OVERLORD︰ReVerse Seraphim 作:reel
あの子は幼女時代から目をかけないと原作通りになるため、ミラは苦労したようですね…(結局物理になったのはご愛嬌)
陽光聖典の狂信的な一団が森の奥へと完全に消え去り、後に残されたのは、張り詰めていた空気が嘘のような静寂だった。ミラは、神を演じきったことによる精神的な疲労から、ふぅ、と大きなため息をついた。
背中の翼が力なく垂れ下がり、先程までの神々しい威厳はすっかり鳴りを潜めている。
そんな彼女の様子を見て、モモンが、静かに語りかけてきた。漆黒のフルヘルムに覆われ、その表情を窺い知ることはできない。しかし、その兜の奥から注がれる視線は、セバスに対し接する時の威厳に満ちたそれとは異なっていた。
「お疲れ様、大変でしたね」
その声は、冒険者モモンのものではなく、一人の男、鈴木悟としての素直な労いの言葉だった。
彼は、ミラの計画の大胆さと、それを実行に移す精神的な負担を理解し、少しでも手伝いたいと感じていた。
「ん? ああ、悟か…ちと疲れたわい」
ミラは、彼の優しい声に顔を上げた。いつもの尊大な口調は鳴りを潜め、年相応の少女のような、素の疲労感を隠さない。
「無理もないです。あれだけの相手を、言葉だけで屈服させたのですから…だけど、一つだけ言わせてください」
悟は一歩ミラに近づくと、その兜の奥の赤い眼光を、わずかに細めたように見せた。
それは、叱責でも非難でもない。かつての似たような苦労を抱える者としての、共感と、そしてわずかな羨望が入り混じった表情――のように、ミラには感じられた。
「君は、本当にすごいな。俺には、あんな真似はできそうにない。俺は結局、力で相手を従わせることしか考えていなかった。君のように、相手の心そのものを導くなんて」
その言葉は、彼の偽らざる本心だった。彼は常に武力を背景に物事を解決してきた。それはユグドラシルの時の記憶だが、ミラは違う。
彼女は、相手の文化や信仰を深く理解し、その上で、彼らが最も受け入れやすい形で『救い』を提示した。それは、鈴木悟には持ち得なかった発想であり、リーダーとしての資質の差をまざまざと見せつけられた気がした。
彼の率直な言葉に、ミラは少し驚いたように目をぱちくりさせた。そして、ふっと柔らかく微笑む。
「何を言うか。ワシのは、ただのハッタリじゃよ。お主のように、絶対的な力という裏付けがあるからこそできる、綱渡りのようなものじゃ。お主がおらんのなら、ワシはただの回復魔法が得意な小娘じゃよ」
それは、本心からの謙遜であり、同時に彼への信頼の証でもあった。互いに足りないものを補い合う、最高の戦友。
二人の間には、改めてそんな確かな絆が結ばれた瞬間だった。
「さて、感傷に浸っとる場合じゃないの。ガゼフ殿が待っておる。戻るとしよう」
ミラはパン、と両手で頬を叩いて気合を入れ直すと、村へと続く道に向き直った。その背中を見ながら、鈴木悟は兜の中で静かに誓う。彼女が照らしてくれるこの道を、決して過たずに進んでいこうと。誰もが笑って暮らせる未来を築くために。
カルネ村に帰還した一行は、ひとまずガゼフに事の顛末を報告した。陽光聖典が、自分たちの力ではなく、何らかの「神託」によって退いた、とだけ。ガゼフは半信半疑ながらも、村を包囲していた脅威が去ったという事実に安堵し、モモンとミラに改めて深々と頭を下げた。
その後、村の復興作業が本格化する中で、ミラたちは目立たない程度に手伝いを行った。傷ついた村人たちにミラが回復魔法をかけ、瓦礫の撤去をモモンが圧倒的な力で手伝う。その姿は、村人たちの目に、まさしく救世主として映った。
頃合いを見計らい、一行は村を後にする準備を始めた。その際、モモンは村長の娘であるエンリ・エモットを呼び止め、一つの角笛を手渡した。
「これを。ゴブリンを召喚できる魔法のアイテムだ。一度しか使えんが、村の防衛の切り札として役立つだろう」
エンリは戸惑いながらも、その貴重な品をありがたく受け取った。これが、後にカルネ村の運命を大きく左右することになるとは、まだ誰も知らない。
名残を惜しむ村人たちに見送られ、モモン、ミラ、キーノ、セバスの四人は、転移魔法で元いた場所へと帰還した。
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その頃、スレイン法国の神都。
陽光聖典隊長ニグン・グリッド・ルーインは、最高神官評議会に緊急召集され、今回の任務失敗について厳しい追及を受けていた。評議会を構成するのは、六大神の各宗派を代表する六名の神官長と、国の主要機関のトップたち。彼らは、スレイン法国の最高意思決定機関であり、その空気は凍るように冷え切っていた。
ニグンは、震える声で、しかし確信に満ちた口調で、カルネ村での出来事を報告した。
「――その御方は、自らを六大神の系譜に連なる者と名乗り、六枚の翼を持つ熾天使の姿を現しました! 我らの行動を愚行と断じ、神の御名において撤退を命じられたのです! まさしく、神の再臨にございます!」
しかし、彼の必死の報告に対する神官長たちの反応は、冷ややかなものだった。
「神の再臨、ですって? ニグン、あなたは疲れているのよ。敵の幻術にでもかかったのではないかしら」
火の神官長であるふくよかな女性、ベレニスが、侮蔑を隠さずに言う。
「ふむ六枚の翼を持つ熾天使、か。我らの教典にも、そのような存在の記述はない。敵国による、我らの信仰を揺るがすための大掛かりな謀略の可能性も捨てきれんな」
知恵者として知られる水の神官長、ジネディーヌが、思慮深く、しかし懐疑的に呟いた。
ニグンの報告は、彼らにとってあまりにも突飛で、信じがたいものだった。特に、軍事部門を実質的に統括する土の神官長、レイモン・ザーグ・ローランサンは、鋭い視線でニグンを射抜いた。
「任務に失敗した言い訳にしては、手が込みすぎているぞ、ニグン。お前は、敵前で恐怖に駆られ、部下を見捨てて逃げ帰ってきたのではないのか? それを、『神』などという妄想で糊塗しているだけではないのか?」
元漆黒聖典第三席次としての威圧感。その言葉は、ニグンの心を抉った。しかし、彼は必死に首を横に振る。
「違います! 断じて違います! あの神威は、断じて幻術や謀略などでは! 我々陽光聖典の全員が、この目で確かに見たのです!」
彼の悲痛な叫びも、評議会の冷たい空気の前では虚しく響くだけだった。彼らは、ニグンが任務失敗の責任から逃れるため、集団で幻覚を見たか、あるいは口裏を合わせているのだと判断しかけていた。その時、今まで黙って話を聞いていた風の神官長、ドミニクが静かに口を開いた。
「レイモン、少し落ち着きなさい。ニグンよ、その『神』を名乗る者は、クレマンティーヌの名を知っていたそうだな。そして、『自分が目をかけている』と、そう言ったのか?」
温厚そうな老人の瞳が、鋭く光る。クレマンティーヌ。評議会のメンバーにとっても、それは頭痛の種である少女の名だった
ニグンの報告を受け、評議会は急遽クレマンティーヌを召喚した。彼女は現在、ミラの監督下で修道女として生活しているが、その本性は漆黒聖典の元英雄。評議会のメンバーにとっても、扱いづらい爆弾のような存在だった。
(はぁ~、かったるい。どうせまたジジイ共の説教でしょ? あたしが何したっていうのよ)
内心で盛大に毒づきながら、クレマンティーヌは純白の修道服に身を包み、神官長たちの前に恭しく跪いた。
その姿は、敬虔で従順な修道女そのもの。しかし、その猫かぶりの下では、面倒な呼び出しに対する苛立ちが渦巻いていた。
「クレマンティーヌ。急な呼び出し、すまなかったな。お前に聞きたいことがある。ミラという名の、銀髪で青い目をした少女を知っているか?」
風の神官長、ドミニクが穏やかな口調で問いかける。クレマンティーヌは、その名にわずかに眉を動かした。
(ミラちゃん? ああ、あの窓際お説教女ね。なんで今さらあの子の話が…)
幼い頃から、なぜか自分の部屋の窓際に現れては、あれこれと口うるさく説教をしてくる不思議な少女。それが、クレマンティーヌにとってのミラだった。彼女のゲンコツは、なぜか自身の防御スキルを貫通して物理的に痛いため、苦手意識は強い。
「はい。たしかに、ミラという名の少女とは知り合いですが彼女が『神』であるなどという話は、一度も聞いたことはございませんね」
クレマンティーヌは、あくまで無垢な修道女を演じきり、にこやかに答えた。ニグンの報告は聞いていた。馬鹿げた妄想だと思っていたが、やはりそうだったのだと。
彼女のその言葉が、決定打となった。神官長たちは、口々にニグンを罵倒し始める。
「ほら、見なさい! やはりニグンの妄言だったのよ!」
「クレマンティーヌは『神』ではないと証言した。これで決まりだな。ニグン、貴様には相応の罰を受けてもらうぞ」
評議会の空気が、ニグンの断罪へと一気に傾いた、その瞬間だった。
――場の空気が、変質した。
まるで水が油に変わるかのように、神聖な評議会の間の空気が、突如として異質な神威に満たされる。クレマンティーヌのすぐ傍ら、何もない空間が歪み、光の粒子がきらめきながら人型を形作る。転移魔法。その中心に現れたのは、修道風のアクティブドレスをまとった、銀髪の少女――ミラだった。
「な、何者だ!?」
部屋の隅に控えていた漆黒聖典の護衛たちが、即座に反応し武器を構える。だが、彼らの動きは次の瞬間、完全に停止した。
現れたミラが、その姿を変容させたからだ。
背中の二枚の翼が、光を放ちながら四枚、六枚へと数を増し、燃えるような真紅の瞳が、評議会の全員を睥睨する。ニグンが報告した通りの、いや、それ以上の神威を放つ『熾天使』が、そこに降臨したのだ。
その絶対的な力と、魂を直接揺さぶるような神聖な圧力の前に、神官長も、漆黒聖典の猛者たちも、言葉を失い、ただ呆然と立ち尽くすしかなかった。レイモンでさえ、その鋭い眼光を驚愕に見開いている。
彼らは、理解した。いや、理解させられたのだ。ニグンの報告が、妄言などではなかったことを。
その圧倒的な光景を、クレマンティーヌは間近で見上げていた。
(はぁ…!? え、ミラちゃんって本当に神様だったわけ!? なにそれ、意味わかんない! それにしても…普段、偉そうに文句ばかり言ってる神官長や、すかした漆黒聖典の奴らが、揃いも揃って狼狽えちゃって…これは最高に笑えるじゃない!)
敬虔な修道女の仮面の下で、彼女は内心、腹を抱えて笑っていた。長年自分を縛り付けてきた権威が、目の前で崩れ去っていく。その痛快な光景に、クレマンティーヌはゾクゾクするような興奮を覚えていた。
ミラの転移は、完全に偶然の産物だった。クレマンティーヌにマーキングをつけていたのは、彼女が問題を起こさないか監視するため。普段通り、少し様子を見てからかってやろうくらいの軽い気持ちで転移した先が、まさかスレイン法国の最高意思決定機関のど真ん中だとは、夢にも思わなかった。
(ちょ、クレマンティーヌにちょっかい出しに来たつもりだったんじゃが…なんじゃこの、お通夜みたいな雰囲気は…!? しかも、なんでニグンまでおるんじゃ!? …ええい、こうなったら、もうやるしかあるまい!)
目の前には、フランス国の最高権力者たちが勢揃い。そして、彼らは皆、信じられないものを見る目で自分を見つめている。背後では、漆黒聖典が武器を構えたまま硬直し、クレマンティーヌは面白そうにニヤニヤしている。引くに引けない。こうなったら、腹を括って神を演じきるしかない。ミラは覚悟を決めた。
彼女は、真紅の瞳で評議会の全員をゆっくりと見渡し、その口から神託のごとき言葉を紡ぎだした。その声は、この場にいる全ての者の魂を震わせる、絶対的な威厳に満ちていた。
「――静まれ、人の子らよ。ワシがここへ現れた意味、まだ分からぬか」
一瞬の静寂。誰もが息を飲む中、ミラは言葉を続ける。
「今、この世界は、未曾有の危機に瀕しておる。永きに渡り均衡を保ってきた世界の理が歪み、抗いがたい絶望の波が、すぐそこまで押し寄せておるのじゃ。そのような時に、お主らは何をしておる? 人類同士で疑心暗鬼に陥り、同胞を陥れ、矮小な勢力争いに明け暮れる。実に、嘆かわしい」
目を伏せ、首を横に振りながら語りかけたミラの言葉は、彼らの胸に深く突き刺さった。特に、ガゼフの抹殺を画策したレイモンや、ニグンを妄言と断じたベレニスは、バツが悪そうに顔を伏せる。
「お主たちスレイン法国は、六大神の教えを受け継ぎ、人類を守護する最後の砦となるべき存在。その使命を忘れたか。お主らの力は、内輪揉めのためにあるのではない。来るべき厄災に立ち向かい、人類の未来を繋ぐためにこそ、振るわれるべきなのじゃ。ワシは、そのために再び姿を現した。お主らに、真の使命を思い出させるために」
その言葉は、まさに神の啓示だった。今まで忘れかけていた、あるいは日々の政争の中で見失っていた、自分たちの存在意義。それを、目の前の神々しい存在が、改めて示してくれた。
最初に反応したのは、最も信仰心の篤い光の神官長、イヴォンだった。彼は椅子から滑り落ちるようにして床にひれ伏し、感涙にむせびながら叫んだ。
| 「おお…! おお、神よ! 我らは、我らは、あまりにも愚かでありました! どうか、この愚かなる子羊たちに、進むべき道をお示しください!」
彼の行動が引き金となり、他の神官長たちも次々とひれ伏していく。先ほどまでミラを疑っていたレイモンでさえ、その顔には畏敬と悔恨の色が浮かんでいた。
「まことの神が…我らの前に…。我らは、その御心を知らず、なんと浅はかなことを…!」
「ニグン、許しておくれ…! あなたは正しかった! 神は、我らを見捨ててはいなかったのですね…!」
評議会の面々の、あまりの豹変ぶり。ついさっきまでニグンを断罪しようとしていた者たちが、今や涙ながらに神への感謝と服従を誓っている。その光景に、ミラは再び内心でドン引きしていた。
(うわぁ…またこのパターンなのじゃな…ワシ、どうもここまで神様扱いされると、引いてしまうんじゃよな…。こやつら、切り替えが早すぎじゃろ…)
神を演じるプレッシャーと、目の前の狂信的な光景とのギャップに、ミラの精神は静かにすり減っていく。しかし、ここで止めるわけにはいかない。スレイン法国を完全に味方につける、千載一遇の好機なのだから。
スレイン法国の様々な死亡フラグが消失しました。
主人公のクラス構成はどれだとおもいますか?
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純粋な物理職!
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マジックキャスター
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修道服ということでヒーラー
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まさかの召喚術?
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それ以外!