「神社」
ある日の放課後、先輩にさよならを言い、
なんとなく、いつもと違う道で家に帰っていると、
近くに神社があった。
(へー、こんなとこに神社あるんだ)
俺はせっかくだし、お参りをしていくことにした。
その神社の敷地はあまり大きくなさそうで、高い木々に囲まれている。
鳥居は古くなっているのか、塗装が剥がれていて、
参道も、掃除などをしていないのか、落ち葉で道が隠れている。
俺は、少し不気味に思いながら歩き、
賽銭箱の前まで辿り着いた。
建物もなにやら、ボロボロで人の手が入っていなさそうだが、
あまり考えすぎても怖くなるだけなので、
俺は早くお参りしようと、財布を開き、五円を取り出した。
(ご縁があるから、五円でいいか。っていうか、なに願おうかな。そうだ、先輩の冬服見たいし、冬になりますように。)
俺はそう、冗談まじりに思いながら、お参りし、
終わったあと、家へ帰った。
家に帰り、明日の準備をしている最中、
「あの神社なんだったんだろ」と、
今日のことを思い出したが、
考えても仕方ないので準備を終え、その日は寝た──。
次の日──。
朝、突然目が覚めた。
寒い。
昨日は暑くてクーラーをつけていたというのに、とにかく寒い。
まるで冬の朝のようだ。
俺は急いでクーラーの電源を切り、
まずは日光を浴びようと、カーテンを開けると、
外では雪が降っていた。
俺は驚いてニュースを見るためにリビングへ行き、テレビをつけた。
どうやら謎の異常気象で夏だというのに、今日は雪らしい。
そのニュースを見た瞬間、
俺の頭によぎったのは、昨日のお参りだった。
(いや、そんな……まさかな)
俺はそのことをあまり考えないようにし、
急いで、タンスから冬用の制服を引っ張り出し、
着替えて学校へ向かった。
学校が休みにならないか少し期待したが、
あまり積もってはいないため、
休みにはならなかった。
休みにならず、少し落ち込みながら校門へたどり着くと、
そこにはマフラーをつけ、黒いタイツを履いた先輩が立っていた。
冬の先輩が見れて、俺は嬉しくなった。
『やあ、枕木君』
「おはようございます先輩」
『今日はびっくりしたね、まさか夏に雪が降るとは思わなかったよ』
「……ですね」
俺は昨日の神社のことを言おうとしたが、
言っても白い目で見られるだけだろうし、
そんなことより先輩が可愛い。
先輩の白い髪と、雪の白さが合わさって、
先輩が雪の妖精のようで、
頬も寒さのせいか、赤くなっていて、
まるで、俺のことが好きだと言っているみたいだ。
『……君がなにを考えているか知らないけれど、これは寒さのせいだよ』
「なっ、勝手に俺の表情見ないでください」
『ふふっ』
──俺は冬の先輩と会って分かったことがある。
先輩は夏より冬の方が似合っている。
厚着で、肌の露出が少ないのがいいし、
スカートも黒タイツを履くという、素晴らしさ。
そしてなにより、白が多くなる冬は、
先輩の白い見た目にぴったりだ──。
そんなことを思いながら先輩をじっと見ていると、
先輩が眉を下げながら、こちらを見てきた。
『はあ、君は僕をスケベな目で見るのが好きだね』
「ち、違いますよ」
『ふうん……まあいいや。僕はそろそろ教室へ行くよ』
そう言うと、先輩は教室へ向かってしまった。
俺は「スケベなんかじゃないっ」と思ったあと、
自分の教室へ向かった。
そして授業を受け、昼休みになった──。
「はあ、朝雪が降っていて驚いてしまいましたわ」
『やっぱり、みんな驚いてしまうよね。予報だと30度を超えていたのに』
昼休みの話題は当然、今日の異常気象についてだ。
……竜崎も先輩と同じで、マフラーをつけ、タイツを履いている。
だが、やはり先輩の方が素晴らしい。
なんてこと竜崎を見ながら思っていると……。
「今日のあなた、視線がいやらしいですわ」
「えっ、いや」
『枕木君だからね』
「そ、それ、どういう意味ですか先輩ッ」
そのあと「いやらしい目で見る人はこうです」と言って、
竜崎が辺りに積もっていた雪を丸めて投げてきたので、
俺も丸めて、雪合戦が始まった。
途中で先輩も混ざってきて、三人で楽しみすぎてしまい、
昼休みが終わるまで雪合戦は続いた。
「やばっ、もうこんな時間だ、制服も雪まみれになっちゃったしどうしよ」
「私もハメを外しすぎてしまいました……」
『ふふっ、まあ楽しかったからいいじゃないか』
俺と竜崎が雪まみれなのに対し、先輩だけは無傷だ。
楽しんでおいて、一人だけ無傷なのはずるい気がするが、
とにかく、今日は冬を先取りしたような一日で、
神社でお参りしたおかげかは分からないが、とても楽しかった──。
次の日──。
気温はいつもの夏に戻っていた。
昨日の雪はなんだったのだろう、
やはりあの神社でお参りしたからだろうか?
だが、昨日のが神社のおかげにしろ関係ないにしろ、
先輩の冬服が見たいという、願いは叶ったし、
俺はお礼を言いに行こうと思った。
そして、できればまた冬にしてもらって、
今度は冬服の暖かそうな先輩とハグしたい。
そんなことを考えながら、その日の帰りに神社の場所へ行くと、
そこに神社の姿はなく、ただの空き地になっていた──。
「期末テスト」
俺は今、土曜日だというのにとても憂鬱だ。
なぜなら……月曜日から期末テストがあるからだ。
一応、毎日勉強しているとはいえ、
やはりテストは嫌いだ。
もし、点数が低かったらと思うと……。
いや、点数が低くても正直俺は気にしない。
それよりも、先輩になにか言われる方が、
俺は嫌だ。
そんなことを思いながら、
朝ご飯を作ろうとすると、
先輩からメールが届いた。
【先輩】 『やあ、そろそろ期末テストだね』
【まくらぎ】 「朝からそんな憂鬱になること言わないでください」
俺がそう送ると、
今度はメールではなく電話がかかってきた。
『やあ、憂鬱にしてすまないね』
「なんですか先輩」
『ん〜、メール送ったらすぐに返信してくれたから話したいなって』
よく分からないが、
せっかく先輩から電話をかけてきたんだし、
俺は期末テストのことを愚痴った。
──気づくと、30分以上、愚痴を話していた。
普段なら途中で、
先輩が『君は愚痴が多いね』と言ってきそうだが、
自分から電話をかけたからなのか、
今日はずっと聞いてくれた。
「す、すいません。こんな話しちゃって……」
『ふふっ、いいよ。僕から電話をかけたんだからね』
「というか、なんで急にメール送ってきたんですか」
『なんでって……君がまたテストのことを考えて、暗い気分になっていそうだったからね』
どうやら、俺の考えていることは、
先輩には直接顔を見なくても分かってしまうらしい。
『まあ、頑張ってね枕木君。これを乗り切ったら夏休みさ』
そうだ、忘れかけていたが、
期末テストを終えれば、1学期はほぼ終わりで、
あとは夏休みだ。
『ふふ、夏休みになったらいっぱい遊ぼうね。じゃあね枕木君』
そして電話は終わった。
(そうだ……これを乗り越えれば夏休みだ……)
俺はそのことを考え、テンションが上がってくる。
夏休みになったら、俺は先輩と海に行きたいし、
他にも映画なんかも行って、
最後には浴衣を着た先輩と、花火を──。
妄想が止まらなくなってくる。
こうなったら勉強するしかない。
1時間後──。
飽きた。
よく考えたら、別に勉強を頑張らなくても夏休みは来る。
それに今回は、先輩から条件なども出されていないし、
必死に勉強しなくても……なんてことを思っていると、
また先輩から電話がかかってきた。
「なんですか」
『君が勉強に飽きたころかと思ってね』
「はあ……」
『勉強は大事だよ、それじゃあね枕木君』
そう言うと、先輩は電話を切った。
この電話はなんだったのだろうか。
まあ、確かに勉強は大事だ。
先輩はそれを思い出させてくれたのだろう。
こうなったら、勉強するしかない──。
1時間後──。
飽きた。
大事なのは分かっているがやる気が出ない。
……考えてみれば、今まで頑張ってこれたのは、
先輩からのご褒美があるからで、
それがなければ俺はやる気が出ないのだ。
すると、また先輩から電話がかかってきた。
「な、なんですか」
『君がご褒美がなくてやる気が無くなっているころだと思ってね』
俺の部屋には、カメラと盗聴器でも仕掛けられているのだろうか。
そう思うくらい、先輩の推理が当たっている。
「だって……」
『本当は僕もご褒美をあげたいところだけれど、あげたらまたご褒美がないと君が頑張れなくなってしまうからね』
確かにそうだ。
ご褒美がなければ勉強できなくなってしまっては、
もし、先輩がいなくなったら、俺は全く勉強をしなくなるだろう。
『まあ、今回は成績が悪くても君から離れたりはしないけれど……頑張ってくれると僕は嬉しいな』
「先輩……」
俺は先輩の一言で今度こそやる気が出た気がする。
「俺、頑張ります」
『ふふっ、頑張ってね、枕木君』
そして、俺は体からやる気を引き出し、
土日を全力で勉強に費やした。
月曜日から試験だというのに、
土日に本気を出すのは遅い気もしたが、
とにかく全力で勉強に取り組んだ。
そしてテスト当日──。
(これは昨日やったやつだ。こっちはあの公式を使えば……)
俺はテストに全力で取り組んだ。
今までの集大成を、ぶつけるように。
そして──。
キーンコーンカーンコーンとチャイムが鳴った。
「はい、ではペンを置いてください」
試験監督の合図で、全員がほっと一息をつく。
ついに……ついに期末テストが終わったのだ。
手応えは正直、あまり覚えていないが、
とにかくやりきることができた。
テストを終え、帰ろうとすると、
先輩もテストが終わったのか、俺の教室へ来た。
「あれ、ここに来るなんて珍しいですね先輩」
『ふふっ、君とりゅりゅに会いたくてね』
「あら、先輩来てたのですか」
『そうなんだよ』
二人が会話している最中、
俺はやりきった達成感と疲労で、
倒れそうになった。
俺がふらっとすると、
先輩と竜崎が支えてくれた。
「おや、大丈夫でしょうか」
『大丈夫?枕木君』
「す、すいません。少し疲れちゃって」
『なら、よかったよ』
そのあと、三人で少し話し、
このままお昼をみんなで食べに行くことになった。
「何を食べに行きましょうか?」
「俺は割となんでも……」
『そしたら僕は、パスタが食べたいな』
そして、行き先が決まり、俺たちはお店へ入った。
注文し、料理を待っていると、先輩が口を開いた。
『これで、もう少ししたら夏休みだね』
「そうですわね」
「俺はもうテストで疲れましたよ……」
『ふふっ、夏休みになったら、みんなで遊ぼうね』
「「はい」」
俺と竜崎が同時に返事をしてしまった。
お互いに顔を見て、睨み合っていると、
先輩が少し笑った。
『ふふっ、仲がいいね。まあとにかく、これからもよろしくね、二人とも』
俺の高校生活は、まだまだ始まったばかりだ──。
「催眠術」
「はあ……」
朝、俺はため息をつきながら学校へ向かっている。
なぜなら、前の期末テストで全てを出し切り、
燃え尽きてしまったからだ。
(めんどくさい……テスト終わったんだから、もう夏休みでいいだろ……)
そんなことを考えながら、
校門へたどり着くと、
いつも通り先輩が立っていた。
『やあ』
「先輩……どうも」
すると、先輩がこちらの顔を見つめてきた。
『ふうん、やる気が無くなってしまったようだね』
隠すつもりもなかったが、
せっかくだし、俺は先輩に愚痴ることにした。
「先輩、テスト終わったんだから、もう夏休みでよくないですか?」
『まだテストが返却されていないじゃないか』
「それは、郵送かなんかで送って……」
『手間がかかって面倒くさそうだね』
……どうやら、今日は黙って俺の愚痴を聞いてくれないようだ。
『まあ、僕はだいたいこうなると予想していたよ。だからいいものを持ってきたんだ』
「なんですか、いいものって」
そして、先輩は鞄を開け、中からなにかを取り出した。
『これが、秘密兵器さ』
それは五円玉に糸を通してあり、
テレビや漫画なんかでもよく見かける、
催眠術の定番とも言える振り子だった。
「……これって、まさか」
『そのまさか、催眠術さ』
先輩もテストでおかしくなってしまったのだろうか。
いや、いつもこんな感じだし、冗談かも……と思っていたが、
先輩の顔を見るに、どうやら本気らしい。
先輩は相変わらずよく分からない。
『ほら、揺らすから五円の部分をよく見ていてね』
「はあ……まあ、別にいいですけど」
俺は先輩の指示に従い、振り子を見つめた。
「本当に催眠術にかかるのだろうか?」と半信半疑で見つめていると、
先輩が声を出し始めた。
『君はだんだんやる気が出る〜』
……これで本当にやる気が出るのだろうか、
バカらしくて、俺は少し眠くなってきてしまった。
『君はとても、やる気が出る〜』
まずい、だいぶ眠たくなってきた。
先輩には悪いが……もう寝よう。
いや、ここで寝ては学校に遅刻してしま──。
──突然、ハッとなり、目が覚めた。
俺は校門で寝てしまったのか?
だとしたら大遅刻に……。
周りを見回すと、そこは校門ではなく、
いつも三人でお昼を食べている場所だった。
『やあ、おはよう枕木君』
「あら、本当に催眠にかかっていたんですのね」
「……えっ?」
二人の言葉に戸惑っていると、
先輩が口を開いた。
『ほら、朝に催眠術をかけただろう?』
「そういえばそんなことを言っていたような……」
そのあと、先輩が説明してくれた。
どうやら、俺は催眠術にかかったあと、
やる気を出し、授業に取り組んでいたらしい。
それは周りのクラスメイトが引いてしまうほど……。
それに違和感を持った竜崎が先輩に聞くと、
催眠術だと言うので、なら解除してみてほしいと言い、
先輩は催眠術を解いたらしい。
「え……俺、全然記憶ないんですけど……」
『なら、成功だね』
「成功なんですか、これ」
先輩に聞くと、放課後に解く予定だったらしいが、
午後の授業が嫌だし、どうせならそうしてほしかった。
「先輩、もう一回かけてくださいよお」
『どうしようかな』
俺と先輩が話すと、竜崎が割り込んできた。
「それはダメですわ」
「な、なんでだよ」
「あなた、先ほど記憶がないと言いましたね」
「まあ、そうだけど」
「それはつまり、授業を聞いていないということ。それでは授業の意味がありませんわ」
確かにそうかもしれないが、俺はそんなことより授業をサボりたい。
だがそんなことを言えるはずもなく、
俺は沈黙した。
「それと先輩も、いくらやる気を出させるためとはいえ、こんな強力な催眠は良くないですわ。これ以上しないように」
『ごめんね』
「……反省しているのならいいんですよ」
そう言いながら、竜崎は先輩の頭を撫で始めた。
……本当は口実を作って、頭を撫でたかっただけじゃないのか?
そう思った俺は、竜崎に対抗して先輩の頭を撫でた。
結局お互いにヒートアップして、昼休みが終わるまで先輩を撫で続けた。
撫でられている間、先輩はまったく表情も変えず、動じていなかった。
そして、催眠術がない状態で午後の授業が始まり、
俺は辛い思いをしながら、なんとか乗り切ることができた。
「はあ…」
行きと同じようにため息をつきながら、
帰ろうとすると、校門に先輩が立っていた。
『お疲れ様、枕木君』
「先輩……」
『ねえ、枕木君。今日君の家に行っていいかな?』
先輩の急な一言に、俺は驚いた。
「えっ」
『ダメなら大丈夫さ、急に言った僕が悪いからね』
「な、なにするつもりですか」
『ん〜、君に催眠をかけてもらおうかなって』
先輩に催眠……?
まずい、いやらしいことしか思いつかない。
だが、こんなチャンスを逃してはいけないと思い、
俺は承諾した。
そのあと、二人で俺の家に向かい、
家に着いたあと、とりあえず俺の部屋に案内した。
「で、なんで急に催眠かけてほしいなんて言ったんですか」
『今日、君に催眠をかけただろう?かけたんだから、かけられても仕方ないということさ』
「はあ」
『それと……君の部屋に来たかったんだ』
その一言で、俺はある考えに達した。
もしかして先輩は俺のことが……。
そんなことを思うと、先輩が遮るように口を開いた。
『ほら、早くかけてみて』
「あっ、はい」
そして、俺は朝に先輩が使った、
振り子を渡された。
しかし、どんな催眠をかけよう。
あんまりいやらしいと催眠をかける前に、
引かれてしまいそうだ。
すると、いいことを思いついた。
「よし、じゃあ先輩。振り子を見ててくださいね」
『うん』
俺が思いついたのは、質問に正直に答える催眠だ。
これで先輩が俺のことを好きか分かる。
だが、最初から「質問に正直に答える〜」と言うのは恥ずかしい、
だから、催眠術でぼーっとさせ、
そこで聞くことにした。
「あなたはだんだんぼーっとする〜」
催眠が効いているのか、先輩の瞼が下がってきている。
あとひと押しだ。
「あなたはだんだんぼーっとする〜」
すると、先輩がうつろな目になった。
これは催眠にかかっているだろう。
だが、俺は心配性なので最初は別の質問で確かめることにした。
「えっと……先輩の苦手なものを教えてください」
『……苦いもの』
確かに前、ブラックコーヒーがどうのと、
先輩のお母さんが言っていた気がするし、
これは催眠にかかっているだろう。
そして、俺は満を持して、本命の質問を振った。
「その……先輩は、俺のこと……好きですか?」
『……』
返事はない。
催眠が効いていないのだろうか。
それとも、俺のことなんか好きではないのか……。
そんなことを考えていると……。
『好きだよ』
「えっ」
先輩が喋った。
しかも、俺のことが好きと言った。
「やはり、催眠にかかっていたんだ」と思い、先輩の顔を見ると、
さっきまでのうつろな目ではなく、いつもの目になっていた。
しかも、少しこちらを見つめて、にやけている。
「あの……もしかして催眠には……」
『うん、かかってないよ』
「な、なあ」
俺は恥ずかしさで消えそうになってしまった。
催眠にかかっていると思って、
先輩にあんなことを聞いたなんて、俺がバカみたいだ。
「お、俺を催眠にかかったふりしてからかってたんですか」
『うん、君の反応が可愛いからね』
「ひ、酷いですよ、俺のことが好きなんて嘘ついて」
『それは嘘じゃないよ』
「へ?」
先輩の一言に俺は戸惑ってしまった。
『確かに催眠にかかってはいないけれど、答えは本当だよ』
「そ、そんなの信じられないですよ。先輩はよく嘘つくし……」
俺がそう言うと、先輩はこちらに近づいてきた。
『そうだね、信じてもらえないのも当然さ』
さらに先輩がこちらへ近づいてくる。
もう触れてしまいそうな距離だ。
『でも、僕は君のことが好きだよ』
そして、先輩は背伸びをし、俺の頬にキスをしてきた。
「ほ、ほあっ」
驚きのあまり変な声が出て、腰が抜けてしまった。
すると、腰が抜けた俺の顔を両手で優しく持ち、
先輩が俺の顔を見つめてきた。
『好きだよ、枕木君』
俺はその一言で興奮してしまい、気絶してしまった。
『おや、起きたね枕木君。君は気絶するのが好きだね』
起きると、俺は横になっていて、
頭には柔らかい、何度も体感した感触があった。
おそらく膝枕だろう。
「す、すいません先輩」
『ふふっ、いいよ。君が気絶するのは慣れているからね』
「……あの、先輩」
『なんだい?』
「さっきの言葉は……」
『何回も言ったじゃないか、本当だよ』
俺はその言葉で嬉しくなった。
そして、二人で話していると、先輩が帰る時間になってしまった。
『じゃあ、僕はそろそろ帰るとするよ』
先輩が帰ると思うと寂しくなってしまう。
さっきの……好きだという言葉を思い出すと、
今でもドキドキしてしまう。
だが、俺は余計なことを思ってしまった。
さっきの好きは友達としてなのか、
それとも……恋人としてなのかを。
「あの、先輩」
『ん、なんだい?』
「さっきの好きって……友達としてですか?それとも……」
『ふうん……』
俺がそう言うと、先輩は少し考えたあと、こう言った。
『秘密だよ』
「えっ」
『答えを知りたかったら、催眠術を勉強してみたらいいんじゃないかな。じゃあね』
そして、先輩は帰っていってしまった。
結局、答えは分からなかったが、確かに催眠術で聞けばいいんだ。
そのあと、俺はネットで催眠術の本を買い、徹底的に練習した。
だが……。
「あなたは俺の質問に正直に答える〜。さあ、先輩、俺のことを友達として好きなんですか?それともこ、恋人ですか?」
『どっちかなあ〜』
先輩に催眠が通じることはなかった──。