僕のヒーローアカデミア 〜メダル使いの規格外ヒーローライフ〜 作:アルフアルフ
鳳映二(おおとり えいじ)が実技試験の直後に派手に行き倒れてから、一週間。
鳳家のポストに届けられた、ずっしりとした重みのある雄英高校からの封筒を手に、映二の自室には二人の影があった。
「あぁ、私まで心臓がバクバクしてきました……! 映二くん、早く、早く開けましょう!」
白衣を脱いだ私服姿で、映二の袖をぎゅっと掴んで実の親以上にソワソワしているのは、一足先に雄英の2年生になっていた幼馴染のトガちゃん(トガヒミコ)だ。
「落ち着けよトガちゃん。今開けるから」
映二が慎重に封を切ると、中から転がり出してきたのは一枚の小さなホログラムデバイスだった。
勉強机の上に置かれたデバイスが起動し、青い光が立体的な映像を結ぶ。
『私が画面に投影された!!!』
画面に現れたのは、現No.1ヒーロー、平和 of の象徴――オールマイトだった。
『鳳少年! 君の実技試験の映像、別室のモニターで何度も見せてもらったよ! いやはや、あの0ポイントロボを一撃で粉砕した凄まじい大音量の声! 会場にいた誰もが肝を冷やし、特に対象を絞ったその圧倒的なポテンシャルには目を見張った! 直後に倒れてしまったと聞いた時は焦ったが、それほど凄まじい全力を出したということだな! まさにヒーローの卵にふさわしい!』
立体映像の中のオールマイトが、白い歯を見せて「ハッハッハ!」と豪快に笑う。
『鳳映二、実技試験――ヴィランポイント、42ポイント! ……さらに! 君は試験中、逃げ遅れた受験生たちの安全を確保し、あの巨体に真っ向から立ち向かった! 審査員はそれを見逃さない! レスキューポイント、36ポイント! 合計78ポイント! 君が今年度の入試における、堂々のトップ、首席合格者だ!!!』
画面の中のオールマイトが、その大きな手を差し伸べるように広げる。
『鳳少年、君のその頭脳明晰な個性研究の成果と、常識を打ち破るパワーを雄英は歓迎する! 来いよ鳳少年! ここが君のヒーローアカデミアだ!!!』
パツン、と光が消え、部屋に静寂が戻る。
一瞬の静寂の後、隣にいたトガちゃんが「やった、やったぁぁ!!」と映二の首に思いっきり抱きついて大はしゃぎした。
「すごいです映二くん! 首席! 首席合格ですよぉ! やっぱり映二くんは世界一格好いいです!!」
「お、おう、苦しいってトガちゃん……。まあ、これで約束通り、トガちゃんと同じ学校に行けるな」
映二は顔を赤くしながらも嬉しそうに微笑み、机の上に置いてある、血の滲むような努力が詰まった『個性研究ノート』をそっと閉じた。
数日後。
桜の花びらが舞い散る中、雄英高校の校門前に立つ映二の姿があった。
カレンダーは、まだ原作の全寮制が始まるよりずっと前の、懐かしい通学路の春を示している。
「映二くん! はい、これお祝いです!」
校門のすぐそばで待ち合わせをしていたトガちゃんが、保健委員の腕章を腕に巻き、満面の笑顔で重箱のような特大の三段重弁当を差し出してきた。
「ヒミコ特製の超高カロリーレバーハンバーグ特盛弁当ですよぉ! 早く食べましょう!」
「いや、まだ校門潜ったばっかだし、これから入学式なんだけど……」
そう言いながらも、映二は当たり前のようにトガちゃんの近い距離感を受け入れ、二人の間には長年の幼馴染ならではの、どこか甘酸っぱくて微笑ましい空気が自然と流れていた。
そこへ、背後から聞き覚えのある、真新しい雄英の制服を着た小柄な少年がトコトコと歩いてきた。頭に紫のぶどうを乗せた少年だ。
「……あ、あれ? お前、あの時の行き倒れ怪獣!」
「ん? あ、お前は試験の時のぶどう男! ……倒れた俺を助けてくれたのお前だってな、ありがとう!」
映二はそう言って、ぶどう男へ真っ直ぐな笑みを向けた。意識を失う寸前、大慌てでスライディングしながら「しっかりしろ!」と叫んでくれた少年の姿を、映二の明晰な頭脳はしっかりと記憶していたのだ。
予期せぬ首席合格者からの、直球で清々しい感謝の言葉。少年は一瞬だけ、ジャージの袖で鼻を擦りながら「へへん、まぁな!」と誇らしげに胸を張った。だが、言葉を交わす映二の腕にごく自然に身体を寄せ、恋人同士さながらに仲良くイチャイチャしているトガちゃんの圧倒的な可愛さに再び目が向いた瞬間、その顔面はやっぱり嫉妬と絶望で一瞬にしてドロドロに崩壊した。
「って、おい……おい待てよお前……! 感謝の言葉は嬉しいけど、なんで入学初日から、そんなエロ可愛い美少女と当たり前みたいにイチャイチャしてんだよォォ!!! 俺なんか、クラスの掲示板見に行く前に、精神的ダメージでライフがゼロだわ! その空間に俺を混ぜろォォォ!!!(血涙)」
「おい、いきなり泣くなよ。試験の時といい、お前本当に面白いな」
呆れ果てて苦笑いする映二と、その横で「映二くんのお友達、変わった子ですねぇ」とクススク笑っているトガちゃん。
最悪で最高の出会いを果たした、まだ名前も知らない少年。環境を破壊する勢いで食う映二。そして、いつも笑顔で胃袋を支えてくれるトガちゃん。
これから始まる新しいクラスでの出会いやドタバタを前に、鳳映二の騒がしくて温かい雄英高校生活は、まずこの校門前で、最高のプロローグを迎えるのだった。