朝。
窓の外は、昨日までの雨が嘘みたいに晴れていた。
病室の窓から差し込む光が、白い床の上に細長い四角形を作っている。
トウジは、その光をぼんやり眺めていた。
目が覚めてから、もう二十分になる。
身体に痛みはない。
左腕も、見た目だけなら以前と何も変わらない。
指を握る。
開く。
もう一度握る。
普通だ。
少なくとも、目で見る限りは。
けれど。
――普通ではない。
それだけは分かっていた。
「……またやっとるな」
頭の奥から声がした。
バルディエルだった。
トウジは眉を寄せる。
「何がや」
「左腕を確認している」
「そら確認するやろ。お前がおるんやから」
「私がいることと、腕を確認することに関係があるのか?」
「大ありや」
少しだけ間が空く。
「……そうか」
バルディエルは、それ以上言わなかった。
以前なら、その沈黙を不気味に感じていた。
今は違う。
そこにいる。
それだけだ。
常に頭のどこかにいる。
声が聞こえる時もあれば、声ではなく「そこにいる」という感覚だけが残る時もある。
それが、トウジにとっての新しい日常になりつつあった。
だが。
昨日から、一つだけ違う。
誰かに見られている。
その感覚だけが消えない。
病室の扉を見る。
閉じている。
窓を見る。
誰もいない。
監視カメラ。
そこには、いつもの小さな赤いランプ。
「……あれか?」
「何がだ」
「監視カメラ」
「NERVの施設なら、監視されるのは当然だろう」
「……それは分かっとる」
トウジはベッドから足を下ろした。
床に足が触れる。
少し冷たい。
立ち上がる。
身体に異常はない。
そのまま監視カメラの正面に立った。
赤いランプが見える。
トウジは、じっとそれを見た。
「……見とるんか?」
当然、返事はない。
それでも。
ほんの一瞬。
カメラの向こう側から、何かが返ってきたような気がした。
トウジは目を細める。
「……今の」
「どうした」
「いや」
もう一度見る。
何もない。
「……気のせいや」
そう言った瞬間。
頭の奥で、バルディエルが低く呟いた。
「違う」
トウジの表情が変わる。
「……何や」
「今、こちらを見ていた」
「カメラがか?」
「違う」
バルディエルの声には、いつもとは違うものが混じっていた。
警戒。
トウジは息を止める。
「誰や」
「分からない」
「お前でも分からんのか」
「分からないから、警戒している」
トウジは黙った。
やがて、ゆっくりとカメラから視線を外す。
「……そうか」
その声は小さかった。
病室の外から、足音が近づいてくる。
トウジは反射的に振り返った。
扉が開く。
「おはよう、トウジ君」
葛城ミサトだった。
片手に紙袋を提げている。
「今日は元気そうね」
「おかげさんでな」
「それはよかった」
ミサトは笑った。
だが、その笑顔は長く続かなかった。
トウジが監視カメラを見ていたことに気づいたからだ。
「……何か気になる?」
「別に」
「そう?」
「ただのカメラやろ」
「そうね」
ミサトはそれ以上追及しなかった。
紙袋をテーブルに置く。
中から飲み物と簡単な食事を取り出した。
「朝ご飯。病院食だけじゃ足りないでしょ?」
「助かるわ」
「まだ完全復帰じゃないんだから、食べて寝て、ちゃんと休むこと」
「分かっとる」
ミサトは椅子に腰掛けた。
トウジもベッドに座り直す。
しばらく、二人の間に沈黙が落ちた。
昨日までなら、ミサトが何か質問していた。
だが今日は違う。
何も聞かない。
それが逆に気になった。
「……葛城さん」
「なに?」
「昨日の話や」
ミサトの目が少しだけ細くなる。
「観測室のこと?」
「そうや」
「何か思い出した?」
「いや」
トウジは首を横に振った。
「逆や」
「逆?」
「思い出せへんことが、増えた」
ミサトは黙った。
トウジは自分の左腕を見る。
「昨日、あの数字見たやろ」
「……3:17?」
トウジが顔を上げた。
「知っとるんか」
「あなたが気にしていたから」
「それだけか?」
ミサトは答えなかった。
その沈黙だけで十分だった。
トウジは小さく息を吐く。
「やっぱり、NERVでも分かっとらんのやな」
「分かっていることもあるわ」
「どこまでや」
「それを私が話していいかどうか、まだ決められてない」
「……なるほどな」
トウジは紙袋から飲み物を取り出した。
蓋を開ける。
一口飲む。
「ほんなら、一つだけ教えてくれ」
「何?」
「俺は……監視されとるんか?」
ミサトの手が止まった。
ほんの一瞬。
それだけだった。
だが、トウジには分かった。
「……監視されてるわ」
ミサトは嘘をつかなかった。
「NERVのパイロットだから?」
「それもある」
「他にもあるんやな」
「ええ」
ミサトはトウジを見る。
「あなたが、参号機と一緒に生き残ったから」
その言葉に、バルディエルが反応した。
トウジの頭の奥に、冷たい感覚が走る。
「……生き残ったから?」
「正確には、今までNERVが確認したどのパイロットとも違う状態になったから」
「俺は俺や」
「分かってる」
ミサトは静かに答えた。
「だから私は、あなたを普通の人間として扱いたいと思ってる」
トウジは何も言わなかった。
ミサトの声は優しい。
だからこそ、その言葉の奥にある葛藤が伝わってきた。
守りたい。
でも、監視しなければならない。
信じたい。
でも、分からない。
それは、トウジにも分かる。
自分だって同じだった。
バルディエルを信じていいのか。
この力を使っていいのか。
自分は本当に変わっていないのか。
分からないことだらけだ。
「……葛城さん」
「うん」
「俺が怖いか?」
ミサトは答えなかった。
数秒後。
「怖いわ」
正直な答えだった。
トウジは少し驚いた。
「でも」
ミサトは続けた。
「怖いからって、あなたを人間じゃないものとして扱うつもりはない」
トウジは俯いた。
胸の奥に、何かが引っかかった。
「……そら、ありがたいわ」
ミサトは笑わなかった。
「トウジ君」
「なんや」
「もし、また何か聞こえたら」
「バルディエルの声か?」
「ええ」
「言うんか?」
「言ってほしい」
「……研究材料にするため?」
ミサトは少しだけ目を伏せた。
「それもある」
そして、トウジを見る。
「でも、それだけじゃない」
「……?」
「あなた自身が、それを一人で抱え込まないため」
トウジは返事をしなかった。
だが、その言葉は残った。
しばらくして、ミサトが立ち上がる。
「午後には退院の許可が出る予定よ」
「学校は?」
「明日から」
「……マジか」
「委員長がすごく心配してる」
トウジは苦笑した。
「そうやろな」
「それと」
ミサトは扉の前で振り返った。
「今日、午後から検査があるから」
「またか」
「短時間で終わるわ」
「……了解」
扉が閉まる。
静かになった病室。
トウジは天井を見る。
「……聞いとったか?」
返事はない。
「バルディエル」
「聞いている」
「俺、怖いんやと思う」
「何が?」
「自分が何になるか」
少しの沈黙。
「私は、あなたが何になるかを決められない」
「……そうか」
「それを決めるのは、あなた自身だ」
トウジは目を閉じた。
「それ、最近よく言うようになったな」
「学習した」
「誰からや」
「あなたからだ」
トウジは小さく笑った。
「……変な奴やな」
「お互い様だ」
その答えに、トウジは笑った。
だが。
笑いが消えた瞬間。
左腕に違和感が走った。
「……っ」
左腕を押さえる。
痛みではない。
熱でもない。
何かが皮膚の下を流れている。
トウジは袖を捲った。
皮膚は普通だった。
それでも。
腕の内側に、一瞬だけ黒い線が浮かんだ。
そして消える。
「バルディエル」
「見ている」
「今の何や」
「分からない」
「お前の力やないんか?」
「私のものだけではない」
トウジは眉をひそめた。
「……どういう意味や」
返事がない。
「おい」
「……何かが、こちらに触れようとしている」
トウジは立ち上がった。
その瞬間。
病室の照明が一度だけ明滅した。
そして――
廊下の向こうから、機械音が響いた。
*
NERV地下。
第二発令所。
赤木リツコはモニターを睨んでいた。
画面には、数十本の波形が並んでいる。
「もう一度」
オペレーターが操作する。
「はい」
画面が切り替わる。
そこに表示されたのは、トウジの生体データだった。
脳波。
心拍。
神経活動。
そして。
契約反応。
「……また出た」
リツコが呟く。
「時刻は?」
「午前九時四十一分です」
「記録を照合して」
「はい」
別の画面に過去のデータが並ぶ。
九時四十一分。
その数字の横に、警告表示が出た。
「反応値、通常時の範囲を超えています」
「どのくらい?」
「一秒未満ですが、観測系そのものに干渉しています」
リツコは眉を寄せた。
「観測系に?」
「はい」
「トウジ君自身がデータを出したんじゃない」
「……はい」
「データを取得した側が、反応した?」
オペレーターは答えられなかった。
リツコは椅子から立つ。
画面を拡大する。
そこには、一瞬だけ現れた異常な波形があった。
六つ。
等間隔ではない。
しかし、確かに六つの反応が重なっている。
「……光輪」
小さく呟く。
だが、画面に光輪そのものが映っているわけではない。
ただ、波形の構造が似ている。
「六枚目までのデータと一致します」
「違う」
リツコは即座に否定した。
「六枚目の反応とは違う」
「では……」
「これは外から来ている」
室内が静まる。
リツコは別の画面を開いた。
そこには、以前の接続実験のデータ。
Eva-04。
正常稼働。
その記録の一部だけが、不自然に欠落している。
「……Eva-04の接続実験以降、同じ反応が断続的に出ている」
「関連性があると?」
「分からない」
リツコは画面を見つめた。
「だから調べている」
そのとき。
発令所の奥から声がした。
「赤木博士」
振り返る。
碇ゲンドウだった。
「この件はどうなっている」
「まだ判断できません」
「判断できない?」
「現段階では、トウジ君の契約反応とEva-04の接続実験、その二つを結びつけるだけの証拠がありません」
「証拠がないから調べるのだろう」
「ええ」
リツコは画面を閉じた。
「ただし、もう一つ問題があります」
「何だ」
「この反応を、誰かが観測している可能性があります」
ゲンドウの目が細くなる。
「誰か?」
「NERVの観測系ではありません」
「根拠は」
「観測データに、観測対象とは別の反応が残っている」
リツコは一枚のグラフを表示した。
「トウジ君を測定したデータの中に、トウジ君自身でも、バルディエルでもない反応が混ざっている」
ゲンドウは黙った。
「それは何だ」
「分かりません」
「使徒か」
「断定できません」
「ならば、可能性を調べろ」
「分かっています」
ゲンドウはそれ以上何も言わず、発令所を出ていった。
リツコはその背中を見送った。
そして、誰もいなくなった画面を見る。
「……観測者、ね」
彼女は昨日の記録を開いた。
時刻。
3:17。
そこに残された文字。
――観測者:在席。
「あなたは……誰を見ているの?」
答えはない。
*
午後。
トウジは検査室へ移動していた。
透明な壁。
白い床。
頭部にセンサーを取り付けられる。
「動かないでくださいね」
看護師が言う。
「分かっとる」
椅子に座る。
目の前のモニターに波形が映る。
リツコが少し離れた場所に立っていた。
「始めます」
機械が起動する。
低い駆動音。
トウジは目を閉じた。
最初は何もない。
ただの検査だった。
脳波。
心拍。
神経。
いつものデータ。
ところが。
「……?」
耳の奥で、何かが鳴った。
遠い音。
水の底から聞こえるような音。
トウジは目を開けた。
「今……」
「どうしたの?」
リツコが近づく。
「何か聞こえた」
「どんな音?」
「分からん」
トウジは周囲を見る。
誰もいない。
「……声やった気もする」
リツコの表情が変わる。
「何と言っていた?」
「聞き取れへん」
「バルディエル?」
「ちゃう」
即答だった。
「……あれは、お前やない」
頭の中でバルディエルが答える。
「そうだ」
「じゃあ、誰や」
「分からない」
再び音が聞こえた。
今度は少しだけ明確だった。
――……。
トウジは息を呑む。
「……何や?」
リツコが尋ねる。
トウジは答えない。
聞こえた。
確かに。
誰かが呼んだ。
自分の名前ではない。
もっと古い何か。
自分が知らないはずの言葉。
「……とう……」
途切れた。
トウジは額を押さえる。
頭の奥が痛む。
「鈴原君!」
リツコの声。
だが、それより早く。
黒い線が左腕に走った。
一筋。
二筋。
そして。
三つ。
皮膚の上に浮かんだ黒い線が、ゆっくりと脈動する。
「止めて!」
リツコが叫ぶ。
検査装置が停止する。
トウジは荒い息を吐いた。
左腕を握る。
「……今の」
「何が見えた?」
リツコの声は冷静だった。
だが、目は明らかに動揺している。
「……見えたんやない」
トウジは答えた。
「思い出しかけた」
「何を?」
「分からん」
それだけ言って、トウジは黙った。
そのとき。
モニターが一瞬だけ暗転した。
復帰。
そして画面中央に、一行だけ文字が浮かぶ。
接続確認
リツコが息を止めた。
その下。
契約者:鈴原トウジ
さらに。
使徒:第十三
リツコの表情が変わる。
「……第十三?」
その言葉を聞いた瞬間。
トウジの頭の奥で、バルディエルが初めて明確な警戒を示した。
「見るな」
「……何?」
「その文字を、これ以上見るな」
「なんでや」
「分からない」
バルディエルの声が低くなる。
「だが、これは私たちに向けた記録ではない」
「ほんなら誰にや」
沈黙。
そして。
「……向こうから、見ている」
トウジの背筋が凍った。
モニターの文字が変わる。
観測者:在席
その瞬間。
検査室の照明が落ちた。
真っ暗になる。
「何!?」
誰かの声がする。
非常灯が点く。
赤い光。
トウジはゆっくり顔を上げた。
透明な壁の向こう。
廊下。
その先に。
誰かが立っている。
白い服。
白い髪。
少年のような姿。
顔は見えない。
ただ。
こちらを見ている。
トウジの呼吸が止まる。
「……誰や」
少年は動かない。
バルディエルが、頭の中で呟く。
「……あれだ」
「何が」
「昨日から、こちらを見ているもの」
トウジは立ち上がろうとした。
だが。
少年は一歩だけ後ろへ下がった。
そして。
廊下の角へ消えた。
「待て!」
トウジが駆け出す。
「鈴原君!」
リツコの声を振り切り、扉を開ける。
廊下には誰もいない。
左。
右。
どちらにもいない。
ただ、床に白い紙が一枚落ちていた。
トウジは拾い上げる。
そこには、何も書かれていなかった。
白紙。
ただ。
紙の中央に。
指で押したような黒い跡が一つだけ残っている。
トウジはそれを見つめた。
「……なんや、これ」
黒い跡が、ほんのわずかに形を変える。
線になる。
一本。
そして。
二本。
六本。
トウジの左腕に浮かぶものと同じ形。
六つの線が、円を作る。
だが。
円は完成しない。
一箇所だけ、空いている。
「……六つ」
バルディエルが呟く。
トウジは紙を握った。
「知っとるんか?」
「知らない」
「嘘つくな」
「知らない」
バルディエルの声に、怒りはなかった。
ただ、戸惑いがあった。
「だが……」
「何や」
「六つでは、ない」
トウジが顔を上げる。
「……?」
「これは、六つを示しているのではない」
「ほんなら何を示しとる」
バルディエルは答えなかった。
トウジは紙を見る。
六つの線。
そして、一つだけ空いた場所。
その形を見ていると。
胸の奥がざわついた。
知っている。
そんな気がする。
けれど。
思い出せない。
「……なんやねん」
紙を握る手に力が入る。
「俺は……これを知っとる」
その瞬間。
頭の中に、一瞬だけ映像が流れた。
暗い場所。
小さな手。
誰かの手を握っている。
声。
聞き取れない。
そして。
白い光。
「――約束」
トウジは呟いた。
「……え?」
リツコが聞き返す。
だが、トウジ自身も驚いていた。
「今……俺、何て言うた?」
答えはない。
バルディエルも沈黙している。
ただ。
トウジの左腕。
そこに浮かんだ黒い線の一部が。
ほんの一瞬だけ。
金色に変わった。
そして消えた。
*
同じ頃。
NERVのどこでもない場所。
白い壁。
白い床。
白い椅子。
少年はそこに座っていた。
手元には、何もない。
目の前には、暗い画面。
そこに一つだけ数字が浮かんでいる。
3:17
少年はそれを見ていた。
やがて、静かに呟く。
「まだ、思い出していない」
声は幼い。
しかし、その響きには年齢がなかった。
画面の数字が消える。
代わりに、一つの言葉が現れる。
契約者
少年は目を細めた。
「違う」
さらに文字が変わる。
第十三
「それも、違う」
最後に。
一つの言葉だけが残る。
主従
少年はしばらくそれを見つめていた。
そして。
小さく笑った。
「まだ、決まっていない」
画面が消える。
暗闇の中で。
少年だけが呟いた。
「だから、見ている」
*
夕方。
トウジは病室に戻っていた。
窓の外が赤く染まっている。
ベッドに座り、今日拾った紙を見つめる。
何度見ても、ただの白い紙だ。
黒い線も消えている。
「……夢やったんかな」
「違う」
バルディエルが答える。
「そうか」
「記憶だ」
トウジは顔を上げた。
「記憶?」
「あなたが忘れているもの」
「何を」
「それは分からない」
トウジは苦笑した。
「便利な答えやな」
「事実だ」
「……まあええ」
窓を見る。
夕日が沈んでいく。
「でも、一個だけ分かった」
「何が?」
「俺は、自分が何者か分からんのが怖いんやない」
トウジは自分の左腕を見る。
「分からんまま、誰かに決められるのが怖いんや」
バルディエルは何も言わない。
トウジは続ける。
「俺が人間なんか、使徒なんか」
少し間を置く。
「何を持っとるんか」
さらに。
「誰に見られとるんか」
トウジは窓の外を見た。
「それを決めるんは、俺や」
頭の奥で。
バルディエルが答える。
「……そうだな」
その言葉は。
以前とは少し違って聞こえた。
命令ではない。
肯定でもない。
ただ。
同じ場所に立っている者同士の言葉だった。
その夜。
時計の針が進む。
3:16。
トウジは眠っている。
3:17。
病室のモニターが一瞬だけ点滅した。
心拍。
脳波。
正常。
そして。
画面の隅に、一つだけ表示される。
観測者:在席
次の瞬間。
表示は消えた。
誰も気づかない。
ただ。
トウジの左腕の皮膚の下で。
六つの黒い線が、ゆっくりと脈動していた。
その中心には。
まだ誰にも見えない。
七つ目の空白があった。