真央先輩はおとこ♂の娘    作:ろあタルト大福

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第11話 「暑い&ガラガラ&ポニーテール」

 「暑い」

 

 

 暑い。とにかく暑い。

朝、起きたときに真っ先に感じたのはそれだった。

暑さのせいで目覚ましより早く起きてしまった。

俺はクーラーをつけ、登校の準備を進めた。

 

 朝ご飯を食べているときにテレビをつけると、

どうやら今日は40度を超えているらしい。

正直こんな暑さで登校したくはないが、

俺はいやいや支度を終え、学校へ向かった。

 

 当然だが、家より外の方が暑い。

それは蝉すらも鳴かなくなるほどに。

 

 日光も強烈に照りつけてきて、

学校へ行くだけでその日の体力のほとんどを消費してしまった。

校門にたどり着いたが、先輩もいない。

暑すぎるからだろうか。

 

 へとへとになり、いったん、

校門近くの日陰で座って、

水分補給しようとすると、

日傘を差した先輩がやって来た。

 

『やあ、日焼け止めを塗っていたら遅れてしまったよ』

「先輩……俺もう疲れちゃいました」

『今日は暑いから仕方ないね』

 

 正直、動く気力が湧いてこない。

登校しただけで汗でびしょびしょで、

不快感もかなりある。

 

 だが、遅刻するのも嫌だ。

そういえば近くに先輩がいる。

先輩になんとかしてもらおう。

 

「先輩」

『ん?なんだい』

「なんかやる気の出ることをしてください」

 

 俺がそう言うと、先輩は周りを見回して少し悩んだあと、

俺の耳元へ近づいてきた。

なにか元気の出る言葉でも言ってくれるのだろうか。

少しドキドキしていると、突然、耳に息を吹きかけられた。

 

 思わず変な声が出そうになったが、

ここは校門近くだということを思い出し、

グッとこらえることができた。

 

「なんですか、今の!?」

『ふっ、ってしただけさ』

「これで元気なんか出ませんよ!?」

『そうかな、ツッコむ元気が湧いてきたじゃないか』

 

 確かに、さっきまでよりは元気が出たかもしれない。

あまり納得はしていないが、

一応、先輩に感謝したあと、教室へ向かった。

 

 教室の中はクーラーが効いていて涼しい。

校門で先輩に息を吹きかけられるくらいなら、

最初から教室に来ていればよかったのかもしれない。

 

 だが、先輩のおかげで元気が出たのも事実だ。

それに、息を吹きかけられたとき、少し興奮してしまった。

……やはり校門にいてよかった。

 

 そして午前の授業が終わり昼休み──。

 

 今日は暑すぎるのでいつもの外の場所ではなく、

食堂に来ている。

 

「ふう〜、疲れましたよ先輩」

『頑張ったね。あとは午後の授業だけだよ』

「もう先輩、今から午後のこと考えさせないでくださいよ」

『ふふっ、ごめんね』

 

 なにか違和感がある。

なぜだろう、何か足りない気がする。

 

『そういえば、りゅりゅがいないね』

 

 俺は先輩の一言でようやく思い出した。

いつも三人で食べているから、足りない気がしたのだろう。

だが、いない理由は分からない。

 

「あいつ、クラスにはいましたけどね」

『じゃあ、クラス委員の仕事なのかもね』

 

 そんなことを話していると、竜崎からメールが来た。

 

【竜崎】 「残念ながら、私は食堂には行けません」

 

【まくらぎ】 「どうしてだよ」

 

【竜崎】 「以前、一度来たことがあるのですが……」

 

 竜崎からのメールによると、前に来たときは竜崎が来ただけでパニックが起きたらしい。

俺はそうは思わないが、

竜崎は、学校で一番綺麗な女子と言われているからだろう。

そのときは、騒ぎのせいでご飯を食べられなかったり、

知らない男子に告白されたりで大変だったらしい。

 

 だから竜崎は食堂を避けているんだろう。

 

『人気者というのも大変だね』

「竜崎でパニックが起きるなら、先輩でもパニックが起きないとおかしいですよ」

 

 俺は本音を漏らしてしまった。

 

『ふふっ、それは僕が綺麗ってことかな』

「……そうですよ」

『嬉しい言葉だね。でも、パニックが起きたら僕は知らない人に告白されてしまうね』

 

 その瞬間、俺の全ての思考が停止した。

知らないやつが先輩に告白する……?

そんなの、そんなの、

 

「そんなの嫌だあっ」

 

 思わず、声が出てしまった。

 

『枕木君、声が大きいよ』

「あっ、すいません」

『ふふ、まあ君がそんなに僕のことを思ってくれているのは嬉しいよ』

 

 先輩は優しい。

そしてお昼ご飯を食べ終わり、教室へ戻ったあと、

先輩からメールが来た。

 

【先輩】 「放課後、校舎裏に来てほしいな」

 

 俺は「なんだろう?」と思った。

そのことを考えていると、午後の授業が終わり、放課後になった。

 

 朝よりはましだが、まだ暑い。

そして校舎裏へ向かうと、先輩がすでに待っていた。

 

『やあ』

「なんですか先輩」

『枕木君、僕のいつもとの違い分かるかな?』

「な、なんですか急に」

『いいから、答えてみてほしいな』

 

 急にそんなことを言われても分からない。

髪を切ったとかだろうか。

 

「髪、切りました……?」

『違うよ』

 

 違った。

俺にはまったく分からない。

 

「ひ……ヒント、ヒントください」

『……君がいつも見ているものだよ』

 

 俺がいつも見ているもの……?

先輩の顔だろうか。

とても綺麗だが、いつもとの違いは分からない。

 

 ──よく見るといつもより赤い気がする。

夕焼けの光だろうか?

いや、違う。

わざわざ校舎裏に俺を呼んだんだ。

校舎裏といえば告白。

お昼に告白についての話をしたし、顔が赤いのもそういうことだろう。

 

 気づいた瞬間、俺は胸の鼓動が高まるのを感じた。

確かに先輩のことは大好きだ。

だが、いきなり告白されては俺の心臓がもたない。

 

「わ、分かりましたよ、先輩。俺に告白するつもりなんでしょう!」

『違うよ』

「えっ」

 

 だんだんと胸の鼓動が静まっていく。

 

「じゃ、じゃあなんですか。これ以外の答えがあるんですかっ」

『……制服』

「へっ?」

『今日は、ブレザーを着ていないんだ』

 

 言われてみて、先輩の服を見ると確かにブレザーがなく、

シャツだけだ。

朝はへとへとで、お昼は……先輩の顔ばかり見ていて気づかなかった。

 

『いつもと違うから、君は気づくかなって』

「……もしかして俺が気づかなかったから放課後に呼んだんですか?」

『うん、本当に気づいてないのかなって』

「い、いやそれは先輩の顔が良すぎてずっと見てたからで……」

 

 すると先輩が急に笑った。

 

『ふふ、服が見えなくなるくらい僕の顔を見てたのかい?』

「す、すいません」

『いいよ、気になっただけさ』

 

 確かに、ブレザー有無に気づかれないのは、

気になってしまうかもしれない。

 

「次からは体も見るようにします」

『その言い方だと、スケベな人みたいだね』

 

 そして少し笑ったあと、先輩は俺に近づいて、

ハグをしてきた。

 

『これからも、僕のことを見ててね』

 

 先輩は温かい──。

 

「先輩」

『ふふっ、どうしたのかな』

「あ、暑いです……」

 

 先輩のハグは暑かった──。

 

 

 

 「ガラガラ声」

 

 

『……けほっ、おはよう、枕木君』

 

 俺は校門にいた先輩に話しかけられた。

だが、マスクを着けているし、いつもと声が違う。

普段の透き通るような声に比べて、

今日の声は濁っていて、声がガラガラになっている。

 

「ど、どうしたんですか先輩」

『昨日、少し歌いすぎてしまってね』

 

 話を聞くと、

どうやら昨日リオさんとカラオケに行き、

歌いすぎたのが原因らしい。

 

「どんだけ歌ったんですか……」

『5時間くらいかな、お姉ちゃんと一緒に外出するのが久しぶりだから、テンションが上がってしまったんだ』

「はあ、そういうことなら今日はあんまり喋らない方がいいですよ」

『でも挨拶はしないと……けほっ、けほっ』

 

 俺は先輩の背中をさすったあと、

心配なので、先輩の教室まで送った。

 

「体力ないくせに5時間も歌うからこうなるんですよ」

『ごめんね、でも助かるよ、枕木君』

「はあ……ほら、着きましたよ先輩」

 

 先輩は俺に感謝したあと、教室へ入っていった。

しかしなぜ5時間も歌ったのだろうか。

先輩はときどき天然というか、

抜けている気がする。

 

 だが、そんなところも可愛い……。

そんなことを考えていると、授業の時間が近づいてきた。

俺は急いで自分の教室へ向かい、席へ着いた。

 

 そして授業の前にホームルームが始まり、

竜崎がクラス委員長として連絡事項を話している。

 

 そこで、俺はある違和感を覚えた。

竜崎もマスクをしていて、少し声がガラガラだ。

思い返すと先輩もガラガラだった……。

そして昨日、先輩はカラオケに行っていた……。

 

 もしや……竜崎も先輩たちとカラオケに行っていたのだろうか?

いや、そんなはずはない。

俺は昨日、誘われなかった。

 

 まさか、俺だけ誘われなかった……?

その考えに辿り着いた時、

俺は深く絶望した。

竜崎の話も次の授業の内容も、頭にまったく入らないほどに。

 

 だが、こんなことを先輩がするはずがない。

というより、そうであってほしい。

俺は昼休みに竜崎と先輩を問い詰めることにした。

 

──昼休み。

 

「あら、先輩も喉の調子が悪いんですか?」

『そうなんだ、まさかりゅりゅも喉の調子が悪いなんてね』

 

 竜崎と先輩が会話をしている。

お互い、調子が悪い理由は分からないようだが、

俺に嘘をついているのかもしれない。

問い詰めなければ──。

 

「それで、最近乳液を変えてみたら、肌の調子が良くなったんです。先輩はスキンケアとかはしているんでしょうか?」

『僕は洗顔くらいかな』

「それは羨ましいですわ。それと、先輩が前に言われていたお店に、この前行ってきて……」

 

 ──二人が楽しそうに会話をしていて入れない。

喉の調子が良くないというのに。

話題も俺が入れないようなスイーツやら化粧品の話ばかりだ。

「竜崎のやつ、俺が入れない話題ばっか振りやがって……」と思って、

うつむいていると、

先輩が俺に話しかけてくれた。

 

『ごめんね、二人だけで盛り上がってしまって』

「違くはないですけど……そうじゃなくて」

 

 俺は先輩に考えていることをバレたくなくて、

顔を背けた。

すると先輩が『カラオケのことかな?』と言ってきた。

先輩に隠し事はできないらしい。

 

バレてしまったし、俺は二人への疑いを正直に話した。

 

「その、俺だけ誘われなかったのかなって……」

『ふうん、まあ、確かに君が疑うのも無理はないかもね』

「先輩も私も喉の調子が悪いですからね」

『でも、君だけ仲間はずれになんかしないよ』

 

 俺はその一言を聞いた瞬間、涙が出てしまった。

すぐに二人を疑った俺は、なんて醜いんだろう。

 

「うう……」

『まさか、泣いてしまうなんてね。ほら、涙を拭いて』

 

 先輩は俺にハンカチを貸してくれた。

なんて優しいんだろう。

そのあと、俺は先輩のハンカチで涙を拭いた。

 

『……落ち着いたかな?』

「はい……」

『ふふっ、ならよかったよ』

「先輩、竜崎……疑ってごめん」

『別に気にしてないよ』

「私もですわ」

 

 二人とも……優しい。

俺はいい先輩とクラスメイトに恵まれたんだ──。

だが、落ち着いてくると気になることがある。

竜崎がガラガラ声な理由はなんだろう。

 

「竜崎……」

「なんでしょうか」

「ガラガラ声になった心当たりとかってあるのか?」

『僕も気になるね』

「それは……その」

 

 竜崎は一瞬、間を置いたあと声を出した。

 

「昨日、休日の先輩を観賞していたらカラオケに入っていくのを見て、私も歌いたいと思いまして……」

「えっ」

「先輩がカラオケを出るまでずっと歌っていたのが原因かと……」

『いたなら話しかけてくれればよかったのに』

「いえ、お姉さんと楽しそうにしている先輩の邪魔はできませんわ」

『ふふっ、そっか』

 

 俺は「先輩を観賞ってなんだ?ただのストーカーじゃないのか?」と思ったが、

めんどくさいので言うのはやめておいた。

 

「というか、二人とも喉の調子が悪いのにそんないっぱい喋って大丈夫ですか?」

『このくらい平気さ』

「ええ、平気ですわ」

「ならいいですけど……」

 

 次の日──。

 

『悪化じてじまっだよ』

「私もでずわ」

 

 大丈夫じゃなかった──。

 

 

 

 「ポニーテール」

 

 

『やあ、おはよう』

 

 朝、登校すると、

先輩が俺に話しかけてきた。

それ自体はいつも同じだが、

明確に違うところが一つある。

 

 髪を頭の後ろで結んでいるのだ。

いわゆるポニーテールというやつだ。

 

「先輩が髪を結んでるなんて珍しいですね」

『暑いからね』

 

 普段のロングヘアの先輩と雰囲気が違って、

とてもいい。

普段が綺麗な印象だとすると、

今の先輩は可愛い印象だ。

 

「その……とても似合ってますよ先輩」

『ふふっ、ありがとう。じゃあ僕は教室へ行くよ』

 

 そう言って、先輩は教室へ向かった。

その時、チラッと先輩のうなじが見えた。

 

 昔、ニュースかなにかでポニーテールは、

男子の感情を昂らせるから校則で禁止という学校を見たことがある。

 

 その時は「なんだその校則」と思っていたが、

今なら分かる。

これは危険だ。

 

 そう思いながらずっと先輩のうなじを見ていると、

教室へ向かっていた先輩が、

こちらに振り向き、戻ってきた。

 

「ど、どうしましたか……?」

『君こそ、そんなに僕を見つめてどうしたのかな』

「い、いやそれは」

 

 まずい。

見つめていることがバレてしまった。

いや、それ自体はいつもやっているからいいが、

問題は見つめている場所がうなじだということだ。

 

 うなじをずっと見つめていたとバレたら、

俺がスケベみたいに思われてしまう。

 

「先輩の……姿勢が綺麗だなと」

『うなじを見てたんじゃないのかい?』

 

 バレていた。

 

『君があまりにじろじろと見てくるから、気になってしまったよ』

「そ……そんなに見てましたか?」

『うん、背中越しでもいやらしい視線を感じたよ。君はスケベだね』

「な、お俺はスケベじゃないですってば」

『ふふっ、またね枕木君』

 

 結局、先輩にスケベ扱いされてしまった。

俺はモヤモヤを抱えたまま、教室へ向かった。

 

(いや俺はスケベなんかじゃないし、ポニーテールが悪いんだ)

 

 そんなことを考えていると、ホームルームが始まった。

今日もまた、竜崎が連絡事項を話している。

そこで気づいたが、竜崎も今日はポニーテールだった。

 

 だがなぜだろう、まったく気持ちが昂らない。

連絡事項が終わり、竜崎が席へ戻る際、

チラッとうなじが見え、周りの男子たちは「おお」と言っていたが、

俺はその時も、気持ちに変化は生じなかった。

 

 そこで気づいた。

「俺はポニーテールが好きなんじゃない、先輩のが好きなんだ」と。

 

 そして午前の授業が終わり昼休み──。

 

 俺がいつもの場所へ行くと、

先輩と竜崎が話しているのが見えた。

どうやらポニーテールのことを話しているらしい。

 

「今日は暑いので髪を結んでみたのですが、男子の視線が気になりましたわ」

『その気持ち、分かるよ。僕も今日、いやらしい目で見られてしまってね』

「先輩をそんな目で見るなんて……私、許せませんわ」

 

 これはまずい。

その話題を話している最中に、俺が二人の前へ行ったら、

先輩に『あっ、いやらしい人が来たね』と言われてしまいそうだ。

 

 そんなことになったら竜崎にどんなことを言われるか……。

想像しただけで全身が震えてくる。

俺は話題が変わるまで、物陰に隠れることにした。

 

『そういえば、枕木君が来ないね』

「そうですね」

『なにかあったのかな?電話をかけてみるよ』

 

 この流れはよくない。

俺は着信音を切ろうとしたが、間に合わなかった。

物陰にいたことがバレた。

 

『いたなら来てくれてよかったのに』

「い、いや」

「そうですわ、物陰で盗み聞きなんてマナーがなっていないです」

『まあまあ、三人揃ったことだしお昼を食べようか』

 

 そしてお昼ご飯を食べ始めたが、

いつ、うなじの話をされるかと思うと味がしない。

ただでさえ盗み聞きで竜崎からの印象が悪い上に、

うなじを見ていたことがバレたら軽蔑されてしまうだろう。

 

 こんなにお昼休みが早く終わってほしいと思ったことはない。

だが竜崎が余計なことを言い始めた。

 

「それで先輩、いやらしい目で見てきた人はどうしたのでしょうか」

(やめろ竜崎、その話題を出すなあ〜っ)

『スケベって言っておいたよ、それで終わりさ』

「ならいいのですが……」

 

 これ以上、その話をするなと思っていると、

先輩がこちらの顔をチラッと見たあと、

別の話題を振ってくれた。

もしかして、俺がその話をやめてほしいと思ったのが伝わったのだろうか。

だとしたら、先輩は優しい。

 

 その後は何事もなく、

いつも通り、昼休みが終わるまで三人で話した。

 

「あら、もうこんな時間ですか、私はクラス委員の仕事があるのでお先に失礼します」

『またね、りゅりゅ』

 

 竜崎は早めにいなくなってしまった。

ちょうどいいので、俺は先輩にさっきのことを聞いてみることにした。

 

「先輩」

『ん?どうしたのかな』

「さっき……俺の顔を見て、話題を変えてくれましたよね」

 

 俺がそう言うと、先輩が少し笑った。

 

『気づいてたんだ』

「そりゃまあ、気づきますよ」

『だって、君もスケベってバレたくないだろうからね』

「だから俺はスケベじゃ……まあ、とにかく助かりました」

 

 また先輩が笑い、そのあと、少し話して、

俺たちも教室へ戻ることにした。

だが先輩は動かずにその場で止まっている。

 

「どうしました先輩?早く行かないと」

『だって、先に行ったら君にじろじろ見られてしまうからね』

「い、いやそれは……」

 

 俺が言い返せないでいると、先輩がなにかを閃いたような表情になり、

髪を結んでいたゴムを外した。

 

『こうすれば、うなじを見られることもないね』

 

 俺はポニーテールじゃなくなって、少しガッカリしたが、

髪を下ろして、いつもの姿になった先輩は、

美しかった。

やはり、いつも通りが一番いいのかもしれない。

そう思いながらじっと見つめていると、先輩が口を開いた。

 

『……やっぱり枕木君はスケベだね』

「なっ、お、俺は」

 

俺はスケベなんかじゃない──。

 

 

 

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