに潜ってくれないかな?リリ」
ベルが差し出す手をアーデ嬢…リリがとる、またここから新しく冒険を始めよう。