1週間で書いて来いと言われたので書いたやつ

1 / 1
地球を終わらせた男の1009日

day1009

 

「本日地球は滅びます」

 

どこかで聞いたそんなフレーズを、現実として受け入れる日が来るなんて、誰も思っていなかっただろう。

 

もし、どこかの大金持ちか偉い人が、現実的に地球が滅びる可能性を考えていたのなら、そしてそれを国家規模のプロジェクトとして動かしていたのなら、目の前に広がる地獄も多少はマシなものになっていたのだろう。

 

人と人同士で啀み合い、争い合っている労力の半分でも宙へと思いを馳せていたのなら、地球は滅んでも人類が滅ぶことはなかったのかもしれない。

 

ここで終わってしまうならばと好き勝手に行動する人間が増えた結果、街には暴徒が溢れ、かつて建物だったものや"生き物"だったものが置き去りにされていた、

 

今更逃げ始めても間に合うわけはないのに、空には毎時間どこかしらかロケットが打ち上がり、見事に成層圏を脱出したり、無様に大気圏に阻まれ空の藻屑となったりしている。

 

そんな中俺は?

もちろん何もしていない。

 

生きがいだったソシャゲも流石にサ終しているからやることもないし、自分の中の虚無感と向き合いながらただ遠くを眺めているだけだ。

 

そんな俺でも流石に地球滅亡の日はセンチメンタルになるようで、一度も吸ったことがなかったタバコに火をつけてみた。

咽せて喉も痛くなるから碌なものじゃないな、と地面に投げ捨て踏みつけようとした所で、

 

光も時間も空間も全てが黒に引き摺り込まれる音がした

 

 

day912

 

「...以上のことから、永久機関の暴走、ブラックホール化が、ほぼ確実とされ...」

 

今日一日中、繰り返し何度も何度も放送されているニュースを聞き流しながらXを確認すると、想像通り世界は阿鼻叫喚に包まれていた。

 

地球は直径3メートルのブラックホールに飲み込まれる。

 

どこかの頭がいい人が言うには3メートルのブラックホールとて質量は地球の169倍だそうで、それが分かった所で何になると文章でタコ殴りにされている。

 

議論や考察がネットの海で重ねに重ねられた結果、フェイクニュースであると言う希望は破却された。

 

要するに地球は滅ぶのだ。

永久機関が開発されてなお、人類は斯様な状況において、タイムリミットを見定める程度の科学力しか持っていない。

 

この様な危機的状況に立たされてこそ、人間の本性が顕になるとは何で見た話だったか。

 

俺が1番最初に思いを馳せた事は平日の今日、会社に行くべきか行かないで良いのかだ。

我ながら終わっていると思う。

そんなに仕事が大事なのか?

 

何か悔いが残らない様にしなくては...

何かやり残した事はないだろうか...何か...

 

そうだ!俺は童貞である!

ソシャゲしか楽しみがない童貞のまま死ぬのは余りにも一匹の雄として悔いが残るのではないか?

 

そうだ風俗へ行こう!

 

童貞から素人童貞への僅かなレベルアップだが、俺にとっては偉大な一歩である!

そうと決まったら早速街に出て...

 

意気揚々と窓の外をふと見やるとすでに諍いが起こり始めている様だ。

今日は外にでない方がいいのかもしれない。

 

明日って風俗やってるかな...

 

 

day733

 

「永久機関運営では広く多くの人材を募集しています!」

 

今日も馬車馬で2回スキップしたご飯を食べなくてはと、電子レンジにコンビニ弁当をぶち込んで、待機時間の手持ち無沙汰を紛らわすためにTVを付けると最近よく見るCMである。

 

どのチャンネルでも大体このCMがノイローゼになるレベルで流されているので、もう内容も覚えてしまっていた。

 

それにしても...転職か...

 

永久機関が開発され、世のエネルギー問題が順次解決されて行っているとはいえ、この世から仕事は無くならない。

 

3年足らずでは湧いて出てきた永久機関と言うオーバーテクノロジーに行政が追いつくはずもなく、俺もほぼブラックと言える仕事に従事しなくては生きていけないのだ。

 

国家プロジェクトである永久機関の運営に携わる、と言う事は公務員になると言う事で、そこには安定と安寧と増える給料と課金額が待っているのだろう。

 

ワンチャンあるか...いや、ないだろ。

 

そもそも転職の準備ができるほど時間もお金も余裕はないし、転職活動をしている事ががあの部長にバレでもしたら...

考えただけでも恐ろしい。

この思考は破棄したほうが良さそうだ。

 

大体テレビで見た主任研究者もマッドと言うか少し様子がおかしくなっていた。

 

少し前に生放送でインタビューを受けていた際も、全化学者の憧れと言っても過言ではない永久機関の開発を成功させたにもかかわらず、終始暗い顔だったのが印象に残っている。

 

常に小さい声で何か呟いていた様だが残念ながらマイクは拾っていなかったのでなんで言っていたのかは謎だ。

 

そう考えるとあの時なんて言っていたのか気になってくるな。

野良の読唇術使いがSNSに解読を投稿していたりしないだろうか、少し探してみるか?

 

3時間しかない睡眠時間の6分の1も使ってネットの海に潜ると予想通り求めていた答えを書き記した投稿がされていた。

 

あのてんさいをさがさなくては...?

 

 

day427

 

「永久機関の開発に成功いたしました!」

 

朝早くから街頭のモニターに流れる超特大のニュースに、町を行く人々は立ち止まり同行者がいる者は同行者と、いない者はネットの海にて話題に上げている。

 

フェイクニュース、科学的に不可能なのではなかったか、何かのイベントか広告だろう、でも本当だとしたら...

 

街ゆく人が口にする言葉に耳を傾けると伺えるのは、疑念の中に少しだけ混ざる希望といった所だろうか。

 

かく言う俺も大体そんな感じで...

 

インターネットを使いこなす現代人として、まず、もたられた情報が真実であるかを確かめるのは基本と言った所か。

 

調べてみるとインターネットを使いこなす現代人として読むことがほぼ無い新聞でもこのニュースは取り上げられているようだ。

 

どの新聞社でも一面にて大々的に取り上げているのを見ると嘘では無い可能性の方が高いのかもしれない。

 

かと言って開発した企業が嘘の情報を流している可能性もあると考えたが、どうやら秘密裏で国家的に認可が降りているらしく、世界への公表が今日になったのは、世間への混乱の対応と主要各国への調整のためとの事。

 

調べれば調べるほど情報の確実性は増していくばかりで、どうやらこれからとんでもない時代が来る様だ。

 

もしかしたら人類が科された労働という贖罪も、終わりを告げる日が近いのかもしれない。

 

そんな未来への希望に想いを馳せているとスマホから来た通知はガチャ更新のお知らせ。

 

どれだけ性能的に弱かろうと、好きなキャラだし引かなければ...

 

そう盲目的に課金へとスムーズに向かう指先を、俺は止める術を知らなかった。

 

 

day1

突然だが俺には好きなソシャゲと好きなキャラがいる。

 

俺が生まれたできた理由と言っても過言でないのでどちらも話し出せばキリがないのだが、今、主に語りたいのはキャラの方についてである。

 

名前を瀬名奈々と言って年齢28歳、身長152㎝、スリーサイズは上から92-58-84のロリ巨乳、誕生日は3月8日の魚座、血液型はO型、利き手は右、出身地は新潟県、趣味はマッサージとスーパー銭湯と特撮鑑賞というキャラなのだが、見た目は幼いのに性格は姉御肌でそこのキャップが良く、尚且つヒーローに憧れ、その正義感から警察官になった人物だ。

 

奈々さんという愛称で親しまれ性格は姉御肌なのに見た目が胸以外は小学生並みに幼いというギャップもさることながら、28歳という年齢故に、理想と現実とのギャップも知ってしまい、憧れているヒーローの様な存在にはなれないと半ば諦めていた所、主人公と出会い不思議な力を手に入れ、登場時の「奈々さん、参上!」という声と共にヒーローの様に陰ながら弱気を助け悪を挫く活動をしていくという感動的なストーリーもあってこのゲームで最推しのキャラなのだが...

 

本日その瀬名奈々の新しいガチャ情報が発表されるのだ...大陸版で...!

 

このゲームは大陸で先行して運営されており、日本版のガチャに追加されるのに1年以上かかってしまう。

 

それでも好きなキャラの最新情報は知っておきたいと、翻訳機能をセットして大陸で行われている配信の待機中だ。

 

先ほどから隣で小難しい書類と格闘しながらぶつぶつと独り言を呟いていて耳障りなので、普段は乗り過ごすから着けていないイヤホンのノイズキャンセリングをオンにする。

 

そうして始まった配信を見ているのだが...

 

よっわぁ...

 

なにこの性能、運営このゲーム本当にやったことある?

 

性能面だけで見るならば、ステータスの低さもさることながらスキルが全然噛み合っていないし、他のキャラとのシナジーもない。

 

このゲームでは同じキャラは1人までしか編成できない上に新ガチャ以前に入手したキャラクターは性能が大幅に下がるという鬼畜仕様。

 

この性能では高難易度の攻略はおろか、素材集めですら日の目を見ることはなさそうだ。

 

というかさっきから隣のやつの独り言がノイキャンすら貫いて聞こえてきて非常に不快だ。

 

計算が合わないとか、後もう少しとか知らないし電車内では静かにしろよ、こっちはそれどころじゃないんだよ...

 

あまりにもあんまりな性能に呆然としていると降車駅に着いていた様で発車ベルが鳴り響いていた。

 

こんな状態でブラックな職場に向かわなければいけないなんて最低な1日だ...

地球なんて滅んで仕舞えばいいのに。

 

そんな気分で最弱キャラとかした自らの推しキャラに想いを馳せながら思わず呟いた。

 

3π√273 ³(産廃ルートに菜奈参上 )だ...」


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。