転生者たちの戦争~山本五十六の記憶を受け継ぐ者、前世の知識で無双する~   作:やきそばVer2

1 / 3
第一章:山本五十六の記憶を継ぐ者~アレクセイ~
第一話:全ての始まり~蘇る前世の記憶~


イゼル帝国

 

三十年前に独立戦争を経て建国された帝国。

当初は取るに足らない国と思われていた。

 

しかし、建国直後から周辺諸国への侵略を開始し、事態は一変した。

またたく間に周辺の4カ国を占領してしまう。

 

圧倒的な軍事力を背景にして、さらなる侵略を続けるイゼル帝国。

大国であった2カ国すら容易く攻め落としてしまう。

 

その毒牙は海洋国家ナルヴィナ国にもかかりはじめる。

高い造船能力を有するナルヴィナ国。

その造船能力を手にするべく、帝国の侵略が始まった。

 

 

そして現在。

イゼル帝国との国境地帯への支援攻撃と陸軍部隊への補給物資の輸送。

戦争継続のための物資の輸入に用いる南方の交易路の守備。

その二つの目的を達成するために、主力艦隊は北方と南方へ分散していた。

手薄になった首都への奇襲攻撃を実行したイゼル帝国艦隊。

彼らの狙いは、港湾設備を破壊しナルヴィナの継戦能力を削ぐことにあった。

 

不意を突かれてしまったナルヴィナ海軍。

主力艦隊不在の中、少数の近衛艦隊のみで立ち向かうことになってしまう。

 

 

 

 

【ナルヴィナ国:首都レイキャナス近海】

海上を進む二つの艦隊。

 

 

100門近い大砲を搭載した、戦闘に特化した戦列艦。

60門ほどの大砲を装備し、内部に多数の兵員もしくは軍需物資を輸送可能なガレオン。

それらを護衛する小型帆船のフリゲート。

 

それら3種の帆船で構成される両艦隊は、お互いを撃滅すべく海上を突き進んでゆく。

 

 

~~~~

近衛艦隊 旗艦オーディン艦上

 

「敵艦隊発見!」

「敵戦力は......主力の戦列艦6隻、兵員輸送・攻撃兼用のガレオン5隻!」

「そして補助艦艇のフリゲートが......6隻です!」

「全艦が、風上側からこちらに向かってきています。」

 

見張り台からの報告を聞き、私ことアレクセイは頭を悩ませた。

こちらの戦力は、戦列艦が6隻、フリゲートが10隻。

そして、航空戦力のドラゴンナイトが8体のみ。

奇襲を受けたため、海上戦力は近衛艦隊が主体の上記戦力のみ。

 

 

主力艦の数の上で不利ではあるものの、戦術を工夫すれば充分勝つことが可能だ。

指揮官が無能でなければ......

 

 

 

「全艦に伝えよ!単縦陣で敵艦隊を迎え撃つ!」

「陣形を維持したまま敵艦隊へ突撃!正面から奴らを殲滅する!」

 

タロス提督の指示で艦隊が動き出す。

 

(艦の速度が大幅に下がる風上に突撃するだと!ここは敵の進路を妨害して、風向きと垂直に移動して、両艦隊の帆に受ける風の力を同じにする。そうすれば、帆による推進力が同じになって速度差を打ち消せる。)

(やはり、提督に進言して作戦を変えさせるべきだな。)

 

だが、私の進言は無意味だった。

 

「提督、この戦術は無謀す」

 

「だまれアレクセイ艦長!青二才は引っ込んでろ!」

「『成績がいい』だけの無能のくせに、俺に意見するな!」

 

私の意見を遮り、バカにした目でこちらを見るタロス提督。

他の士官たちも異議があるようだったが......私とのやり取りを見て諦めたようだ。

これだから、権力だけの提督たちは駄目だ。

 

「意見は無いようだな、このまま突撃!」

「魔導師隊は風魔法を帆に当てろ!真正面から風上へ進むのだ!」

「大砲の射程に入り次第、順次砲撃開始!」

「魔導師隊は距離が詰まり次第、風魔法の使用を終了!攻撃魔法に切り替えて敵艦を燃やし尽くせ!」

「ドラゴンナイトは......まあいらんだろう。海上戦力だけで敵を撃滅する!陸軍航空隊の支援は不要だ!」

 

無情にも時は過ぎ去っていき、ついに戦の火蓋が落とされてしまう。

 

 

 

~~~~

「提督!敵は艦隊を二手に分けました!」

「我が艦隊を両側面から挟み込むつもりのようです!」

 

見張り台からの報告を聞き、提督は指示を出す。

「馬鹿な奴らだな!敵さんは。」

「構わず前進しろ!左舷側の艦隊に接近し、火砲と魔法攻撃をおこなえ!各個撃破するのだ!」

「左舷側が壊滅後に右舷に回頭!残りの敵を全友軍戦力で撃滅する!」

 

 

(それではダメだ、追い風を受ける敵軍の速度は、圧倒的にこちらより速い。簡単に距離を取られて両側から集中砲火を受ける!)

 

勇ましく命令を下す提督。

彼の命令に懸念を抱いていたものの、話を聞いてはくれないだろう。

 

そして、懸念した通りに左舷側の艦隊は距離を空けて、砲撃を継続する。

逆に右舷側の艦隊は大砲の射程内に収まるように、近衛艦隊に接近してくる。

こちらも左舷側の艦隊に追いすがろうとする。

だが、こちらは風上へ向かっているため速度で劣り、距離を詰めることが出来ない。

 

 

このままでは、両側から集中砲火を受けることになってしまう。

そうなると、こちらは船の両側で発生する火災や浸水に同時に対応せざるを得なくなる。

逆に、敵は片側の被害に対応するだけでいい。

敵は、被害に対応しきれなくしてこちらの艦を沈めていくつもりのようだ。

 

 

恐れていたとおりに、両側面から轟音とともに敵の砲弾が撃ち出される。

次々とこちらの主力艦に命中していく巨大な鉄球。

被弾した艦の外壁に穴が開き、一部の艦で小規模な浸水が発生し出す。

まだ、対応可能な被害だ。

開いた穴も船大工たちの必死の活躍により塞がれていく。

だが、対応しきれなくなるのは時間の問題だ。

 

 

「操舵手は何をしている!敵艦隊が離れていくではないか!」

「ひとまず耐えろ!あと70ヤルド(1ヤルド=1m)だけ詰めろ、そうすれば左舷側の敵艦隊が魔法攻撃の射程に入る!」

 

敵の巧みな操艦により、両艦隊の中央に挟み込まれた状態が続く近衛艦隊。

このままでは、一方的に攻撃を受け続けてしまう。

なんとか戦況を立て直すべく、提督に進言する。

 

「提督!ここは、回頭して風下に逃げるべきです!一旦離脱して、再起を図りましょう!」

「ならん!逃げるなどもってのほか!功績が減るだろう!」

 

 

(ダメだなこりゃ)

 

あきらめはじめたその時であった。

事態はさらに悪化した。

 

 

一発の敵弾がマストに命中し、残骸が降ってくる。

(あ、ヤバ......)

 

運悪く、その残骸の大半が指揮所に向かって落ちてきてしまう。

その場にいた、艦隊首脳部と艦長である私が崩落に巻き込まれてしまう。

 

残骸に押しつぶされていく将校たち。

その光景を最後に、私の意識は沈んでいった。

 

 

 

 

【1943年4月18日:ブーゲンビル島上空】

ガガガガガ!

 

私の乗機する一式陸攻に、敵戦闘機の機銃弾が命中する。

何発かは外壁を貫通し、機内にも弾丸が飛び込んでくる。

 

「元帥閣下、申し訳ありません......どうやらここまでのようです。」

 

 

操縦士からの悲痛な叫びが私の耳に入る。

(護衛の零戦隊もよくやってくれたが......敵が多すぎたな。)

(戦況も芳しくない、予想通りこの戦争で勝つことは無理だろう。なんとか講和を実現してくれればよいが......)

(この戦争の教訓を生かしたいところだが......もはや無理だな。)

(願わくば次は......『平和な世』に生まれ変わりたいものだ。)

 

 

死を前にした私。

一抹の後悔はあったものの、その心は穏やかであった。

 

「操縦不能です!墜落します!」

 

言葉とともに、急速に落下していく陸攻。

それからすぐに、地面との悲劇的な再会を果たす。

 

 

この日、山本五十六元帥はブーゲンビル島の空に消えた。

だが、彼の記憶と経験は次の戦争で活かされることになる。

 

 

舞台は現実世界ではなく『異世界』であったが......

 

 

 

 

【ナルヴィナ国:首都レイキャナス近海】

「......う、......アレクセイ艦長!」

 

副官のエリスの声で、私は目を覚ます。

「ここは......それに私は墜落したはずで......」

 

「艦長!お気を確かに!」

「まだ少し混乱なされているようですね。頭を強打されたからでしょう。」

 

(......ああ、そうだ。敵艦隊との交戦中だったな。だが、さっきのあれは何なんだ?)

(夢にしてはやけに......)

 

 

そこまで考えた時であった。

 

(な!?これは......一体?)

 

膨大な量の記憶が私の頭に流れ込み、数々の光景が目の前に浮かぶ。

鋼鉄の軍艦が海を走り、金属の航空機が空を駆けて互いに撃ち落とし合う。

全てが見慣れない光景だが、どこか懐かしさも感じていた。

それが戦争の様子だと気づくのに、さほど時間はかからなかった。

 

だんだんと再生される光景が落ち着き、今度は強い後悔の念が湧いてくる。

勝ち目のないとわかっていながらも、『真珠湾攻撃』を立案して『米国との戦争』を始めてしまったこと。『ミッドウェー海戦』による敗北を目にしながらも、その戦争を終えることが出来なかったことなどを。

 

知識としてではなく、自分の経験としてそれらの出来事が頭に入ってきた。

最後に、自分の最後の瞬間と『平和な世』に生まれ変わりたいと願っていたことと、死の間際に『この悲劇を繰り返さない』と誓ったことを思い出す。

 

 

意識を取り戻した私。

周囲を見渡すと、数秒の時間しか経っていないようだ。

感覚としては二日ほどの長さに感じたが。

 

(これは......前世の記憶か?私とはずいぶん違う人格だったみたいだ。私自身は......大きくは変わっていないようだな。記憶のみを受け継いだのだろうか?)

(それにしても『平和な世』か、この世界ほど、そこから程遠いものはないだろうな......だが、この戦争を終わらせれば......『一時的な平和』くらいであれば作れるだろう。)

 

(そのために、まずはこの海戦に勝利しないとな。)

 

 

「お怪我は大丈夫ですか。」

「ああ、もう大丈夫だよ。ありがとうエリス。」

 

私の様子を見て、彼女も安堵したようだ。

 

 

「エリス、現状はどうなっている?」

 

「状況は......大きく悪化しました。」

「こちらの残存戦力は、戦列艦3、フリゲート6のみです。それ以外は撃沈されました。辛うじて、接近してきた敵フリゲート4隻を戦闘不能にしましたが......敵主力艦の被害は軽微です。」

「また生き残った艦も......全て小破しました。」

「敵艦隊は、依然として戦列艦6隻、ガレオン5隻および補助のフリゲート2隻を保有しています。」

 

エリスの報告は続く。

「そして、近衛艦隊首脳部ですが......提督を含む高級将校は、全員戦死なされました。」

「そのため、旗艦艦長に指揮権が委譲されます......つまり、あなたが指揮を執ってください。」

 

一息置いて続ける。

「艦長、いえ臨時提督!ご指示を!」

 

 

 

(本来ならば、撤退するところだが......いや、いっそのこと『撤退』してやろう!今度はこちらの罠にはめてやる!)

 

 

「全艦に通達してくれ。我々は『撤退』する。」

「本気ですか!首都を危険に晒すおつもりですか!」

 

私の指揮に意見するエリス。

 

「問題ない、これは敵をはめる罠だ。」

「うまくいけば、敵艦隊を撃滅できる。」

「エリス、ドラゴンナイト部隊は健在かい?」

 

「ええ、8騎全て基地に待機しています。」

 

「よしいいぞ、彼らの助けも借りよう!陸軍航空隊に連絡してくれ、合図を送り次第動いてもらう。ただし、勝手に動くなとも伝えてくれ。ブレス攻撃を集中させれば、一隻くらいは沈められるかもしれないが......対空魔法で全滅してしまう。」

 

 

「わかりました。全艦にその旨を伝えます。」

 

エリスが答えると同時に行動を起こした。

そして私の下した命令に従って、全艦が撤退準備を始める。

 

 

 

(前世では敗北間近だったが......この戦争には勝ってやる!)

(ドラゴンナイトを戦闘爆撃機とみれば、経験を活かせる!あとは爆撃機でも用意できたらいいのだがな。)

(さて、ショータイムの始まりだ。踊ってくれよ、イゼル帝国の諸君。)

 

 

 

 

 

第二話に続く

 




第二話は9月5日公開予定です
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。