モチベが下がりに下がってまして…
再びゲヘナから戻ってくると学校にはホシノしかいなかった。
「戻ったぞ。ユメはいないのか…?」
「あぁ、V…」
ちらりとこちらを見るとホシノは気まずそうに目線をそらす。
よく見ると床には紙と思わしきものが破られバラバラになって散乱している。
それを見たVは何となく察しが付く。
「喧嘩…言い争ったのか」
「うっ…そうですよ」
どうやらユメのアイデアにしびれを切らしホシノが怒鳴ってしまったらしい。気まずさからユメは教室を出て行ったようで、数分ほどたってVが戻ってきたようだった。
「わかってますよ。私が言いすぎたってことは。でも、ユメ先輩にはもう少し現実を見てほしいんです」
Vがユメとすれ違わなかった以上、ユメは校門の裏口、つまりは街ではなく砂漠方面に出ていったと予測できる。…ユメが?はっきりと言ってユメは優秀ではないのはVも理解している。パラメータを人徳に全振りして他が最低値みたいな女だ。それはここ数日のホシノとユメをみてVが感じていたことである。二人しかいないためにそれは当然かもしれないが基本的に砂漠に出るときも一人ではなく二人でだった。
「…いやな予感がする。ユメを探しに行くぞ」
「この気まずい状況で…?」
「それに関しちゃお前ら二人が仲直りすれば解決する。俺が懸念しているのは…」
バッドランズと呼ばれるナイトシティーの郊外。パナムとの仕事の時に出会った巨大な嵐。そしてここ、アビドスでも似たような砂嵐が起こるというのは二人から聞いていた。県下での余裕がない状況で砂漠に出かけたのなら探索用の道具を用意する余裕はなかったはず。つまり、ユメは砂漠で遭難する可能性が高いということだ。
「ユメ先輩が…遭…難?」
その言葉にホシノの声が詰まる。
「ありえなくはないだろう。ましてや、ユメだぞ?」
「行きましょう、V。できる限り急いで」
ユメの負の信頼度が高いためかホシノは即答で準備を始める。それでいいのかとVは苦笑しながらも用意を終わらせるのを待った。
だがそもそも砂漠は広い。数分であるのでそこまで遠くに入ってないとはいえこちらも人手は二人だけだ。
「私は北を、Vは北東をお願いします」
「ああ、わかった」
サンデヴィスタンを活用し、砂漠の中を駆け回る。
「チッ、すでに砂が舞ってる…」
砂漠は月とは違い無風ではない。故にユメがつけた足跡も風によって掻き消えている可能性が強い。学校から出たと思わしき足跡が見当たらなかった時点で何となく予期していたことではあるが思ったよりも面倒ごとになりそうだった。
数十分、砂漠の中を駆けずり回る。広いが平坦で障害物もそれほどないのである程度の距離までオプティクスのズーム機能を使って探索できるという利点はあるもののそれでもなお、ユメは見当たらない。
砂漠なので通信が傍受できず、ホシノとの連絡を取ることもできないのであちら側で発見できている可能性もあるが地図で見たアビドスの広さを見る限りその可能性は低い…
「どうすれ――『ザー…』
Vの話を遮るように、一つのノイズがVの耳から聞こえた。そう、Vの耳から。つまり自身のサイバーウェアの動作不良ではなく、手に持っている通信機の何かが反応を示したということになる。
「――ッ!!トランシーバー!!」
カイザーローンに潜入する際、ホシノ達から受け取ったモノ。確か、仕事が終わった後はユメの携帯していたアタッシュケースの中に放り込まれていたはずだ。トランシーバーは基地局を介さず、直接通信をつなげる代物、そしてその距離もある程度限られている。小型のトランシーバーなのでなおさらだ。見通しがいいこの場所であれば数百メートル圏内にいる可能性が高い。
「おい!ユメ!聞こえるか!?おい!」
トランシーバーに怒鳴るようにそう言うが返事はない。たまたま起動しただけか、それとも起動したはいいが連絡するほどの余裕がないか、Vは急いであたりを見渡す。
「…ッ!?なんだ?…あれは」
ハブーブ、いうなれば砂嵐。だが、今までそれが起こるような兆候はなかった。何より、
「…あれがカイザーの狙っていた船とやらなのか?」
サンデヴィスタン、ダッシュ、空中ダッシュを使って砂嵐に接近する。
「…なんだありゃあ…」
蛇、蛇といっていいのだろうか。白い装甲を身にまとった巨大な蛇もどきが砂嵐の中心に居座っている。それと、ユメ。
「おい!大丈夫か!?」
「…ぉぁ…V…さん…」
怪我…はしていない。脱水症状と熱中症が主な原因だろうか。とりあえず持ってきていた水筒を開け、ユメに飲ませる。Vに医療知識はない。この場でのどうこうなんて知る由もないのでさっさと離脱したいところだが
「そうはさせてくれないか」
蛇の兵器はこちらを見て目を赤く光らせている。怒っているのだろうか。
「いい度胸だよクソデカブツ」
クイックハック、システム壊滅。内容は名前の通り、神経系を攻撃し、内部のシステムを崩壊させ昏睡させる。敵のシステムが使えなくなるため逆探知が不可能なうえ、非致死性なので気絶だけで済ませられるのも良い点だ。
――ッ!?!!?
だが、全員に聞くとも限らない。無効化する奴も、そもそもある程度しか効き目がない奴も存在する。こいつはそういうったタイプだ。
「サンデヴィスタン!バーサーク!!」
サンデヴィスタンで神経系を加速させながらバーサークを発動する。バーサークは一時的に肉体強度を底上げする。至近距離まで近づくと体にゴリラアームで底上げされたパワーのこぶしをぶち当てる。
ガァン!!!
いい音が鳴るが巨体はよろめかない。Vを捕捉すると口を開け、何やらエネルギーをチャージし始める。
「マジで巨大兵器なのかよッ!!」
巨大兵器はVも観たことがある。だが、あれよりもはるかに大きいものだ。
今動けないユメに直撃したらたまったものではない。
グレネードを辺りに巻く。10、20、とにかく無数に、まばらにまく。
一つの爆発とともに連鎖して爆発が起き、大量の砂煙が宙を舞う。
「光学迷彩!」
自身の姿を消すと、ユメを担ぎ上げてデカブツと距離をとる。
「出来るなら、ここでコイツをぶっ壊しときたい…が、」
恐らくは時間が足りない。じっくりと時間をかけて戦えば手数の豊富なVが圧勝できるだろう。だが、今現在はユメがいる。ユメの容体がどの程度なのかわからないが時間をかけるというのは非常にまずい。
「首あらってまっとけデカブツ」
Vは高らかに宣言するとその場から音もたてずに消えたのだった。
『――ッ!V!そっちは――「見つかった。が、容態が悪い。とりあえず学校に集合だ」
『…わかりました』
アビドス高等学校に戻るとホシノはすでに校門の前で待っていた。抱えられているユメを見てホシノは急いで駆け寄ってくる。
「V!ユメ先輩は…」
「俺のキロシでは熱中症だって出てる。だが、熱中症にしても少し容態が悪すぎる。とりあえずリパー…あー治療できる場所に連れていけるか?」
「…ッ」
それから病院についたのは30分後のことだった。
アビドスの病院はカイザーの息がかかっていて信用できないとのことで一番近いミレニアムの病院へと運んだ。
「これは…だいぶひどいですね。熱中症ではあるんですが、よほど温度の高い場所にいたんでしょうか、脳にダメージがあります。意識障害でしばらくは目覚めないでしょうし、目覚めたとしても記憶障害などでリハビリが必要になると思いますね」
「…そう、ですか…」
あの砂漠で倒れたともなれば当然ともいえるだろう。それでも、数か月は目が覚めないかもしれないという事実にホシノの顔に影が見えた。
病院を出てすぐ、ホシノはVに話しかける。
「
「…チューマ、あのな…」
「私のせいで、Vが言ってくれなければユメ先輩は死んでたかもしれない。私は、私は…」
ペチッ
うつむいているホシノの額にVがデコピンを食らわせる。
「いたっ」
「抱え込むな馬鹿。仮にお前のせいだとしてもユメが生きていることを喜べ。悪いところだけを見るな」
「でも…」
「それで何か進展するのか?自分の夢や、達成すべき目標が同情してくれるのか?ナイトシティーではそんな暇はなかった」
「…」
「少なくとも、ユメは治療を受ければいずれ完治する。そのことを重要視しろ馬鹿。そして金を稼ぐ方法を考えるんだ」
「…すこし、考える時間が欲しい」
「はぁ、気持ちを落ち着けろよ?」
ホシノと距離を取り、近くの建物に座り込む。
聞く気はなかったが強化された聴覚が、時折彼女の独り言を拾っていた。
「――…?――…、――。……」
「うへ、…お―――……」
……
「ごめん、もういいよV」
「落ち着いたか」
「うへ、決心がついたよ。ユメ先輩のためにも、アビドスの借金を返済する」
少し雰囲気が変わったかとVは訝しみながらも決心した彼女に安堵した。
「立ち直ってくれたなら何よりだ」
「まずは割のいい仕事でも探さないとかな~。私なら多少危険なものでも仕事になるし」
「それなら、賞金首を探すっていうのは―――」
今後の動きについて話しながらVとホシノはアビドスへと帰っていった。
この時点ではまだ一人称はおじさんじゃないです
遅れた理由が結構ありましてえ…
いや~エッジランナーズ2が出ましたじゃないですか。それに伴いアプデ要素を堪能してまして…
あと大学の課題が忙しすぎたんです許して
本編開始後一番気になるのはどの章?
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対策委員会編
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時計仕掛けの花のパヴァーヌ編
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エデン条約編
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カルバノグの兎編
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百花繚乱編
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過ぎ去りし刻のオラトリオ編
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Ex.デカグラマトン編
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Final.あまねく奇跡の始発点編