「……というわけで、この遊園地で秘密裏に取引が行われるという情報がワイルドハントからありまして……って、聞いてますか先生!」
「うん、ちゃんと聞いているよ」
そう返事をすると、隣を歩いていた生徒は頬を膨らませると共に胡乱気な目をこちらに向けてくる。
その少女が身に纏うトリニティ制服の襟元には、略式校章と盾のエンブレムが小さく輝いている。
制服の裾が若干余らしている姿が今年入った新入生らしく、それでも背伸びしようと見せる様子は微笑ましい。
「自警団への以来だよね?」
「そうですけど、私だけでは不満でしょうか」
「そんなことはないけど……レイサは?」
『それは私の方から』
「マシロ?」
耳元で小さくザザとノイズが走ると、聞こえてきたのは正義実現委員会のスナイパーの声。
『はい。本日は私が支援要因として入ります。普段ならレイサさんもいの一番に手を挙げるところなんですが、今回はどうしても外せない用事があるみたいで。そこで代わりとして私が』
一年時から変わらずな真面目そのものの口調でそう告げる。
「まさか委員長が直々に来ていただけるとは思いませんでしたが、良かったんですか?いえ、頼もしいことこの上ないんですけど」
『構いませんよ。正義の下、街を守る同士の頼みですから。それに、今回ばかりは無理にレイサさんを引っ張り出すのは気が引けますし。それに、こうして先生にも来ていただいているので、問題ないでしょう』
「レイサ先輩が来れないのは仕方ありませんが、私だってやれるところを見せますよ!自警団の一人として!」
そしてこぶしを握る少女の宣言には、妙に熱を帯びていた。
「随分と気合が入っているんだね」
「はい、ここで悪事を働く輩だけは絶対に許せませんので」
自警団の少女は自らに言い聞かせるようにそう口にした。
そこで再び耳元に小さくノイズが走る。
『……早速ですが、指定するポイントへ向かってください。不審人物をこちらで捕捉しました』
少女と先生は目を合わせると、マシロの指示通りに園内を進み始めた。
すると、やがてとあるアトラクションの陰となっている位置。
スタッフでもないのに巨大なカートを押して、人目のつかない場所へ侵入していく怪しげな複数の人影が確認できた。
全員を逃さないために、どのように声をかけていけばよいかと先生とマシロの二人が動きを止めるが、少女はお構いなしに突き進むと迷わず声をかける。
「すいません。そこのカートを引かれているスタッフ?の方、ちょっとお話を聞いても……あっ」
それに対して先生が何の対応をする間も無く、カートを押していた者たちは一気に駆け出すと同時に、カートにかけられた布がバッとひらめくとさらに中から人が飛び出して来た。
「なんでこんな早く見つかるんだよ!」
「知らねえよ!クソ、やっぱり怪しいと思ったんだ!ワイルドハントに密輸を手伝う部活があるわけないだろ!」
少女が即座に数人をダウンさせ、加えてマシロの狙撃によっても数は減るものの、想定外の出現に何人かは包囲を突破する。
そして不良たちは先生や園内の客の方へ向かってかけていく。
「先生……!」
「……逃げられる!」
『人ごみに入られたら狙撃はできません……!』
突如人混みの中から一つの人影が飛び出してくる。
「聞こえている人は目を!閃光弾を使います!」
その声に先生も咄嗟に目を手で覆うと、何かが炸裂するような音の直後、視界全体が真っ白に輝いた。
先生はすぐに何が起きたのかを確認しようと、はやる気持ちを抑えながら、目を空けても問題ないほどに閃光が落ち着くのを待つ。
その間にも周囲の状況を少しでも知ろうと聞き耳を立てると、閃光の中から聞こえてくるのはアサルトライフルの銃撃音。
そして人体特有の着弾によって吸収される音と共に、支えを失ったことで全体重が地面へ向けて自由落下したような気配。
数分にも感じる短い辛抱の末に目を開く。
「よっと……大人しくしてください」
先生の方向へ向かってきていたはずの不良たちは、目にしていたまでの姿とは打って変わって四肢を地に投げ出していた。
「こっち側はトリニティの自治区ですよね。今の正義実現委員会にいるのは……マシロさんでしょうか」
そこにはかつてとは違う装いで、かつてと同じ白銀の髪をなびかせて凛と立つ少女がいた。
思わず立ち尽くす先生へ振り返ると、その手を差し出した。
「失礼しました。そちらの方はお怪我はありませんでしょうか」
「……スズミ?」
「……先生?」
「すみません先生~!大丈夫ですか?やっぱり、あの人みたいに何人もまとめては難しいですね。あ、そこの人もご協力ありがとうございます!……あれ?」
***
「はい、身柄は確かに。お久しぶりです、スズミさん。もう卒業された学園外のお手を煩わせてしまうとは」
「寂しいことを言わないでください、マシロさん。ついこの間まではトリニティの生徒だったのですから、これくらいのことは」
「……そうですね。ともあれ、皆さんが無事でよかったです。久方ぶりにスズミさんのお顔を拝見して、お元気そうな姿も見れて安心しましたし。……何年も会っていないというわけでもないのに、なんだか懐かしいですね」
「少し分かります。マシロさんも立派にやられているようで……どの立場で言っているのかという感じですが」
スズミが照れくさそうに苦笑するが、マシロはその意味がよく分かっていないようだった。
「ともかく、私もしばらくはこちらにいますので、またお話しましょう」
「はい。外のお話、聞かせてください」
そうして、数人の正義実現委員会と捕らえられた不良を伴って、マシロは園を後にした。
「お待たせしました。引き渡しも済んだことですし……どうですか?よかったら少しお茶でも」
「いいんですか!?」
スズミがそう提案すると、自警団の少女は前のめりにその提案に食いつく。
気圧されるように思わず体を引くと、先生の方へ助けを求めるように視線を向ける。
「あの、この方は……?」
「スズミの後輩だよ」
「はい!トリニティ学園一年、自警団所属の……」
「いえ、それは分かるのですが、なんというか……」
少女はアピールをするかのようにさらに前のめりになると、スズミはその勢いに気圧されてじりじりと逃げ場を失っているようだった。
「とりあえず、どこか落ち着けるところに行こうか」
***
「というわけで、あの時のスズミ先輩のおかげで私はトリニティで自警団を入ることに決めたんです!」
「はあ……」
「そうして入学してみたのに、スズミ先輩がいないじゃないですか。あの時の勇敢な御仁はどこに行ってしまったのかと、とりあえず自警団のレイサ先輩に聞いてみれば、もう卒業してしまったというじゃないですか」
園内で休憩用として使用されている円形のテーブルと、それを書く無用に三角形状に椅子が並べられているスペースにて、自警団の少女はようやく顔を合わせらることができた憧れの人へ、その思いをぶつけていた。
「それからどこに行ってしまったのかというのも分からなくて……。キヴォトスの外に行ってしまったというところまでは分かったんですけど、レイサ先輩もそれ以上は個人情報だからって教えてくれなくて」
「キヴォトスにいると、外の情報はあまり入ってきませんしね。とはいえ」
場所を変えたことで落ち着いたのか、たじたじになっていた先刻までとは打って変わった様子で、スズミはカップの中身を一度口に運ぶ。
「あまり人のプライバシーを本人の与り知らぬところで探るものではありませんよ」
「いて」
テーブルに手をついて身を乗り出す少女のおでこへ、軽く指をはじいた。
「すみません……」
「私に憧れてくださるのはありがたいですが、それで周囲の方に迷惑をかけては、自警団として本末転倒です」
「まあまあ」
先生が間に入るが、憧れの人にお説教を食らってしまってか、少女は意気消沈といった様子で俯いて縮こまってしまった。
「……すみませんでした」
「あ、いえ、その……。あなたを否定しようとかそういうことではなくてですね……」
それに気づいたスズミが慌ててその意図を説明しようと訂正の言葉を続ける。
「じゃあ、今はなにをしてるのか、教えてもらえませんか?」
だが、少女は次の瞬間には何事もなかったかのようにケロッとしたような表情で、再び質問を投げかけ始めた。
「……そういうことですか。いい度胸してますね」
「ありがとうございます!」
『よかった……』と先生は一瞬だけ感じた不穏な予感が実現しなかったことに胸をなでおろす。
「……仕方ありません、教えてあげましょうか。今はヴィンテージ音源を取り扱っているお店でお世話になっています」
「音楽、好きだったもんね」
「へー、レコードとかですか?」
「はい、趣味が転じてといいますか……。キヴォトスにある店舗から、外の店舗であればどうかとお話をいただいて……ありがたい限りです」
「写真とかあったりしませんか……?」
「構いませんが……そこまで面白味のあるものでもありませんよ?」
「いえ、スズミ先輩を見せていただけるだけで十分ですので」
そう答えを受けると、スズミは少し恥ずかしそうにためらいつつもデバイスを操作しては、少女へ手渡した。
先生もそれに合わせて横から覗き込む。
「かっこいい……。いいなあ、私もそのお店に行ってみたいです。スズミ先輩がいるなら、きっと素敵なところで、先輩の魅力で毎日人が来て……」
「そういっていただけるのは嬉しいですが、私一人が入ってもそんなに変わりませんよ。お店はとても素敵な場所ではありますが。……私自身、愛想も良くない方だという自覚はありますし、まだまだお店のお力に慣れているとはとても言えませんので。そういうあなたの方こそ、とても接客に向いていそうでよいと思いますよ」
「スズミ先輩に褒められちゃった。…………やったー!」
無邪気に大手を振って喜ぶ後輩にスズミは少し微笑むと、先生と顔を合わせてさらに笑顔を綻ばせる。
「先生も見てくださいよ!ここの先輩とかすごく可愛いらしいですよね!」
「ちょっ」
「うん。働いているスズミも素敵だね」
「あう……」
その言葉だけで、スズミは体を小さくして動けなくなってしまう。
「そうだ、よければモモトーク交換しましょう!」
「え、ええ……それは構いませんが」
「じゃあ、ちょっとこのままお借りしますね。あ、もちろんモモトーク以外は触れないので!」
そんな彼女もお構いなしに、少女は勢いそのままに畳みかけるとあれよという間に同意を取り付け、自分のデバイスも併せて慣れた手つきで操作して済ませる。
「あ、あと、おすすめの曲とか教えてくださいよ!」
「……それなら、ヘッドホンもあるので聴かせてあげましょう。とりあえずオスティン・ビーバーとヤミロクアイ、モンジョビを」
一転攻勢。
音楽の話題を振られると、先程までの押されムードから変わってスズミの方が前のめりにヘッドホンなどを取り出してはスルスルとその口から言葉が流れ出る。
先生はそんな二人を様子を見て、安心したように穏やかな表情を浮かべるとカップを軽く啜る。
と、スズミと先生の目線が合う。
「元気そうでよかったよ」
「先生も、ご健勝なようで安心しました」
とりあえずの、何の変哲もない社交辞令を交わす。
スズミとしては内心では卒業して以来の先生との再会。
しかも当時からの恩師であるその人に、一体どんな話題を振ればいいのかと逡巡してしまう。
一方、その心労をかけさせられている相手はあの頃と全く変わりない言葉、変わりない落ち着きようでいる。
「キヴォトスに戻ってくるってことは、もしかしてなにかあった?」
「あ、いえ。今回は、その……」
そんな彼女の内心を慮ってか、先生の方から話を始めた。
しかしその質問はスズミにとっては即座の解答を躊躇するものであったらしい。
とはいえ、いつまでも先生を待たせるわけにも、見つめられたままで耐えることも出来ず、躊躇いがちに口を開いた。
「レイサさんとシミコさん、あとラブさんとイベントに参加することになっていまして……」
「それってもしかして、魔法少女ヘヴィキャリバー?」
「覚えていらしたんですか」
「とても似合ってて、可愛かったから」
「それは……どうも……ありがとう、ございます」
気付けばスズミの側頭部にあった小さな羽が、彼女の表情を隠すように前方へ折りたたまれていた。
その時、二人のやり取りを一番間近で見ていた自警団の少女が、ガタッと勢いよく椅子を鳴らして立ち上がった。
「すみませんお二方。私はそろそろパトロールに戻りたいと思います!」
少女は考えていた。
同じく自警団に所属する現三年の先輩とは違い、自分はそこまで鈍感でも引き際を見誤らないと。
もちろん、そういうあきらめの悪さという点においてはむしろ尊敬に値する先輩ではあるのだが、それを発揮するのは今ではない。
「あの……もしかして、私に遠慮していませんか?」
「なに言ってるんですか!さっきまでの私によるスズミ先輩へ対する無礼さを体感して、本当にそう思うんですか?それに、パトロールは自警団の必須業務ですので!スズミ先輩と連絡先も交換できたので、今日はこれで我慢しようと思った次第で。初対面の私よりも、お二人の方が積もる話もありそうなので、後は若い二人に任せてお邪魔虫は退散することにします!」
その場を離れる名目を取り繕うかのように一気に捲し立てたかと思えば、一度じっとスズミを見つめてから耳元へ顔を寄せる。
急な距離感の詰め方に、スズミの体が反射的に跳ねる。
「後でお話、聞かせてくださいね?」
それだけ残すと、自警団の少女はその場を駆け出していき、その姿はあっという間に小さくなって、やがて見えなくなってしまった。
突然の行動だったせいか、それともその言葉に内包される意図が図星だったせいか、スズミはなにもアクションを返すことができずに後輩の行方を見つめたまま固まるしかなかった。
「気を遣わせてしまったみたいだ。…………スズミ?」
「あ、は、はい!なんでしょうか!」
「どうしようか?」
「あ、いえ、そうですね。折角の人の親切心を無下にするもの気が引けると言いますか、本人があのように言ってくださっているのであれば素直に乗っからせてもらうのが良いのではないでしょうか。……どうでしょう……?」
「じゃあ、そうしようか」
***
そうして、二人は卒業してからのことを話し始めた。
先生からはトリニティへ新しく足を踏み入れた新入生たちの中から、段々と自警団へ入ってくる生徒たちが増えてきているということ。
この数か月の間にも様々な事件が起こっては収めてきたことも。
スズミからは新たな居場所について。
どんなお店で、色んな人が来てはキヴォトスでの生活との違いに戸惑ったり、新たな発見があるということ。
学生時代の同士とのことについて。
気づけば園内の人もまばらに、暗くなっていた。
「もうこんな時間だ。そろそろ帰ろうか」
「そうですね……」
二人はおもむろに席を立つと、ライトアップされたアトラクションの明かりを辿るように出口で向かう。
スズミの名残惜しそうなた足取りに合わせて、先生もゆっくりと歩幅を合わせて隣を進む。
と、急に先生のスーツの裾が後ろに引かれ、思わず足を止める。
振り返ると、その正体はさっきまで隣に立っていたはずの白銀の髪だった。
「その、先生。お願いがあるのですが。…………よければ、久しぶりに一緒に星を見てくれませんか?」
「……もちろん」
「……ありがとうございます。では、行きましょうか」
そうして、スズミは裾を掴んだままの手で先生の手を取ると、今度は自らが先導するように手を引いて観覧車の下に向かった。
乗り場に着くと、スタッフの案内通りに順番に流れてくるゴンドラの内の一つに乗り込む。
互いに向かい合う位置に腰を下ろすと、窓に体重を預けたままに景色を眺める。
地上にある人の営みの息吹は段々と遠ざかり、天空から降り注ぐ神秘の現象は迫ってくる。
その間に互いに言葉を交わすことはなく、確かにそこにある生命の証明を感じながら、ゆっくりと時間が流れていった。
「今日はどうしてこれに?」
「少し、甘えてみたくなってしまいまして」
それだけのやり取りをすると、ゴンドラの中はエンジンによる振動のみが満たされる。
気づけば観覧車はもう四分の一以上を過ぎて、頂上は目の前に来ていた。
「いい後輩ですね」
静寂を破ったのはスズミの方だった。
気まずさに耐えきれなくなった故のものではない。
「スズミのおかげだよ」
先生の口から出てきたその言葉も、慰めでも気休めでもなく、純粋な心から出てきた本音だ。
「本当に……そうでしょうか。結局、私が手を差し伸べることができたのは、手の届く範囲だけでした」
目線は変わらず、一枚のガラスの先に向けられている。
「外の世界を見て、自分の未熟さを痛感するばかりです」
「それは、お店の話?」
「それもありますが………それ以外の常識の違いですね。外では、キヴォトスのようにどこでも銃弾を使えるわけではありませんので。…………それは閃光弾であっても。その分、大事になることも少ないので、危険性という面では望むべきものなんですけどね」
控えめに目線だけを先生の方へ向けると苦笑を浮かべるのだが、その口角は小さく歪んでおり、空元気じみていると言わざるを得ない。
「この街に生徒としていた時とは異なり、単純な力だけではなく先生のように話し合い……言葉で解決する能力が必要なんですね。…………まさか、卒業後に先生がどれほど苦労をされていらして、私たちの責任を負っていたのかを、身をもって知ることになるとは」
「私がやっていることは、そんなに大層なものじゃないよ」
スズミはこのキヴォトスでは必需品と言えるアサルトライフルに手を掛けると、その体に引き寄せ、ギュッと砲身を握る。
「…………少しでも、世界が良くなる一助になっていればいいと思っていました。自分の手が届く範囲で。それでも、一歩外に出てしまえばそれすらも叶えることが危うくなってしまうんですよ。…………私自身、口下手であることは自覚していますがここまでまざまざと見せつけられると……なかなか難しいですね」
自重するようなその言葉には、実体験として一つの社会に揉まれたことを確かに感じる、実感があった。
だからこそ、大人の手本として、一人の先人としてこの新たな一歩を踏み出した少女にどんな言葉をかけるべきかを。
「大丈夫だよ」
今度はしっかりと先生の方へ顔を向ける。
この時、本当の意味で今日の内に初めて目が合ったような気がした。
「スズミの優しさは私が知っているから。私が危ないときには誰よりも一番に駆けつけて助けてくれることも。そんなスズミの姿を見て、スズミの心が伝わった後輩が、こんなにもいるんだから」
先生はゴンドラの気紅預けていた体重を戻すと、向き合う様に姿勢を正す。
「だから、ちゃんと誰かのためにっていう気持ちが合って、自警団みたいに行動し続けていれば、きっとどこにいてもスズミの心は伝わるはずだよ」
今度の笑みには、自責するような意図は含まれてはいない。
「先生は変わりませんね。卒業して生徒ではなくなってしまったのに」
「卒業しても、皆は先生の生徒だよ」
「なら、生徒のままでは嫌だと言ったら……?」
「それは」
一方向から差し込む月明かりが、ガラスを透過することで少しだけ屈折され、そうして照らされる目の前の彼女からはなぜか目が離せないと感じていた。
「あ、もうすぐ着きますよ」
先生?」
既に地上が目の前に迫ってきており、その事実にこの時間がもう終わってしまうのかと名残惜しさを感じる。
「星が、綺麗に見えますね。先生?」
降り場から出ると夜も更け初め、もう人気はほとんどなく、アトラクションの明かりとスタッフ数人がいるだけになっていた。
「遅くなっちゃいましたね」
「どうしよう。帰りに誰かに襲われちゃうかも!」
「大丈夫ですよ。私が家までエスコートしますから」