第一話 侵食率100.1%
第一話 侵食率100.1%
夢を見ていた。
赤い海。
どこまでも続く、赤い海。
空には何もない。
太陽もない。
月もない。
ただ、赤い。
足元には水面があるはずなのに、俺の身体は沈まない。
いや。
そもそも、俺は立っているのか?
分からない。
上下もない。
前も後ろもない。
ただ、自分だけがそこにいる。
そして――遠くに何かがいた。
巨大な影。
人間よりはるかに大きい。
エヴァよりも大きい。
けれど、怖いとは思わなかった。
その影は、こちらを見ていた。
目はない。
口もない。
顔すらない。
なのに。
俺には分かった。
こいつは――寂しい。
影が、手を伸ばす。
俺も手を伸ばした。
指先が触れる。
その瞬間。
ドクン。
巨大な鼓動が響いた。
俺のものじゃない。
俺は思わず尋ねた。
トウジ:(……誰や?)
返事はない。
もう一度。
ドクン。
今度は、胸の奥が痛んだ。
そして――。
???:『……寒い』
俺は目を見開いた。
トウジ:(喋った……?)
???:『……暗い』
トウジ:(お前、誰や)
???:『……ひとり』
その言葉だけが、赤い海に沈んでいった。
俺は何故か笑った。
トウジ:(なんや。俺と一緒やんけ)
影が動く。
まるで、驚いたように。
その瞬間――。
世界が割れた。
目が覚めた。
トウジ:(……天井)
白い。
見慣れない天井。
けれど、知っている。
テレビで何度も見た。
いや。
「見たことがある」なんてレベルじゃない。
俺は、この場所を知っている。
NERV。
第三新東京市。
そして。
トウジ:(……鈴原トウジ)
自分の名前を思い出した。
同時に。
前世の記憶も戻った。
テレビ。
漫画。
映画。
エヴァンゲリオン。
俺が知っている世界。
俺が知っている物語。
そして。
トウジ:(……今日か)
胸が重くなる。
今日はエヴァンゲリオン三号機の起動実験。
原作では。
三号機に寄生型使徒――バルディエルが侵入する。
そして俺は。
三号機ごと初号機に破壊される。
妹もいる。
ヒカリもいる。
シンジもいる。
アスカもいる。
レイも。
ミサトも。
俺が何もしなければ、全部知っている通りになる。
トウジ:(……死ぬんは嫌や)
それだけは。
絶対に嫌だった。
そのとき。
病室の扉が開いた。
ヒカリ:「トウジ?」
俺は顔を上げた。
洞木ヒカリ。
いつもの顔。
少し心配そうな目。
トウジ:「……委員長」
ヒカリ:「よかった。起きたんだね」
トウジ:「ああ」
ヒカリ:「今日、起動実験でしょう?」
トウジ:「せや」
ヒカリ:「怖くない?」
俺は答えられなかった。
怖い。
当然だ。
これから自分の身体に使徒が侵入する。
そして、そのまま殺される未来を知っている。
でも。
トウジ:「……怖いで」
ヒカリが少し驚いた。
トウジ:「せやけど、逃げへん」
ヒカリ:「どうして?」
トウジ:「妹を安心させたいからな」
ヒカリは少しだけ笑った。
ヒカリ:「……トウジらしいね」
その笑顔を見て。
俺は決めた。
トウジ:(絶対に帰る)
何があっても。
起動実験
第三新東京市。
地下。
NERV第七実験場。
巨大なエヴァンゲリオン三号機が立っている。
黒い装甲。
巨大な四肢。
人間を模した異形。
俺はその前に立っていた。
マヤ:「鈴原君、準備はできてる?」
トウジ:「大丈夫です」
ミサト:「無理はしないでね」
トウジ:「葛城さん」
ミサト:「何?」
トウジ:「もし何かあったら」
ミサト:「あったら?」
トウジ:「……俺を止めてください」
ミサトの表情が変わった。
ミサト:「鈴原君?」
トウジ:「なんとなくです」
ミサト:「……分かった」
俺はエントリープラグへ乗り込んだ。
ハッチが閉じる。
LCL注入。
肺が液体で満たされる。
呼吸できる。
モニターが点灯する。
マヤ:「シンクロ率41.8%」
リツコ:「安定してるわ」
ミサト:「三号機、起動」
俺は目を閉じた。
トウジ:(大丈夫や)
自分に言い聞かせる。
トウジ:(原作を知ってる)
トウジ:(バルディエルが来る)
トウジ:(その瞬間に――)
ピシッ。
音がした。
俺は目を開いた。
トウジ:(来た)
装甲の向こう。
何かが動いている。
マヤ:「機体外装に異常!」
リツコ:「汚染反応は?」
マヤ:「確認! 急速に拡大しています!」
ミサト:「まさか……!」
紫色の肉が装甲の隙間から侵入してくる。
ケーブルが震える。
三号機の内部が赤く染まる。
マヤ:「侵食率12%!」
俺の身体が震えた。
トウジ:「ぐっ……!」
マヤ:「28%!」
頭の奥に何かが入ってくる。
映像。
知らない景色。
暗闇。
飢え。
痛み。
孤独。
そして――。
???:『……寒い』
俺は息を止めた。
トウジ:(こいつ……)
知っている。
この声。
夢で聞いた。
トウジ:(バルディエル)
侵食率が上がる。
41%。
52%。
67%。
身体が動かなくなる。
ミサト:「鈴原君!」
トウジ:「……聞こえてます」
ミサト:「離脱できる! 今ならまだ――」
トウジ:「いや」
ミサト:「鈴原君!」
トウジ:「もう少しだけ」
侵食率73%。
視界が暗くなる。
普通なら。
ここで恐怖に負ける。
拒絶する。
暴れる。
助けを求める。
けれど。
俺は逆に目を閉じた。
トウジ:(話そう)
トウジ:(お前と)
境界
暗闇。
俺は立っていた。
目の前に巨大な影がいる。
夢と同じ。
トウジ:「……やっぱりお前か」
影は動かない。
トウジ:「バルディエル」
沈黙。
トウジ:「俺を喰うんか?」
影が僅かに揺れた。
バルディエル:『……違う』
トウジ:「じゃあ何や」
バルディエル:『……繋がる』
トウジ:「なんで」
バルディエル:『……ひとり』
その一言。
それだけで分かった。
こいつは。
俺を殺したいわけじゃない。
ただ。
誰かと繋がりたかった。
俺は息を吐いた。
トウジ:「お前、ずっと一人やったんか」
バルディエル:『……』
トウジ:「誰にも聞いてもらえんかったんか」
バルディエル:『……』
トウジ:「……俺もや」
影が揺れる。
トウジ:「前の世界でもな」
俺は笑った。
トウジ:「俺は普通の人間やった」
トウジ:「こっちでは、突然エヴァに乗れ言われた」
トウジ:「妹がおる」
トウジ:「友達もおる」
トウジ:「死にたくない」
少し間を置く。
トウジ:「でも」
俺は影へ近づいた。
トウジ:「お前にも、生きたい理由があるんやろ?」
バルディエル:『……生きる』
トウジ:「そうや」
バルディエル:『……生きたい』
トウジ:「なら」
俺は手を伸ばした。
トウジ:「一緒に生きようや」
長い沈黙。
バルディエル:『……条件』
トウジ:「条件?」
バルディエル:『……契約』
俺は眉をひそめた。
トウジ:「何を要求する」
バルディエル:『……身体』
トウジ:「それは困る」
バルディエル:『……力』
トウジ:「力?」
バルディエル:『……貸す』
トウジ:「代わりに?」
バルディエル:『……痛み』
胸に激痛が走った。
俺は膝をついた。
トウジ:「ぐっ……!」
バルディエル:『……力を使えば』
バルディエル:『……お前の身体が変わる』
トウジ:「……」
バルディエル:『……左』
左腕。
そこに何かが入り込んでくる。
熱い。
焼ける。
痛い。
トウジ:「これが……代償か」
バルディエル:『……拒める』
トウジ:「いや」
俺は立ち上がった。
トウジ:「受ける」
バルディエル:『……なぜ』
トウジ:「お前を使うんやない」
トウジ:「一緒に戦うんや」
影が初めて動いた。
巨大な手が伸びる。
俺の手と重なる。
その瞬間。
――ドクン。
巨大な鼓動。
そして。
――ドクン。
俺の鼓動。
二つが重なる。
侵食率100.1%
現実。
マヤ:「侵食率78%!」
リツコ:「まだ上がってる」
ミサト:「パイロットは!?」
マヤ:「意識反応あり!」
ゲンドウ:「……」
冬月:「碇」
ゲンドウ:「待て」
冬月:「何?」
ゲンドウ:「まだ終わっていない」
侵食率82%。
88%。
93%。
三号機の装甲が変形する。
左腕。
内部から黒い筋が走る。
マヤ:「左腕部に異常!」
リツコ:「エヴァ本体の組織じゃない」
マヤ:「使徒組織です!」
侵食率96%。
97%。
98%。
ミサト:「鈴原君!」
トウジ:「……聞こえてます」
ミサト:「もう離脱して!」
トウジ:「無理です」
ミサト:「どうして!」
トウジ:「俺は――」
100%。
警報が鳴り響いた。
マヤ:「侵食率100%!」
リツコ:「……!」
ミサト:「鈴原君!」
トウジ:「俺は」
一瞬。
全ての音が消えた。
そして。
表示が変わる。
100.1%。
マヤ:「……え?」
リツコ:「……?」
マヤ:「侵食率が」
数字が止まった。
100.1%。
マヤ:「停止しました」
リツコ:「そんな……」
侵食率は100%を越えている。
なのに。
三号機は暴走しない。
目も赤くならない。
拘束具も破壊されない。
ただ。
静かに立っている。
トウジ:「……終わったで」
ミサト:「何が?」
トウジ:「契約や」
その瞬間。
三号機の左腕が変わった。
装甲の隙間から白い組織が現れる。
骨。
筋肉。
そして。
黒い線。
エヴァの腕でありながら。
使徒の腕。
しかし。
それ以外は変わらない。
トウジの意識もある。
三号機も動いている。
マヤ:「暴走……なし」
リツコ:「あり得ない」
ゲンドウ:「……」
冬月:「使徒に侵食されたエヴァが、自我を維持している」
ゲンドウ:「違う」
冬月:「?」
ゲンドウ:「侵食ではない」
短く。
それだけ。
ゲンドウ:「共存だ」
初号機
別区画。
初号機。
シンジは状況を聞いていた。
ミサトからではない。
モニター越しに。
三号機が立っている。
シンジ:「……トウジ?」
返事はない。
シンジ:「トウジ!」
通信が繋がった。
トウジ:「シンジ」
シンジ:「……生きてる」
トウジ:「ああ」
シンジ:「よかった……」
シンジの声が震えている。
トウジ:「怖かったか?」
シンジ:「……うん」
トウジ:「俺もや」
シンジ:「……え?」
トウジ:「めちゃくちゃ怖かった」
シンジは黙った。
シンジ:「じゃあ……どうして?」
トウジ:「死にたくなかったからや」
シンジ:「……」
トウジ:「それにな」
左腕を見る。
白い皮膚。
黒い筋。
人間の腕ではない。
トウジ:「こいつも死にたくなかったんや」
シンジ:「……使徒?」
トウジ:「ああ」
シンジ:「でも……」
言葉が続かない。
トウジは待った。
シンジ:「怖くないの?」
トウジ:「怖いで」
シンジ:「じゃあ……」
トウジ:「せやから、これから考える」
シンジ:「……何を?」
トウジ:「こいつとどう生きるか」
シンジは答えなかった。
ただ。
通信を切らなかった。
それだけで十分だった。
左腕
実験終了後。
医務区画。
トウジはベッドに座っていた。
左腕を見る。
見た目は人間。
だが。
意識を集中すると。
黒い線が浮かぶ。
そして。
ほんの少しだけ。
腕が白く変わる。
トウジ:「……痛っ」
すぐに元へ戻る。
リツコ:「無理に使わないことね」
トウジ:「赤木博士」
リツコ:「今の変化は、あなたの意思で起こしたの?」
トウジ:「……たぶん」
リツコ:「たぶん?」
トウジ:「頭の中で頼んだら、動いた」
リツコは少し考えた。
リツコ:「それ以上は?」
トウジ:「まだ分かりません」
リツコ:「そう」
リツコは端末を見る。
そこには生体情報。
エヴァ三号機。
パイロット。
そして。
未知の生体反応。
だが。
リツコは「契約」という言葉を入力しなかった。
そんなデータは存在しない。
入力できるはずもない。
画面にはただ。
UNKNOWN BIOPATTERN
と表示されている。
リツコ:「……一つ」
トウジ:「何が?」
リツコ:「あなたの中に、もう一つの生体反応がある」
トウジは黙った。
トウジ:「バルディエルです」
リツコ:「名前を知っているの?」
トウジ:「俺がつけたんやない」
リツコ:「……そう」
それ以上、リツコは聞かなかった。
説明しすぎれば。
この現象そのものが嘘に見える。
そんな気がした。
ゲンドウ
司令室。
冬月:「鈴原をどうする?」
ゲンドウ:「監視する」
冬月:「拘束は?」
ゲンドウ:「不要だ」
冬月:「使徒を宿しているぞ」
ゲンドウ:「分かっている」
冬月:「危険ではないのか」
ゲンドウはモニターを見る。
そこには。
医務室へ運ばれるトウジの姿。
ゲンドウ:「問題は」
一拍。
ゲンドウ:「使徒ではない」
冬月:「では?」
ゲンドウ:「選択だ」
冬月は黙った。
ゲンドウ:「予定を変える」
それだけだった。
医務室
夜。
トウジは一人だった。
窓の外。
第三新東京市の夜景。
俺は左腕を見た。
トウジ:(……ほんまに変わってもうた)
人間。
エヴァパイロット。
そして。
使徒と契約した存在。
原作にはない。
俺自身が作ってしまった未来。
怖い。
けれど。
胸の奥に。
小さな鼓動がある。
ドクン。
俺の心臓。
そして。
ドクン。
別の鼓動。
トウジ:「……バルディエル」
返事はない。
トウジ:「寝たんか?」
少しして。
バルディエル:『……いる』
トウジ:「そうか」
バルディエル:『……友』
トウジは少し驚いた。
トウジ:「なんや?」
バルディエル:『……友』
トウジ:「……」
思わず笑った。
トウジ:「そうやな」
バルディエル:『……友』
トウジ:「よろしくな」
沈黙。
そして。
バルディエル:『……よろしく』
俺は天井を見た。
トウジ:(これで原作から外れた)
でも。
それだけじゃない。
原作を知っているからこそ。
俺には分かる。
バルディエルを倒さなかったことで。
未来は変わった。
だが。
使徒がいなくなったわけじゃない。
ゼーレもいる。
ゲンドウもいる。
アダムも。
リリスも。
そして。
まだ名前すら知らない使徒たちも。
俺は知らない。
これから何が起こるのか。
ただ一つ。
確かなことがある。
俺は。
死ななかった。
そして。
バルディエルも。
ターミナルドグマ
同じ頃。
誰もいない最深部。
巨大な白い巨人。
リリス。
その顔は。
いつも通り。
白い仮面に覆われている。
動かない。
目も開かない。
何も起こらない。
ただ。
ほんの僅かに。
その頬を。
赤い液体が一筋だけ流れた。
涙にも見える。
血にも見える。
だが。
誰も見ていない。
そして。
リリスは何も語らない。
ただ。
静かに。
そこにいる。
翌朝
学校。
教室。
トウジが入ってくると。
教室中の視線が集まった。
ケンスケ:「鈴原!」
トウジ:「なんや」
ケンスケ:「お前、生きてるのか!?」
トウジ:「見たら分かるやろ」
ケンスケ:「いやいやいや! 昨日の三号機!」
トウジ:「……まあ」
ケンスケ:「使徒に乗っ取られたって聞いたぞ!」
トウジ:「乗っ取られてへん」
ケンスケ:「じゃあ何だよ」
トウジ:「……仲直りした」
ケンスケ:「は?」
トウジ:「なんでもない」
その横。
シンジが立っていた。
シンジ:「トウジ」
トウジ:「おう」
シンジ:「……今日も学校来たんだね」
トウジ:「当たり前や」
シンジは少しだけ笑った。
そこへ。
アスカがやってくる。
アスカ:「アンタ」
トウジ:「なんや」
アスカ:「昨日のアレ」
トウジ:「アレ?」
アスカ:「三号機」
トウジ:「ああ」
アスカ:「……気持ち悪い」
トウジ:「そうか」
アスカ:「そこで怒らないの?」
トウジ:「別に」
アスカ:「ふん」
アスカは腕を組む。
アスカ:「でも」
トウジ:「?」
アスカ:「アンタのこと、まだ信用してないから」
トウジ:「そらそうやろ」
アスカ:「……何よ、その反応」
トウジ:「会ったばっかりやし」
アスカは一瞬だけ黙った。
そして。
アスカ:「……分かってるじゃない」
それだけ言って。
席へ向かった。
シンジが小さく笑う。
シンジ:「アスカ、少し変わったね」
トウジ:「いや」
トウジは苦笑した。
トウジ:「まだめっちゃ警戒されとるで」
シンジ:「そうかな」
トウジ:「そうや」
そのとき。
レイが教室へ入ってきた。
綾波レイ。
彼女はトウジを見る。
しばらく。
何も言わない。
そして。
レイ:「……鈴原君」
トウジ:「なんや?」
レイ:「昨日」
トウジ:「うん」
レイ:「あなたの中から」
少し間。
レイ:「誰かの声がした」
トウジの表情が固まった。
トウジ:(……聞こえたんか)
レイ:「母……?」
トウジ:「え?」
レイは首を傾げる。
レイ:「違う」
トウジ:「……」
レイ:「母ではない」
トウジ:(母……?)
バルディエルが反応した。
ドクン。
レイの瞳が僅かに揺れる。
レイ:「……似ていた」
トウジ:「誰に?」
レイは答えない。
ただ。
小さく呟いた。
レイ:「遠い場所の、誰かに」
それだけ。
そして。
席に座った。
トウジはしばらく動けなかった。
バルディエル:『……知る』
トウジ:(何を?)
バルディエル:『……まだ』
トウジ:(まだ?)
返事はなかった。
その日の夕方
NERV。
地下。
MAGIが静かに稼働している。
画面には。
鈴原トウジ。
EVA-03。
そして。
UNKNOWN BIOPATTERN。
一つ。
その横には。
侵食率100.1%の記録。
リツコは画面を見つめる。
リツコ:「……使徒は死んでいない」
マヤ:「はい」
リツコ:「パイロットも死んでいない」
マヤ:「はい」
リツコ:「なら」
リツコは画面を閉じた。
リツコ:「これは侵食じゃない」
マヤ:「では……?」
リツコ:「まだ名前をつけない方がいいわ」
画面が暗くなる。
その一瞬。
ほんの僅かに。
UNKNOWN BIOPATTERNの波形が。
トウジの心拍と重なった。
ドクン。
ドクン。
二つの鼓動。
それは。
まだ。
始まりにすぎなかった。
第一話 終
次回予告
ミサト:「えーっと、次回予告!」
ミサト:「三号機事件から一夜明けて、学校に戻った鈴原君!」
ミサト:「でも、使徒と契約したって事実は、そう簡単には消えないわ!」
ミサト:「シンジ君はトウジ君を信じたい。でも、怖い。」
ミサト:「アスカは当然、もっと怖い!」
ミサト:「そして綾波は――何かを感じ取っているみたい」
ミサト:「その頃、NERVでは三号機の左腕に残った異常組織を調査開始!」
ミサト:「使徒と人間、その境界にあるものは一体何なの?」
ミサト:「次回!」
ミサト:「『第二話 使徒従属』」
ミサト:「サービス、サービスぅ!」
――第十三の主従。
その物語は。
まだ。
始まったばかりだった。