もふもふをひろったら家がダンジョンになりました   作:一宮 千歳

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25話

三月も十一日になった。十日に電気は復旧し、今日朝、最後の人たちが帰っていった。柳瀬さんも中島さんも、二口さんも帰った。中島さんは「四月から、お願いしますね。しっかり働けそうです」と笑いながらだった。

 

避難所スペースの見回りをする。

落とし物、忘れ物がないか。汚れていないか。むかしむかしやった、接客業の空き席リフレッシュと同じだ。

 

とある部屋には、たたんだ布団の上に置き手紙があった。

「助かりました。本当にありがとうございました」

 

また別の部屋には、コピー用紙に、ポテトとクロを書いた絵があった。

クレヨンなんて貸し出してないはずだが、避難した時に持ってきたんだろうか。

直線が多い絵は、しかし親愛に溢れていた。

 

こーゆーの、年食って弱くなったなあ。

 

『まのー』

 

ポテトがやってきた。

 

「んー。なんだ」

『ぼくがかいてある! すごい! くろも!』

 

ふんすふんすと鼻息荒い。こいつは本当にもう。

 

「飾っとくか? お客さんの来るところに」

『えー? かいたこ、はずかしくない?』

「そうだなあ」

 

でもふれあいスペース、要するに新しい仏間に置いとくのはいいかなと思った。

 

「額を買わなきゃな」

『わー。まのがほんきだ』

「本気じゃだめか?」

『いいとおもう。けせらせら』

 

使い方間違ってねえかな、それ。

 

中村も、昼ごろに帰った。

 

「避難所でDP溜まったんじゃないか。俺23人分だろ」

「ああ、そうだな。五万ちょっとある」

「おー。拡張頑張れよ」

「お前も本業頑張れよ。探索行ってないだろ、俺のせいで」

「なあに、炎のロングソードとかいう明確に強そうな武器が手に入ったんだ、バシバシやっていくぜ」

「元気でな」

 

で、中村と入れ替わりで郵便配達が来た。

シャルロッテのマイナンバー通知だ。

 

「これで射水市民だなあ」

「日本国民ですねえ」

「どうすんだ、月収40万の人」

「まあここで働きますよ。マスターと一緒にいれますしね」

「そうか」

「そうです」

 

ふふふとシャルロッテが笑った。ずいぶん嬉しそうだ。

 

そして、風の日が来る前と同じように、じいさんたちがやってくる。

 

「よお真野くん。茶を飲みに来たぞ」

「ベレーのじいさん」

「名前を覚えろ」

「ははは、すいません」

「ちっちゃいじいさんとハゲのじいさんよりマシじゃろ、真田(サナダ)」

「どうしてそれを」

「シャルロッテちゃんから聞いた」

「あんにゃろ」

 

----

 

我が家がダンジョンになって、結構経った。

色々あって、維持費は増えて、まだ赤字で。

でも、どうにかなりそうだ。

 

『まのー』

「んー?」

『だんじょんうんえい、がんばろうね』

「わう!」

 

ポテトとクロが尻尾を振っている。

 

「ああ、そうだな」




これにて第1部完となります。
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