もふもふをひろったら家がダンジョンになりました 作:一宮 千歳
土曜日。眠い。しかしポテトにご飯を作らなければ、と思い横を見ると、シャルロッテがすでに起きてご飯を作ってるっぽい。
楽でいい。楽でいいが、ポテトの変異先の選定ができないのは気になるといえば気になる。
起きて下に降り、シャルロッテに聞いてみた。
「ぶっちゃけドラゴンになると思う?ポテト」
「このままでは無理でしょうね。マスターは真野様の作る料理をとても好んでいますので」
「そうかあ」
脱力した。
「実際、マスターの希望を叶える予定はあるんですか?」
「うーん。ない、かな」
包丁が目の前に飛んできた。暗転。
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目が覚めた。
横を見ると、シャルロッテがすでに起きてご飯を作ってるっぽい。
なんだ予知夢か。たまに見るんだよなあ。大体意味のない日常生活みたいな夢があとからそうだったとわかるタイプだけど、今回のはわかりやすい。
起きて下に降り、シャルロッテに聞いてみた。
「今日のご飯は?」
「生姜焼きです」
「朝から?」
「朝から、です」
悪魔のセンスだ。いいとおもう。
でも20年後とかに同じことやられたら怒る自信ある。胃がね。
「よろしくね」
「はい!」
二階にもどってポテトとクロが起きるのを待つ。ポテトはぷうぷう音立ててアホづらで寝てる。
中村にLINE。
「今日くんの?」
「行く行く。昼から」
「おう了解」
中村にはテストプレイをしてもらわないといけない。
テストも無しでプロジェクトを公開なんて恐ろしいこと俺にはできないよ。
と思っていると、ポテトがめざめる。
『まのー……? まのだー! おきるのはやい! ぼくよりはやい!』
ポテトがぴょこぴょこはねる。
そして起きて早々やかましいポテトにつられてクロまで起きた。
「ぶー……わふ」
「おはよう、ポテトとクロ」
『おはよう! まのはおそねおそおきさんなのにきょうははやい!』
「おそねおそおきさんて。間違ってないけど」
まあ普段7時に起きるポテトから見れば8時過ぎに起きる俺はおそおきさんだろう。だが今日はポテトがお寝坊している、上回るのは簡単だった。
「シャルロッテがご飯作ってるぞ。生姜焼きだ」
『しょうがのにおいー!』
ポテトがぽてぽてぴょんぴょんと階段を降りていく。まだ眠そうなクロは抱っこしてやる。転げ落ちたらかわいそうだからね。
「二人とも起きたぞー」
「こちらも出来上がっております、食べましょうか」
手を合わせていただきます。さいきん、ポテトも見様見真似で真似するようになった。
子育てしてる感じだ。でも、俺なんかが子育てしていいんだろうか。
『シャルロッテー!おかわりー!』
「あらあらマスター、おいしかったですか?」
「まののといっしょぐらいおいしい!』
「それは、うれしいですねえ」
シャルロッテがにこにこしている。
- ぴろん -
- マスター【ポテト】が『生姜焼き』を摂取しました -
- 変異ツリー:家庭属性が進歩しました -
家庭属性か、シャルロッテのご飯で。あんまり深く考えなくてもいいかもしれない。
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ポテトとクロと遊んで、昼。
爺さんたちがやってくる頃、中村もやってきた。
「駐車スペースがねえ!」
「裏に停めろ。一台分のスペースはある」
「駐車場作った方がいいだろ」
「どこに」
「それ言われると俺も迷うが」
一応隣の廃屋を土地ごと買い取って、という選択肢はある。早晩やることになりそうだ。
「やることが多いなあ」
「いいことじゃん」
「金もかかるし、税金も取られるし」
「目指せ高額納税者」
「あのなあ」
五百万売り上げてそれで増築してるから多重に税金かかるんだよな。取られる税金分も売り上げなきゃいけないし、考えたくない。
「はー。クッション売るか」
「おいおい、俺に頼んだテストプレイを忘れるなよ」
「そうでした。やるかー」
車庫には立派な地下行き階段が出来ている。建築法上一発アウトのヤバい代物だ。だがダンジョンなので助かっている。
「コボルドたち、起きてるかー」
「ハッ、雇い主様! 全力でくつろいでおりますわん!」
「今日は一人探索者が来るぞ」
「一人、ですかわん?」
「ああ。テストプレイを頼んだ俺の友人だ。前言った通り、4分の1体力が削れたら死んだフリか降参、でやってくれ」
「承知いたしましたわん!」
階段を登る。
「準備okだ。いつでも行ってくれ」
「おう、じゃあ行ってくる」
意気揚々と、しかし堅実に、中村が階段を降りていく。
ああ、ここをちゃんとダンジョンとして認識しているな、と、なぜか嬉しくなった。
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「あのな真野。やりすぎ。」
「え、安全重視のセッティングなんだけど」
「安全すぎる。これじゃここで訓練したやつ、感覚が狂って死ぬぞ」
「え」
「攻撃力が下がってるだろ。それも4分の1。コボルドの攻撃が怖くねえんだ。本来あのメイスに殴られたら一瞬意識が飛ぶ。けど、ここのダンジョンだと『蚊かな?』ぐらいになる。お前、防御力を勘定に入れてないだろ」
「あー」
そういえば、中村は
「タネはアロマディフューザーだろ。とりあえずあれを一個にしよう」
「うい。コボルドたちにも伝える。今度は体力半分で降参しろって」
「……あれ、お前コボルドと喋れんの?」
「コボルドって喋るんじゃ?」
「いや、俺の知ってるコボルドも、このダンジョンのコボルドも、喋らねえけど」
「ふーん?」
まあなんかダンジョンマスター権限だろ。
「とりあえず行ってくる。あと、コボルド的にもどうなのかも聞くわ」
「おう」
階段を降りて、コボルドたちに声をかける。
「どうだった、初仕事」
「いや、大変でしたわん。なんですかアレわん」
なんですかアレ、とは。
「我々3人の連携を防ぎきる存在なんて想定してないですわん」
「……んー?」
「アレが人間とは思いたくないですわん。阿修羅か何かですわん」
「普通にこの世界に存在してる二級探索者のはずだが……」
「「にきゅう、わん?」」
「わんたちは普通の人間に負けたわん……?」
あ、カルチャーショック起こしてら。
多分このコボルドたち、二級探索者と相対したことがなかったんだろう。ちょっと強すぎて愕然としてる、と読める。
「このダンジョンに来る人間は大体あのレベルになるまでここで訓練することになる」
「ということは、わんたちの連携が無様に破られるところを何度も経験するわん!?」
「メンタルがもたないわん!」
「……なるほど、そりゃそうなるか」
「メンタルケアが必要わん!なんか気軽にボコれる人間もよこしてほしいわん!」
「それはそれで難しいな???」
「じゃあおいしいごはんで我慢しますわん」
「そっちは簡単だな……」
そういうことになった。
「ちなみにリザードマンの見解は?」
「雇用主様の仰る探索者はこちらまできておりませんね。コボルドのみ相手にして一回帰ったと見られます」
「ふむ、じゃあ今度はリザードマンとコボルドの配置、逆でいこう」
「「承知いたしました」わん」
中村のもとに戻る。
「コボルド的に人間がつえーのは解釈違いだそうだ」
「まあそれは二級探索者の意地だな」
「さよけ。次、ディフューザーは下げたから、リザードマンの相手してみてくれ」
「あいよ」
中村が階段を降りていった。
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「真野」
「なんだ」
「なんでカステラ?」
「お、最深部まで行ったか、おめでとう」
「ありがとう……で、なんでカステラ?」
「ちょっとしたご褒美は必要だろうと思って」
中村が複雑そうな表情をする。
「もうちょっとこう、実用品にしてくれ」
「実用品、とは」
「魔法付きのショートソードとか、信じられんくらい軽い金属鎧とか」
「それこの規模のダンジョンで出ていいやつ?」
中村が即答する。
「ダメなやつ」
「ダメじゃねえか」
「言ってみただけだし」
「俺は真面目なアドバイスを求めてるが?」
「リザードマンは連携が下手だった」
「ううっそ」
「マジマジ。やる気がないわけじゃないんだが、集団戦に慣れてなさそうだったぞアイツら」
「ちょ、ちょっと聞いてみる」
慌てて階段を降りる。
「集団戦苦手ってマジ?」
「はい、我々他の同胞部族と違い、一対一を信条とする誇り高い部族なので、多人数で一体を相手するというのは、ちょっと」
「言ってよ〜〜……」
「すみません……」
「ご期待に添えず大変申し訳ございません、ですが解雇だけはご勘弁を……」
「……君たちの別の方策を考えるね。とりあえず待機で」
「承知いたしました」
はあ。マジか。
「聞いてきた。一対一を信条とする誇り高い部族だって」
「二級試験の訓練に圧倒的に向いてないな」
「そうだよな。別の仕事を考えないと……」
「狭い通路を作ってそこに配置するとか」
「お、それいただき。二級は頭が回りますな」
「誰でも思いつくだろ」
「まあな」
俺だって思いついてたさ。
「というわけでカステラ切ってくれ、味が気になる」
「ケチつけといて食うのかよ」
「もらったもんは有効活用するのが探索者だよ」
「カステラは外せないとして、宝物ガチャ★3〜★5でなんとかするか……」
「外してもいいんだぞ?」
「食いもんはこのダンジョンの特産だ」
「言い切るのかよ」
「ほら、飲食店だし」
そういうことになった。
「うわ、このカステラ切る時ジャリって言う」
「ダンジョン産カステラですもの、高級品にも勝るとも劣らないものですわ」
シャルロッテはそう言う。しかし中村にだけ食わせるの勿体無いな。
「シャルロッテ、一切れ食べていいぞ。あとポテトとクロにもあげて」
「よろしいのですか?」
「中村が一本丸々食うとは思えねえ……いや食いそうだけど」
「どっちですか」
「つまみ食いしても大丈夫な信頼関係はあるってこと」
ある。よな?
ちなみにカステラを食べたポテトのスイーツ属性が進歩した。まあそうなるか。
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