俺は今、達成感に満ちている。
普段の勉強が実を結び、テストで高得点を取ったのだ。
順位もクラス、学年ともに一桁台だ。
これは先輩も驚くに違いない。
その日、俺は帰る前に先輩と校門で待ち合わせをした。
「やあ」
「あっ、先輩」
「君が僕を呼ぶなんて珍しいね」
「そうなんですよ〜聞いてくださいよ〜」
そして俺はテストのことを先輩に話した。
俺がどう勉強してきたかや、先輩のおかげで、
勉強へのモチベーションが出てきたということを。
「ふふっ、僕のおかげで順位が上がったなんて嬉しいね。でも、今の結果は君が頑張った努力のおかげだよ」
「へへへっ」
先輩に褒められて、変な声が出てしまう。
「よく頑張ったね、枕木君。おめでとう」
「……ありがとうございます先輩!」
「ふふっ、じゃあ僕はお先に失礼するよ」
「えっ」
「え?」
もう終わりなのだろうか、正直もっと褒めてほしい。
「君は天才だね「とか「やっぱり枕木君はカッコいいよ」とか。
もっと言うと、ご褒美が欲しい。
「い、いやもっとなんか…その」
俺がそう言うと、先輩は首を傾げたあと、
俺の顔をじっと見つめてきた。
まずい、下心がバレてしまう。
「ふうん……ご褒美が欲しいんだね」
バレた。
こうなったからには仕方ない、
俺は本心を隠さずさらけ出した。
「だっ、だって、いつも先輩は俺に優しいし、テストで頑張ったらいいことしてもらえるかなって」
「実際、順位すごいですよ。見てください、一桁ですよ!一桁!」
「頑張ったんですからね、最初のころ思い出してくださいよ!」
「ノートすら取ってなくて、かなり危なかったのに今は一桁ですよ!」
「だからもっと褒めてくださいよ〜ッ」
俺は言い切った。
少し……いやだいぶ恥ずかしい。
しかも校門前で喋ったせいで、周りがヒソヒソ話しながらこちらを見ている。
あまりの恥ずかしさに、俺は猛ダッシュで帰宅した。
帰宅したあと、俺は部屋の布団の中で丸まっていた。
自分の発言と、周りの視線を思い出すたびに、
布団が丸まっていく。
すると突然、チャイムが鳴った。
俺は行きたくなかったが、配達員さんだったら申し訳ないと思い、
一応、玄関へ向かった。
俺がドアを開けると、そこにいたのは先輩だった。
「ひいいっ、ごっ、ごめんなさい」
あんなことを言ったあと、逃亡してしまったのだ、
先輩でも怒ってしまうだろう。
「忘れ物をしているよ、枕木君。ほら、これ」
「へっ?」
思っていた返答と違ったので、困惑した。
先輩が手に持っているものを見ると、
それは俺の鞄だった。
急いであの場から離れたので、忘れてきてしまったのだろう。
「ふふっ、慌てすぎだね枕木君」
「……すいません、先輩」
受け取ったあとお礼を言い、俺がそっとドアを閉じようとすると、
先輩がドアノブを引っ張ってきた。
「あの……なんですか先輩」
「入ってもいいかな?」
「えっ」
「ほら、ご褒美の話をね」
それを聞いた俺は「まだ俺に優しくしてくれるんだ」と思いながら、
先輩を家に入れ、俺の部屋へ向かった。
「その……人が来ると思ってなかったので、あんまり綺麗じゃないですけど……」
「いいよ、無理言って来たのは僕だからね」
俺と先輩はベッドに座って、話し始めた。
「あ、あの……さっきはすいません」
「ん? 僕は別に気にしてないけれど」
また先輩に気を遣われてしまった。
「君はすぐ落ち込むね」
「す、すいませ」
俺がそう言いかけると、先輩は俺の体を倒して、
自分の太ももに俺の頭を乗せた。
いつもの膝枕だ。
ただいつもと違うのは、俺の頭の向きが、
先輩の体を向いているということだ。
頭もホールドされて、向きを変えることができない。
「むぐっ」
「君は喋るとすぐ落ち込んでしまうからね」
そしてしばらくの間、先輩は俺の頭を離さなかった。
別に俺も、この体勢を変える理由がなかったので動かなかった。
──やはり先輩の膝枕は落ち着く。
先輩の太ももの感触と温度を感じながら、
先輩の匂いも感じられて、幸せだ。
さっきまでの辛い記憶が薄れていくようだ。
このまま寝てしまいたい──。
そう思うと、先輩が俺を起こした。
「寝たらダメだよ、枕木君」
「そ、そんなあ」
「元気は出たかな?」
「まあ、少しは……」
「なら、よかったよ」
先輩は少し笑ってそう言った。
相変わらず、先輩の笑顔は素晴らしい。
「じゃあ、元気も出たところでご褒美の話をしようか」
「えっ」
さっきまでの膝枕がご褒美だと思っていた俺は驚いてしまった。
「ん〜?何を驚いているのかな」
「いや、さっきまでのがご褒美だと思ってて……」
「まあ、あれもご褒美といえばご褒美なんだけれど」
すると、先輩がこちらの手を握って、
天使のような微笑みでこう言った。
「せっかく君が頑張ったんだから、僕もそれに応えないとね」
それを聞いた俺は、嬉しさで泣きそうになってしまった。
子供のわがままのような、
校庭での俺の発言に応えてくれるなんて。
「じゃあ、なにがいい?」
「へっ?」
「ふふっ、なにをしてほしいか、君が決めていいんだよ」
「えっ、あっ」
俺は戸惑った。
急になにがいいかと言われても思いつかない。
いや、思いつくには思いつくが、
先輩にもドン引きされてしまいそうなものばかりだ。
他にはなにがいいだろうかと、考えていると、
俺は先輩にしてほしいことを思いついた。
「その表情……決まったみたいだね」
「先輩」
「うん」
「その、先輩の膝枕で寝たいです……」
先輩は少しキョトンとしていた。
想像していたのは、もっと過激なものだったのだろうか。
「あ、あのダメだったら別に」
「……ふふっ、いいよ。ほら、おいで」
先輩が自分の太ももを優しく叩いて、
俺を呼んでいる。
頭を乗せると、とても落ち着く。
この世のどんな枕でも、先輩には勝てないだろう。
「どうかな、枕木君」
「気持ち……いいです」
「ふふっ、じゃあおやすみ」
「……あっ、先輩」
俺は突然、あることを思い出した。
先輩は、家でご飯を作るため、
17時には帰らなければならないのに、時計は16時45分を示している。
「家、帰らなくても大丈夫ですか」
「大丈夫だよ、君が寝たら帰るさ」
俺はそんなにすぐ寝ると思われているのだろうか。
「ほら、ご褒美なんだから寝ないと。僕のためにもね」
「……そうですね、おやすみなさい先輩」
『おやすみ、枕木君」
──気づいた時には眠ってしまっていた。
起きると、先輩はもう帰っていた。
何時だろうと思い、スマホを見ると、
時刻は19時だった。
(やっば、寝過ぎちゃった。先輩の膝枕が気持ち良すぎたせいで……ん?)
スマホの画面をよく見ると、
先輩からのメールの通知があった。
なんだろうと思い、確認すると、
そこにはこう書いてあった。
【先輩】 「君が寝たから、僕は帰ったよ」
【先輩】 「すぐ寝て驚いたよ、とても気持ちよさそうだったね」
そんなにすぐ寝てしまったのかと、思っていると、
まだメールの続きがあることに気づいた。
画面を下に動かすと、
【先輩】 「ほら、これ」
という文面と共に俺の寝顔の写真が送られてきていた。
その顔はとても気持ちよさそうだ。
──校門でのやり取りは恥ずかしかったが、
結果的に先輩の膝枕を二回も楽しめたのは、
よかったのかもしれない。
だが、次の日──。
「あなた、ちょっといいかしら」
「ん? なんだよ竜崎」
「昨日、校門でうちのクラスの生徒が、他の生徒に叫んでいたそうですわ」
「い、いやそれは……」
「話を聞かせてもらえるかしら?」
俺はそのあと、竜崎にこっぴどく叱られた。
相手は先輩だから大丈夫、と言い訳したが、
学校で叫ぶこと自体が迷惑だと言われてしまった。
人前で叫ぶのはやめよう──。
R-15 「ずぶ濡れ」
今日の授業が終わり、家に帰ろうとすると、
突然、雨が降ってきた。
これはまずい。
俺は今日、傘を持ってきていないのだ。
しかも勢いもかなり強い。
少し、雨が止まないかと待ってみたが、
まったく降りやむ気配はない。
俺が下駄箱のあたりで右往左往していると、
先輩が外からやってきた。
「やあ」
「あっ、先輩」
先輩が傘を持っている。
「君が傘がなくて、困っていそうだったからね」
「な、なんでそれを」
「だって全然、外に来なかったからね」
そのあと俺は傘がなくて困っている、と話すと、
先輩が俺の家まで一緒に帰ってくれることになった。
「じゃあ、これを持ってくれるかな」
そう言うと、先輩は俺に持っていた傘を渡した。
「これは?」
「僕も一つしか傘を持っていないんだ」
そして少し、間を置いたあと、
先輩は少し笑って、こう言った。
「だから……相合傘だね、枕木君」
俺がその一言を聞いて固まっていると、
「ふふっ、そろそろ行こうか」
と言われてしまった。
そして俺が傘を差して、
二人で俺の家へ向かい始めた。
「あ、あの濡れてたりしませんか」
「大丈夫だよ、君がしっかり傘を持っていてくれているからね」
緊張してしまう。
相合傘などしたことはないし、
もし先輩が濡れてしまったらどうしようと思うと、
手が震えてくる。
するとそれを先輩に見られたのか、
こう言われた。
「大丈夫だよ、落ち着いて」
俺はその一言で震えが止まった。
やはり先輩は優しい。
「す、すいません」
「気にしないで、僕の方こそ君に傘を持たせてしまって申し訳ないよ」
すると、先輩が俺の方を見上げた。
「僕が君より身長が高かったら、僕が持ててたのにね」
「い、いや先輩は今のままでいいですよ」
「……ふふっ、そっか」
すると先輩は、そっと近づいてきた。
嬉しかったのだろうか。
だが先輩にくっつかれると、
ドキドキしてしまうからやめてほしい。
そうこうしていると、俺の家に着いた。
「着いたね、枕木君」
「よかった〜、先輩、今日はありがとうございました」
「ふふっ、じゃあまたね」
そして先輩は自分の家へ向かおうとしたが、
その瞬間、車がやってきて、
水飛沫で先輩はずぶ濡れになってしまった。
俺は急いで先輩のもとへ向かった。
「だ……大丈夫ですか先輩」
「ふふっ、びしょびしょになってしまったよ」
怪我とかはなさそうで安心したが、
俺はあることに気づいてしまった。
先輩の濡れた制服が透けてしまっている。
幸い、ブレザーで胸は隠れているが、
これはまずい。
俺はそれ以上、透けた部分を見ないようにし、
急いで先輩を担ぎ、家の中へ入れた。
「どうかしたのかな?」
「あっ、いやその状態の先輩を外に出しておけないというか…」
先輩は不思議そうにこちらを見つめたあと、
下を向いて、自分の制服を確認した。
「透けちゃってたんだ」
「み、見てませんよ」
口を滑らせてしまった。
先輩はまだなにも言っていないというのに。
「ふふっ、君は分かりやすいね」
「い、いや違くて」
「でも助かるよ、さすがに透けたまま帰るのは恥ずかしいからね」
そして、俺は急いでタオルと替えの着替えを持ってきた。
着替えは先輩のサイズがなかったので、
俺のものを持ってきた。
「あ、あのすいません、先輩サイズの服はなくて……」
「いや、助かるよ」
「ならよかったです」
そして着替えを渡すと、先輩はこちらをじっと見つめてきた。
「どうかしましたか」
「今着てる服、脱がせてほしいな」
俺は戸惑った。
先輩の服を脱がす……?
そんなことをしたら、先輩のいろんな場所が見えてしまう。
「嫌かな?」
「嫌ではないですけど……」
「そっか」
そう言うと、先輩は俺の両腕を持って、
自分のブレザーのボタンに当てた。
「ほら、外してみて」
俺はなにをやっているのだろうか。
本当はこんなことせず、早く着替えてもらい、
着ていた服を乾かすのが大事なはずなのに。
だが、俺の体はボタンを外すことを選んだ。
これを外せば、さっき見ないようにした胸が見えてしまう。
しかし、もう俺の体は本能だけで動いていた。
先輩の、胸が見たいという本能で。
そして外すと、今まで隠れていたものが露わになった。
「これは、ブラジャー……?」
「ふふっ、そうだよ、擦れるからつけているんだ」
思わず、俺はそれをじっと見つめた。
先輩がつけているのは、ハーフトップ型のものだった。
「ふふっ、見過ぎだよ」
「す、すいません。でも先輩が脱がしてって……」
「そうだね、これを見た時の反応が見たかったんだ」
どうやら俺は先輩の罠にハマってしまったようだ。
「あ、あとは自分で脱いで着替えてくださいね!」
そう言って俺は、玄関から離れ、リビングへ入った。
さっきのことを思い出すだけで、頭がおかしくなりそうだ。
いつもだったら、まず冗談なのかを聞いていたはずなのに……。
俺は見たいという気持ちに支配されてしまっていた。
そんなことを考えていると、ドアが開き、
先輩が入ってきた。
俺の服を着た先輩は、服がブカブカで可愛い。
「着替えたよ、元の服はどこにおけばいいかな?」
「あっ、その、脱衣所に置いてくれれば、俺が浴室乾燥機で乾かすので……」
「分かったよ」
そして先輩が脱衣所に服を置き、
俺が服をかけ、乾かし始めた。
先輩の濡れた制服を見ていると、変な気持ちになってしまう。
リビングへ戻ると、先輩が俺を待っていた。
「……さっきはごめんね、枕木君。少しからかいすぎてしまったよ」
「い、いや大丈夫ですよ」
気まずい空気が流れている。
ただでさえ外も雨で暗くてじめっとしているのに、
家の中まで、暗いのはごめんだ。
そうだ、こうしよう。
俺は上を脱ぎ、上半身裸になった。
「先輩、俺のも見ていいですよ!これでおあいこですね!」
「……」
さらに空気が変になってしまった──。
──今、リビングには気まずい空気が流れている。
俺が行動を間違えてしまったからだ。
「す、すいません」
恥ずかしくなり、服を着ようとすると、
先輩が笑った。
先輩の顔を見ると、笑いすぎたのか涙が出ている。
少し経って、落ち着いたあと、先輩が口を開いた。
「……はあ、君は面白いね」
「な、なら、よかったです」
空気が和んでよかった。
俺は安心し、服を着ようとした。
すると先輩が、俺の腕を掴んだ。
「な、なんですか」
「ねえ、触ってみてもいいかな」
「えっ」
予想外の答えに戸惑ってしまう。
俺の鍛えてもいない体を触りたいだなんて、
相変わらず、先輩の考えることはよく分からない。
「まあ、少しなら……」
「ありがとう。じゃあ、触るね」
先輩は、優しく撫でるように触ってきた。
少しくすぐったい。
一通り触ったあと、今度は人差し指で押してくる。
変な感じだ。
先輩がずっと触ってくるので、思わず声が出た。
「あ、あのもういいですか」
「おっと、集中しすぎてしまったね」
「そんなに俺の身体が好きなんですか、先輩〜?」
「……そうかもね」
その声は照れ隠しのような声色だった。
いろいろ話したあと、俺はようやく、服を着ることができた。
「はあ、ようやく着れましたよ」
「ふふっ、ごめんね」
そのあと、俺は浴室へ行き、制服が乾いているか確認した。
だが、乾くまでにはもう少し時間がかかりそうだ。
「先輩、もうちょっとかかりそうです」
「そっか……ねえ枕木君」
「ん、なんですか先輩」
「君は、僕の身体触ってみたい?」
今日、何度も衝撃を受けていた俺は、
さすがに、今回は驚かなかった。
どうせこれは冗談だろう。
「冗談ですよね?」
「違うよ」
「えっ」
「僕は君に触ったんだから、君も僕に触っていいんだよ」
俺は驚いた……が、今日はそれ以上に、
触りたいという気持ちが強かった。
いつもなら断っているはずなのに、なぜだろう。
きっと雨のせいだと、俺は責任転嫁した。
「触り……たいです」
「いいよ」
そう言うと先輩は、着ていた上の服をまくり上げようとした。
それを見た俺は冷静になってしまい、
まくり上げようとしている手を掴み、止めた。
「どうしたのかな?」
「そ、その直で見るのは恥ずかしいというか……」
「じゃあ、服の中に手を入れるのはどうかな。これなら見えないよ」
俺はその提案に乗ることにした。
冷静になりはしたが、やはり触りたいのだ。
そして服の中へ手を伸ばした。
すると、柔らかいものに当たった。
おそらく先輩のお腹あたりだろう。
先輩のものは、柔らかくて俺の手に吸いついてくる。
それと雨で濡れたからだろうか、少し、しっとりとしている。
先輩を見ると、上目遣いでこちらを見ている。
誘っているのだろうか。
俺がさらに上へ手を動かすと、
なにやら、濡れたものに当たった。
その感触に、俺が少し戸惑っていると、先輩が口を開いた。
「それはブラだよ、さすがに下着はつけておきたかったからね」
先輩の下着に触れ、心臓の鼓動が高まっていくのを感じる。
このままでは、俺はおかしくなってしまう。
そろそろ服から手を抜かないと。
そう思っていると、先輩が挑発するように話しかけてきた。
「もう終わるのかな?」
「い、いやだって」
俺が続きを喋ろうとすると、
先輩は俺の口に指を当て、耳元で囁いてきた。
「僕の下着の中、君なら触ってもいいよ」
その言葉で、俺のタガが外れた。
ドクン、ドクンという心臓の鼓動が自分にも聞こえてくる。
俺はゆっくりと、指を下着の中に入れ、
中のものを触った。
──柔らかくて、ずっと触っていたくなる。
先輩の体温も、感触も、全て感じる。
手のひらから頭に伝わってきて、それ以外のことを考えられなくなりそうだ。
その後も、ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、ずっと触り続けた。
それ以外のことを全て忘れ、触ることだけに集中した。
「ふふっ、触りすぎだよ」
俺はその一言で冷静さを取り戻した。
俺は……なにをやっていたんだろう。
「あ、あっ、すいません」
「いいよ、あっ、そろそろ乾いたかな」
時計を見ると、浴室へ行って乾いているか確認したときから、
1時間も経っていた。
俺はそんな長時間、触っていたと思うと、
恥ずかしくて、頭から煙が出そうだ。
そして俺は、乾いた制服を先輩に渡し、
先輩は制服に着替えた。
外を見ると、雨も止んでいる。
「今日はありがとうね、枕木君」
「あっ、いえ……」
先輩が帰る時も、俺はさっきのことを思い出していた。
まだ手には感触が残っている。
そんなことを思っていると、先輩が俺の腕を持って、
自分の胸に当てた。
「えっ、あっ」
「ふふっ、枕木君、またね」
そして、先輩は家へ帰っていった。
俺はその日、ずっと先輩のことを考えてしまい、
眠れなかった。
そして次の日──。
「やあ、おはよう」
校門で俺を待っていた先輩は、
昨日のことなんて、なかったかのように、
いつも通りだった。
「お、おはようございます先輩。その……昨日は」
そう言いかけると、先輩が昨日のように俺の口に指を当て、
俺の言葉を遮った。
「ここで話したら、他の人に聞こえてしまうよ」
「えっ」
「あれは……僕たち二人だけの秘密だからね」
先輩の表情は、天使と悪魔が混じったような、
優しく、そして誘惑的な……笑顔だった。
そのとき、分かった。
俺はもう先輩から離れられないと──。
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