第十三の主従   作:知人

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第五話 落下する天使

 

NERV本部・発令所

警報が止まらない。

赤い回転灯が天井を染める。

マヤ:「目標、高度一万七千!」

青葉:「落下速度上昇!」

日向:「予測着弾地点、第三新東京市中心部!」

ミサトはスクリーンを見上げた。

巨大な円。

幾重にも重なる輪。

その中心で脈打つコア。

第10使徒、サハクィエル。

原作通りなら。

ここから都市ごと押し潰される。

だが。

一つだけ違う。

トウジ:「あの中に欠片がおる。」

発令所が静まり返る。

リツコは短く息を吐いた。

リツコ:「確認は?」

トウジ:「見えました。」

リツコ:「確信?」

トウジ:「……あります。」

ゲンドウ:「出撃。」

その一言で全員が動いた。

発進準備

参号機格納庫。

拘束具が外れる。

金属音が地下へ響く。

トウジはエントリープラグへ乗り込んだ。

LCL。

モニター起動。

シンクロ開始。

マヤ:「シンクロ率52.4。」

昨日より高い。

トウジ:(上がっとる。)

バルディエル:『近い。』

トウジ:(サハクィエルか。)

『そう。』

左腕が疼く。

まだ変化しない。

契約を使っていないからだ。

それが救いだった。

隣の格納庫。

初号機。

シンジはヘルメットを握っていた。

シンジ:「トウジ。」

通信が開く。

トウジ:「おう。」

シンジ:「……無茶しないで。」

トウジ:「約束できへん。」

シンジ:「……。」

トウジ:「でも。」

少し笑う。

「帰る。」

シンジは小さく頷いた。

弐号機。

アスカが鼻を鳴らす。

アスカ:「アンタ。」

トウジ:「何や。」

アスカ:「勝手に死んだら承知しない。」

トウジ:「偉そうやな。」

アスカ:「当然。」

少し間。

アスカ:「……あと。」

トウジ:「?」

アスカ:「その使徒に身体を渡すな。」

トウジ:「渡さん。」

バルディエルが静かに答えた。

『渡さない。』

その声は。

俺だけに聞こえていた。

発進

ミサト:「エヴァ各機、発進!」

射出。

初号機。

弐号機。

そして。

エヴァンゲリオン参号機。

地上へ飛び出す。

眩しい空。

その遥か上。

サハクィエルが回転していた。

巨大だった。

原作以上に。

静かだった。

まるで。

落ちることだけを決めた天体。

迎撃開始

アスカ:「先に行く!」

弐号機が跳ぶ。

高層ビルを蹴る。

ライフル射撃。

光弾。

だが。

サハクィエルまで届かない。

距離が遠すぎる。

シンジ:「ATフィールド!」

初号機が展開。

都市防衛ラインを構築する。

ミサト:「いいわ、そのまま維持!」

トウジは動かなかった。

空を見続ける。

ミサト:「鈴原君!」

トウジ:「待ってください。」

ミサト:「何を!」

トウジ:「まだ。」

バルディエル:『聞こえる。』

トウジ:(何が。)

『泣いてる。』

俺は息を止めた。

サハクィエル

誰にも聞こえない。

ただ一人。

俺だけに。

声が届く。

???:『落ちる。』

低い。

遠い。

空そのものが喋っているような声。

トウジ:「サハクィエル。」

『落ちる。』

トウジ:「聞こえるか。」

返事はない。

『落ちる。』

トウジ:「死にたいんか。」

沈黙。

そして。

初めて言葉が変わる。

『止まれない。』

俺は目を見開いた。

トウジ:「止まれへん?」

『命令。』

トウジ:(命令?)

バルディエル:『違う。』

トウジ:(何が。)

『命令ではない。』

一拍。

『本能。』

作戦変更

発令所。

マヤ:「目標速度増加!」

ミサト:「迎撃ライン変更!」

リツコ:「このままでは間に合わない。」

ゲンドウ:「……。」

冬月:「碇。」

ゲンドウ:「参号機。」

ミサトが振り返る。

ミサト:「え?」

ゲンドウ:「前へ出せ。」

ミサト:「危険です!」

ゲンドウ:「構わん。」

ミサトは舌打ちした。

ミサト:「鈴原君!」

トウジ:「はい!」

ミサト:「聞こえてるなら返事!」

トウジ:「聞こえてます!」

ミサト:「アンタに任せる!」

トウジ:「了解!」

その一言に。

シンジが振り向いた。

アスカも。

二人とも。

驚いていた。

ミサトが。

トウジに判断を委ねた。

それは初めてだった。

接近

参号機が跳ぶ。

ビル。

高速道路。

送電塔。

次々蹴る。

空へ。

まだ届かない。

トウジ:(バル。)

『いる。』

トウジ:(話せる距離か。)

『もう少し。』

左腕が熱い。

変化しそうになる。

トウジ:(まだ使わへん。)

『分かった。』

痛みが少し引いた。

契約を抑えた。

代償も抑えられた。

精神接続

空。

突然。

景色が赤く染まる。

赤い海。

俺は立っていた。

今回は。

バルディエルだけじゃない。

空そのものが。

巨大な輪になっている。

サハクィエルだった。

トウジ:「聞こえるか。」

長い沈黙。

サハクィエル:『止まれない。』

トウジ:「止まる方法探そう。」

『知らない。』

トウジ:「落ちたら街が壊れる。」

『知っている。』

トウジ:「嫌か。」

沈黙。

そして。

『嫌だ。』

その一言。

バルディエルが俺を見る。

『同じだ。』

俺も頷いた。

トウジ:「お前も一人なんか。」

サハクィエル:『空。』

トウジ:「?」

『ずっと空。』

『誰も触れない。』

胸が痛んだ。

また。

孤独だ。

また。

同じだ。

欠片

その時。

サハクィエルの中心。

黒い影。

欠片。

子供ほどの姿。

顔がない。

でも。

笑っている。

欠片:「おとうさん。」

トウジ:「……。」

欠片:「帰ろ。」

トウジ:「どこへ。」

欠片:「おかあさん。」

リリス。

やはり。

あれは。

ターミナルドグマを目指している。

バルディエルが前へ出る。

『近づくな。』

欠片:「まだ。」

バルディエル:『帰れ。』

欠片:「まだ足りない。」

その瞬間。

精神世界が崩れた。

現実

参号機が落下する。

トウジ:「ぐっ!」

シンジ:「トウジ!」

初号機が受け止める。

アスカ:「何やってんの!」

トウジ:「話してた!」

アスカ:「戦闘中よ!」

ミサト:「状況!」

トウジ:「サハクィエルは止まりたい!」

発令所。

沈黙。

リツコ:「本当?」

トウジ:「嘘つく理由ない!」

ミサト:「続けて!」

トウジ:「でも。」

俺は空を見る。

「欠片が邪魔しとる。」

都市防衛

サハクィエルがさらに降下。

ビルが震える。

避難警報。

市民が走る。

シンジ:「ATフィールド!」

初号機が押し返す。

弐号機が支える。

参号機が飛ぶ。

まだ契約は使わない。

まだ。

左腕は人間のまま。

その方が。

サハクィエルへ届く気がした。

発令所

リツコ:「葛城一尉。」

ミサト:「何。」

リツコ:「一つだけ可能性がある。」

ミサト:「何。」

リツコ:「コア。」

それだけだった。

ミサトは理解した。

「コアへ届けば。」

リツコは頷く。

ミサト:「鈴原君!」

トウジ:「はい!」

ミサト:「コアまで行ける!?」

トウジは空を見上げる。

遠い。

高い。

だが。

届く。

トウジ:「行きます。」

バルディエル:『痛い。』

トウジ:(分かっとる。)

『それでも?』

トウジ:(約束した。)

『帰るって。』

バルディエルが静かに笑った気がした。

『うん。』

ラスト

参号機が跳ぶ。

都市。

空。

雲を突き抜ける。

サハクィエル。

巨大なコア。

その中心。

欠片。

二人の視線が交わる。

欠片:「来た。」

トウジ:「迎えには来てへん。」

欠片:「知ってる。」

そして。

サハクィエルの輪が。

ゆっくりと開いた。

まるで。

トウジを迎え入れるように。

第五話 終

次回予告

ミサト:「次回!」

ミサト:「ついに参号機がサハクィエルのコアへ突入!」

ミサト:「でも待ってるのは、第10使徒だけじゃない!」

ミサト:「欠片が『足りない』って言う意味は何?」

ミサト:「そしてトウジ君は、二つ目の契約を結ぶのか!」

ミサト:「次回、『第六話 空に触れる』!」

ミサト:「サービス、サービスぅ!」

 

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