もふもふをひろったら家がダンジョンになりました 作:一宮 千歳
三月も十一日になった。十日に電気は復旧し、今日朝、最後の人たちが帰っていった。柳瀬さんも中島さんも、二口さんも帰った。中島さんは「四月から、お願いしますね。しっかり働けそうです」と笑いながらだった。
避難所スペースの見回りをする。
落とし物、忘れ物がないか。汚れていないか。むかしむかしやった、接客業の空き席リフレッシュと同じだ。
とある部屋には、たたんだ布団の上に置き手紙があった。
「助かりました。本当にありがとうございました」
また別の部屋には、コピー用紙に、ポテトとクロを書いた絵があった。
クレヨンなんて貸し出してないはずだが、避難した時に持ってきたんだろうか。
直線が多い絵は、しかし親愛に溢れていた。
こーゆーの、年食って弱くなったなあ。
『まのー』
ポテトがやってきた。
「んー。なんだ」
『ぼくがかいてある! すごい! くろも!』
ふんすふんすと鼻息荒い。こいつは本当にもう。
「飾っとくか? お客さんの来るところに」
『えー? かいたこ、はずかしくない?』
「そうだなあ」
でもふれあいスペース、要するに新しい仏間に置いとくのはいいかなと思った。
「額を買わなきゃな」
『わー。まのがほんきだ』
「本気じゃだめか?」
『いいとおもう。けせらせら』
使い方間違ってねえかな、それ。
中村も、昼ごろに帰った。
「避難所でDP溜まったんじゃないか。俺23人分だろ」
「ああ、そうだな。五万ちょっとある」
「おー。拡張頑張れよ」
「お前も本業頑張れよ。探索行ってないだろ、俺のせいで」
「なあに、炎のロングソードとかいう明確に強そうな武器が手に入ったんだ、バシバシやっていくぜ」
「元気でな」
で、中村と入れ替わりで郵便配達が来た。
シャルロッテのマイナンバー通知だ。
「これで射水市民だなあ」
「日本国民ですねえ」
「どうすんだ、月収40万の人」
「まあここで働きますよ。マスターと一緒にいれますしね」
「そうか」
「そうです」
ふふふとシャルロッテが笑った。ずいぶん嬉しそうだ。
そして、風の日が来る前と同じように、じいさんたちがやってくる。
「よお真野くん。茶を飲みに来たぞ」
「ベレーのじいさん」
「名前を覚えろ」
「ははは、すいません」
「ちっちゃいじいさんとハゲのじいさんよりマシじゃろ、
「どうしてそれを」
「シャルロッテちゃんから聞いた」
「あんにゃろ」
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我が家がダンジョンになって、結構経った。
色々あって、維持費は増えて、まだ赤字で。
でも、どうにかなりそうだ。
『まのー』
「んー?」
『だんじょんうんえい、がんばろうね』
「わう!」
ポテトとクロが尻尾を振っている。
「ああ、そうだな」
これにて第1部完となります。
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