「先輩の家」
真夏に家のクーラーが、
全て壊れるという災難に襲われてしまった俺は、
先輩にそのことを話し、そのあとなんやかんやあり、
俺はクーラーが直るまで、
先輩の家に泊まることになってしまった。
そして今、俺は先輩のお母さんの車に乗って、
先輩の家へ向かっている。
……俺は、先輩の家で平気でいられるだろうか。
そんなことを思っていると、車が止まった。
どうやら家に着いたようだ──。
「ついたよ〜」
『おや、ついたようだね。じゃあ荷物を下ろして行こうか』
「あっ、はい……」
俺は、まだ少し泊まることに緊張を感じながら、
車から降り、トランクから荷物を出した。
途中、先輩のお母さんに「荷物持とうか?」と言われたが、
そこまでしてもらうのは申し訳ないので、断った。
そして、荷物を持って家へ行こうとすると、
先輩がこちらの顔を見てきた。
『まだ緊張するかな?』
「そ、そりゃしますよ……先輩の家だし」
『ふふ、そっか。まあ、きっとすぐ慣れるさ』
そう言うと、先輩は俺の荷物を持った。
「ちょ、俺が持ちますから、先輩は大丈夫ですよ」
『誘ったのは僕なんだから、これくらいしないとね』
「いやでも……」
俺がそう言うと、先輩は急にじゃんけんを仕掛けてきた。
あまりに急だったので、俺はパーとも、チョキとも言えないような、
微妙に開いた手を出してしまった。
先輩を見ると、グーを出している。
「きゅ、急にじゃんけんとかビックリしましたよ」
『ふふ、ごめんね。それで、君の手はなにかな?』
「え、だって急にじゃんけんって言われたから……だから、パーでもチョキでもないっていうか……」
『ふーん、じゃあチョキってことにして、枕木君の負けでいいかな』
俺はあまり納得はできなかったが、
じゃんけんくらい別にいいかと思い、
俺の負けでいいと言った。
『じゃあ、敗者には罰ゲームだね』
「えっ、なんすかそれ聞いてないですよ」
『言ってないからね』
嵌められた。
先輩の言うことを、安易に受け入れるべきではなかった。
『じゃあ、枕木君に与える罰ゲームは、他の人に荷物を持ってもらうことだよ』
「はい?」
俺は驚いてしまった。
わざわざ、俺の荷物を持つためだけに、
こんな回りくどいことをしてくるなんて。
『……おや、枕木君の近くにいる他の人は僕しかいないね』
それに対して俺は「先輩のお母さんがいますよね?」と言ったが、
『はー、こうなったら仕方ないさ、僕が荷物を持つよ』と、
無視されてしまった。
……これ以上、荷物を持たないでと言っても、
先輩がまた回りくどいことをしてきそうなので、
俺は抵抗を諦めて、荷物を先輩に持ってもらった。
先輩の顔を見ると、
嬉しそうな表情になっていた。
「そんなに俺の荷物持ちたかったんですか」
『うん。でも、君はなかなか持たせてくれないから、こうしたんだよ』
先輩がなんで持ちたかったのかはよく分からないが、
まあ、俺の荷物を持てて嬉しいのならそれでいいのかもしれない──。
そのあと、俺たちはエレベーターに乗って、
家に向かった。
そして家に着き、ドアを開けると、
リオさんが立っていた。
「わ〜、本当に遊星君がいる」
リオさんを見ると、目を輝かせていて、
なんだか嬉しそうだ。
「本当に泊まるの遊星君っ」
「え、まあはい」
それを聞いたリオさんは、
一瞬フリーズしてから、飛び跳ねた。
「やったあ〜。私うれしいよ、さあ、早く入って入って」
『お姉ちゃんがいるから入れなかっただけだよ』
「もーっ、マオは水を差すようなこと言わないでよ〜っ」
そのあと、リオさんと先輩が、
少しだけ言い争っていたが、
先輩がリオさんを抱っこして、言い争いは落ち着いた。
そして、俺は家へ入り、
手を洗ったあと、
先輩のお母さんに俺が寝る部屋を案内された。
「遊星君はここを使ってね」
「あ、ありがとうございます」
「ふふふ、いいのよ〜」
お母さんと少し話したあと、俺は部屋へ入った。
ここは、お泊まり会の時に俺が寝た部屋だ。
……あの時、ここで先輩と一緒に寝たことを思い出すだけで、
心臓の鼓動が速くなって、破裂してしまいそうだ。
そんなことを思い出しつつ、
俺は部屋に荷物を置いて、ベッドに転がった。
(……はあ、クーラーが壊れた時はどうしようかと思ったけど、先輩が泊めてくれてよかったな)
そんなことを考えながらくつろいでいると、
先輩が部屋に入ってきた。
俺は急いでベッドから起き上がり、
そのままベッドに座った。
『やあ、枕木君』
「な、なんですか急に」
俺がそう言うと、先輩は俺の顔を見てきた。
『ふふ、落ち着いてきたみたいだね』
「あんまり顔を見ないでくださいよ……っていうか、なにしにきたんですか」
『ん〜、二人きりで話したいと思ってね』
すると、先輩がベッドに座ってきた。
距離が近い。
「な、なんですか話って」
『お風呂とか寝る時のことだよ』
「いや、お風呂はともかく寝るのはここじゃないんですか……?」
『ふーん、じゃあ僕もここで寝ようかな』
俺はその言葉を聞いて驚きそうになったが、
なんとか声を出さずに表情に出すだけで耐えることができた。
……しかし、先輩はナチュラルに俺と一緒に寝るつもりなのだろうか?
『嫌かな?』
「嫌ではないですけど……」
『じゃあ決まりだね』
俺は先輩に流されてしまった。
まあ、先輩と一緒に寝られるのは俺も嫌ではない。
というか、寝てほしい。
『それで、お風呂はどうしようね』
そういえば、お風呂のことを忘れていた。
……まさか『一緒に入ろうか?』と言うつもりなのだろうか。
「お、お風呂は一人で入りますから」
『ふふっ、僕はお風呂に入る順番を聞こうとしただけだよ』
嵌められた。
まさか、俺が勘違いすることを分かっていて、
お風呂の話題を出したのだろうか。
だとしたら、なんていやらしいんだ。
「せ、先輩が勘違いするようなことするからですよ」
『ふふ、ごめんね』
「もう……」
そう言って、俺がため息をつくと、
先輩が体を俺の方に近づけてきた。
『ねえ、枕木君』
「な……なんですか」
『お風呂、一緒に入ってほしい?』
来た。
先輩お得意の、俺をからかう時間だ。
はいと答えれば『ふふ、冗談だよ』と言い、
いいえと答えれば『君が「はい」って答えたら、一緒に入るつもりだったよ』と言ってくるのだろう。
先輩は、少し目を細めていて、
流し目でこちらを見てきている。
これは俺をからかっているに違いない。
俺はもう惑わされない。
「お、俺は一人で入るので結構ですっ」
これでどうだ。
『ふうん……僕は一緒に入るつもりだったけれどね』
やはり俺の予想通りだ。
……ここまではそう思っていた。
先輩は、俺の腕に自分の腕を絡ませてきた。
『僕は、一緒に入りたいよ』
「ど、どうせ冗談なんでしょう?」
『……違うよ』
先輩はそう言うと、絡ませていた腕を使って、
俺の腕を自分の胸に当てさせた。
先輩の胸からは、服の上からでも分かるほど、心臓の鼓動が伝わってきた。
『これで、信じてもらえたかな……?』
「……信じますけど、それはそれとして、は、入りませんってば」
『……そういえば、君は前、僕が男かどうか気にしていたよね』
「そ、そんなこともありましたけど、身分証送ってくれたじゃないですか」
俺がそう言うと、先輩はぴたりと俺にくっついてきた。
距離が近くて、先輩のいい匂いがしてくる。
『でも……まだ少し疑っているんじゃないのかな? 一緒に入ったら、その疑問も解消されるかもしれないよ』
……確かに、疑っていないわけではないが、
だからといってお風呂に一緒に入ることは……。
だが、先輩のものは少し見てみたいような、
小さいのだろうか、それとも大きいのだろうか……?
それを考え始めた瞬間、
俺の頭の中では、先輩とお風呂に入った時のイメージ映像が流れていた。
先輩の体は、白くて綺麗で……。
こ、これはまずい。
俺は先輩にペースを握られてしまっている。
このあたりで、しっかり言い返さなければ。
だが、俺がそう思った瞬間、
先輩は少し顔を赤らめて『僕は、一緒に入りたいよ』と言ってきた。
なんてずるいんだ。
先輩にそんなことを言われたら、俺にはもう「はい」と答える以外の選択肢はない。
……それに、これは先輩が押してきたのだから、
なにかあっても俺のせいではなく先輩のせいだ。
うん、そうだ。
俺は悪くない。
俺はそう、自分に言い聞かせながら、
先輩の誘いを受け入れた。
すると先輩は、嬉しそうな顔をしたあと、
『じゃあ、夜楽しみにしているよ』と言い、部屋から出ていった。
……勢いで受け入れてしまったが、
俺は今日の夜、どうなってしまうのだろうか──。
R-15 「お風呂」
俺は、今日の夜、
先輩と一緒にお風呂に入ることになってしまった。
お風呂の先輩の姿を想像するだけで、胸の鼓動が速くなり、
体温が上がってくる。
……これ以上、先輩のことを考えるのはやめよう。
このままだと、興奮しておかしくなってしまいそうだ。
そして、先輩のことを考えるのをやめた瞬間、
突然、部屋のドアがノックされた。
「ひいっ」
俺は思わず声が出てしまった。
もしかして先輩だろうか。
だとしたら、俺はお風呂の先輩を想像してしまい、
理性を失ってしまうだろう。
だが、入ってきたのはリオさんだった。
俺は、先輩じゃないことに少し、ホッとした。
「ああ、先輩じゃなくてリオさんか」
俺は安心感で、思わず口を滑らせてしまった。
「むう、私よりマオがいいの?」
リオさんは、ほっぺを膨らませてこちらを見てきている。
やってしまった。
「ご、ごめんなさい。さっきのは、そういう意味ではなくて……」
俺が必死に言い訳をすると、
リオさんは何も言わずに、こちらへダッシュし、
そのまま、みぞおちのあたりに飛び込んできた。
「うごぇっ」
俺はリオさんの飛び込みのダメージに思わず変な声が出た。
だが、リオさんは何事もなかったかのように、
「遊星君あそぼ〜」と言ってきた。
それを聞いた俺は、絶え絶えの声で誘いに乗り、
リオさんと一緒に部屋を出て、リビングへ向かった。
ダメージは痛いが、先輩のことを一旦忘れられるし、
ちょうどいいかもしれない。
そのあと、俺とリオさんは、
テーブルゲームなどをして遊んだ。
そして、しばらく遊んでいると、
玄関の方から音がし、
そこから、先輩とお母さんが来た。
二人の手には買い物袋があり、
どうやら、買い物に行っていたらしい。
「先輩、お母さん、お、おかえりなさい。買い物行ってたんですね」
「おかえり〜マオ」
『ただいま。枕木君、お姉ちゃん。今日のご飯の食材を買いに行っていたのさ』
そんな感じで、俺は先輩とリオさんと三人で少し話していたが、
その間、お母さんはなにかを待っている表情だった。
……もしかして、早く話を終えてほしいのだろうか。
「あ、あの、すいません。長く話しちゃって」
俺がそう言うと、
お母さんは目を瞑って、首を横に振った。
「あっ、遊星君じゃないわよ〜」
「えっ」
「リオが私にただいまって言ってくれなかったから、ずっと待ってたの〜」
確かに、思い返せば、
リオさんは先輩にしか「おかえり」と言っていなかったが、
そんなに待つほどのものなのだろうか。
「リオ〜、お母さんにおかえりは?」
「しーらないっ」
そう言うと、リオさんはダッシュで自分の部屋に戻っていった。
リオさんもリオさんで、言ってあげればいいのに……。
先輩の家族は、先輩を含めて、よく分からない。
そのあと、お母さんは持っていた買い物袋を床に置いて、
リオさんの部屋へ行ってしまった。
『いつものことだから、あまり気にしないでね』
「あっ、はい」
『……そうだ、食材を冷蔵庫に入れるのを手伝ってくれるかな?』
「も、もちろんです」
そのあと、俺は先輩と一緒に冷蔵庫に食材を入れはじめた。
……食材を入れる時に気づいたが、食材はどれも高そうだ。
俺がいつも買っている物の、
ワンランク……いや、ツーランクくらいは上のものだ。
「先輩の家って凄いですね……いつもこんなに買ってるんですか?」
『いや、普段はこんな高いのは買わないよ。ただ、お母さんが君が来たからって、張り切ってるだけさ』
「そんな……俺のためにすいません」
すると、先輩が少し笑った。
『ふふ、君ってすぐ謝るよね。そんなに謝らなくてもいいよ』
「い、いやそんなこ……んぐ、もごご」
俺が喋りかけると、先輩は俺を抱きしめ、
そのまま俺の口を塞いだ。
先輩の感触と良い匂いがしてきて、
考えないようにしていた、お風呂のことを考えてしまいそうだ。
そして、少し経って先輩は俺を離してくれた。
「な、なにするんですか」
『君が謝らないように口を塞いだだけさ。ほら、残りも冷蔵庫に入れるよ』
そのあと、俺は先輩と共に、
冷蔵庫へ買ってきた食材を入れた。
『ふー、これで終わりだね。助かったよ枕木君』
「これくらいなんてことないです。そういえば、お母さん戻ってきませんね」
『ん〜、じゃれあってるんじゃないかな。ふふ、お姉ちゃんってね、お母さんのこと怖がってるのに、普段はあんな態度なんだよ』
「そうなんですか……」
前は、あんなに怖がって俺の家に避難するくらいだったのに、
普段はあんな態度だったなんて。
『まあ、仲が悪いわけじゃないから、あまり気にしないでね』
「はあ……」
『それより枕木君……』
先輩が、俺に近づいてきて、囁いた。
『お風呂、楽しみだね』
その時の先輩の顔は、
目を少し細めていて、とても妖艶だった。
……そうだ、俺は先輩とお風呂に入るんだ。
この、白くて美しい、妖精のような人と。
『ふふ、じゃあ僕は部屋へ戻るよ。また、夜ご飯の時にね』
そう言うと、先輩は部屋へ戻っていった。
その間、俺は先輩のことばかりを考えて、
動くことができなかった。
そのあと、俺も自分の部屋へ戻り、
先輩のことを考えていると、
いつのまにか夜ご飯の時間になってしまった。
……先輩のことを考えているだけで、
こんな時間が過ぎてしまうなんて。
俺は五億年ボタンを押しても、
先輩のことを考えていたら、あっという間に五億年経ってしまいそうだ。
そんな冗談を思いながら、俺はダイニングへ向かった。
テーブルを見ると、すでに美味しそうな料理が、たくさん置いてある。
キッチンの方を見ると、先輩とお母さんが一緒に料理をしていた。
リオさんは食器を並べている。
すると、お母さんが俺に気づいたのか、話しかけてきた。
「あら、ちょうどできたところなのよ〜遊星君。ほらほら、座って」
そう言われ、俺は言われるがままに椅子へ座った。
そして、座って待っていると、先輩が料理を持ってテーブルへ来た。
『じゃーん、これが今日のメインさ』
先輩の持っている料理は、パエリアだった。
ムール貝が乗っていて、とても美味しそうだ。
そして、先輩は料理をテーブルへ置いたあと、
俺の隣に座った。
『ふふ、お隣はもらったよ』
「あっ、ずるいぞマオ。私だって遊星君の隣に座ろうとしてたのに〜」
『早い者勝ちということさ。さて、じゃあいただこうか』
そのあと、俺たちは四人揃っていただきますをし、
食べはじめた。
頑張って作ってくれたからか、とても美味しい。
みんなで会話しながら楽しく食事をしていると、
あっという間に料理がなくなってしまった。
「ふえ〜、美味しかったよ。さすがマオだね」
「お母さんも作ったのよ。リオ〜」
「ふーん」
「なによそれ〜、お母さん涙が出ちゃうわ〜」
またお母さんとリオさんが、少し言い争っている。
だが……二人とも楽しそうだ。
『さて、じゃあお風呂の順番を決めようか』
それを聞いた瞬間、俺は思い出した。
俺は先輩とお風呂に入るのだと。
『枕木君、最初に入るよね?』
「えっ」
先輩が『最初に入ると言ってほしいな』と言わんばかりに、こちらを見てくる。
「じゃ、じゃあ俺最初でもいいですか」
『いいよね。お母さん、お姉ちゃん』
先輩がそう二人に聞くと、
二人とも了承してくれた。
それを聞いた先輩は、ニヤッとしたあと、
俺に『じゃあ、後で行くね』と囁き、お湯を張りに行った。
……俺はどうなってしまうのだろう。
そう考えながら、貯まるのを待っていると、
お風呂が沸いたという、アナウンスが流れた。
そして、俺はお風呂へ向かい、
先輩が入ってこれるように、脱衣所の鍵を閉めず、
お湯へ浸かった。
……しかし、先輩はいつ来るのだろう。
まさか、一緒に入るというのは嘘で、
先輩を待っているこの時間は、無駄なのだろうか。
そう考えていると、浴室のドアがノックされた。
ドアの向こうには、先輩らしき人影が見える。
だが、すりガラスと湯気のせいで、
人がいること以外は、あまり分からない。
「先輩……ですか?」
俺がドアの向こうの人影に尋ねると、
声が聞こえてきた。
『うん……』
「……入っても大丈夫ですよ」
『でも、その前にこれ巻いてほしいなと思って……』
そう言うと、ドアが少しだけ開き、
ドアの向こうから先輩の腕が伸びてきた。
その腕の先にはタオルが握られていた。
『流石に……ね』
「わ、分かりました」
俺は先輩からタオルを受け取り、
腰にタオルを巻いた。
「つけましたよ」
『……じゃあ、僕も入るね』
ついに、先輩とお風呂に入ってしまう。
未来を考えると、興奮で鼻血が出てしまいそうだ。
そして、浴室のドアがゆっくりと開いていき、
それと同時に、俺の心臓の鼓動が高まっていく。
ああ、ついに、ついに、
先輩とお風呂に──。
『じゃーん』
「はえ?」
……先輩は、学校のジェンダーレス水着を着ていた。
鼓動が、だんだんと落ち着いていくのを感じる。
「先輩、それ……水着ですよね……?」
『うん』
「お、俺を騙したんですか!?」
『僕は、裸で入るとは言っていないよ』
……確かに、思い返せば先輩はそんなことを言っていない。
俺が勝手に、裸だと勘違いしていただけだ。
だが、俺はガッカリしてしまった。
「ど、どうじて水着着てるんですかああ……」
そう俺が言うと、
先輩は少し顔を赤らめた。
『最初は僕もタオルだけで入ろうと思ったんだけれどね……』
「なんですかあ……」
『その……恥ずかしいから、水着を着たんだ』
先輩は、頬がとても赤くなっている。
こんな先輩を見るのは初めてだ。
……とても可愛らしい。
俺の心の中から、騙されたガッカリ感が吹き飛んでいく。
これが見れたなら、それはそれでいいのかもしれない。
そのあと、俺たちは一緒に湯船に浸かり、
少し話して、すぐにお風呂から上がった。
『……ごめんね。枕木君』
「え? なにがですか?」
『水着を着てしまったからね』
「……先輩」
俺は、先輩を優しく抱きしめた。
「そんな謝らなくていいですよ。俺は……恥ずかしがっている先輩が見れたから満足です」
『……ふふ、枕木君って優しいね』
その先輩の顔は、とても嬉しそうだった。
そのあと、先輩に先に着替えてもらい、
そのあと、俺も浴室から出て着替えた。
……水着を着てはいたけれど、むしろそっちの方が、
俺が興奮しすぎて気絶しないから、これで良かったのかもしれない──。
その日の夜──。
俺が布団に入って寝ようとしていると、
先輩が俺の部屋へやってきた。
お風呂で忘れていたが、
先輩は俺と一緒に寝るんだった。
『やあ、枕木君。布団、入っていいかな?』
「あっ、はい」
──先輩が俺の布団に入ってくる。
『お風呂どうだったかな?』
「それはまあ……楽しかっ……」
その瞬間、俺はあることを思い出した。
先輩が男かどうかの疑問が解消されていないっ。
「先輩、俺の疑問が解消されてませんっ」
『……そういえば、そうだったね。じゃあ、えいっ』
そう言うと、先輩は俺の腕を掴んで、
自分の下半身に当てた。
……あまりサイズは大きくなさそうだが、
確かに、男だと感じさせるモノがそこにはあった。
その後も、先輩のモノを触っていると、少し大きくなった気がした──。
『……ん、これでもう分かったかな。枕木君?』
先輩が何かを言っているが、よく分からない。
俺の脳はもう今のことでいっぱいだ。
先輩はこんなに綺麗で可愛いのに、ちゃんと男の子で──。
『枕木君? あっ……』
俺は、気絶した。
『……ちょっと刺激が強すぎてしまったね──』