OVERLORD︰ReVerse Seraphim 作:reel
悟とも良い友人になりそうです。
ミラの神速の体術と、セバスの圧倒的な武技の前に、帝国騎士の偽装をした兵士たちはなすすべもなく打ち倒されていった。彼らは殺されることなく、的確に関節を外され、あるいは急所への打
撃で意識を刈り取られ、村の中央広場に積み上げられていく。あっという間に、村を蹂躙していたはずの数十人の兵士たちが、無力な塊となって転がっていた。
村人たちは、目の前で起こったあまりにも一方的な鎮圧劇に、ただ呆然と立ち尽くしている。
ある者は燃え盛る家を見つめ、ある者は負傷した家族に駆け寄り、そしてまたある者は、背中に純白の翼を生やした少女と、優雅な老執事、赤い瞳のマジックキャスター、そして漆黒の巨大な戦士を、畏怖と感謝の入り混じった目で見上げていた。
広場に意識のない兵士たちを一纏めにすると、モモンは、負傷して倒れている村人たちを見渡し、兜の中で苦渋の表情を浮かべた。
彼の目には、既に息絶えている者たちの姿も映っていた。人間としての心を取り戻しつつある彼にとって、救えなかった命の存在は、胸に重くのしかかる。彼はミラの傍らに歩み寄ると、声を潜めて尋ねた。
「ミラ。すまない、俺の力が足りず、死者が出てしまった。君なら君の魔法なら、彼らを生き返らせることはできないだろうか?」
それは、彼の偽らざる本心だった。ユグドラシルでは、高位の蘇生魔法は決して珍しいものではない。
目の前の少女がワールドアイテムを所持できるほどの存在ならば、死者を蘇らせることなど造作もないはずだと、彼は考えたのだ。
しかし、ミラの返答は彼の期待を裏切るものだった。彼女は静かに首を横に振る。その青い瞳には、悲しみと、そして現実を見据える冷静な光が宿っていた。
「死者蘇生の魔法も扱うことはできるが…ワシは、それをするのがどれだけこの世界に影響を及ぼすか知っておる。安易な蘇生は、世界の理を歪めるのじゃ」
彼女は、この世界の住人としての数百年間の経験から、その行為の重さを痛いほど理解していた。ユグドラシルのようなゲームの世界とは違う。
ここでは、死は絶対的な終焉であり、それを覆す『奇跡』は、人々の価値観や信仰、ひいては国家間のパワーバランスさえも揺るがしかねない劇薬なのだ。
「神の奇跡がそう易々と起きては、人々の秩序が乱れる。死を恐れなくなり、生の価値が薄れるやもしれぬ。それに蘇生には、相応の対価が要る。
この世界の人間の魂は、ユグドラシルのそれよりもずっと脆い。高位の蘇生魔法でなければ、魂ごと消し炭になりかねんのじゃ」
ミラの言葉に、鈴木悟はハッとした。彼は、この世界をまだどこかゲームの延長線上として見ていた自分に気づかされた。レベルロストのペナルティ。
ゲームではただの数値だったそれが、この世界では
『魂の消滅』
という、取り返しのつかない結果に繋がる。そして、神の御業を安売りすることの危険性。彼の浅慮を、ミラの言葉が鋭く、しかし優しく諭してくれた。
「そうか…そう、だな。すまない、俺はまだこの世界のことを何もわかっていなかったようだ…君の言う通りだな…」
彼は自戒するように呟くと、倒れている村人たちの方へ向き直った。ならば、今自分たちがすべきことは一つ。生きている者を、一人でも多く救うことだ。
「ミラ! 負傷者の治療を頼む!キーノ!ミラと共に負傷者の救助を! 俺とセバスは、まだ残党がいないか村の周辺を警戒し、消火活動を手伝う!」
その的確な指示に、ミラとキーノは力強く頷いた。
「承知したのじゃ! 《ヒール》!」
「了解しました!」
ミラは両手を広げ、第六位階の回復魔法を詠唱した。彼女から放たれたまばゆい光が、広場に集められた負傷者たちを包み込む。深かった傷は瞬く間に塞がり、折れた骨は繋がり、失われた体力も回復していく。
その光景は、村人たちにとってまさに神の奇跡そのものだった。彼らは涙を流しながら、翼を持つ救世主に何度も何度も頭を下げ、感謝の言葉を捧げるのだった。
ミラの第六位階魔法《ヒール》によって、瀕死だった者さえも奇跡的な回復を遂げ、村には安堵と感謝の声が満ちていた。モモンとセバスが村人たちと共に消火活動に当たり、キーノが不安げに寄り添うエンリとネムを慰めている。
そんな、虐殺の悪夢からようやく立ち直りかけたその時、村の入口が再び騒がしくなった。
村人たちの緊張した声に振り返ると、そこにいたのは、村を襲った偽装騎士たちとは明らかに異なる、練度の高い兵士の一団だった。
先頭に立つのは、王国最強と謳われる戦士長、ガゼフ・ストロノーフ。彼は村の惨状と、広場に転がる偽装騎士たち、そして明らかに異質なモモンたち一行を認め、鋭い視線を向けながらも、警戒を解かずに馬を降りずに近づいてきた。
ガゼフはその歴戦の経験から、目の前の漆黒の戦士が、ただ者ではないことを瞬時に見抜いた。その佇まい、放つ覇気、そして傍らに控える老執事と翼を持つ少女と赤い瞳の少女。どれもが常軌を逸している。
しかし、彼らから敵意は感じられなかった。むしろ、村人たちからの感謝の視線が、彼らが救い主であることを物語っている。
「ここで一体何が…馬上より失礼。私は王国戦士長、ガゼフ・ストロノーフ。貴殿らは何者か」
ガゼフは、まず自らの身分を明かし、毅然とした態度で問いかけた。その声には、王国最強の戦士としての威厳が満ちている。
モモンは、大剣を地面に突き立てると、兜の奥からガゼフを見据え、重々しく口を開いた。
「俺はモモン。ただのしがない冒険者だ。この村が襲われていると聞き、仲間と共に助太刀に来たに過ぎん」
彼の口調は、ミラが事前に与えた情報に基づき、この世界の冒険者として自然に振る舞うためのロールプレイだった。しかし、その言葉の端々から漏れ出る圧倒的な存在感は、隠しようもなかった。
ガゼフの視線が、モモンの隣に立つミラへと移る。背中の二枚の翼、聖性を感じさせる美しい容貌、そして彼女が身に纏う豪奢ながらも機能的な修道風のドレス。どれもが、ただの人間でないことを示唆していた。
「冒険者…か。にしては、随分と手練れのようだな。そちらの嬢ちゃんも、ただ者ではあるまい。その翼まさか、天使種か?」
ガゼフの問いに、村人たちが息を呑む。天使。伝説やおとぎ話にしか登場しないはずの存在が、今、目の前にいる。
ミラは、負傷者の最後の治療を終えると、静かに立ち上がり、ガゼフに向かって優雅に一礼した。
「ワシはミラ。ご覧の通り、しがない神官のようなものじゃ。この者たちと共に、旅をしておる。この村の惨状、見ていられなくての。僭越ながら、手助けさせてもらっただけじゃよ」
彼女は自分の種族については明言を避けた。肯定も否定もしないその曖昧な態度は、かえって彼女の神秘性を際立たせる。彼女の落ち着いた物腰と、村人たちを救ったという紛れもない事実に、ガゼフの警戒心も少しずつ解けていった。
「…そうか。礼を言う、モモン殿、ミラ殿。貴殿らのおかげで、村の被害は最小限に食い止められたようだ!この恩は、王国戦士長として、必ずや報いよう!」
ガゼフは馬から降り、そして深く頭を下げた。彼が率いてきた部隊は、偽装騎士たちの身柄を拘束し、村の状況を記録し始める。事態は収束に向かいつつあったが、モモンとミラ、そしてナザリックの存在は、この世界の有力者であるガゼフ・ストロノーフに、強烈な印象を刻み付けた。物語の歯車が、また一つ、大きく動き出した瞬間だった。
王国最強の戦士、ガゼフ・ストロノーフ。彼の登場は、この場に新たな秩序と緊張をもたらした。彼らの背後には国家という巨大な権力が存在する。モモンたちにとっては、今後の活動の足掛かりになるかもしれない味方であり、同時に、その正体を詮索されかねない危険な存在でもあった。
ガゼフからの感謝の言葉を受け、ミラは広場に積み上げられた、意識を失った兵士たちを一瞥し、彼に向かって静かに告げた。
「こやつらを頼む。一応全員無力化をしておるが」
その言葉は、彼らの身柄を王国に引き渡すという意思表示であり、同時に、自分たちはこれ以上この件に関わるつもりはない、という線引きでもあった。これ以上の深入りは、ボロが出る危険性を高めるだけだと、ミラは判断したのだ。
ガゼフはミラの言葉に頷き、部下たちにテキパキと指示を飛ばす。兵士たちは捕縛具を取り出し、意識のない偽装騎士たちを一人ずつ拘束し始めた。
その手際の良さから、彼らが精鋭であることがうかがえる。ガゼフは、拘束されていく兵士たちの鎧に刻まれた紋章――それがバハルス帝国のものであること――を確認し、苦々しげに顔を歪めた。
「…帝国め、やり口が汚い。モモン殿、ミラ殿。貴殿らが捕らえたこの者たち、我が王国で責任をもって預かり、尋問させてもらおう。この者たちが何者で、何を目的としていたのかそれを明らかにすることが、死んでいった村人たちへの最大の弔いとなるだろう」
彼の言葉には、帝国に対する強い不信感と、亡くなった村人への悼む気持ちが滲んでいた。そして、彼は改めてモモンとミラに向き直る。その目には、先程までの警戒心は既になく、純粋な興味と尊敬の念が浮かんでいた。
「それにしても、村人達から聞いたが、これだけの数の武装した兵士を、一人も殺さずに無力化するとは。モモン殿の剣技も然ることながら、ミラ殿、あなたの体術、それに村人達を一瞬で治した回復魔法…それも常人の域を遥かに超えている。一体、どこでそのような技を?」
純粋な武人としての興味。ガゼフは、彼らの底知れない実力に強く惹かれていた。特に、神官を名乗りながら、聖職者とは思えぬ見事な体術で屈強な兵士たちをいなしていったミラの存在は、彼の常識を覆すものだった。
背中の翼も相まって、その姿はまるで戦乙女(ヴァルキリー)のようだとさえ思った。
モモンがどう答えるべきか兜の中で思案していると、ミラが穏やかな笑みを浮かべて口を開いた。
「強さを求めるのに、神官も戦士も関係ないじゃろ? ワシはただ、守りたいものを守るために、必要な力を身につけただけじゃ。それにワシの力など、このモモンに比べれば、まだまだひよっこじゃよ」
そう言って、ミラは隣に立つ漆黒の戦士に視線を送り、パンパンと鎧を手のひらで叩いた。それは、見事なパスだった。彼女は自身の情報を巧みに隠しつつ、パーティのリーダーであるモモンを立てることで、相手の興味をそちらに誘導したのだ。
その完璧な連携に、モモンーー鈴木悟は内心で感心しながら、ガゼフの期待に満ちた視線を受け止める。
この世界で『冒険者モモン』として生きていくための、最初の試金石が、今まさに目の前にあった。
「秘密…という訳では無いが、我々の強さはいざと言う時の為に蓄えていたものだ。それを無垢の民を守る為に振るったに過ぎん。こうして救われた命があったのだ、それで問題ないだろう、ガゼフ殿」
モモンの毅然とした言葉に対して、ガゼフは再び頭を下げる。その言葉には、詮索しないで欲しいという言葉を感じられたが、彼らが村人達を救ったのは事実。それで良いではないか、そう彼は思ったのだ。
ガゼフとのやり取りが一段落し、事後処理が淡々と進められていく。その穏やかな時間の中で、ミラは原作知識に基づき、次なる脅威の訪れを予期していた。
スレイン法国が誇る精鋭部隊、『陽光聖典』。その隊長、ニグン・グリッド・ルーインが、この村を完全に包囲しているはずだ。彼らの目的は、ガゼフ・ストロノーフの抹殺。
そして、そのために召喚されるであろう高位の天使。それの対処に当たる必要があるのだ。
(…さて、そろそろじゃな)
ミラが内心でそう呟いた、まさにその時だった。ガゼフの部下の一人が、血相を変えて森の方向から駆け込んできた。
「戦士長! 大変です! 村が村の周囲が、いつの間にか多数の
その報告に、ガゼフの部隊と村人たちに再び激しい動揺が走る。先ほどの帝国兵とは比較にならない、大規模な魔法部隊による包囲。
それは、この場にいる者たちを皆殺しにするという、明確な殺意の現れだった。
「なんだと!? いつの間に!」
ガゼフは苦渋に顔を歪ませ、剣の柄を強く握りしめた。敵の狙いが、この村の住民ではなく、自分自身であることを即座に悟る。
王国最強の戦士長を確実に葬り去るための、周到に準備された罠。敵は、自分をおびき出すために、この村を餌にしたのだ。
その絶望的な状況下で、モモンとミラは冷静に視線を交わした。彼女の知識があれば、この展開は想定内。
故に、焦りはない。二人は短いアイコンタクトで意思を疎通させると、ガゼフに向き直った。
モモンが、その漆黒の兜の奥から、揺るぎない声で告げる。
「戦士長殿。ここは我々に任せていただきたい」
ガゼフ・ストロノーフ 「なっ…モモン殿!?何を言って…」
「貴殿らの役目は、この村の民と、捕らえた捕虜を守り抜くこと。包囲している者たちは、我々が対処する。あなたは、あなたの為すべきことを全うしていただきたい」
その言葉は、単なる申し出ではなかった。有無を言わせぬ、絶対的な強者の自信に満ちた宣言だった。
ガゼフは言葉を失う。常識的に考えれば、数十人の魔法詠唱者を相手に、たった数人で立ち向かうなど、自殺行為に等しい。だが、目の前の漆黒の戦士が口にすると、それが可能であるかのように思えてしまう。
ミラが、その言葉を補強するように付け加えた。
「心配は無用じゃ、戦士長殿。ワシらは、ああいった手合いは専門での。それに、こやつの力があれば、造作もないことじゃ」
彼女の落ち着き払った態度と、モモンへの絶対的な信頼が、ガゼフの迷いを振り払った。彼は、目の前の二人が自分たちの理解を遥かに超えた存在であることを、認めざるを得なかった。
「…わかった。モモン殿、ミラ殿。このガゼフ・ストロノーフ、生涯最大の借りになるやもしれんがこの場は、貴殿らに賭けよう。村の民のことは、この命に代えても守り抜くと誓う!」
ガゼフは深く頭を下げ、部下たちに村の防衛体制を固めるよう指示を出す。彼の決断を受け、モモンは二振りの大剣を静かに抜き放った。
その隣では、ミラが軽く体をほぐすように肩を回し、その背中の翼がわずかに広がる。セバスは悟と共に無垢の民を守る覚悟を決め、キーノは、いつでも魔法が放てるよう、小さな手に魔力を貯めていた。
村の喧騒から一歩離れた森の入り口。今、たった四人の冒険者が、スレイン法国が誇る精鋭部隊を迎え撃つべく、静かにその時を待っていた。
ガゼフ達の部隊が犠牲になるフラグが消失しました。
主人公のクラス構成はどれだとおもいますか?
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純粋な物理職!
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マジックキャスター
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修道服ということでヒーラー
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まさかの召喚術?
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それ以外!