真央先輩はおとこ♂の娘    作:ろあタルト大福

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第13話 「神社&期末テスト&催眠術」

 「神社」

 

 

 ある日の放課後、先輩にさよならを言い、

なんとなく、いつもと違う道で家に帰っていると、

近くに神社があった。

 

(へー、こんなとこに神社あるんだ)

 

 俺はせっかくだし、お参りをしていくことにした。

 

 その神社の敷地はあまり大きくなさそうで、高い木々に囲まれている。

鳥居は古くなっているのか、塗装が剥がれていて、

参道も、掃除などをしていないのか、落ち葉で道が隠れている。

 

 俺は、少し不気味に思いながら歩き、

賽銭箱の前まで辿り着いた。

 

 建物もなにやら、ボロボロで人の手が入っていなさそうだが、

あまり考えすぎても怖くなるだけなので、

俺は早くお参りしようと、財布を開き、五円を取り出した。

 

(ご縁があるから、五円でいいか。っていうか、なに願おうかな。そうだ、先輩の冬服見たいし、冬になりますように。)

 

 俺はそう、冗談まじりに思いながら、お参りし、

終わったあと、家へ帰った。

 

 家に帰り、明日の準備をしている最中、

「あの神社なんだったんだろ」と、

今日のことを思い出したが、

考えても仕方ないので準備を終え、その日は寝た──。

 

次の日──。

 

 朝、突然目が覚めた。

寒い。

昨日は暑くてクーラーをつけていたというのに、とにかく寒い。

まるで冬の朝のようだ。

 

 俺は急いでクーラーの電源を切り、

まずは日光を浴びようと、カーテンを開けると、

外では雪が降っていた。

 

 俺は驚いてニュースを見るためにリビングへ行き、テレビをつけた。

どうやら謎の異常気象で夏だというのに、今日は雪らしい。

 

 そのニュースを見た瞬間、

俺の頭によぎったのは、昨日のお参りだった。

 

(いや、そんな……まさかな)

 

 俺はそのことをあまり考えないようにし、

急いで、タンスから冬用の制服を引っ張り出し、

着替えて学校へ向かった。

 

 学校が休みにならないか少し期待したが、

あまり積もってはいないため、

休みにはならなかった。

 

 休みにならず、少し落ち込みながら校門へたどり着くと、

そこにはマフラーをつけ、黒いタイツを履いた先輩が立っていた。

冬の先輩が見れて、俺は嬉しくなった。

 

『やあ、枕木君』

「おはようございます先輩」

『今日はびっくりしたね、まさか夏に雪が降るとは思わなかったよ』

「……ですね」

 

 俺は昨日の神社のことを言おうとしたが、

言っても白い目で見られるだけだろうし、

そんなことより先輩が可愛い。

 

 先輩の白い髪と、雪の白さが合わさって、

先輩が雪の妖精のようで、

頬も寒さのせいか、赤くなっていて、

まるで、俺のことが好きだと言っているみたいだ。

 

『……君がなにを考えているか知らないけれど、これは寒さのせいだよ』

「なっ、勝手に俺の表情見ないでください」

『ふふっ』

 

 ──俺は冬の先輩と会って分かったことがある。

先輩は夏より冬の方が似合っている。

 

 厚着で、肌の露出が少ないのがいいし、

スカートも黒タイツを履くという、素晴らしさ。

そしてなにより、白が多くなる冬は、

先輩の白い見た目にぴったりだ──。

 

 そんなことを思いながら先輩をじっと見ていると、

先輩が眉を下げながら、こちらを見てきた。

 

『はあ、君は僕をスケベな目で見るのが好きだね』

「ち、違いますよ」

『ふうん……まあいいや。僕はそろそろ教室へ行くよ』

 

 そう言うと、先輩は教室へ向かってしまった。

俺は「スケベなんかじゃないっ」と思ったあと、

自分の教室へ向かった。

 

 そして授業を受け、昼休みになった──。

 

「はあ、朝雪が降っていて驚いてしまいましたわ」

『やっぱり、みんな驚いてしまうよね。予報だと30度を超えていたのに』

 

 昼休みの話題は当然、今日の異常気象についてだ。

……竜崎も先輩と同じで、マフラーをつけ、タイツを履いている。

だが、やはり先輩の方が素晴らしい。

なんてこと竜崎を見ながら思っていると……。

 

「今日のあなた、視線がいやらしいですわ」

「えっ、いや」

『枕木君だからね』

「そ、それ、どういう意味ですか先輩ッ」

 

 そのあと「いやらしい目で見る人はこうです」と言って、

竜崎が辺りに積もっていた雪を丸めて投げてきたので、

俺も丸めて、雪合戦が始まった。

 

 途中で先輩も混ざってきて、三人で楽しみすぎてしまい、

昼休みが終わるまで雪合戦は続いた。

 

「やばっ、もうこんな時間だ、制服も雪まみれになっちゃったしどうしよ」

「私もハメを外しすぎてしまいました……」

『ふふっ、まあ楽しかったからいいじゃないか』

 

 俺と竜崎が雪まみれなのに対し、先輩だけは無傷だ。

楽しんでおいて、一人だけ無傷なのはずるい気がするが、

とにかく、今日は冬を先取りしたような一日で、

神社でお参りしたおかげかは分からないが、とても楽しかった──。

 

次の日──。

 

 気温はいつもの夏に戻っていた。

昨日の雪はなんだったのだろう、

やはりあの神社でお参りしたからだろうか?

 

だが、昨日のが神社のおかげにしろ関係ないにしろ、

先輩の冬服が見たいという、願いは叶ったし、

俺はお礼を言いに行こうと思った。

 

そして、できればまた冬にしてもらって、

今度は冬服の暖かそうな先輩とハグしたい。

 

そんなことを考えながら、その日の帰りに神社の場所へ行くと、

そこに神社の姿はなく、ただの空き地になっていた──。

 

 

 

 「期末テスト」

 

 

 俺は今、土曜日だというのにとても憂鬱だ。

なぜなら……月曜日から期末テストがあるからだ。

一応、毎日勉強しているとはいえ、

やはりテストは嫌いだ。

 

 もし、点数が低かったらと思うと……。

いや、点数が低くても正直俺は気にしない。

それよりも、先輩になにか言われる方が、

俺は嫌だ。

 

 そんなことを思いながら、

朝ご飯を作ろうとすると、

先輩からメールが届いた。

 

【先輩】 『やあ、そろそろ期末テストだね』

 

【まくらぎ】 「朝からそんな憂鬱になること言わないでください」

 

 俺がそう送ると、

今度はメールではなく電話がかかってきた。

 

『やあ、憂鬱にしてすまないね』

「なんですか先輩」

『ん〜、メール送ったらすぐに返信してくれたから話したいなって』

 

 よく分からないが、

せっかく先輩から電話をかけてきたんだし、

俺は期末テストのことを愚痴った。

 

 ──気づくと、30分以上、愚痴を話していた。

普段なら途中で、

先輩が『君は愚痴が多いね』と言ってきそうだが、

自分から電話をかけたからなのか、

今日はずっと聞いてくれた。

 

「す、すいません。こんな話しちゃって……」

『ふふっ、いいよ。僕から電話をかけたんだからね』

「というか、なんで急にメール送ってきたんですか」

『なんでって……君がまたテストのことを考えて、暗い気分になっていそうだったからね』

 

 どうやら、俺の考えていることは、

先輩には直接顔を見なくても分かってしまうらしい。

 

『まあ、頑張ってね枕木君。これを乗り切ったら夏休みさ』

 

 そうだ、忘れかけていたが、

期末テストを終えれば、1学期はほぼ終わりで、

あとは夏休みだ。

 

『ふふ、夏休みになったらいっぱい遊ぼうね。じゃあね枕木君』

 

 そして電話は終わった。

 

(そうだ……これを乗り越えれば夏休みだ……)

 

 俺はそのことを考え、テンションが上がってくる。

夏休みになったら、俺は先輩と海に行きたいし、

他にも映画なんかも行って、

最後には浴衣を着た先輩と、花火を──。

 

 妄想が止まらなくなってくる。

こうなったら勉強するしかない。

 

1時間後──。

 

 飽きた。

よく考えたら、別に勉強を頑張らなくても夏休みは来る。

それに今回は、先輩から条件なども出されていないし、

必死に勉強しなくても……なんてことを思っていると、

また先輩から電話がかかってきた。

 

「なんですか」

『君が勉強に飽きたころかと思ってね』

「はあ……」

『勉強は大事だよ、それじゃあね枕木君』

 

 そう言うと、先輩は電話を切った。

この電話はなんだったのだろうか。

まあ、確かに勉強は大事だ。

 

 先輩はそれを思い出させてくれたのだろう。

こうなったら、勉強するしかない──。

 

1時間後──。

 

 飽きた。

大事なのは分かっているがやる気が出ない。

 

 ……考えてみれば、今まで頑張ってこれたのは、

先輩からのご褒美があるからで、

それがなければ俺はやる気が出ないのだ。

 

 すると、また先輩から電話がかかってきた。

 

「な、なんですか」

『君がご褒美がなくてやる気が無くなっているころだと思ってね』

 

 俺の部屋には、カメラと盗聴器でも仕掛けられているのだろうか。

そう思うくらい、先輩の推理が当たっている。

 

「だって……」

『本当は僕もご褒美をあげたいところだけれど、あげたらまたご褒美がないと君が頑張れなくなってしまうからね』

 

 確かにそうだ。

ご褒美がなければ勉強できなくなってしまっては、

もし、先輩がいなくなったら、俺は全く勉強をしなくなるだろう。

 

『まあ、今回は成績が悪くても君から離れたりはしないけれど……頑張ってくれると僕は嬉しいな』

「先輩……」

 

 俺は先輩の一言で今度こそやる気が出た気がする。

 

「俺、頑張ります」

『ふふっ、頑張ってね、枕木君』

 

 そして、俺は体からやる気を引き出し、

土日を全力で勉強に費やした。

 

 月曜日から試験だというのに、

土日に本気を出すのは遅い気もしたが、

とにかく全力で勉強に取り組んだ。

 

 そしてテスト当日──。

 

(これは昨日やったやつだ。こっちはあの公式を使えば……)

 

 俺はテストに全力で取り組んだ。

今までの集大成を、ぶつけるように。

そして──。

 

 キーンコーンカーンコーンとチャイムが鳴った。

 

「はい、ではペンを置いてください」

 

 試験監督の合図で、全員がほっと一息をつく。

ついに……ついに期末テストが終わったのだ。

 

 手応えは正直、あまり覚えていないが、

とにかくやりきることができた。

 

 テストを終え、帰ろうとすると、

先輩もテストが終わったのか、俺の教室へ来た。

 

「あれ、ここに来るなんて珍しいですね先輩」

『ふふっ、君とりゅりゅに会いたくてね』

「あら、先輩来てたのですか」

『そうなんだよ』

 

 二人が会話している最中、

俺はやりきった達成感と疲労で、

倒れそうになった。

 

 俺がふらっとすると、

先輩と竜崎が支えてくれた。

 

「おや、大丈夫でしょうか」

『大丈夫?枕木君』

「す、すいません。少し疲れちゃって」

『なら、よかったよ』

 

 そのあと、三人で少し話し、

このままお昼をみんなで食べに行くことになった。

 

「何を食べに行きましょうか?」

「俺は割となんでも……」

『そしたら僕は、パスタが食べたいな』

 

 そして、行き先が決まり、俺たちはお店へ入った。

注文し、料理を待っていると、先輩が口を開いた。

 

『これで、もう少ししたら夏休みだね』

「そうですわね」

「俺はもうテストで疲れましたよ……」

『ふふっ、夏休みになったら、みんなで遊ぼうね』

「「はい」」

 

 俺と竜崎が同時に返事をしてしまった。

お互いに顔を見て、睨み合っていると、

先輩が少し笑った。

 

『ふふっ、仲がいいね。まあとにかく、これからもよろしくね、二人とも』

 

 俺の高校生活は、まだまだ始まったばかりだ──。

 

 

 

 「催眠術」

 

 

「はあ……」

 

 朝、俺はため息をつきながら学校へ向かっている。

なぜなら、前の期末テストで全てを出し切り、

燃え尽きてしまったからだ。

 

(めんどくさい……テスト終わったんだから、もう夏休みでいいだろ……)

 

 そんなことを考えながら、

校門へたどり着くと、

いつも通り先輩が立っていた。

 

『やあ』

「先輩……どうも」

 

 すると、先輩がこちらの顔を見つめてきた。

 

『ふうん、やる気が無くなってしまったようだね』

 

 隠すつもりもなかったが、

せっかくだし、俺は先輩に愚痴ることにした。

 

「先輩、テスト終わったんだから、もう夏休みでよくないですか?」

『まだテストが返却されていないじゃないか』

「それは、郵送かなんかで送って……」

『手間がかかって面倒くさそうだね』

 

 ……どうやら、今日は黙って俺の愚痴を聞いてくれないようだ。

 

『まあ、僕はだいたいこうなると予想していたよ。だからいいものを持ってきたんだ』

「なんですか、いいものって」

 

 そして、先輩は鞄を開け、中からなにかを取り出した。

 

『これが、秘密兵器さ』

 

 それは五円玉に糸を通してあり、

テレビや漫画なんかでもよく見かける、

催眠術の定番とも言える振り子だった。

 

「……これって、まさか」

『そのまさか、催眠術さ』

 

 先輩もテストでおかしくなってしまったのだろうか。

いや、いつもこんな感じだし、冗談かも……と思っていたが、

先輩の顔を見るに、どうやら本気らしい。

 

 先輩は相変わらずよく分からない。

 

『ほら、揺らすから五円の部分をよく見ていてね』

「はあ……まあ、別にいいですけど」

 

 俺は先輩の指示に従い、振り子を見つめた。

「本当に催眠術にかかるのだろうか?」と半信半疑で見つめていると、

先輩が声を出し始めた。

 

『君はだんだんやる気が出る〜』

 

 ……これで本当にやる気が出るのだろうか、

バカらしくて、俺は少し眠くなってきてしまった。

 

『君はとても、やる気が出る〜』

 

 まずい、だいぶ眠たくなってきた。

先輩には悪いが……もう寝よう。

いや、ここで寝ては学校に遅刻してしま──。

 

 ──突然、ハッとなり、目が覚めた。

俺は校門で寝てしまったのか?

だとしたら大遅刻に……。

 

 周りを見回すと、そこは校門ではなく、

いつも三人でお昼を食べている場所だった。

 

『やあ、おはよう枕木君』

「あら、本当に催眠にかかっていたんですのね」

「……えっ?」

 

 二人の言葉に戸惑っていると、

先輩が口を開いた。

 

『ほら、朝に催眠術をかけただろう?』

「そういえばそんなことを言っていたような……」

 

 そのあと、先輩が説明してくれた。

どうやら、俺は催眠術にかかったあと、

やる気を出し、授業に取り組んでいたらしい。

それは周りのクラスメイトが引いてしまうほど……。

 

 それに違和感を持った竜崎が先輩に聞くと、

催眠術だと言うので、なら解除してみてほしいと言い、

先輩は催眠術を解いたらしい。

 

「え……俺、全然記憶ないんですけど……」

『なら、成功だね』

「成功なんですか、これ」

 

 先輩に聞くと、放課後に解く予定だったらしいが、

午後の授業が嫌だし、どうせならそうしてほしかった。

 

「先輩、もう一回かけてくださいよお」

『どうしようかな』

 

 俺と先輩が話すと、竜崎が割り込んできた。

 

「それはダメですわ」

「な、なんでだよ」

「あなた、先ほど記憶がないと言いましたね」

「まあ、そうだけど」

「それはつまり、授業を聞いていないということ。それでは授業の意味がありませんわ」

 

 確かにそうかもしれないが、俺はそんなことより授業をサボりたい。

だがそんなことを言えるはずもなく、

俺は沈黙した。

 

「それと先輩も、いくらやる気を出させるためとはいえ、こんな強力な催眠は良くないですわ。これ以上しないように」

『ごめんね』

「……反省しているのならいいんですよ」

 

 そう言いながら、竜崎は先輩の頭を撫で始めた。

……本当は口実を作って、頭を撫でたかっただけじゃないのか?

 

 そう思った俺は、竜崎に対抗して先輩の頭を撫でた。

結局お互いにヒートアップして、昼休みが終わるまで先輩を撫で続けた。

撫でられている間、先輩はまったく表情も変えず、動じていなかった。

 

 そして、催眠術がない状態で午後の授業が始まり、

俺は辛い思いをしながら、なんとか乗り切ることができた。

 

「はあ…」

 

 行きと同じようにため息をつきながら、

帰ろうとすると、校門に先輩が立っていた。

 

『お疲れ様、枕木君』

「先輩……」

『ねえ、枕木君。今日君の家に行っていいかな?』

 

 先輩の急な一言に、俺は驚いた。

 

「えっ」

『ダメなら大丈夫さ、急に言った僕が悪いからね』

「な、なにするつもりですか」

『ん〜、君に催眠をかけてもらおうかなって』

 

 先輩に催眠……?

まずい、いやらしいことしか思いつかない。

だが、こんなチャンスを逃してはいけないと思い、

俺は承諾した。

 

 そのあと、二人で俺の家に向かい、

家に着いたあと、とりあえず俺の部屋に案内した。

 

「で、なんで急に催眠かけてほしいなんて言ったんですか」

『今日、君に催眠をかけただろう?かけたんだから、かけられても仕方ないということさ』

「はあ」

『それと……君の部屋に来たかったんだ』

 

 その一言で、俺はある考えに達した。

もしかして先輩は俺のことが……。

そんなことを思うと、先輩が遮るように口を開いた。

 

『ほら、早くかけてみて』

「あっ、はい」

 

 そして、俺は朝に先輩が使った、

振り子を渡された。

 

 しかし、どんな催眠をかけよう。

あんまりいやらしいと催眠をかける前に、

引かれてしまいそうだ。

 

 すると、いいことを思いついた。

 

「よし、じゃあ先輩。振り子を見ててくださいね」

『うん』

 

 俺が思いついたのは、質問に正直に答える催眠だ。

これで先輩が俺のことを好きか分かる。

 

だが、最初から「質問に正直に答える〜」と言うのは恥ずかしい、

だから、催眠術でぼーっとさせ、

そこで聞くことにした。

 

「あなたはだんだんぼーっとする〜」

 

 催眠が効いているのか、先輩の瞼が下がってきている。

あとひと押しだ。

 

「あなたはだんだんぼーっとする〜」

 

 すると、先輩がうつろな目になった。

これは催眠にかかっているだろう。

だが、俺は心配性なので最初は別の質問で確かめることにした。

 

「えっと……先輩の苦手なものを教えてください」

『……苦いもの』

 

 確かに前、ブラックコーヒーがどうのと、

先輩のお母さんが言っていた気がするし、

これは催眠にかかっているだろう。

 

 そして、俺は満を持して、本命の質問を振った。

 

「その……先輩は、俺のこと……好きですか?」

『……』

 

 返事はない。

催眠が効いていないのだろうか。

それとも、俺のことなんか好きではないのか……。

そんなことを考えていると……。

 

『好きだよ』

「えっ」

 

 先輩が喋った。

しかも、俺のことが好きと言った。

「やはり、催眠にかかっていたんだ」と思い、先輩の顔を見ると、

さっきまでのうつろな目ではなく、いつもの目になっていた。

しかも、少しこちらを見つめて、にやけている。

 

「あの……もしかして催眠には……」

『うん、かかってないよ』

「な、なあ」

 

 俺は恥ずかしさで消えそうになってしまった。

催眠にかかっていると思って、

先輩にあんなことを聞いたなんて、俺がバカみたいだ。

 

「お、俺を催眠にかかったふりしてからかってたんですか」

『うん、君の反応が可愛いからね』

「ひ、酷いですよ、俺のことが好きなんて嘘ついて」

『それは嘘じゃないよ』

「へ?」

 

 先輩の一言に俺は戸惑ってしまった。

 

『確かに催眠にかかってはいないけれど、答えは本当だよ』

「そ、そんなの信じられないですよ。先輩はよく嘘つくし……」

 

 俺がそう言うと、先輩はこちらに近づいてきた。

 

『そうだね、信じてもらえないのも当然さ』

 

 さらに先輩がこちらへ近づいてくる。

もう触れてしまいそうな距離だ。

 

『でも、僕は君のことが好きだよ』

 

 そして、先輩は背伸びをし、俺の頬にキスをしてきた。

 

「ほ、ほあっ」

 

 驚きのあまり変な声が出て、腰が抜けてしまった。

すると、腰が抜けた俺の顔を両手で優しく持ち、

先輩が俺の顔を見つめてきた。

 

『好きだよ、枕木君』

 

 俺はその一言で興奮してしまい、気絶してしまった。

 

『おや、起きたね枕木君。君は気絶するのが好きだね』

 

 起きると、俺は横になっていて、

頭には柔らかい、何度も体感した感触があった。

おそらく膝枕だろう。

 

「す、すいません先輩」

『ふふっ、いいよ。君が気絶するのは慣れているからね』

「……あの、先輩」

『なんだい?』

「さっきの言葉は……」

『何回も言ったじゃないか、本当だよ』

 

 俺はその言葉で嬉しくなった。

そして、二人で話していると、先輩が帰る時間になってしまった。

 

『じゃあ、僕はそろそろ帰るとするよ』

 

 先輩が帰ると思うと寂しくなってしまう。

さっきの……好きだという言葉を思い出すと、

今でもドキドキしてしまう。

 

 だが、俺は余計なことを思ってしまった。

さっきの好きは友達としてなのか、

それとも……恋人としてなのかを。

 

「あの、先輩」

『ん、なんだい?』

「さっきの好きって……友達としてですか?それとも……」

『ふうん……』

 

 俺がそう言うと、先輩は少し考えたあと、こう言った。

 

『秘密だよ』

「えっ」

『答えを知りたかったら、催眠術を勉強してみたらいいんじゃないかな。じゃあね』

 

 そして、先輩は帰っていってしまった。

結局、答えは分からなかったが、確かに催眠術で聞けばいいんだ。

 

そのあと、俺はネットで催眠術の本を買い、徹底的に練習した。

だが……。

 

「あなたは俺の質問に正直に答える〜。さあ、先輩、俺のことを友達として好きなんですか?それともこ、恋人ですか?」

『どっちかなあ〜』

 

 先輩に催眠が通じることはなかった──。

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