「百合って聞くと間に挟みたくなるよねw」「分かる〜w」 作:超かぐや姫!沼から抜け出せない人
お気に入り、高評価、感想ありがとうございます!
見るたびにニヤニヤしつつ、マジでここまで伸びると思ってなかったので展開を考えつつ書いてる自転車操業状態です()。
ネタバレを避けるために基本感想は返さないスタイルで行っているのですが、これ本編で説明しないなーと思うやつがあったら返信するかもです!絶対じゃないです!すみません!!
たまには配信しようと思ってPCを立ち上げた。前回の配信からは結構間隔空いたな。
久しぶりというほどではないと勝手に思ってるが、一応ファン人数三百万人越えのライバーが、しかもヤチヨカップというイベントの真っ最中なのにここまで期間中一度も配信していないというのは普通に考えてヤバいよね。多分そんなやつ俺ぐらいしかいないと思う。
別に俺はかぐやちゃんたちと違って月見ヤチヨとのコラボライブに出たいとか思ってないし、ファンどものために配信する義務もないんだが。
普通、ここまでファンが増えるとスポンサーとかもつくのでその辺に配慮して配信する必要もあるのだが…俺にはスポンサーが一切いないので配慮もない。
ただ最近ちょっと『彩葉を護る会』の護衛任務以外での吸精の時間が少なくなっているので、少しリカバリーしておきたい。
「うーん、いつ見ても性癖破壊アバターだなー」
設定画面に映るのは俺のツクヨミでのアバター姿。一言で言えばほぼサキュバス状態の俺だな。
違いはリアルよりちょっと目が大きいのと、髪のインナーカラーが白銀になっていること。
モチーフの動物はムフロンってやつ。まぁでかい巻き角を持つ羊だ。俺の角はアレよりもっと巻いてるけど。
ただツクヨミのアバターである以上、普段の俺と違う部分がある。そう、服装だ。
着ている衣装はツクヨミらしく和風。見た目は十二単っぽくて、一番外側の唐衣が紫色なので全体的な色味としては落ち着いている。高貴な色なんだっけ? 前に日本史で習った気がする。
しかしもちろん十二単そのままというわけではない。サキュバス仕様でありかなりえっちな方向に改造されている。
まず肩は丸出し。胸元も大きく開き、北半球がほぼ全て見えている。そして長袴はそもそも履いていないし足袋もなくて裸足。さらには体前面にあるはずの、服の固定のための裳の一部が存在せず、しかし何故かちゃんと止まっているというファンタジー。
で、裳が無い十二単なので腰から下が中央から大きく開き、太ももより下の生足が丸見えである。
下着は付けてない風だが、そこは一応全年齢のツクヨミということで捲れても謎の光で中が見えないようになっている。
なおこれはデフォルト衣装で、しかも俺がデザインしたわけじゃない。
初めてツクヨミにログインしたときに、月見ヤチヨが「その格好じゃあつまらない!」とか言って勝手に俺のアバターをこれに設定したのだ。
つまりこれは月見ヤチヨの性癖ってことだな。
褐色ピンク髪黒白眼爆乳エロ和装サキュバスが性癖のAIが管理人とか、ほんとに大丈夫かツクヨミ。
サキュバスの姿が現実とほぼ同じなのも偶然の一致だろう。そうじゃなかったら俺のサキュバス姿がバレてることになる。それは普通に怖いよ。
ちなみに、最初この衣装を鏡で見たときに「何これ、痴女?」と思わず笑ってしまったのはご愛嬌だろう。
何でこの衣装でBANされずに許されてんだろうな。エロ同人ベースの世界だから?
んで色々準備してから、さっきSNSで予告した時間ぴったりに配信を始めたのだが……
「お
1000ふじゅ〜:新人ライバーに食べられたって本当ですか?!?!?!?!?
許せない許せない許せない許せない許せない
あああああああああああああああああああああ
02ー
新人に食われる古参大物ツクヨミライバーUMA2
クズクズクズクズ
おいヤチヨこいつ取り締まれよかぐやちゃんを汚しやがってふざけんな
「え、何この地獄みたいなコメント欄。おもろ」
いつもカオスではあるけどいつもの三倍くらい阿鼻叫喚になっているコメントが俺を出迎えてくれた。うける。
五分くらいコメント欄を眺めながらケラケラ笑っていたのだが、いつまでも勢いが落ちないので流石に飽きてきた。
このままでは全く話が掴めないので、とりあえず永遠にバカ話をし続けているリスナーどもを一旦止めることにした。
「おーい、そろそろ飽きてきたからやめろお前らー。モデレーター共も、サボってんのはわかってるぞー。権限取り上げられたくなかったら本物の荒らしは消せー」
イエスゆまむ
イエス・ゆまむ
せやな
くそくそくそくそ
はーい
イエスゆまむ
え、何この流れ
えっっっっっ
一瞬のうちに馬鹿騒ぎは収まり、それに着いていけずに荒らし続けていた本物の荒らしやアンチコメは次々と消されていく。
新規と思わしき人たちは統制されたリスナーたちに若干引きつつ困惑していた。
うんうん、ここのリスナーたちのこういうところは好きだよ。
まぁ止まらなかったら配信終わるというのを繰り返してきたら、残ったのがこんな奴らばっかだったんだが。
ちなみに、イエスゆまむってのはリスナーどもが勝手に考えた了解の返事だ。イエスマムと俺のライバーネームである
こいつらの方が面白いしこいつらが配信者やればいいのでは? といつも思ってる。
「で、何の騒ぎ? これ。ほんとは雑談でもしようかと思って枠とったんだけどー。ここまで騒がれると気になるよね。あ、投げ銭ありがとねー」
新人ライバーのかぐやがUMA2のこと食べたって
かぐやってライバーがゆまのこと食べたって配信で言ってた
雑談助かる
「お、リンクとふじゅ〜ありがと、ちょっと確認するね。てかさっきからウチの処女貰うとか言ってるやつは何ー? ほんとにウチの配信見てるー?」
それは普通にキモい
同じ養分として扱われたくねぇ
養分というのは俺のファンネームのことである。当然ながら俺が設定したわけではなく、リスナーどもが勝手に言い出したのだ。
確かに色々な意味で間違っていないのだが、自認養分ってなに? こいつらキマりすぎじゃない?
「あは、きも笑」
寝取られ童貞かと思ったらドMとか無敵かよ
リスナー濃すぎるだろ
「でも別に嫌いじゃないよー」
許した
え? 俺と寝てくれるって?
言ってねーよハゲ
きもいリスナーとのいつものじゃれあいはさておき、コメントに送られてきたリンクを確認する。
飛んだ先は『かぐやいろPチャンネル』の切り抜き動画だった。なるほど、発端はかぐやちゃんか。まぁあの子無意識に爆弾発言とかしそうだしな。
「これか、画面出すよー」
『え? 動画編集? ううん、独学じゃないよ。ゆまに教わったの』
そこに映るのは、最近ツクヨミライバーを始めたかぐやちゃんがアバターで配信している画面。
俺は見た記憶がないから多分昨日くらいに上がったやつだな。まぁかぐやちゃん、一日に何個も動画あげるし何回も配信するから全然追いつけないんだが。
その切り抜き動画を見ながら、俺は先日あった出来事を思い出した。
「
「え、なになに。何の話ー???」
夏休み二日目の昼過ぎ。昨日遅くまで竿役から搾っていたので昼まで寝ていたのだが、突然部屋の扉がガンガン叩かれたことで起きた。
何だよと思いつつ出てみると、そこにいたのは日の光を浴びて輝く美しい金の髪。誰であろう、隣に住むかぐやちゃんだった。
先週は金髪じゃなかったのだが、彩葉ちゃん曰くかぐやちゃんは宇宙人だから髪の色を自在に変えられるらしい。宇宙人の生態面白すぎだろ。
そして開口一番に助けを求められたというわけだ。うん、全然分からんな?
「かぐや、ヤチヨカップ絶対優勝するの! そんで、彩葉と一緒にコラボライブやる!!」
「おー、なるほど?」
外はクソ暑いのでかぐやちゃんをエアコンの効いた部屋に入れ、しっかり話を聞いてみることにした。
かぐやちゃんの若干要領を得ない話をまとめると、どうやらライバーとしてファンを獲得して、今回のツクヨミの一大イベントであるヤチヨカップで優勝したいらしい。
多分あれだ、かぐやちゃんは彩葉ちゃんと一緒に楽しいことしたいってだけだな。で、勢いのままに突き進もうとしていると。
彩葉ちゃんは反対したんだろうが、かぐやちゃんが結構強引なのと、あと彩葉ちゃんはかぐやちゃんのおねだりに弱いからな……なし崩し的に協力することになったんだろうなーと容易に想像できる。
「ま、ウチにできることなら手伝うよー」
「ほんとっ? ありがとう夢魔!」
俺としては存分にやればいいと思うし、手伝えることがあるなら手伝おうじゃないか。
これも全ては百合の、そしてその百合の間に挟まるため。
ここでかぐやちゃんを後押しすれば、きっとかぐやちゃんは彩葉ちゃんを引っ張っていってくれると思う。で、お人好しで面倒見のいい彩葉ちゃんは、それに付き合わされているうちに段々意識していく、と。完璧な作戦だ。
でも実際、彩葉ちゃんは無理矢理にでも内面に切り込んで行かないと意識してくれないと思うし。
芦花は陰ながら支えるタイプでそういうアプローチはできないからなぁ。そこが良いところでもあるんだが…
とにかく、かぐいろでもろかいろでも、百合が成立しないと俺は間に挟まれないんだよ…!! 勿論かぐいろろかでもいいぞ。
「んで、ウチは何を手伝えばいいかなー?」
「彩葉がプロデューサーとして、ジングルとか曲とか作ってくれるから! 夢魔には他のことをお願いしたいなー」
「ふーん…? 彩葉ちゃんが…なるほどー」
ただ、気をつけなきゃいけないのは彩葉ちゃんの過労だな。ずっとかぐやちゃんに付き合わせてたらそのうち絶対ぶっ倒れる。また安請け合いしてるみたいだし。
でも直接手伝うとか言ったら彩葉ちゃんは遠慮するだろう。そもそも作曲とかで俺に手伝えることはないしな。
んで、俺の姿はあんまり彩葉ちゃんの目には入らないようにして…そうなると……
「それじゃ、ウチは動画の編集の仕方を教えてあげるよー」
「やったー!」
「実はウチもちょっとだけツクヨミでライバー活動やってるからさー。編集ソフトとか、良い感じの配信機材とか分かるよー」
「ちょー助かる!さんきゅ!!」
つまり、今俺がすべきなのはかぐやちゃんのサポートだな。
大きい部分はプロデューサーらしい彩葉ちゃんにやって貰うとして、彩葉ちゃんが忙しいときとか、細かい補助のところは俺が動こう。こう、痒いところに手が届く感じで。つまりはアシスタントだ。
「他にも、これから人手が必要なときは呼んでねー」
「ほんと!? 夢魔大好き!!」
「ウチもウチも」
かぐやちゃんの目的を果たしつつ、彩葉ちゃんの負担を軽減できる。かぐやちゃんと彩葉ちゃんの関係も進む。まさに一石三鳥。いや、俺の心象も良くなるかもだし一石四鳥も見えてくる。
それを見たら芦花にも発破がかかるかもしれないしな。まぁそっちは高確率で身を引きそうなだから別でフォローするけど。
しかし、そうなるとちょっと忙しくなるか…あんまり遠くまで吸精には行けなくなるなぁ。いたしかたないが。
そんなことがあったのが三日くらい前の話。
あれからかぐやちゃんは止まっている時間がないんじゃないかというくらいには動きまくっていて、どんどんファンを獲得していっている。
彩葉ちゃんの曲も凄く良かったし、最初は9000位くらいだったのに勢いよく順位を上げてきている。
『ゆまって誰かって? ゆまはゆまだけど……あ、そうそう、今コメントくれた人が言ってる子。配信者名UMA2って子だよ!』
「あーやっぱりかぐやちゃんかー。そうそう、ウチ最近この子に編集とか教えててさー」
まぁUMA2って言ってるしな…
別人だったら逆に怖いよ
てかゆまの名前使う意味なくない? クソビッチの誹りを受けるぞ
草
名前がそのままデバフになる女
使 っ て み ろ
俺の名前で配信とか色んな意味で鬼のようなメンタルだと思うよ。
まず俺の名前を騙る時点で、なんだかんだ統率されてる俺のリスナーから通報されてなりすまし罪でヤチヨのお話案件。
他にも、俺は悪い意味でもかなり有名だから、SENGOKUとかで遊ぼうにもアンチとか荒らしにマッチした瞬間に同じ名前ってだけで通報される。そのままランキング除外までがコンボ。
ちなみにリスナーとマッチしても通報される。もし本人とか言って抵抗しても無意味だ。こいつら、俺が本人でも容赦無く通報してくるからな。
おかげで俺はSENGOKUのPvEモード、もしくはカスタムマッチ以外からは追放されている。配信者がアレならリスナーもアレというわけだ。クソわよ。
『大物配信者? そうなの? ゆまは全然そんなこと言ってなかったなー』
『危ない? 何が? ゆま、とってもいい子だよ? めっちゃ可愛いし』
「ツクヨミライバーのファン総数ランキングの十位以内にも入ってないし、大物っていうのもなー。精々中堅じゃない?」
総数ランキング十一位は大物では?
お前は増やそうとしないからだろ
かぐや分かってるな…
かわいいというかえっち
危ないのもそうなんだよなぁ…
なんで配信してないのにファン増えてんだよ
増やそうとしないのにこのファン数は普通に化け物なのでは
そうだよ
へー、俺そんなに順位高かったんだ。配信してなかったから全然気づかなかった。
ほんとだ、よく見たらファン人数が十万人くらい増えてる。なんで何もしてないのに増えてるんだ???
「どうしたお前らー、突然褒め出して。ウチからの株上げればウチに相手してもらえると思った? きも笑」
何で抜いてるやつがいるんですかねぇ…
照れ隠しだぞ
いつも思うけどここん家のコメ欄キモすぎるだろ
「あのさ、ほんとに抜くやつあるー? 前から言ってるけど、ウチはサキュバスだからそういうの分かるんだって。ちなみにほんとにヤったのは五人ねー」
こわE
嘘だろ、この距離(ネット越し)で察知してきた…?!
怖いのは本当に抜いてそうなお前らだよ
ネタだと思ってるやついるけどこれガチなんだよなぁ…どう考えても俺よりお前らのほうが怖いだろ。精エネルギー的には美味しいんだけどさ…
こんな感じで、配信中はアバターの俺に対する精力発散でもある程度は吸収できるのだ。一人一人からは微量だが、集まれば無視できない量になる。
なお吸収できる原理は不明。ネットで繋がってるからか? 分からん。
『食べられる…って、ゆまに? どゆこと? かぐやは食べ物じゃないけど。あ、でもゆまを食べたことならあるよ』
「あ、ここかー」
俺らのゆまが
なんか闇のゲームに敗北した奴いない?
脳破壊されてる奴いて草
そんなあああああああ
かぐやちゃん?!
ゆま、ゆま…! うっ…
これで脳破壊されるなら普段の配信はどうしてんだよ、男食った報告とかしょっちゅうしてんのに
真正のマゾもいるし
かぐやちゃんの問題発言と思われる場面になり、再びコメントが加速する。君らノリいいねほんと。一部ガチのマゾもいるんだが…悦んでそうだしいいか……
この前編集教えてた日、長い時間勉強して疲れてしまったのか、寝ぼけたかぐやちゃんが胸元に倒れ込んできて……起こそうとして二の腕を齧られたことがあった。そんときの話だな多分。
もしくはかぐやちゃんが赤ちゃんの時におっぱい吸われたやつ。心当たりが複数あるのおもろいな。
『え? どうだったって、すっごい柔らかかったよ』
「これこの前かぐやちゃんに編集教えてて夜遅くなったときに、寝ぼけたかぐやちゃんに腕齧られたんだよね。それだと思う」
そういうことか
待て、オフで会って教えてたってことか???
オフ◯コって…こと?!
俺もゆまの腕かじりてえええええええ
俺もかぐやちゃんに齧られてえええええ
パコったとは言ってねーだろ
齧る一択だろjk
は?
お前らとは仲間だと思ってたのに…バサッ
キッショ、なんで脱いだんだよ
キッショ、なんで脱いだって分かったんだよ
もうこいつらコメ欄だけで盛り上がってるじゃん。仲良すぎだろ。俺が喋ってる時間よりこいつらだけで喋ってる時間の方が長いんじゃないのか?
「かぐやちゃんといろPちゃんとはリア友なんだよねー。かぐやちゃんも言ってるけど、家が近所なんだよー」
妄想お2
もしかして夢の中の話してる???
UMA2は万年ぼっちだろ!! いい加減にしろ!!!
解釈違いです、UMA2のファン辞めます
「おーい、もしかして搾り殺されたいかー?全員天守閣前集合なー」
サーセン
許し亭許して
助けてください! 何でもしますから!!
調子乗ってすみませんでした
手のひら返し早すぎだろ。実際友達は少ないけど、ゼロってわけじゃねーよ。まぁ彩葉ちゃんの関係者ばっかというのが悲しみを醸し出しているが…
まぁいいや。あとは宣伝でもしとくかな。
「全く。まーウチはともかく、お前らもかぐやちゃんといろPちゃんのことは応援してあげてねー。今のところウチの推しだから」
ファンになってきまーす
ファンになるボタン百回押してくる
何気にゆまが推してるとか言ったの初めてなんじゃ?
かぐやちゃんのファンになります、代わりにゆまのファン辞めます
帝のファンになります
「あは、お前らの好きにしなー」
やっぱゆまのファン辞めません
そこからは適当に雑談して終わった。内容は九割猥談だったが。残り一割は相談。
…これ、かぐやちゃんに見られないようにこれまでのアーカイブ全部非表示にしといたほうがいいかなぁ。教育に悪すぎるだろ。
宣伝のおかげか分からんが、無事にかぐやちゃんのファン数もそこそこ増えたらしい。
なぜか俺のファン数もめっちゃ増えてたけど。うける。
かぐやいろPチャンネル:新規獲得ファン数五万人(現在508位)
UMA2の餌場:新規獲得ファン数十四万人(現在22位)
「あー、今日も楽しかったなぁ…」
常に明るい月が照らす、ツクヨミの天守閣。
その城の頂上に、ツクヨミのAI管理人にして、みんなの歌姫である月見ヤチヨの部屋があった。
灯篭の薄い灯りに浮かび上がったヤチヨの笑顔は、普段ユーザーに見せるものよりも力が抜けていて、少しだけ子供っぽかった。
ヤチヨは一つ大きな伸びをした後、軽く手を振る。すると、今まで神秘的な夜景が見えていたはずの部屋が消え、どこにでもあるアパートの1Kへと変わっていた。
「ねぇ、FUSHI」
「なんだ?」
「もう少しだね」
「そうだな」
服装を黒いTシャツ一枚に着替えたヤチヨは、肩に乗っていたFUSHIをちゃぶ台の上に乗せ、自身も座布団へと座る。
そして何の味もしないコーラを飲みながら、嬉しそうな、しかしどこか不安げな表情でFUSHIに語りかける。
「…彩葉は、気づいてくれるかな」
「またその話か…ヤチヨ自身が『絶対気づいてくれる!』っていつも言ってるだろうに」
「そうだけど〜」
「僕も彩葉なら気づいてくれると思うよ。大体、
「そーだね! ごめん、また弱気になってた」
面倒くさそうな顔で返すFISHIにヤチヨは苦笑して謝罪する。FUSHIもヤチヨのことを仕方ないやつだと言いたげに見つめるが、その目には確かに慈愛の感情が宿っていた。
「ま、大詰めだしな…ある程度は仕方ないと思うけどさ」
「ヤチヨももうお婆ちゃんだからね〜ヨヨヨ〜。歳を取ると将来が不安で仕方なくって〜」
「楽しそうで何よりだ。……あの子も、ヤチヨが楽しそうなほうが嬉しいと思うよ」
そのFUSHIの言葉に、ヤチヨの顔から感情が抜ける。先ほどまで冗談を言い合っていたとは思えない、何を思っているのか分からない冷たい表情。
美しい顔に一切の表情を浮かべないまま、ヤチヨの口から漏れ出すように言葉が出る。
「そうかな」
「そうだよ、絶対。心配なら聞きにいけばいいさ」
「…ううん、やめとく。それは、彩葉と再開したときのために取っておくよ」
「そっか」
ヤチヨが少し俯く。FUSHIにはヤチヨが何を考えているか分かったが、何も口にしなかった。FUSHIも大体同じことを考えていたからだ。
「でも…そうだなぁ…」
「ヤチヨ?」
急に正面を向いたヤチヨの目と、ちゃぶ台に乗ったFUSHIの目が合う。
「もし、彩葉が気づかなかったら、そのときは……」
FUSHIから見たヤチヨの目は、黒く淀み、まるで光が入っていないかのようだった。
「
また一日、結末に近づいていく。
ちなみに、オリ主くんちゃんの淫魔センサーは自分を対象にできないので、自分へ向けられる好意には基本気づきません。