OVERLORD︰ReVerse Seraphim 作:reel
ミラの計画は成功した。鈴木悟の心は、確かに『人間』としてのそれを取り戻した。
安堵に包まれていたその矢先、ミラは突如として、別の危機を思い出し、血相を変えた。
そう、原作の知識。このナザリック転移直後に起こる、最初の悲劇。スレイン法国の特殊部隊『陽光聖典』による、カルネ村の襲撃事件だ。
「問題なく出来たようじゃのってこのままではいかん!カルネ村に行かねばっ!」
突如焦りだしたミラの姿に、鈴木悟は面食らった。カルネ村? 聞き慣れない地名だ。
しかし、ミラのただならぬ様子から、それが緊急を要する事態であることは明らかだった。
彼女がこれほどまでに慌てるということは、そこでおぞましい何かが起ころうとしているに違いない。彼の脳裏に、原作知識という未知の要素がもたらす脅威がよぎる。
「カルネ村? ミラ、それは一体…? 何が…起こるんだ!?いや、それよりも…」
彼の問いに答えるよりも早く、鈴木悟は行動を起こした。彼はすぐさまそばに控えていたセバスに指示を出す。
主の尋常ならざる雰囲気を敏感に察知したが、何一つ問うことはない。ただ、主の次の命令を待つのみだった。
「セバス、遠隔視の鏡(ミラー・オブ・リモート・ビューイング)を起動しろ! 目標は、"カルネ村"だ! 急げ!」
「はっ、御意に」
セバスは即座に主の命令を遂行する。彼はインベントリから、黒曜石のフレームに縁どられた豪奢な姿見を取り出した。
遠隔視の鏡。高位の監視系魔法アイテムだ。ミラが場所を教え、セバスが鏡面に手をかざし、「カルネ村」と念じると、鏡の表面が水面のように揺らめき、やがて一つの光景を映し出した。
そこに映し出されたのは、森に囲まれた、のどかで小さな村だった。木造の家々が立ち並び、畑では農夫たちが鍬を振るっている。しかし、その平和な光景は、次の瞬間、悪夢へと変わった。
村の周囲から、突如として鎧をまとった騎士たちが現れたのだ。その数、およそ数十人。彼らはバハルス帝国の国旗が描かれた旗を掲げ、手に持った剣を振りかざし、無抵抗の村人たちに襲いかかった。
「ぎゃあああっ!」
「助けて!」
「に、逃げろぉ!」
鏡の中から、村人たちの悲鳴が響き渡る。騎士たちは、まるで虫けらを殺すかのように、老人、女、子供の区別なく、容赦なく斬りつけていく。家々は燃やされ、平和だった村は、瞬く間に阿鼻叫喚の地獄へと変貌した。
その凄惨な光景を目の当たりにした鈴木悟は、絶句した。これが、ミラが言っていた危機。これが、この世界で今、現実に起きていること。
カルマ値が反転し、人間としての感性を取り戻した彼にとって、その光景は耐え難い苦痛だった。胸の奥から、激しい怒りと、無力な人々への同情が燃え上がるように込み上げてくる。
「な…なんだ、これは! なぜ…なぜこんな!」
彼の声は怒りに震えていた。アンデッドの感情抑制がなければ、今頃彼は怒りのあまり叫び声を上げていただろう。
セバスもまた、その眉間に深い皺を寄せ、鏡に映る暴虐の限りを尽くす騎士たちを、冷たい怒りを宿した目で見つめていた。たとえ至高の御方に創られた身であっても、彼のカルマ値は『+300』。弱き者を虐げる行為を、決して許容できない。
ミラは焦燥に駆られながら、拳を強く握りしめた。間に合わなかった。既に、襲撃は始まってしまっている。
しかし、まだだ。まだ、全てが終わったわけではない。原作通りなら、これから村を救う『英雄』が現れるはず。そして、その英雄は、今ここにいる。
ミラは、決意を固めた目で鈴木悟を見つめた。彼女が介入したことで、物語は既に大きく変わっている。
ならば、ここからの展開も、自分たちの手で変えなければならない。
鏡に映る地獄絵図を前に、怒りと無力感に打ち震える鈴木悟。その彼に、ミラの的確な指示が飛ぶ。彼女の頭の中には、これから取るべき最善の行動が、原作知識に基づいて明確に描かれていた。
「悟。お主、戦士化の魔法があるじゃろ?あれで姿を隠して行くのじゃ。いまのままではただの豪華なアンデットじゃからの」
その言葉に、鈴木悟は我に返った。そうだ、この骸骨の姿のまま村に現れれば、村人たちを恐怖させるだけだ。救うどころか、更なる混乱を招くだけに終わる。
彼はかつて、ゲーム内で完璧な戦士をロールプレイするために創り上げた魔法、
《完全なる戦士(パーフェクト・ウォリアー)》
の存在を思い出した。この魔法を使えば、一時的にレベル100の戦士にクラスチェンジできる。魔法は使えなくなるが、その代わりに圧倒的な物理戦闘能力(同じレベルの戦士には勝てないがこの世界では十分強い)を得られるのだ。そして何より、全身を漆黒の鎧で覆い隠すことができる。
ミラは続けて、傍らに控える家令長に目を向けた。
「それとセバスも共に行くじゃろ?」
その提案に、セバスは即座に同意した。セバス・チャン。彼の素手による戦闘能力は、ナザリックでもトップクラスだ。その上、カルマ値が示す通り、彼の心根は善良そのもの。
弱き者を救うという今回の任務において、これほど頼りになる同行者はいない。
そしてミラは、近くで不安げに成り行きを見守っていた、小さな同行者にも声をかけた。
「キーノ!お主も来るのじゃ!」
ミラの力強い呼びかけに、キーノ――本名をキーノ・ファスリス・インベルンという、かつての吸血姫の少女は、ビクッと肩を震わせた。
彼女は、鏡に映る凄惨な光景に怯え、ミラのローブの裾を固く握りしめていた。しかし、ミラの決意に満ちた声と、自分を頼りにしてくれるその眼差しに、彼女は恐怖を振り払うようにこくりと頷いた。彼女もまた、この数百年間、ミラと共に数多の修羅場を乗り越えてきたのだ。
「はい!お供します!悟様、皆さんを助けましょう!」
彼女はそう言うと、小さな両手を胸の前で構え、いつでも魔法を放てる体勢を取った。彼女の専門である大地系の魔法は、敵の足止めや防御において絶大な効果を発揮するだろう。
方針は決まった。鈴木悟は迷わず行動に移る。
「分かった! 《完全なる戦士(パーフェクト・ウォリアー)》!」
彼が魔法の名を唱えると、その骸骨の体を、禍々しくも荘厳な漆黒のフルプレートアーマーが瞬時に覆い尽くした。赤いマントをたなびかせ、兜のスリットの奥で、赤い光点だけが妖しく揺らめいている。彼はインベントリの中にある、ギルドメンバーが遊びで創った二振りの巨大な剣を手に取った。準備は万端だ。
鈴木悟 「 これより我々は、あの村の民を救出する! 転移(ゲート)!」
セバス・チャン 「はっ! このセバス、身命を賭して御身をお守りし、民を救ってみせます!」
悟の力強い号令と共に、空間が歪み、黒い亀裂――転移門が開かれる。門の向こうには、煙が立ち上り、悲鳴が木霊するカルネ村近郊の森が見えていた。
漆黒の鎧をまとった戦士『モモン』へと姿を変えた鈴木悟が、先陣を切って門を潜る。その隣には、執事服のまま、しかしその佇まいは歴戦の武人のそれであるセバスが続く。そして、ミラとキーノもまた、覚悟を決めた表情で、その後を追った。
門が閉じた瞬間、彼らは森の静寂から、戦場の喧騒の只中へと投げ出された。森の木々の間から、燃え盛る家々が見える。鼻をつくのは、肉の焼ける嫌な臭いと、血の鉄錆びた香り。そして、耳を劈くのは、罪なき人々の断末魔の叫びだった。
村へと続く道を駆ける漆黒の戦士の隣で、ミラは切迫した口調で重要な情報を伝えた。この世界の力の上限。
それを知らずに力を振るえば、救うべき村人たちからさえも、化け物として恐れられることになりかねない。
「悟よ!先に伝えておくのじゃ!基本的にこの世界の魔法は6位階以上を扱うものはほとんどおらぬ!もし魔法を使う場合は気をつけるのじゃ!」
モモン――鈴木悟は、兜の中で目を見開いた。第六位階。それはユグドラシルでは中堅レベルの魔法であり、ナザリックの住人ならば、戦闘メイドですら扱える者がいる。
この世界の『常識』は、彼が思っていた以上に低いレベルにあるようだ。ミラの忠告は、今後の彼の行動指針を決定づける上で、極めて重要な意味を持っていた。
会話を交わしている間にも、一行は森を抜け、燃え盛る村の入口へとたどり着いた。そこで彼らが目にしたのは、村から必死に逃げ惑う二人の姉妹と、その後ろから剣を振りかざして迫る、帝国騎士の偽装をした兵士の姿だった。
「逃がすか、クソガキどもがァ!」
下卑た笑みを浮かべ、兵士が剣を振り下ろす。絶望に目を見開く姉、エンリ・エモット。その腕に抱かれた幼い妹、ネム・エモットは、恐怖に顔を歪ませて固く目を閉じた。
その凶刃が少女たちに届く、刹那。
一陣の風が吹き抜けた。気づいた時には、兵士の前に一人の男が立っていた。優雅な執事服をまとった、白髪の老爺――セバス・チャン。
「――下衆が」
吐き捨てるような、氷のように冷たい一言。兵士が反応するよりも早く、セバスの足が薙がれるように振るわれた。
ゴッ、と鈍い音が響き、兵士の側頭部を捉えた回し蹴りは、彼の意識を的確に刈り取った。兵士は白目を剥いて、人形のように崩れ落ちる。
セバスは倒れた兵士を一瞥もせず、振り返って怯える姉妹に柔らかな表情を向けた。
「お嬢さん方、もう大丈夫ですよ」
その間に、ミラは既に村の中心部へと駆け込んでいた。彼女の背中からは、純白の二枚の翼が広がり、神々しいオーラを放っている。その姿は、地獄と化した村において、あまりにも異質で、しかし希望を抱かせる光景だった。
「うわっ、なんだありゃ!?」
「天使? まさか」
村人を切り捨てようとしていた兵士たちが、突如として現れた翼持つ少女に気を取られ、動きを止める。その一瞬の隙が、彼らにとって致命的だった。
ミラは地を蹴り、一人の兵士の懐に瞬時に潜り込むと、その鳩尾に掌底を叩き込んだ。
「ぐふっ!」
衝撃波が鎧を貫通し、兵士の肺から空気を完全に追い出す。彼は息もできずにその場に崩れ落ちた。ミラは止まらない。
流れるような動きで次々と兵士たちの間をすり抜け、急所への正確な打撃――手刀による首筋への一撃、関節への蹴り――で、一人、また一人と戦闘不能にしていく。
彼女の動きに一切の殺意はない。それは、人を殺すための技術ではなく、ただ無力化するためだけに洗練された、慈悲すら感じさせる武術だった。
後方では、モモンが二振りの大剣を構え、姉妹を守るように立ち塞がり、キーノが周囲を警戒している。村は未だ炎と悲鳴に包まれているが、侵略者と救済者という、圧倒的な力の差を示す構図が、今まさに生まれようとしていた。
主人公のクラス構成はどれだとおもいますか?
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純粋な物理職!
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マジックキャスター
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修道服ということでヒーラー
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まさかの召喚術?
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それ以外!