我は魔族の王サタン。
偉大なる恐怖の支配者。
余はついに人類の征服に乗り出す。
軍団の準備は整った。
小賢しい人間共を支配するのだ。
手始めに、余自ら人類代表と会い、我がプランを説明する。
全世界公開面談だ!
そして強力で無慈悲な征服計画を知らしめ、人類を恐怖と絶望に陥れてやるのだ。
さあ!余の相手は誰だ!
我が舌鋒の犠牲になるがよい!
「魔族王サタンと申します。本日は御多忙の中、御時間を頂き誠にありがとう御座いました!」
「國土繁栄建設第二グループ工事課責任者 鬼瓦 巌(おにがわら いわお)ですわ。よろしゅう!」
「早速ですが、今回は私共魔族による人類侵攻プランについて説明させて頂きます。限られた時間の中では御座いますがお付き合いのほど宜しくお願い申し上げます」
「なんやあんたら、人間を征服しにくるんやて?」
「はい。左様で御座いますが……」
「まず計画書見せてんか?」
「は、はい。先ず侵攻の開始につきましては……」
「あんた!誰が喋れゆうた!計画書見せろゆうてんねん!」
「計画書……?」
「書面で出せや!はよ!」
「あ……いえ……紙での用意は……」
「無いんかいや!」
「は……はい……」
「人類征服ゆうたら仰山の人、物動かさなあかんやろ!それで計画書作ってへんの!?」
「そこは……至りませんでした……」
「阿呆か!われ!『至りませんでした』とちゃうで!書面無しでどうやって関係部所に指示だすねん!」
「そ……それは……大丈夫です」
「何が大丈夫やねん?」
「計画につきましては、きちんと各軍団長にお伝えしましたので……」
「身内に『お伝えしました』ておかしいで、自分!言葉づかいから直さなあかんのとちゃうか!」
「は、はい……!」
「ほんでよう。軍団長何人おんねん?」
「はい……7人おります」
「名前教えてんか?」
「分かりました。ベルゼブブ、ベリアル、アスタロト、バアル、アスモデウス、あと……ええと……」
「早言えや!」
「う…うう……調べます!」
「ペイモンとマモン、ちがうんか!」
「あ!そうです!それです!」
「なんでわいの方が詳しいねん?自分、部下の名前も覚えてへんのか?」
「いえ…いつもは覚えているんですが……今日は……なぜか思いだせなくて……」
「言い訳すな、阿呆!ほんで軍団長には事前発注してるんやろな?」
「事前……発注?」
「何キョトンとしてんねん。でかい仕事さすんやろ!事前に報酬と計画内容まとめて書面で発行してるんやろな?」
「いえ……。でも口頭でしっかりお伝えは致しました……」
「あんた!仕事頼むのに口約束だけかいな!」
「で、でも、彼らはとてもしっかりした頼りになる者達ですので、大丈夫だと思います」
「何が大丈夫やねん?『思います』てなんやねん!」
「え……?だから……」
「何が大丈夫やゆうてんねん!脳に虫わいてんのか!?口約束は絶対あかん!事前発注は仕事の基本やろ!」
「で、でも……彼らは分かってくれてると思います……」
「また『思います』かいな。よっしゃ分かった。あんた携帯持ってるか?」
「携帯?悪魔スマホなら有りますが……」
「おう。軍団長誰でもええから連絡取れや!」
「え!今ですか?」
「当たり前やろ!ちゃっちゃとせいや!」
「え!いや……その……連絡先……わからないです」
「ほう……スマホの電話帳開けや!」
「い、いや……はい……」
「《ベ》のところみせろ!ほら!ちゃんと《ベルゼブブぐんだんちょう》て登録されてるやないか!嘘つくな!それと軍団長ぐらい漢字で入力せえや!」
「は……はい……申し訳ございません。…………あ、もしもし……ベルさんですか?サタンです。お疲れ様です。今ちょっと宜しいですか?」
「ちょっと電話代われや」
「え!は、はい……。今ちょっと人間と喋ってて……その方に代わります」
「あ、もしもし。忙しいとこすんまへんなあ。國土繁栄建設の鬼瓦いいます。突然ですんまへんけど、人類侵攻計画て聞いてます?」
『ああ。聞いてら。どてらい話やゆうてみんな目を回してら』
「その話て詳しい説明聞いてます?」
『詳しいもなにも……とにかく行ってくれとだけは聞いてら』
「ほんまですか。仕事の規模と報酬の取り決めは無しですか?」
『そこは後で揉めたら嫌やさかい、書面でくれ、ゆうたんやけど……ちょっと待ってくれ、後で流すさかい、ゆうたまま音沙汰無しや』
「音沙汰ありまへんのか?それは困ったもんでんな」
『それともうひとつ気掛かりがあってら』
「気掛かり?何ですねん」
「人間にちょかいかけたら天使が出てきますねん」
「天使でっか?」
「はいな。ミカエルとか出て来たらややこしいさかい。そこの抑えだけはしっかりして欲しいて頼んだんやけど……大丈夫の一点張りで……」
「そうですか……。大体話は分かりました。お忙しいとこすんまへんなあ」
『ほんで宜しいかな。失礼します~!』
「おい!魔王先生……どこが、ちゃんと伝わってんねん!」
「いや……おかしいです……どうしてだろ……」
「どうして……ちゃうねん!あんたがちゃんと伝えれてないだけやねん!それとや!天使の件もしっかり抑えてあるんやろな?」
「はい!それは大丈夫です。飲み会で計画の話をした時に『手を出さへん』と言うてくれました」
「ほんまかい……ほなミカエルに繋いでくれ」
「え!ミカエルに!」
「当たり前やないか!今すぐや!」
「うう……あ!もしもし……天使長ですか?サタンです。ご無沙汰してすみません。ちょっと人間に代わります」
「人間の鬼瓦ゆうもんですけど、唐突にすみません。ちょっと聞きたいことがあって。魔族の人類侵攻計画って知ってます?」
『はぁ!?知らんで、そんなん』
「大軍で人間征服しに押し寄せるらしいですわ。その時は天使は手を出さへん約束て魔王ゆうてますけど?」
『なんじゃいそれ!魔王に代わってんか!』
「あ~御電話代わりました……」
『あんた!何ゆうてんねん!いつ誰がそんな約束した?』
「え……でも……飲み会の場で……」
『それは人間があまりにもいちびり過ぎた時に、それを魔族が成敗したい時に事前申請したら、一応状況判断する言うただけや!一切手出しせえへんなんて一言も言うてないで!』
「そ、そんな……」
『それをすっ飛ばして人間に手出しするんやったらこっちも修羅になんで!』
「え!それは困ります!勘弁して下さい!」
『嫌やったらちゃんと手順踏めや!』
「は、はい……。あっ……!電話を切られてしまいました」
「そんなん当たり前やろ!ええ加減なことばっかりしやがって……。ほんでどないすんねん」
「え?どないって……」
「このまま計画進められるんかい?」
「い、いや……難しいかもしれません」
「難しい、やのーて無理やろ!自分どない思てんねん?」
「は、はい。私の至らなさで今の事態に至っていると思い……反省しております」
「反省して?ほんで?」
「自分自身頭の角先から足の爪の先まで見つめ直して出直します」
「いつまでに?」
「今が2030年ですから、2300年までには何とかしたいと思います」
「何でそんなに時間がかかんねん!お前!本気で攻めるつもりないやろ!やる気ないんやったらやめてまえ!」
「う……うぐう……。は……い……」
こうして魔王による恐ろしい人類侵略計画は阻止されたのであった。
――完――