忍者の能力を持たされた少女に声がかかる。
それは控えから前線への抜擢で……?
二次創作奨励ってことでプレイ記録を元に書いてみました。
時間が溶けるぞ! みんなやれ!
「え、わたしを前線にですか」
「そうじゃ。《大尉》どののたっての要望でな」
わたしは少女型人造人間【BARGIN】*1の《下忍》タイプの一人。
上位指揮個体である《サキュバス》の支配から逃れ、開放してくれた《大尉》と呼ばれる人間の指揮のもと戦っている。
《大尉》がまだ強くない、戦い始めた初期に開放された――いわばザコ個体だ。
声をかけてきたのは《悪太郎景清》*2タイプ。仲間たちからは『景清さん』と呼ばれる歴戦の勇士だ。
その戦闘能力で、強敵相手に獅子奮迅の活躍をするのを、わたしは後衛で見る立場だった。
「でも、わたし弱いですし……」
わたしたち【BARGIN】はその生成に霊的因子を取り込んで生まれる。
わたしは忍者の中でも最下位の《下忍》。景清さんは源平合戦の勇士《悪太郎景清》。
当然、その能力は元となった因子に左右され、因子が有名で強大であるほど強くなる。
「そのことだがな、そこもとが入り浸ってる強化施設……闘技場のことは知っているじゃろう?」
「はい、少しは」
闘技場。
【BARGIN】たちが己の強化のために強化因子――マギメタルを勝ち取る施設。
景清さんはそこで何度も戦い強さを得たが、それも素体としての強さあってのこと。
「そこで強化装備を作っているやつが、一部の連中向けの装備を完成させたらしくての。その中にそなたの名もあった」
「わたしの、ですか」
「そうじゃ。それを聞いた《大尉》どのはそなたを抜擢することを決めたらしい。かねてよりそなたの特性――《異常無効化》の必然性に駆られてもいたようじゃしな」
【BARGIN】には固有の特性を持つ者もいる。
わたしの特性《異常無効化》もその一つ。敵の使う厄介な麻痺、混乱、魅了、石化といった行動を縛る攻撃に左右されない有利な特性だ。
だが、同じ特性を持つ【BARGIN】で、わたしよりも強いものはもっといるはずなのに――
「《大尉》どのは喜んでいたぞよ。ようやくそなたを強くしてやれる、とな」
「え」
《大尉》が、わたしを?
「なんじゃ、気づいていなかったのかえ? これまでも細かい戦闘はそなたに任せることが多々あったろうに」
たしかに主力メンバーほどではないといえ、わたしが前線に呼ばれることは多かった。
それでも、敵の戦力が弱い間だけの数合わせと思っていたのだが……
「期待されているということじゃ。気張るがよいぞ」
「は、はい」
景清さんが軽快に手を振って去っていく。
「わたし……期待されてる」
わたしは突然のことに困惑しながらも、《大尉》の役に立てる喜びを感じずにはいられなかった。
【BARGIN】の《装備》と呼ばれるものは霊的な因子を抽出し、強化を施すものだ。
形状はチップ・結晶・リングなどに加工され、戦闘の邪魔にならないようにされている。
その因子の元が《越中ふんどし》や《スクール水着》といったものなのはよくわからないが……*3
わたしの装備の場合は《巻物》だった。忍者タイプのわたしには適したものと言えるだろう。
「装備の具合はどうじゃ? 身体能力が跳ね上がるゆえ、少しづつ馴らしていくがよかろう」
「はい!」
景清さんの指導のもと、わたしは闘技場で訓練を続ける。
装備で強化された力に追いつくだけの素の能力を高めるためだ。
大量のマギメタルを摂取し、装備の力に負けない実力を得たとき、晴れてわたしは前線に出れる。
「今の一撃は詰めが甘い! 相手の急所を狙え!」
「はい!」
次第に強くなるわたしに景清さんの指導も熱が入ったものになる。
充実している実感がそこにはあった。
「はあ、はあ……ご指導ありがとうございました」
「うむ、仕上がってきたな。結構結構……しかし」
指導の礼を言うわたしに景清さんが顔をしかめた。何か失礼なことをしてしまっただろうか?
「《大尉》どのの戦列に加わったのはそこもとのほうがあとじゃ。つまりそなたのほうが先輩だろうに、そこまでかしこまらなくてもよいのではないかの?」
頬を膨らませた顔でそんなことを言う。
綺麗な顔立ちをしている景清さんがそんなことをすると、ちょっとかわいいと思ってしまう。
「あはは、これは性分でして……《下忍》ですからね、格上っぽい人には背筋を伸ばしちゃうんですよ」
「そんなものかのう」
「はい、それにわたしは見ての通り子供っぽい素体ですから。大半の人を目上の人扱いにするのに慣れちゃいまして」
【BARGIN】は同タイプであれば容姿はほぼ同じものが使われる。
《下忍》タイプのわたしのモデルとなっているのは幼さがまだ残る少女のもの。
不満はないが、景清さんのような綺麗系の人に憧れのようなものを感じるのは仕方ないと思う。
「ふむ? そのわりには《大尉》どの相手にはいわゆる《くーでれ》とやらではなかったかのう?」
「か、景清さんっ!」
「わはは。よいぞよいぞ、硬さが抜けたようで何よりじゃ」
「……もう」
交流が増えたことで知ったのは、
景清さんは案外イジワルだということだ。
《大尉》たちの戦いは最終段階に入った――敵拠点での大規模な戦い。
無数の《サキュバス》や、操られた【BARGIN】たちが襲ってくる。
「どきなさいっ!」
闘技場で強化を重ね、幾たびの実戦を経たわたしは大群相手に戦う力を身に着けていた。
わたしによる露払いのあとに仲間たちが続く。
そこに景清さんの姿は無い。
後続の挟み撃ちを断つため、しんがりを受け持ったのだ。
『なに。《大尉》どののそばにはもうそなたがいる。心配することはなかろうよ』
そう言ってからからと笑った景清さんの姿が目に浮かぶ。
もちろん景清さん一人というわけではないが、この場にいないことに不安を感じることは止められない。
――でも。
「任されたなら、やらなきゃ、ね」
きっとこれで戦いは終わるだろう。
《大尉》と一緒に、景清さんを迎えに行くんだ。
決意を込めて《大尉》を見つめると、無言で頷いてくれた。
眼前には無数の敵と、強大な敵。相手にとって不足なし。
こちらには苦楽を共にした仲間たち。皆が戦意に溢れている。
さあ――世界を救いに行こう。