OVERLORD︰ReVerse Seraphim 作:reel
もう少しでみんな大好きクレマンティーヌが出てきます。
村の喧騒を背に、陽光聖典が待ち構える森へと歩を進める中、ミラは隣を歩く漆黒の戦士に、これから起こす行動の真意を打ち明けた。これは、単なる戦闘ではない。今後の世界情勢を左右する、極めて重要な政治的パフォーマンスなのだ。
「あ奴らはスレイン法国と呼ばれる者達じゃ。ぷれいやー達の事を神と呼び崇めているらしいのじゃ。
しかもぷれいやーの遺産としてワールドアイテムをいくつか所有しておる」
モモンは、その情報に兜の中で眉をひそめた。プレイヤーを神と崇める国家。そして、ワールドアイテムの所有。
それは、彼らにとって無視できない存在だ。下手に敵対すれば、自分達にとってさえ脅威となりかねない。
「一応スレイン法国には既に接触しておるのじゃがガゼフ殿のことがやはり気になるようじゃの」
ミラの言葉から、彼女が水面下で既に法国と接触していたことがわかる。しかし、それでも彼らはガゼフ抹殺のために動いた。王国最強の戦士という存在が、彼らの描く人類圏の未来図にとって、それほどまでに邪魔なのだろう。
すると、ミラは1度呼吸を整え、口を開いた。
「そこでじゃ、モモン。ワシ、ちょっと目立つつもりじゃ。あ奴らはこの世界にとって人類存続に必要な者達での、向こうから諦めてくれる方法を探していたのじゃが多分これしかないじゃろうて」
ミラの声には、覚悟を決めた響きがあった。「目立つ」という言葉の裏に隠された、とてつもなく大胆な計画。鈴木悟は、その意図を即座に察した。
「まさか、その神とやらになるつもりか?」
漆黒の兜の奥から、驚きと懸念を含んだ声が漏れる。プレイヤーを神と崇める者たちの前に、
ミラは、彼の問いに、静かに、しかし力強く頷いた。
「まぁ、余計なことをするなと言うだけじゃよ。それにワシの姿はその役にうってつけじゃ。安心せい、何かあれば、お主を頼る」
その言葉に、彼女の決意の全てが込められていた。武力で排除するのではない。彼らが崇める『神』そのものとして現れ、その神の威光をもって、彼らの行動を諌める。
彼らを敵に回さず、かつガゼフを守るための、唯一にして最善の一手。それが、ミラの描いたシナリオだった。
モモンは少し考え込み、ミラに視線を向ける。
「…何かあれば、すぐに言ってくださいよ」
それはモモンではなく、素の悟の言葉であった。ミラはふふっと笑うと、花の咲くような笑顔になる。
「うむ!頼りにしておるぞ!」
話しているうちに、一行は森の開けた場所に出た。そこには、整然と隊列を組んだ魔法詠唱者の一団が待ち構えていた。
中心に立つのは、隊長であるニグン・グリッド・ルーイン。彼は、モモンたちの姿を認めると、傲岸な笑みを浮かべた。
「ほう、ネズミが自分から罠にかかりに来たか。ガゼフ・ストロノーフはどうした? まさか、貴様らだけで我々に勝てるとでも思ったか、愚か者どもめ」
ニグンはモモンたちを完全に見下していた。彼の目には、漆黒の鎧の戦士も、奇妙な服の少女たちも、老紳士も、これから始まる神の御業の前の、些細な障害にしか映っていない。
その傲慢な態度に対し、ミラは一歩前に出た。彼女はモモンたちを手で制すると、ただ一人、陽光聖典の前に立つ。そして、ゆっくりと息を吸い込んだ。
次の瞬間。
彼女の背中から、まばゆいばかりの光が迸った。今まで隠されていた翼が、一枚、また一枚と現れる。二枚だった翼は、四枚、そして六枚へとその数を増やしていく。
それは、神話に謳われる最高位の天使――
さらに、彼女の澄んだ青い瞳が、燃えるような真紅へと変化する。神々しさと同時に、触れるものすべてを焼き尽くさんばかりの、圧倒的な威圧感がその身から放たれた。
その常軌を逸した変容を目の当たりにした陽光聖典の隊員たちは、どよめき、狼狽し、後ずさった。
彼らが信仰する神々の使い、高位天使。その至高の存在が、今、目の前に降臨したのだ。ニグンでさえ、その顔から傲岸な笑みを消し、信じられないといった表情でミラを凝視していた。
「ななんだ、その姿は!? まさか最高位階天使!? 馬鹿な、召喚の儀式もなしに、なぜ!?」
ミラは、その真紅の瞳でニグンを睥睨し、神託を告げるかのように、厳かに口を開いた。その声は、広大な森全体に響き渡った。
「…痴れ者どもよ。神の御名において命ずる。その愚かなる行いを止め、速やかに立ち去るがよい!」
その声は、ただの音声ではなかった。
ミラの言葉を聞いた陽光聖典の隊員たちは、まるで雷に打たれたかのように体を硬直させ、不可視の力によってその場に縫い付けられる。
彼らが信仰する神の、直接的な命令。それは、彼らの魂の根幹を揺さぶり、思考を停止させるのに十分すぎるほどの衝撃だった。
ニグンは、膝が笑い、その場に崩れ落ちそうになるのを必死でこらえていた。
彼の知る、あるいはスレイン法国の教典に記されているどの高位天使とも違う。目の前の存在は、それらを遥かに凌駕する、まさしく神そのものと見紛うほどの圧倒的な神威を放っていた。
召喚された存在ではない。自らの意志で、この地に降臨した至高の存在。その事実に、彼の信仰と、現実認識が崩壊しかけていた。
「ああぁ…おお…! まさしく神の御使い! なぜ…なぜ我らの前に! 我らは、人類の守護のため、不純なる要素を排除しようと!」
彼は、震える声で弁明しようとする。自分たちの行いは、人類のためであり、神の御心に沿うものであるはずだと。
しかし、ミラの真紅の瞳が彼を射抜くと、その言葉は途端に意味をなさなくなった。
「お主らの信じる神とは、かつてこの地に降り立った六人の偉人。ワシも、その系譜に連なる者じゃ。
なればこそ、問う。お主らの行いは、本当に神々の御心に適うものか? 弱き者を餌に、同胞たる人間を陥れるその様が、正義であると、本気で思うておるのか?」
ミラの言葉は、彼らの行動の矛盾を鋭く突きつける。プレイヤーを神と崇めながら、その神々が守ろうとしたであろう『人間』を、自らの都合で虐げている。
その欺瞞を、神の使いを名乗る存在から直接糾弾され、隊員たちは顔を伏せ、罪悪感に身を震わせるしかなかった。
「ガゼフ・ストロノーフは、確かに強大な力を持つ。じゃが、その力は民を守るために振るわれるもの。彼もまた、人類を守る貴重な駒じゃ。
それを私怨や国家間の対立で削ぎ落とすは、愚の骨頂。神々は、そのような矮小な行いを望んではおらぬ」
ミラは、一歩前に踏み出す。その一歩だけで、大地が震え、周囲の空気が神聖な圧力で満たされる。ニグンはたまらず、その場に完全にひれ伏した。
「今一度、神の御名において命ずる。武器を収め、この地を去れ。そして、ワシの言葉を法国に持ち帰り、伝えよ。『真なる神の目が、お主らの行いを見ている』と。これ以上の愚行は、神々への裏切りと見なし、ワシ自らが天罰を下すであろう」
それは、慈悲を含んだ、最後の警告だった。この場にいる者たちを滅ぼすのではなく、あくまで改心の機会を与えるという、神としての度量。ニグンは、もはや何の疑いも抱かなかった。これは、自分たちの信仰が試されているのだと。
「はははっ! 御意に! 御意のままに、至高の御方よ! 我らは我らは、あまりにも愚かでありました! 直ちに兵を収め、この御言葉を、必ずや最高神官様へとお伝えいたします!」
彼は、額を地面にこすりつけ、涙ながらに服従を誓った。陽光聖典は、戦うことなく、一人の『神』の前に、完全に屈服したのだった。
ニグンのあまりの変貌ぶりに、ミラは内心で若干引いていた。土下座をし、涙と鼻水で顔をぐしゃぐしゃにしながら服従を誓うその姿は、先程までの傲岸不遜な隊長の面影を微塵も感じさせない。
もう少し毅然とした反応を予想していただけに、この狂信的なまでの崇拝は、少々気味が悪い。もう少しで素の口調が出そうになるのを、必死で喉の奥に押しとどめる。ここでボロを出すわけにはいかない。
(ちょっとやり過ぎたかのぅ…ここまで心酔されるとは、さすがに予想外じゃ)
神を演じるというのは、かくも厄介なものか。ミラは内心でため息をつきつつも、あくまで神々しい熾天使としての威厳を保ち続ける。表情を崩さず、真紅の瞳でひれ伏す男たちを見下ろした。
「よかろう。その誓い、違えるでないぞ。もし偽りであれば、地の果てまで追い、神罰を与えることを忘れるな」
荘厳な声で最後の釘を刺すと、ミラはふわりと背中の六枚の翼をたたみ、神々しい光を収束させていく。
真紅だった瞳は元の澄んだ青色に戻り、翼も普段の二枚だけの姿へと変化した。あたかも、神の降臨が終わったかのように。この変化は、彼らにこれ以上は神の領域への干渉を許さない、という無言の圧力を与えるための演出でもあった。
ニグンは、ミラの言葉にさらに深く頭を垂れ、震える声で返事をした。
「は、はい! このニグン・グリッド・ルーイン、命に代えましても! 皆の者、聞いたな! 直ちに陣を解き、撤収する! この御方への不敬は万死に値するぞ!」
彼は部下たちに大声で檄を飛ばす。先ほどまでミラたちを殺そうとしていた者たちが、今や蜘蛛の子を散らすように、慌ただしく撤収の準備を始めた。魔法の封印が施された
その様子を横目に、ミラは静かにモモンたちの元へと戻った。モモンは何も言わず、ただ漆黒の兜の奥から、賞賛と、わずかな呆れが混じったような視線を送ってくる。
キーノは、ミラのローブの裾をきゅっと握りしめ、少し興奮した様子で目を輝かせていた。彼女にとって、ミラのこの姿は、物語の中の英雄そのものに見えたのだろう。セバスは、常に変わらぬ無表情を保ちながらも、その佇まいからは主の協力者に対する深い敬意が感じられた。
陽光聖典の一団が、森の奥へと完全に少しづつ姿を消していくのを見届けた後、モモンがようやく口を開いた。その声には、抑えきれない苦笑が滲んでいた。
「見事なものだな、ミラ。まさしく『神の御業』だ。あれでは、戦うどころの話ではない」
彼は、大剣を鞘に納めながら言った。力と力のぶつかり合いではなく、信仰心という、より根源的な部分を突くことで、一滴の血も流さずに完勝する。
その手腕は、アインズ・ウール・ゴウンの長として、数多の戦略を練ってきた鈴木悟にとっても、感嘆すべきものだった。
「ふん、あれくらい造作もないわ。じゃがちとやり過ぎた感は否めんのぅ…」
ミラは、少し照れくさそうに頬を掻きながら、ようやく素の口調に戻った。神々しい熾天使の仮面を脱ぎ捨て、いつもの彼女に戻ったことで、場の緊張感がふっと和らぐ。
「さて、これで邪魔者はいなくなった。ガゼフ殿に報告に戻るとしようかの」
そう言って、一行は村へと引き返すことにした。スレイン法国という大きな問題を、ひとまずは未来の味方として懐柔する道筋をつけた。これは、ミラの描く『原作改変計画』における、非常に大きな一歩であった。
まさに陽光聖典の面々が蜘蛛の子を散らすように撤収しようとした、その時だった。ミラは何かを思い出したかのように、撤収していく一団の背中に向かって声を張り上げた。
「そうじゃ、ニグンよ!」
しまった、と思わず舌打ちしそうになる。神を演じている最中だというのに、いつもの口調がうっかり出てしまった。咄嗟にごまかそうと、慌てて言葉を続ける。
「あ…この口調はあれじゃよ!神ということをバレないためにの…普段はこうして人に紛れておるからのぅ!」
苦しい言い訳。だが、ミラの「神」としての威光を目の当たりにしたばかりのニグンには、その言葉すらも神聖な響きをもって聞こえた。
むしろ、神が我々と同じ目線に立とうとしてくださっている、というさらなる感動を呼び起こしてしまう。
「おおっ…! なるほど! 普段は我ら人間の中に紛れ、その動向を見守ってくださっていたのですね! その御心、我ら一同、感涙にむせぶばかりにございます!」
ニグンのテンションは、ミラの焦りとは裏腹に、さらに跳ね上がっていた。部下たちも皆、感激した面持ちでミラを見つめ、再びひれ伏さんばかりの勢いだ。
(あかん、これ以上喋るとボロが出る!)
ミラは内心の冷や汗を隠し、咳払いを一つして、強引に本題へと切り替えた。今度は、神々しい口調を意識して。
「ごほん! それより、ニグンよ。お主らに伝えねばならぬことがある。漆黒聖典が一人、クレマンティーヌのことじゃ」
その名が出た瞬間、ニグンの顔に緊張が走る。同じスレイン法国の最高戦力である漆黒聖典。その中でも、特に素行に問題のある漆黒聖典の名は、彼も聞き及んでいた。
「あやつが幼い頃から、ワシは接触しておる。今はワシの下で、信仰の道を歩んでおるが…まぁあやつ、元来の性格がアレじゃからのぅ。ワシの目が届かぬところで、何をしでかすか分からん。信用のおけぬやつじゃ」
これは、陽光聖典に対する牽制と、今後のための布石だった。原作でのクレマンティーヌは、快楽殺人者としてナザリックに敵対し、無惨な最期を遂げる。
しかし、この世界線の彼女は、ミラの監督下で『殺人はしていないが、腹黒で猫かぶりの修道女』として過ごしている。彼女の悪評や、今後の突飛な行動をフォローしておく必要があった。
「もし、クレマンティーヌが何かしら問題を起こしたと耳にしても、それはワシの試練の一環であると知れ。決して、お主らが独断で手を出すでないぞ。すべては、神々の深遠なる計画の内にある」
そう言って、ミラはニグンに有無を言わせぬ視線を送る。クレマンティーヌの行動は、すべて神の計画の内である、と予め釘を刺しておく。これで、彼女が多少問題を起こしたとしても、法国はミラの存在をちらつかされ、手出しができなくなるはずだ。
ニグンは、その言葉を神託として、心に深く刻み込んだ。
「ははっ! かしこまりました! クレマンティーヌ様の件、承知いたしました! 我ら陽光聖典、決して御心の邪魔立てはいたしませぬ!」
もはや、クレマンティーヌは彼の中で『様』付けの存在へと昇格していた。神が直々に目をかけている少女。それは、聖人候補に他ならない。
ニグンは、部下たちを促し、今度こそ森の奥へと急ぎ足で去っていった。その背中を見送りながら、ミラはどっと疲労感を覚えた。神を演じるのは、戦闘よりも精神をすり減らす。
隣に立つモモンが、呆れたように、しかしどこか面白そうに肩をすくめるのが、兜の動きで分かった。
陽光聖典のメンバー全員の死亡フラグが消失しました
彼らには人類を守るというお仕事があるので…
主人公のクラス構成はどれだとおもいますか?
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純粋な物理職!
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マジックキャスター
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修道服ということでヒーラー
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まさかの召喚術?
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それ以外!