真央先輩はおとこ♂の娘    作:ろあタルト大福

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第12話 「枕&先輩のお母さん」

 「枕」

 

 

 ある日曜日。

「明日は学校か」なんてことを考えていると、

先輩から急に電話がかかってきた。

 

『やあ、枕木君』

「急になんですか先輩」

『明日、君の写真が欲しいんだ。できれば、一人で写ってるものがいいな』

「はい?」

 

 話を聞くと、枕の下に相手の写真を入れると、

その人が夢に出てくるという、おまじないを試したいらしい。

 

「それ俺じゃなきゃダメですか?」

『うん、君が夢に出てきたらいいなって』

「……ま、まあそんな先輩が、俺のこと好きなら仕方ないですね」

『ふふっ、枕木君は分かりやすいね』

「ん? 今なんか言いました?」

 

 とにかく、俺は電話のあと写真を探し、

ちょうど、一人で写ってる写真を見つけた。

 

 そして次の日の朝──。

 

「はい、どうぞ」

『わあ、助かるよ枕木君。じゃあこれ』

 

 そう言うと、先輩は鞄から自分が写った写真を取り出した。

その写真にはピースしている先輩が写っていた。

とても可愛らしい。

 

『僕だけが写真を貰うのも忍びないからね、これで君も試してみて』

「ど、どうも」

 

 俺は受け取った写真を鞄にしまった。

 

『じゃあまたね、枕木君』

 

 そうして先輩は教室へ行き、

その日はそれで終わった。

 

 そして夜、俺は寝る前に写真を鞄から取り出し、

枕の下に置き、その日は眠りについた──。

 

『残念だよ、枕木君』

 

 先輩の声が聞こえてくる。

 

「……え、なんですか先輩」

 

 俺が周りを見回すと、そこは檻の中だった。

先輩は檻の外から、俺に話しかけてきているようだ。

 

『君が僕のことしか考えていなくて、テストで最下位になるなんてね』

「い、いや、なんで俺は檻の中にいるんですか」

『この学校ではテストで最下位の人は処刑されてしまうんだよ、さようなら枕木君』

 

 そう言うと、先輩は遠くへ歩き始めた。

 

「ちょ、ちょっと待ってくださいよ」

 

 俺がどれだけ声を出そうとも、

まるでなにも聞こえていないかのように、

先輩は俺から離れていく。

 

「先輩、先輩〜ッ!」

 

 ──ジリリリリと目覚ましが鳴っている。

 

 どうやらあれは夢だったらしい。

夢のせいか、胸の鼓動が止まらない。

確かに夢に先輩が出てきはしたが、

こんな悪夢なら出てこない方がマシだ。

 

 俺は写真を急いで枕の下から取り出し、

近くの机に置いておいた。

そのあと支度を済ませ、

学校へ向かった。

 

『やあ、どうだったかな』

「先輩……よかった、あれが現実じゃなくて……」

 

 先輩が不思議そうな目で見つめてきたので、

俺は夢のことを話した。

 

『ふうん、それは災難だったね。安心して、最下位でも処刑なんてされないからね』

「それは知ってますよ……それより、先輩がいなくなってたらどうしようって……」

 

 俺が夢のことを思い出し、うつむいていると、

先輩が俺の頭を優しく撫でながら、励ましてくれた。

 

『大丈夫だよ、僕が君から黙っていなくなるなんてことはしないさ』

「先輩……」

『はあ、でもおまじないは残念な結果で終わってしまったね』

 

 そう言ったあと、先輩は顎に手を当て、

考えているような、素振りを見せたあと、

なにかを閃いた表情になった。

 

『……ねえ、枕木君。もう一回だけ試してみないかい?』

「え、また悪夢みたら嫌ですよ」

『今度は写真じゃないよ、僕のお腹を枕にして寝るんだ』

「はい?」

 

 先輩が言うには、写真で夢に出てきたのだから、

自分を枕にすれば、もっと夢に出てくるはず。

 

 そして、枕より自分のお腹で寝た方が気持ちいいと思うから、

良い夢が見られるはず、ということらしい。

 

 正直、めちゃくちゃな理論な気がするし、

悪夢を見たせいで少し迷ったが、

それを踏まえても、先輩のお腹で寝れるのは嬉しいので、

俺はその提案に頷いた。

 

『ふふ、じゃあまた放課後ね』

「はい、先輩」

 

 そして放課後──。

 

 俺は先輩を家に招き、

二人で部屋へ入った。

 

『じゃあ、やろうか』

 

 そう言うと、先輩は俺のベッドで仰向けになった。

 

『おいで』

 

 俺は先輩に吸い寄せられるように、

ベッドへ向かい、先輩のお腹に頭を乗せた。

 

『どうかな?』

「柔らかくて、確かにいつもの枕より気持ちいいです」

 

 俺がそう言うと、先輩は嬉しそうに微笑んだ。

 

「そういえば、なんで膝枕じゃなくてお腹なんですか」

『膝枕は前やったからね、それよりほら、早く寝ないと』

「……ですね、おやすみなさい」

『おやすみ、枕木君』

 

そのまま、俺は目を閉じた──。

 

『ふふっ、今日は楽しかったね枕木君』

 

 先輩の声がしたので、周りを見ると、

どうやらここは観覧車の中らしい。

外は暗くなっていて、

中には俺と先輩、二人きりだ。

 

『初めてのデート楽しかったね』

「えっ」

 

 デートという言葉に、

思わず驚いてしまう。

 

『えっ、てなにかな?もしかして楽しくなかったのかな?』

「い、いやそういう訳じゃ……」

『ふふ、なんてね。君がこういう時に言葉が詰まってしまうのは知っているさ』

 

 そのあと、少しの間を置いて先輩が口を開いた。

 

『ねえ、枕木君。デートの最後に、したいことがあるんだけどいいかな』

 

 先輩は席を立って、俺に近づいてくる。

 

「な、なんですか」

『枕木君、僕を見て』

 

 そう言うと、先輩は顔を近づけてきた。

 

「せ、先輩、これって……」

『いいから』

 

 先輩はさらに顔を近づけてくる。

もしかして、これはキスだろうか。

それに気づいた瞬間、胸の鼓動が高まっていく。

先輩と唇が触れ合うことを考えただけで、心臓が破裂しそうだ。

 

『好きだよ、枕木君』

 

 そう言いながら、先輩は俺の頭に優しく手を添えた。

 

『ねえ、する前に聞いてもいいかな』

「な、なんですか……?」

『枕木君は僕のこと好き?』

「す、好きです」

『もっと……大きな声で言ってほしいな』

「……お、俺は先輩のことが……」

『僕のことが?』

「大大大好きです!!」

 

──気がつくと、天井が見えた。

いつもの……見慣れた俺の部屋の天井だ。

 

『起きたね、枕木君』

「せ、先輩」

『どうだったかな?いや、聞くまでもないかな』

「へっ?」

 

 どうやら俺は「好きです」と言いながら飛び起きたらしい。

かなり恥ずかしい。

 

『突然、君が大きな声で言うからビックリしてしまったよ』

「すいません……」

『ふふ、それで、どんな夢だったのかな』

「そ、それは秘密ですっ」

 

 先輩がニヤついている。

もうどんな内容だったか察されていそうだが、

一応、俺の口からは言わないことにした。

 

『まあ、言いたくないなら大丈夫さ。さて、おまじないも成功したし、僕はそろそろ帰ろうかな……おや』

「どうしました?」

 

 先輩の視線の先にあったものは、

俺が朝、机に置いておいた先輩から貰った写真だった。

 

『この写真は悪夢になってしまって、縁起が悪いし、僕が貰っていくよ』

「その……俺はその写真、欲しいです」

 

 確かにその写真を枕の下に置くと、悪夢になってしまったが、

俺はそれでも、この写真に罪は無いと思うし、

なにより、先輩の写真は美しいし、せっかく先輩から貰ったので、

俺は先輩に、写真は手元に置いておきたいと伝えた。

 

『……そっか、なら置いておくよ。君がそんなに思ってくれているなんて嬉しいしね』

「ありがとうございます、先輩」

『ふふ、じゃあ僕はそろそろ帰るとするよ。またね枕木君』

 

 そして俺は玄関まで見送り、先輩は家へ帰っていった。

……最初は悪夢だったが、最後は先輩のおかげで、

いい夢を見ることができたし、いいおまじないだった──。

 

後日──。

 

「そういえば先輩、先輩は夢に俺出てきました?」

『そもそも夢を見なかったよ』

「えっ、いやいやおかしいですよね!?」

『まあ、君の写真は夢を見ないくらいよく眠れるということさ』

 

 いい感じに誤魔化されたが、こんなの納得できない──。

 

 

 

 「先輩のお母さん」

 

 

 休日の朝は気持ちがいい──。

学校がなく、リラックスして過ごせる。

 

 予定もないし、 

今日の朝ごはんは、

いつもより気合いを入れて作ろうかなんて考えていると、

突然、チャイムが鳴った。

 

 俺がなんだろうと思い、

玄関を開けると、そこにはリオさんが立っていた。

手に持っている鞄は、荷物かなにかで膨らんでいて、

さらにスーツケースまで持っている。

 

「ど、どうしたんですか、そんな大荷物で。というかリオさんに住所教えたことありましたっけ……?」

「それは……ひ、秘密だよ」

「そうですか」

 

 秘密ってなんなのだろうか。

先輩から聞いたりしたならば、

素直にそう言ってくれてもいい気がするが……。

 

「それより遊星君」

「なんですか?」

「し、しばらく、泊めてくれないかな……」

 

 俺は予想外の一言に衝撃を受けた。

こんな早朝にアポ無しで泊めてほしいなんて、

言われると思わなかったからだ。

 

 先輩でも泊めたことはないというのに……。

いや、先輩と姉弟だから、同じように冗談かもしれない。

俺はリオさんに聞いてみることにした。

 

「あ、あの冗談ですよね?」

「違うよぉ……遊星君しか頼れる人いないの……うぅ……」

 

 なんとリオさんが泣き始めてしまった。 

相当なにか嫌なことがあったのだろうか、

大粒の涙を流し、啜り泣いている。

 

 どうやら冗談ではなさそうだし、話を聞くため、

一度家にあげることにした。

 

「えっと……お茶です。とりあえず話を聞かせてもらえませんか?」

「うん……」

 

 話を聞くと、お母さんが久しぶりに家に帰ってくることになって、

そのお母さんが怖いから、家から逃げてきたそうだ。

 

「……まあ、詳しいことはわからないですけど、一旦うちにいても大丈夫ですよ」

「あ、ありがとう、遊星君。優しいね……へへ」

 

 俺はとりあえず、リオさんにいてもらうことにした。

しかし、そんなにそのお母さんは怖いのだろうか?

先輩からはそんな話、聞いたことはないが……。

 

 そんなことを思っていると、またもやチャイムが鳴った。

俺は「またか……」と思いながら、玄関へ向かった。

すると、今度は先輩が立っていた。

 

『やあ、枕木君』

「あの、先輩も別に泊まるのはいいですけど、泊まるなら事前に連絡してくれないと……」

『違うよ』

「えっ」

『お姉ちゃん、ここに来てるよね』

 

 どうやら、先輩はリオさんを探しにきたらしい。

俺が先輩を家にあげると、リオさんを探し、

見つけた瞬間、一瞬で背後に回って捕まえるように抱きしめた。

 

『やっぱりいたね、お姉ちゃん』

「は、離してマオ。わ……私は帰らないから」

 

 リオさんは、手足をバタバタし、

先輩から離れようとしたが、

諦めたのか、しばらくして動かなくなった。

 

『ごめんね、枕木君。迷惑をかけてしまったね』

「大丈夫ですけど……その……」

『ん〜?』

「リオさんが嫌がってますし、無理して連れ帰るのは……」

 

 それを聞いたリオさんが、目を輝かせるように言った。

 

「ほ、ほら、遊星君もこう言ってるよ!だから離してマオ〜」

『……枕木君、これはいつものことだから気にしなくて大丈夫さ』

「はあ」

 

 先輩が言うには、お母さんが帰ってくるたびに、

逃げたり隠れたりするらしい。

 

「だ、だってお母さん、怖いんだもん……」

『それはお姉ちゃんの将来を思っているからだよ。お姉ちゃんもそれは分かっているだろう?』

「……うん」

 

 どうやら、リオさんも落ち着いたらしい。

先輩も抱えるのをやめて、リオさんを離した。

最初はリオさんが泣く姿を見て、虐待でもされているのかと思ってしまったが、

そうではなさそうで俺も安心した。

 

『じゃあ、僕らは帰るとするよ。枕木君』

 

 そして先輩たちは玄関へ向かい、

俺もお見送りに向かうと、リオさんが俺の服を掴んできた。

 

「ど、どうしましたリオさん」

「遊星君……抱っこして」

 

 少し困ったが、持ち上げて抱っこすると、

嬉しそうな顔でリラックスしている。

すると、リオさんがなにか思いついたような表情になった。

 

「そうだ、遊星君も家に来てよ、そしたらお母さんも怖くないよ」

「ええ……」

 

 俺は少し戸惑った。なぜなら、

ついていくと、ほぼ確実に先輩のお母さんに会うことになるからだ。

先輩のお母さんも久しぶりに家に帰った時に、

知らない男がいたらきっと嫌だろう。

 

『お姉ちゃん、枕木君が困ってしまうよ』

「だってぇ……」

「俺は別にいいですけど、お母さんが嫌がるんじゃ……」

『言えば大丈夫だと思うよ』

 

 そう言うと、先輩はメールを送った。

すると、すぐ通知音が鳴った。

 

『ふふ、いいってさ、どうやらお母さんも君に会ってみたいらしいね』

「えっ、なんで俺のこと知ってるんですか」

『僕が、今日はこんなことがあったよってたまにメールしているからね』

「はあ」

 

 いいと言った手前、もう断ることはできないが、

お母さんが会いたいと言っていることを知り、

俺も怖くなってしまった。

 

『怖くなったかな?』

「い、いやそんなことは」

『ふふっ、じゃあ、行こうか』

「……ですね」

「レッツゴーだね、へへ」

『ところで……お姉ちゃんはいつまで枕木君に抱っこされているのかな』

 

 先輩がリオさんを真顔で、じーっと見ている。

 

『枕木君も疲れただろう?そろそろ下ろしても大丈夫だよ』

「いや、俺は大丈夫ですよ、全然疲れてないです」

 

 そう言うと、今度は俺をじーっと見てきた。

なにかまずいことでも言ってしまったのだろうか。

 

『……まあいいや、じゃあ行こうか』

「へへっ、任せたよ遊星君」

「はは…」

 

 こうして、俺は先輩の家へ向かい始めた──。

 

 

 

 ……俺は今、リオさんを抱っこしながら、

先輩の家へ三人で向かっている──。

 

 家へ近づいていくたび、

心臓の鼓動が速くなっていくのを感じる。

その理由は、おそらく先輩のお母さんが原因だろう。

 

 会ってみたいと言われてしまったし、

ここまで来て帰ることはできないが、

もし、会った途端に「あなたは真央に相応しくないわ」なんて言われたら、

俺はだいぶ落ち込んでしまうだろう。

 

 そんな不安を抱えていると、

表情に出てしまっていたのか、

先輩に『そんなに、不安にならなくて大丈夫さ』と言われてしまった。

 

 先輩がそう言ってくれるなら、

不安も抑えられる。

 

 そのあと、リオさんが「やっぱ、いやだあ……」と言って、

逃げようとしたりしたが、なんだかんだ無事に、

先輩の家へ着き、俺はリオさんを抱っこから下ろした。

 

『おや、まだお母さんは来ていないみたいだね』

 

 思わず、ほっとしてしまった。

いきなりいたら、俺は緊張でおかしくなっていただろう。

まあ、今でも緊張はしているが……。

 

『ふふ、ほっとしたね枕木君』

「い、いやこれは」

『まあ気にしないで、まだ時間はあるから一旦リビングで休んでておくれよ』

 

 先輩に言われたので、俺はリビングのソファーで休むことにした。

そこで一息つこうとしたが、心臓の鼓動が収まらない。

 

 俺は今まで友達がいなかった。

だから当然、友達の親など会ったことはない。

もしかしたら、これほど緊張しなくてもいいのかもしれないが、

経験がない俺にはそれが分からない。

 

 そんなことを考え、緊張で休めないでいると、

先輩が俺の隣に座ってきた。

 

『やっぱり、緊張するかな?』

「……はい」

 

 俺がそう言うと、

先輩は体をこちらに傾け、耳を俺の胸に当てた。

 

『ふふっ、ほんとだ。君の音がよく聞こえるよ』

「な、なあっ」

 

 先輩の急な行動に、余計ドキドキしてしまう。

 

「な、なにするんですか、余計に落ち着かないですよッ」

『ふふっ、ごめんね。君の音が気になってね』

「もお……先輩はいつも通りですね」

 

 先輩はいつもと変わらず、よく分からない。

だが『君もいつも通りでいいんだよ』と言われたようで、

少し落ち着いた。

先輩はこのことまで考えていたのだろうか。

 

 落ち着いて、俺の表情が変わったのを見たのか、

先輩が話しかけてくる。

 

『少し落ち着いたみたいだね』

「そうかもしれません……先輩はここまで考えてたんですか?」

 

 俺は考えていたのか気になったので聞いてみた。

だが、返事は『どうかなあ』という、

曖昧なものだった。

 

 相変わらず、不思議な人だ。

──そういえば、リオさんはどこに行ったのだろう。

 

「先輩、リオさんはどこ行ったんですか?」

『お姉ちゃんは、今君の近くのカーテンに隠れているよ』

「えっ」

 

 俺が「そんな訳は……」と半信半疑でカーテンをめくると、

本当にリオさんが隠れていた。

 

「な、なんで言うのマオ」

『隠れても無駄ということさ』

「ちょっ、ちょっと待ってください。い、いつ隠れたんですか?俺は結構すぐリビングに来たと思うんですけど……」

 

 話を聞くと、俺がリオさんを抱っこから下ろし、

先輩と話している最中に、そっと抜け出し隠れたらしい。

なんてスピードなんだ。

 

 そのあと、三人でソファーに座って話していると、

急に先輩が『さて、そろそろかな』と言い、

玄関の方から音がしてきた。

 

 そして、足音がどんどんこちらへ近づいてくる。

ついに……ついに先輩のお母さんが来てしまった──。

 

「久しぶりね、マオ、リオ。そして初めまして、遊星君」

 

 先輩のお母さんに最初に抱いた印象は、

「想像していたより身長が高い」だった。

 

 180cm以上はありそうで、

人のお母さんにこういうことを思うのはあれだが、

スタイルが良く、胸も大きい。

 

 髪は先輩と同じ綺麗な白髪で、

顔もまるで先輩が大人になったような、

まつ毛が長くて、青い瞳のとても綺麗な顔立ちだ。

 

「ど、どうも初めまして、ま、枕木遊星です。先輩にはいつもお世話になってます……」

「あら〜緊張させちゃったみたいね」

「い、いえそんなことは……」

 

 すると、先輩のお母さんがこちらに近づき、

じっと見つめてきた。

なにかまずいことをしてしまったかと思い、

俺が震えると、先輩が俺の手を握ってくれた。

 

『お母さん、あまり見つめすぎると枕木君が困ってしまうよ』

 

 先輩にそう言われると、お母さんはハッとしたような表情になった。

 

「あら、見すぎちゃった、ごめんなさいね遊星君。マオがどんなところに惹かれたのか気になっちゃって……」

「いえ、だ、大丈夫です」

「ふふふ、あなたのことを、マオから何回も聞いたわ。その時のマオは、いつも嬉しそうに話すのよ」

 

 そうだったのかと、俺が思っていると、

先輩がそれ以上話すのを牽制するかのように、

『お母さん』と言った。

 

「あら、マオに怒られちゃったわ。反省反省っと」

 

 容姿は似ているが、

先輩のお母さんの性格は、二人とは違ってかなり明るそうだ。

 

「……遊星君、少しいいかしら」

「あっ、はい、なんでしょうか」

「良かったら……これからもマオと仲良くしてあげてね」

 

 俺は嬉しくなった。

会う前は、先輩と別れさせられたりするかと思っていたが、

実際はそんなことは言われず、むしろ仲良くしてほしいと言われるなんて。

 

「も、もちろんです」

「ふふふ、なら良かったわ。は〜、今度は竜崎ちゃんとも会ってみたいわね」

『いつかね』

 

 そのあと、俺はお母さんから、いろいろと先輩の話を聞いた。

先輩が体育でヘロヘロになった話や、

苦いものが苦手で、ブラックコーヒーを初めて飲んだ時は、

一口飲んですぐお母さんに渡した話など、いろいろなことを聞いた。

 

 いろいろな先輩の話が聞けて、俺は楽しかった。

 

「あら、いろいろ話しすぎてしまったわ。ごめんね遊星君」

『お母さんは話すと長いからね』

「俺は、先輩の話を聞けて楽しかったです」

「ならよかったわ、ほんとはもっと話したかったのだけれど、そろそろ本題に入らなきゃね」

 

 

 俺が「本題ってなんだ?」と思っていると、

お母さんは、いつのまにかカーテンに隠れていたリオさんを見つけ、

持ち上げた。

 

「さて、リオ。お母さんと、リオの部屋でお話し、しよっか」

 

 そう言った時の表情は先ほどまでと変わらない笑顔のはずだが、

なぜかとてつもない恐ろしさを感じた。

 

「た、た、助けてーっ」

 

 そう叫びながら、リオさんはお母さんと部屋へ入っていった。

 

「あ、あのリオさん大丈夫ですかね」

『ん?いつものことだし大丈夫さ、それより』

「はい?」

 

 先輩がこちらに近づいてくる。

 

『これからもよろしくね、枕木君』

「……はい!」

 

俺は先輩とまた一つ、仲を深められた気がした──。

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