Fate/magi sister's 冬木の天秤 作:高島智明
「出張鑑定ーin冬木ー!」
MCが宣言する。
冬木市と呼ばれる、西日本の平凡な地方都市が紹介された。
「会場は、冬木市民会館。
実は、最初に建設された市民会館は完成直前に出火して、多くの市民が犠牲と成る災害を起こした。
その跡地は現在、慰霊の公園と成っている。
現在の市民会館は、その後に場所を変えて再建された会館である」
そして、最初の鑑定依頼人が舞台に上がった。
「冬木市長の間桐慎二さん(39歳)」
MCは何も無げに紹介して行く。
「間桐さんは、冬木で300年続く名家の出身で、事業家としても活躍されているとか」
「名家というのは、若いころにはプレッシャーでしたが、何とか頑張って来ました」
「お宝は此方」
現れたのは、銀髪に紅い眼の美しい女性を描いた厳かな雰囲気を纏った絵画だった。
「実は、300年前に冬木に移住して来た御先祖は、ロシア出身だったと伝わっています。
その御先祖が、ロシアから持って来たもの、と伝わっています」
その絵画を遠目に見て、観客席に居た1人の女性がデジャヴを覚えていた。
「どうしたの?美遊さん」
隣に座っていた、彼女が成人してからの知人が違和感を覚えた。
「ううん。多分気のせい」
知人にはそう言った。
けれども美遊には、どうしても子供の時からの友人で、先年夭折した故人に余りにも似ている様に思えた。
(気のせい。こんな遠くから見たせい)
鑑定人は、美術品としての価値も高いイコン(宗教画)と鑑定した。
無論、間桐慎二本人は知っている。
そこに描かれているのはユスティーツァ・リズライヒ・フォン・アインツベルン。
若き日のマキリ・ゾォルケンが思慕した女性。
そして、イリヤスフィールを含めた全てのアインツベルンの原型だった………。
……。
…かつての冬木の裏の歴史など表に出ず、番組は進んで行く。
何番目かの依頼人として舞台に出たのは、キリッとした雰囲気の妙齢の姉妹だった。
「これも冬木の名家、遠坂家の遠坂凛さんと桜さん姉妹」
「遠坂家も、武家時代の冬木の庄屋だった頃からの名家で、現在の当主を姉妹で務めている」
当然ながら、姉妹で当主という点について質問された。
「私たち姉妹の曾祖母様はフィンランドの名家出身で、その家は代々姉妹で当主を継いで来られました。
実際、曾祖母様も双子の御姉様と当主を務めておられましたが、来日して曾祖父様と巡り会われました。
私たち姉妹もロンドンに留学していた時、曾祖母様の御実家の出身で、現在は双子の妹さんと当主を務めている方と友人に成りました」
隠す積もりも無く、すらすらと答える。
ただし、その家系というのが、実は何を伝えている家系とかは秘匿していたが。
「お宝は此方」
現れたのは、1目見て古地図と分かった。
「これは、御先祖様が冬木の庄屋だった頃の図面です。
実は、御先祖様は隠れ切支丹だったと伝わっていますが、間桐君のイコンの後ではダブるかと思いまして」
「君?」
MCの疑問には、それまで姉の陰に寄り添う様だった妹が答えた。
「失礼しました。間桐先輩は姉さんの高校の同級生で、私の先輩です」
「この地図を見ると、昔の冬木は静かな村だった様ですね」
「はい。その通りでしょう。
そんな土地だから、隠れ切支丹の御先祖様やロシアから来た間桐君の御先祖も隠れ住めたのでしょう」
MCは、もう1度、古地図を覗き込んだ。
「これはまた珍しいですね。庄屋さんの図面が残っているとは。
水車や畑が描かれていて、今とは随分違う風景です」
鑑定人は本物と鑑定した。
「史料価値も高い古地図です。大事にして下さい」
こうして、出張鑑定のコーナーは無事に終了した。
「鑑定団は、日本全国何処でも出張します」
取り敢えず,思い付いた短小編は此処までと成ります。
ここまでの御愛読に、改めて御礼申し上げます。
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