「百合って聞くと間に挟みたくなるよねw」「分かる〜w」 作:超かぐや姫!沼から抜け出せない人
お気に入り、高評価、感想くださった皆様、本当にありがとうございます!ガチ感謝してます!!
あ、前話を修正しました。KASSENのことをSENGOKUと書いていました。SENGOKUはKASSENの中のゲームモードの一つでしたね。すみませんでした。
ヤチヨカップ開始から二週間ちょい経ち、夏休みも中盤に入った。
あの後も俺はかぐやちゃんのサポートに回り、動画撮影のカメラマンや配信の補助を行っていた。あれを彩葉ちゃん一人にやらせようとしてたとか、中々のSですなかぐやちゃん。
とはいえ、かぐやちゃんが歌う曲の作曲とかジングル作成とかは彩葉ちゃんにしかできないので、彩葉ちゃんの負担をちょっと軽減するくらいにしかならなかったと思うけど。
かぐやちゃんも、彩葉ちゃんと一緒に色々やりたいと言うことが多かったし。
二人の距離が縮まるのはいいことだが、彩葉ちゃんに無理させすぎるわけにもいかないので加減が難しい。でも彩葉ちゃんもなんだかんだそこそこ楽しそうだったしな…
俺に出来たことといえば、彩葉ちゃんが勉強したいときに俺の部屋を提供するとか。あとは昼なら芦花を誘って図書館に勉強しに行かせるとか。
芦花との関係を進めると同時に彩葉ちゃんのリラックスも狙える。でも芦花が真面目だから普通に勉強しかしないんだよね…もっと、もっとお話ししろよ…!
そして俺も混ざりたかったが、公共の場だと竿役が多くてね…その対処に行かざるを得なかった。全員まとめてかかってこい。まぁ全員まとめて相手しても搾り切るまで十分もかからないんだが。雑魚どもが。
「まだまだ足りない! どうすればいいのだー!」
砂浜に置いた浮き輪に仰向けで寝転がりながら叫ぶかぐやちゃん。スマホの画面に自分のチャンネルを表示しているあたり、登録者数を確認して、でも優勝候補で現在一位の
そう、今日は海に来ている。メンバーは彩葉ちゃん、かぐやちゃん、芦花、真実ちゃん、俺の五人。
当然の如くかぐやちゃんの発案だったが、珍しく彩葉ちゃんも反対はしなかったようだ。
曰く、「本物のエリートは遊びも疎かにしない、はず」だそうだ。例のお母さん語録な気がする。
「そう? 結構伸びてるじゃん? まだ期間あるし全然チャンスあるよー」
「でもー! 遠いよー!!」
最近のかぐやちゃんはこれまでにも増してファンの増え方が凄まじい。
普通のライバーは流行りとか色々気にして動画を作るものだが、かぐやちゃんはそういうのを一切気にしない。やりたいことや気になったことを全てやっていくスタイルで、考えてから行動するまでのラグが無いのだ。
そして顔が良くて、アバターも良くて、声も良くてとなると人気が出ないはずもなかった。
芦花から教わったメイクと自撮り術による爆盛れセルフィーをアップし、真実ちゃんのおすすめグルメをこれまた真実ちゃん直伝の食レポで飯テロし、月見ヤチヨの真似でお悩み相談室を開催して視聴者を迷路に導き、俺の配信でたまにやってる
多分、そもそもかぐやちゃんがアイドル気質なんだろうな。常にキラキラしていて、見るもの全てを魅了してやまない。魂が見えている俺も、かぐやちゃんの恒星のごとき輝きに目を焼かれそうになることがしばしばだ。
しかし、そんな現状でもかぐやちゃんはまだまだ満足できそうもないらしい。本気で優勝目指してるから、それはそうなのだが。
「
「そう言われても、そもそもウチはそんなにヤチヨカップに興味ないしなー」
「ずーるーいー!」
現在『かぐやいろPチャンネル』の順位は九十九位。ギリ百位圏内に入ったところだ。
まだあと半月くらいはあるからかぐやちゃんは悲観しすぎなきはするが…というのは、俺が外野にいるから出てくる感想なのだろう。
ちなみに俺のチャンネルこと『UMA2の餌場』は現在十二位。本当になんでこんな高いんだ? 謎は深まるばかりである。
「夢魔にダル絡みしない。あとうるさい」
「だって〜…」
「いーよいーよ、かぐやちゃんも鬱憤溜まってるだろうしー」
「夢魔はかぐやに甘すぎなのよ」
駄々をこねるかぐやちゃんに彩葉ちゃんが苦言を呈する。いやこれに関してはかぐやちゃん悪くないかなぁ。
だって、自分が一生懸命取り組んでることに対してそんなに興味なさそうなやつがいて、しかもそいつが努力もしてないのに自分より上にいるんだぜ? 普通にブチ切れていいし、俺だったら一発ぶん殴ってるよ。
なので俺としてはそこそこ申し訳なく思ってるのだ。ヤチヨカップの登録自体はチャンネル持ってる奴は強制だから不参加というのもできないし。
「夢魔はなんでそんなにファン増えてるのー? いいなー」
「なんでだろねぇ…ウチも分かんないや」
「…まぁ夢魔の視聴者層は独特だよね。私みたいに美容に興味持ってる人、っていう風に分かりやすい感じでもないし」
「あれは真似しないほうがいいんじゃないかな?」
「あは、教育に悪すぎるよねー。てかみんなにも見ないでほしいなー、友達に見られるのは流石に恥ずいし」
できれば見ないでほしい(切実)。
俺の配信は基本雑談メインなのだが…その進行というか基本的な流れは、まずリスナーを貶めて、後から慰めたり褒めたりしてファンどもを興奮させるとかいう内容だ。
興奮させるのは精エネルギーを得るためなので、ある程度仕方ないところはあるのだが…にしても変態が集まりすぎじゃないか?
そもそも貶める段階で興奮してる奴らが多すぎるし…ドMばっかか?
俺は男どもの感情や考えが淫魔センサーを通して分かるので、ファンが悦びそうなことを選んで言ってるっていうのはある。でも悦びそうなことを言うとあんな感じの配信になるんだよな…やっぱ全員ドMなのでは??
「こないだの歌配信めっちゃ良かったけどねー」
「ね、かぐやちゃんゲームも歌も上手いよね」
「まあね。天っ才、歌姫ですから」
「あは、鼻伸びてるよー」
話が変な方向に行きかけたので、話題を変えるためにも芦花と真実ちゃんがかぐやちゃんを褒めそやす。気をよくしたかぐやちゃんはすぐに調子に乗るので、扱いやすくはある。彩葉ちゃんは甘やかさないでよ、って目で見てるが。
「オリジナル曲も良かったしさ」
「わかるー。あれ彩葉が作ったやつなの?」
「彩葉、可愛い上に天才すぎ〜」
「あ、あれは昔に作ったやつだから…」
お、二人の矛先が彩葉ちゃんの方に向いた。いいぞもっと褒めろ。彩葉ちゃんは顔を赤くして謙遜しているが、昔に作ったっていう方がむしろ凄くないか? あのクオリティの曲を幼少期に作曲したって相当な才能だと思うんだが…
ていうか、芦花! もっとたたみかけろ!! 可愛いだけで満足するな、もっと色々褒めて!! 今日の水着とか!!!
とはいえ、彩葉ちゃんの水着は去年と同じやつなのだが。パステルグリーンのセパレートで、ホルターネックのやつ。資金不足で水着を新調できなかったという悲しい懐事情が垣間見えた。多分あと数年はこれで行こうとか思ってるんだろうなぁ。
…来年あたり、かぐやちゃんと芦花からプレゼントさせるか。日頃の感謝とか理由つけて。髪はさっき芦花が外はねのポニテにしていて、可愛く仕上がっている。
真実ちゃんも去年と同じ。なんかあんまり水着っぽくない、可愛い服みたいな水着で、彼氏と一緒に買いに行ったらしい。そんな真実ちゃんは、髪の毛を芦花にお団子型に編み込まれながら美味しそうに焼きそばを頬張っている。
で、俺の見間違いじゃなければそれ三皿目だよね? その細い体のどこに入ってるんだ。夏バテとかしないんだろうな…
芦花は新調していて、かぐやちゃんはもちろん新しいものを買っている。てか買いに行ったとき俺も一緒にいたし。
芦花の水着はフリルのついた、大人っぽい黒のワンピース型。胸元が結構開いていて、つい目が行きそうな色っぽさを醸し出している。また、いつもは下ろしている髪を今日は太い三つ編みに結い上げ、普段と違った印象だ。可愛い(確信)。
水で落ちにくい化粧道具って普通より高いし種類もちょっと少なめなんだが、そこは流石の美容系ライバー。今日もバッチリ決まっている。
かぐやちゃんはオレンジ色のこちらもワンピース型。綺麗な金のツインテールとよくマッチしていて、明るいかぐやちゃんの性格と相まると浜辺に太陽がもう一つ現れたかのよう。胸が控えめなのも、スレンダーな魅力として見ることができる。
あとこの子は顔が強すぎるんだよね。その破壊力は、見つめられただけで彩葉ちゃんがちょろはちゃんに変貌してしまうほど。いやそれは今日に限った話ではないか。
「かぐやのこと助けて…彩葉に、伴奏してほしい…」
「ぐ…! ま、まぁ…時間が空いてたら……ね」
「よしゃー! もっともっと配信するぞー!!」
「なぜ、断れない…!」
ほら。
まんまとかぐやちゃんに乗せられた彩葉ちゃんが砂浜に四つん這いになっているが、これは言い訳できませんね。芦花や真実ちゃんにもちょろはちょろはと煽られているが、もはや否定はできないだろう。
あ、かぐやちゃんがなんかやり始めた。波打ち際で…なんだアレ。大量の蟹が寄ってきたんだけど。おもろ。
「彩葉、元気になったね」
「うん。かぐやちゃんが来る前とか、倒れそうだったし」
「え、何それ…むしろかぐやが来てからのほうが私は疲れてるんだけど…?」
「うーん、なんていうか精神的な話?」
「そうだね。悔しいけど、私には出来なかったかな…ま、そこの白ギャルも色々やってるんだろうけど」
今俺の話した? ごめん、かぐやちゃんが蟹集めるのをぼーっと眺めてたら聞いてなかった。この淫魔イヤーが聞き逃すとはな…
「なにー?」
「彩葉が元気なのは夢魔がなんかやってるんじゃないかって話」
「んー? まぁかぐやちゃんが彩葉ちゃんに無理させるのは分かりきってたからさー。ちょっとお手伝いしてるだけー」
「ほんっとに助かってます…」
「あは、気にしないでー」
椅子の背もたれから身を起こす。あ、俺はこれまでずっとパラソルの下のビーチチェアに陣取って寝っ転がってました。暑すぎて動く気力なくて…
でもずっと座ってると体固まるな…ちょっと伸びよう。背中からバキっと音がなる。痛気持ちいい。
「んんーっ…!」
(((でっっっっっっっっっか…)))
「なに、みんなしてこっち見てー」
「い、いやなんでも?」
「眼福ですなぁ」
「夢魔、おっぱいでけー…なに食べたらそんな大きくなんの?」
ああ、胸見てたのね。無駄にでかいしな。女になって初めて分かったが、大きくてもそんないいことないよ。邪魔だし、重いし、男の視線集めるし。服だって種類ないしな。
でもかぐやちゃん、キミは吸ったこともあるんだし驚くのは今更感がないか?
「なんだろうねー。いつの間にか大きくなってたなー」
「いや、あんたは中学生に上がったくらいからもう結構大きかったでしょ…」
「ちなみに大きさなどお聞きしてもよろしいですかな…?」
「真実ちゃんなんで敬語? んー、この前に測った時はHの65だったかな」
「え、えいち…?!」
「実在するんだその大きさ…」
人間で実在するかは知らない。俺の体は厳密には人間じゃないしね。俺を転生させた邪神様が巨乳好きだったんだろ。俺はどっちかというと彩葉ちゃんくらいの方が好みだし。
「大きくてもそんなにいいことないよー? 今回だって水着買うのにこの大きさだとビキニしか選択肢ないからさー」
「良いのか悪いのか…」
「男の視線も集まるよー?」
「それは嫌ね…」
俺が着ているのは、紫紺のクロスホルターのビキニ。縁にちょっとフリルがついていて、ワンポイントで白い三日月のような模様が入っている。
この前芦花に連れられてかぐやちゃんの水着を選んでいたのだが、ついでに俺も買わされたのだ。そのとき店に置いてあった試着AIにオススメされたのがこれ。
男の視線が集まることについて彩葉ちゃんが顔を顰める。流石は百合ハーレムを築く(予定の)女。芦花も少し嫌そうな顔をしている。
ただ、俺に関してはこれで良いんだよね。むしろ露出が高めの方が目的に合致するというか…
「ていうか夢魔、せめてラッシュガードくらいは…」
「あー、良いの良いの。ウチは囮役だから」
芦花が心配してくれるが、そもそも俺が今日来た目的は皆の護衛である。護衛ってか盾役だな。俺に竿役たちのタゲを集中させることで全員を守れるし、尚且つ俺も彩葉ちゃんを狙う精エネルギーを多く持つ男どもから搾り取れる。
「行けー、蟹軍団!」
「ちょっ、やめろー!!」
この世界で彩葉ちゃんたちのような顔面偏差値高すぎ集団が海に来ようものなら、チャラいナンパ男が列を成して襲いかかってきてしまう。
そこで神に肉体を造形された俺が肌色率の高い水着を着てわがままボディを晒し、プラスしてサキュバスの魅了を周囲に軽く振りまくことで、奴らの目には俺のことしか入らなくなるという寸法だ。
ほら、そろそろお出ましだ。
「お、来たかー」
「ねぇお嬢ちゃん。そこの岩場で俺らと遊んでかない?」
「いーよー」
「ちょっと、夢魔」
「ま、ここはウチに任せといてよ芦花。んじゃ、ちょっと行ってくるから楽しんどいてー」
早速食いついた男たちにホイホイ付いていく。芦花が小声で止めようとしてくれるのを制し、一声かけてからその場を立った。
さて、彩葉ちゃんたちには純粋に海を楽しんでほしいしな。百合に挟まろうとする無粋な竿役どもには干からびてもらおう。
「あれ、夢魔は?」
「あー…ちょっとお手洗い? かな」
かぐやが蟹軍団を彩葉にけしかけてひとしきり笑った後に戻ってくる。夢魔がいつの間にかいなくなっていることに疑問を抱いたが、芦花が誤魔化した言葉に特に疑問を持つこともなかった。
「ふーん。ねぇ芦花、もっとファンを増やすにはどうしたら良いかな?」
「うーん…それじゃ、私とコラボしちゃおうよ」
「あ、良いね〜。私も私も」
「ほんと!? やったー!!」
「ファン数十七万人の『ROKA』とファン数十二万人の『まみまみ』がコラボするのか…」
「あ、おかえり彩葉」
追いかけてくる蟹をどうにか躱した彩葉がビニールシートへと戻ってきた。人気インフルエンサーとのコラボにさらなる嵐の予感を感じ取り戦慄する。
しかしその前に、芦花は彩葉がこちらを見て先ほどまで寝転がっていた夢魔がいないことを理解し、一瞬だけ何かを堪えるような表情になったことに気づいていた。
「コラボ配信、どんな内容にしよっかなー?」
「三人いるんだし、やっぱKASSENじゃない?」
ツクヨミ限定のゲームであるKASSENには、基本である三対三の陣取り合戦モードのSENGOKU、タイマン格ゲーモードのSETSUNA、七対七のバトルロイヤルモードのKASSENという三種類の対戦モードと、プラスしてPvEが現在収録されている。
中でも基本のSENGOKUモードは、単純なルールなので初心者でも楽しめ、なおかつ配信映えしやすいアクションバトルなので最も人気があり多くの配信者に親しまれている。
「いいね! かぐやも何回かやったけど面白いよねあれ!」
「SENGOKUは分かりやすいから配信でも何が起きたの? って事態になりにくいしね」
「SETSUNAは格ゲーだからどうしても上級者向けだし、KASSENは目が足りなくなるよねー」
「…ま、三人で組めば意思疎通も取れるし。いいんじゃない」
「彩葉もやろうよ!」
「配信には出ないっつの」
彩葉が手をバッテンにして拒否の意を示す。かぐやがうるさいときは夢魔の部屋を借りて勉強を進めているとはいえ、配信の準備や編曲等、彩葉自身がやらなければならないことも当然あるので勉強は予定よりも遅れている。
今日の海水浴だって、どうにか捻出してようやくできた一日の休暇。彩葉は全力で楽しむつもりでいた。
(夢魔にも楽しんでほしいのに)
絡んできた男たちを全員引き連れて何処かへと行ってしまった友人のことを思う。
今日元気に海に来れたのは、間違いなく夢魔のおかげだと彩葉は考えていた。勉強にバイトに睡眠不足、それに加えてかぐやの世話なんてしていたら疲れが溜まっていくばかりだ。その状態で海に遊びになんて行ったら、近いうちに倒れていただろう。
しかし夢魔は、かぐやがうるさくしているときは彩葉が静かに勉強できる
おかげでここまで無理しすぎることなく夏休みを過ごせていて、夢魔には感謝しかなかった。
『ウチもかぐやちゃんの夕飯にお世話になってるし。配信の手伝いも少しなら面倒でもないしねー』
というのが本人の弁だが、夕飯代は別で貰っている上に作るのはかぐやなので彩葉には助かることしかない。
普段から危険回避のために利用しているというのに、それ以外の面でもお世話になりっぱなしだった。
(『それは流石に悪い』とまではいかないラインでお世話しに来るんだよな…)
これが、夢魔が夕飯代を全部出すとか、かぐやの面倒をずっと見ている、というなら彩葉も遠慮していただろう。
だが、夢魔が手を貸すのは彩葉の手が回らなかったりかぐやがうるさすぎたときだけ。
そしてかぐやも彩葉がどのくらいの音量でいなくなるのかを段々学習し始めたので、ここ三日ほどは騒音というほどではなくなってきた。これなら、夢魔が部屋を貸すという事態も減ってくるだろう。
(あれ──)
夢魔に負担をかけなくて良くなる。そう思ったのに、少しだけ、胸に痛みが走ったような気がした。
「ならさならさ! 夢魔も誘って、みんなで交代しながらKASSENコラボしよーよ!」
かぐやが張り上げる高音の声で彩葉の意識が現実に呼び戻される。いつの間にか話が進んでいて、かぐやが夢魔ともKASSENでコラボしたいと言い始めたようだった。
「うーん、それはどうだろうね。夢魔のファンはかぐやちゃんのファンと層が全然違うからなぁ」
「変なファンとか付きそうだし、やめたほうがいいかも…?」
「えー? かぐやは全然気にしないけどなー。むしろ普段観に来ない人たちが来てくれるし、増やすチャンスじゃん! 夢魔も普段KASSENやらないみたいだし、あっちのファンも増えてくれると思う!」
芦花や真実の言うことも、かぐやの言うことも、どちらかが間違っているということもない。
芦花たちの懸念のように夢魔の配信を見ている濃いリスナーがかぐやの配信を無意識に荒らしてしまうことも考えられるし、夢魔のアンチがかぐやに迷惑をかけることも考えられる。
逆に、コラボによって夢魔の持つ三百万人以上のファンのうち一割でもかぐやのファンになれば、それだけでかぐやは三十万人ものファンが獲得できることになる。
「それにかぐや、夢魔にはサポートに回ってもらってばっかりだから、一回ちゃんとコラボしたいの!」
「うーん、ファン獲得的な意味ではやり得なんだよね」
「夢魔自身は悪い子じゃないしねー」
かぐやの強い押しに、芦花や真実も徐々に肯定的な意見に寄り始める。
彩葉も悪くない手だとは思っていたが、気になることが一つだけあった。そこだけは、かぐやに対しきっちりと言う。
「KASSENでコラボするのはダメ」
「えー?! なんでー!!」
早速かぐやから文句が出るが、これに関して彩葉は引くつもりはなかった。誘われても夢魔が断るだろうけど、とは思いつつも一応かぐやにも提案自体をしないように言う。
「そもそもKASSENに誘わないで。ただでさえ迷惑かけてるんだから、これ以上あの子に負担をかけないでよ」
「負担って…ただゲームやるだけだよ? あ、もしかして夢魔って下手なの? 大丈夫、かぐやも初心者だし!」
「あー、ランクマッチに行くと通報されちゃうんだっけ?」
「それもあるけど、そもそも通報の件は夢魔が『自分を見かけたら通報していい』って自分でネタにしてるから。私が言いたいのはその原因となった事件のほうで…」
食い下がるかぐやに芦花が夢魔から聞いたことを話すが、彩葉の懸念はそこではなかった。
彩葉が詳細を伝えようとするが、その前に真実がとある一件について思い出した。
「あ……思い出した、『SENGOKUの三日天下事件』だ」
「え、何それ?」
真実の口から出た言葉に芦花が疑問を返す。
芦花も真実もKASSENはエンジョイ勢なのでやりこんでいる訳ではない。しかし、黒鬼の帝アキラの熱狂的ファンである真実は帝のKASSEN配信をよく見ていて、その分だけ知識が多かった。
「KASSENの人気が出始めたばかりのころ、初期のSENGOKUのランクマッチのシーズンで起きたやつだよ。当時、シーズン終了三日前からずっと同じ人が一位でレーティングポイント独走してたんだけど……最終日の終了一時間前に、突然その一位がランキングから除外されたんだよ。で、そのユーザーが…」
「
真実の説明に、彩葉が苦々しく答える。その頃から夢魔と友人だった彩葉は事情を色々と知っていて、夢魔の気持ちを知っているからこそ、かぐやにも軽々しくマッチに誘って欲しくなかった。
「えー?! じゃあ夢魔って、めっちゃ強いんじゃん! やっぱ今度色々教えてもらおーっと!」
「やめろっつってんでしょ」
「ちなみに、何で除外されたの?」
夢魔がKASSENで強かったという情報を得て俄然コラボしたくなっているかぐやを横に置き、芦花が除外の理由を尋ねてくる。ランキング除外というのは尋常のことではない。なにか重大な理由があるはずだった。
それに対し、彩葉は暗い口調で答えた。
「…『チートの使用』。運営はそれを理由にしてあの子を除外して、あの子も抗議をしなかった。そしてそれ以降、ファンには自分を見たら通報するように言って、夢魔自身もランクマッチに行かなくなったの」
ツクヨミ内、黒鬼の所有するホーム。
その一室で、今日のKASSENの試合の反省会と、見所のまとめ編集が行われていた。
とはいえ、反省会は既に終了していて、今は乃依が動画編集をやっているところだった。
表示されたスクリーンに映るのは、帝アキラが双剣を持つ相手プレイヤーを華麗に翻弄し、余裕を持ってキルを取った場面。
帝はそれを見て、
「帝ちゃーん、またあの時のこと思い出してたでしょ」
「…分かんのか?」
「まぁ帝ちゃん分かりやすいし。ねぇ、雷」
「そうだな」
「悪りぃ、集中する」
「別にー? もう終わるし、帝ちゃんが昔の女に
「拗ねるなよ。てか付き合ってねーし好きでもねーよ」
まとめ動画を作っていた乃依が呆れたように言う。雷もそれに追従した。
帝は茶化してくる乃依をあしらいつつも、頭の中では当時の一件を思い出していた。
SENGOKUのランクマッチシーズンが終わってから一週間。先ほど順位が確定し、帝アキラを筆頭にした
Black onyXというチームとして活動を開始してから初めてのシーズンでもあり、それを優勝という最高の形で終えることができた。黒鬼を支援するスポンサーも、この結果には大満足だった。
しかし、優勝した本人はその限りではなかった。
「おい、
煌びやかなツクヨミの街並み。その中を一等派手で、そして際どい衣装の女性アバターが歩いていた。
それを見つけた帝は、静かに、しかし確かな怒りが伝わる声色で話しかけた。
それに反応して振り向いた女性アバター…UMA2が困ったように笑う。
そのへらへらした笑いを見て、帝は余計に自分の中の怒りが増幅されたように感じた。
「ん? あー、帝アキラ。記念すべき黒鬼としての初回シーズン、一位おめでとー」
「お前…ふざけてんのか。何だ、あの終わり方は」
「怒んないでよー。そっちが優勝したんだからいいじゃん?」
ツクヨミで俺様キャラを通している帝は、実際には冷静沈着な性格だ。しかし、今回ばかりはそうも言っていられなかった。
「良いわけねえだろうが…!」
「あは、こわー」
「真面目に聞きやがれ。誰が何と言おうと、あんな終わり方、俺たちは認めないからな」
シーズン終了の一時間前まで、UMA2はSENGOKUのランキングトップを独走していた。それもそのはず、UMA2の強さは圧倒的だったのだ。
シーズンの途中から参戦したにも関わらず次々と勝利を重ね、あっという間に帝たちトップ層に追いつき、追い抜いた。
シーズンを通しての勝率は、空前絶後の94.3%。
帝たちですら、シーズンを通した勝率は80%を少し上回る程度。本来はそれでも凄まじく、実際四位以下を大差で引き離していた。ただ、それすらも突き放すほどにUMA2が強かったというだけ。
何度も負けたプレイヤーやアンチがチート疑惑で通報するも、運営の判定は白。
帝たちもその強さに何度も敗れ、煮湯を飲まされた。しかし悔しく思いつつも、その壮絶なまでの腕前を尊敬もしていた。
UMA2の優勝は確定的だった。あの事件があるまでは。
「なんで、自分からランキングを降りやがった!」
UMA2が『チート使用』という判定でランキングから急遽除外されたのだ。
UMA2はチート疑惑で何度も通報されたが、それまでの運営の判定は白だった。それが何故、急に『チート使用』の判定でランキングを除外されたのか。
「…ごめんね」
答えは簡単だ。それまで使っていなかったチートを、UMA2が最後の試合でだけ使用したからだ。
疑惑が事実となってしまっては仕方なく、運営も彼女を除外した。通報していた者たちはそれを見て鬼の首を取ったかように騒ぎ始め、あることないことSNSに書き連ねた。
そしてシーズンが終わって一週間が経った今、最強プレイヤーとして名高かったUMA2の名声は地に落ち、チート利用のクズプレイヤーというレッテルが貼られていた。
しかし、帝や他の上位プレイヤーたちは知っている。UMA2はチートなんて使っていなかったということを。
だが噂を否定しようにも、すでにツクヨミ中に広がり切ってしまっていた。それに、黒鬼のイメージを落とさないように、スポンサーから公の場ではこの件にはもう触れないようにと言われていた。
帝には、もうどうすることもできなかった。
だから今日、UMA2に直接言いに来たのだ。もう一度、ちゃんと戦いたいと。
帝は荒げていた息を整え、UMA2を真っ直ぐ見据えて挑戦の言葉を叩きつけた。
「勝ち逃げは許さねえ。次のシーズン、今度は俺たちが、お前を倒して優勝する! …だから、ちゃんと参加しろよ」
「……それは、約束できないなー。じゃねー」
「あ、おい!」
しかしUMA2はそれには答えず、ツクヨミをログアウトした。帝が伸ばした手は、空を切った。
それ以来、UMA2は一度もランクマッチに参加していない。
「次は必ず、俺の勝ちで決着を付けてやる」
ホームの縁側から月を見上げた帝が空に伸ばした手を握りしめる。
UMA2と帝が再び対峙する日が遠くないことを、このときはまだ誰も知らなかった。
どうでも良いんですけど、メルトかぐやverの、二番の「君に触れてる 右手が」の部分。
「が」の後の息の吐き方が好きすぎて頭から離れません。誰か助けてください。